○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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新たな日常

ユウトやフェイトたちが祭りを楽しみ…短期滞在を終えてアースラに帰還した翌日の事だった…

 

 

夜の街は静かで、星の見えない空が広がっていた。

 商店街の灯りがぽつぽつと消えていく中、八神はやては車椅子のブレーキを外し、最後の坂を降りようとしていた。

 

 「……ふぅ。ちょっと買いすぎたかな」

 

 膝の上にはスーパーの袋。食材の他に、少しだけお菓子も混じっている。

 

 その帰り道――不運は突然、訪れた。

 

 歩道と車道を分ける段差の縁。

 車椅子の前輪がそこに引っかかり、勢いよく――

 

 「きゃっ――!?」

 

 はやての身体が宙を舞い、道路に投げ出される。

 重たい音と共に車椅子が横転し、袋の中身が道路に散らばった。

 

 夜道に誰の気配もない。

 身体を起こそうにも、足は動かない。

 

 

 

――ブロロロ……。

 

 その時、遠くから車のエンジン音が近づいてくる。

 

 「っ……だれか……!」

 

 足が、動かない。腕にも力が入らない。

 横たわったままの視界に、ヘッドライトの光が迫る。

 

 (……だれか……!)

 

 (……ユウトくん……っ!)

 

 心の中で、無意識に彼の名前を呼んだ。

 

 その瞬間――

 

 『マスターの要請を確認。対象の危機を検出。守護機能を起動します』

 

 ――空気が歪んだ。

 

 はやてが持ち歩いていた金色の本が淡く光を放ち始める。

 ページが自動で捲られ、文字が浮かび上がる。

 

 「っ……な、に……?」

 

 まるで意識の奥から誰かの声が響く。

 耳ではなく、脳に直接語りかけられるような――厳かな声。

 

 『守護騎士、“闇の書の主”の目覚めに応じ、召喚します』

 

 闇に浮かぶ魔法陣が光を放ち、そこに4つの影が現れる。

 

 「我ら、主の命に従い、この身を賭して護らん」

 

 ――ヴォルケンリッター。

 

 彼らの登場により、迫る車は何か見えない壁に弾かれ、急停車する。

 はやての目の前で、事故は起きなかった。

 

 だが、その代償として――彼女の運命は、大きく動き出した。

 

 「……守ってくれた……の……?」

 

 床に落ちた本が、再びページを捲る。

 誰にも止められない、“闇の書の再起動”が、静かに幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 12月1日。

 

 

 朝の空は、淡い茜色に染まっていた。

 

なのは達がジュエルシードを求め、戦い…そしてフェイトたちと別れた日から半年が過ぎた。

 

 

 まだ街が眠っている時間。冬の寒空の下、人気のない小さな公園に、制服ではなく、白を基調としたバリアジャケット姿の少女――高町なのはが立っていた。

 

 「はぁっ――!」

 

 両手を構え、魔力の光を放つ。

 レイジングハートから放たれた光弾が、設定された魔法障壁に命中して弾ける。

 

 その手応えを確認しながら、なのはは深く息をついた。

 

 「……もうちょっと、反動抑えたほうがいいかな。うーん……」

 

 実戦ではなく、調整と確認のための“朝練”。

 授業前のほんのひとときを使って、なのはは自身の魔力コントロールを確かめていた。

 

 (フェイトちゃん、今日から地球で暮らすんだよね…)

 

 

  そう思った瞬間、心の中にふっと温かい風が吹く。

 

 だいたい半年ぶりに戻ってくる、大切な友達。

 

 目を奪われるほど透き通った髪と

吸い込まれるような瞳をもつ少女

 

 (ユウトくんは……まだ戻ってこないって聞いたけど)

 

 少しだけ寂しさが胸をよぎるけれど、なのはは、それを口にすることはしなかった。

 

 「もうちょっと、強くなってなきゃね。フェイトちゃんにも、ユウトくんにも――負けてられないんだから」

 

 再び構えると、レイジングハートが小さく応えるように光を放つ。

 

 『ええ、頑張りましょう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  陽が高く昇る前の静かな朝。澄んだ青空が広がる空港の特別ゲートに、淡く輝く魔力転送の光が灯る。

 

転送陣の中央に、その姿を現したのは三人の女性。

 

「……ふぅ。やっぱ地球の空気って、ちょっと違う気がするなぁ」

 

赤い髪を揺らしながら軽く伸びをするのは、獣耳の少女――アルフ。

 

「少しひんやりしていて、でも優しい空気ですね」

 

優雅な声とともに穏やかに微笑むのは、管理局の艦長――リンディ・ハラオウン。

 

そして、そのふたりの間で、じっと前を見つめる少女がいた。

 

「……なのは」

 

金色の長髪が風に揺れる。 フェイト・テスタロッサ。その目はただまっすぐに、出口の向こうにいる“誰か”を見つめていた。

 

そして、開かれたゲートの先に、彼女はいた。

 

「フェイトちゃんっ!!」

 

制服姿の少女が駆け出してくる。風を切る勢いで。 高町なのは。懐かしくて、ずっと会いたかった大切な親友。

 

その姿を見た瞬間、フェイトの目から自然と涙があふれた。

 

「なのは……!」

 

次の瞬間、ふたりはお互いの胸に飛び込むように、強く抱き合った。

 

「会いたかった……今日からずっと一緒なんだよね、フェイトちゃん……っ」

 

「うん……私も、なのは……なのはに会いたかった……!」

 

抱きしめ合う腕に、言葉以上の気持ちがこもっていた。 涙がこぼれても、お互いの顔を見て笑い合える――そんな関係だった。

 

「……もう離さないからね」

 

小さくなのはが呟いた言葉に、フェイトはこくんと頷いた。

 

その様子を見守っていたリンディが、そっと目を細める。

 

「……いい再会ね」

 

「うん。あたしだったら、ああいうのちょっと照れるけど……でも、いいな」

 

アルフも苦笑しながらもどこか嬉しそうに笑った。

 

しばらく抱きしめ合ったあと、ようやくふたりは名残惜しそうに身体を離す。

 

「フェイトちゃん、元気だった?」

 

「うん。なのはは? 生活、大変じゃなかった?」

 

「ううん、少し寂しかったけど……今はすごく、嬉しいよ」

 

そう言って、なのはが手を差し出す。 フェイトは迷いなくその手を握り返した。

 

――ふたりの再会。それは、これからの新たな戦いと絆の始まりを告げる光だった。

 

 

 同時刻 

 

管理局本部――中央執務局の長い廊下を、クロノ・ハラオウンとエイミィ・リミエッタが並んで歩いていた。

 

白を基調とした清潔な内装と、規則正しく点滅する天井灯。

 

その光に照らされたふたりの足音が、静かに響く。

 

「……なのはちゃんとフェイトちゃん、ちゃんと再会できたかな」

 

エイミィが端末を片手に、ふっと微笑む。

 

「無事に合流したらしいよ。リンディ提督から通信が入ってた」

 

クロノは視線を前に向けたまま、淡々と答える。だが、その声音にはどこか柔らかさが滲んでいた。

 

「そっか。あのふたり、ほんとに仲良しだもんね。クロノくんも、少し安心したんじゃない?」

 

「……少しだけ、な。今のうちに喜んでおかないと、すぐに面倒な話が回ってくる」

 

軽く肩をすくめるクロノに、エイミィは小さく笑った。

 

やがて、ふたりは目的の部屋――管理局本部の上層、レティ・ロウラン提督の執務室にたどり着いた。自動扉が無音で開くと、髪を結った女性がデスクの前に立ち、すでにふたりの到着を待っていた。

 

「お疲れ様、クロノ・ハラオウン執務官、エイミィ・リミエッタ技術士官」

 

レティの目は穏やかでありながら、その奥には凛とした緊張が宿っていた。クロノは一歩前に出て敬礼する。

 

「任務内容の確認をお願いします」

 

レティは頷き、手元のホログラム端末を操作した。

 

空中に浮かび上がるのは、いくつもの赤いマーキングがついた地図と、それぞれの事件記録だった。

 

「今週に入ってから、複数の登録魔導師および管理下にあった魔法生物が何者かに襲撃され、リンカーコアを強制的に奪われる事件が発生しています。襲撃された者たちは全員、深刻な魔力消耗と意識障害を起こしているわ」

 

「……リンカーコアの抜き取り。まるで11年前と同じ……」

 

エイミィが、口を押さえてつぶやく。レティは頷いた。

 

「ええ。すでに確認された痕跡の中に、古代ベルカ式魔力の反応がある。さらに、空間歪曲の痕跡、転送魔法の跡も多数。総合的に見て、“闇の書”関連の現象と判断せざるを得ないわ」

 

クロノの眉がわずかに動いた。

 

「つまり……“闇の書”が、再びこの世界で動き出していると?」

 

「その可能性が高いわ。前回とは異なる主の手にあるはずですが、放っておけば確実に被害は拡大する」

 

レティは視線を鋭くし、ふたりを見渡した。

 

「この件、君たちに捜査を任せるわ。すでに関連する魔力波動の追跡指令も出してある。必要であれば、他の魔導師とも連携を取るように」

 

「了解しました。全力で対応します」

 

クロノは深く頷き、エイミィも真剣な表情で返事をした。

 

だが――その胸の奥には、拭えない疑念がひとつだけ残る。

 

(このタイミングで……まさか、本当にユウトの夢と関係が……)

 

脳裏をかすめるのは、何かを隠すようなユウトの表情と焦り

 

それが偶然であればいいと、クロノは願った。

 

しかし、時の歯車はすでにゆっくりと、だが確実に動き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「皆さんに、新しいお友達を紹介します」

 

担任の先生の声とともに、教室の前にひとりの転入生が立っていた。

金色の長い髪を後ろでまとめた、どこか整った雰囲気の少女。制服に袖を通した姿は少しだけぎこちなくも見えるが、その立ち姿にはどこか凛とした空気があった。

 

「フェイト・テスタロッサです。……よろしくお願いします」

 

静かで落ち着いた声に、クラスに軽いざわめきが広がる。前列で見ていたなのはは、思わず頬を緩めた。

 

「フェイトちゃん、こっち!」

 

席の位置が示される前に、なのはが小さく手を振ると、フェイトも小さく微笑んで歩み寄る。自然と、なのはの隣の席に落ち着いた。

 

数ヶ月前までは、互いに敵として対峙していたふたり。

けれど今は、こうして同じ教室で、肩を並べて授業を受ける。そんな未来が訪れることを、誰が想像できただろうか。

 

──放課後。

夕陽が教室の窓をオレンジ色に染める頃、なのはとフェイトは二人で並んで歩いていた。帰り道の小さな坂道。まだ春の気配が残る風が、制服の裾を揺らしている。

 

「今日はどうだった? 緊張した?」

 

なのはの問いに、フェイトは少しだけ歩調を緩めてから、小さくうなずいた。

 

「うん……やっぱり、慣れないことばかりで。教室も、授業も、言葉づかいも……地球の常識って、まだあんまりよくわからないの」

 

フェイトは立ち止まり、少しだけなのはの顔を見て、それから視線を落とす。

 

「だから……これから、迷惑かけること、たくさんあると思う。でも……」

 

そこで、なのはの手がそっとフェイトの手を取った。優しく、力強く。

 

「ううん、大丈夫。私がいるよ。困ったら、なんでも聞いて。少しずつでいいから、一緒に覚えていこう?」

 

驚いたように目を丸くするフェイトだったが、すぐにふわりと微笑んだ。

 

「……うん。ありがとう、なのは」

 

「こちらこそ。これから、よろしくね。フェイトちゃん」

 

夕陽の中、ふたりの手はしっかりと繋がれていた。

その手の温もりが、これからの新しい日々の日常をそっと知らせていた。

 

1週間後ーー襲撃があるまでは

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