○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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突然の出会い

夕暮れの街並みが赤く染まる頃、ユウトは静かに高町家の門をくぐった。

 

(あの時の魔力はもう感じない…いまの俺が守護騎士からなのは達を守るためには…俺自身がもっと強くならなきゃ…)

 

軋む木戸を開け、懐かしい土の匂いと草木の音が、彼を出迎える。

 

「あら、ユウトくん!」

 

庭先で水やりをしていた桃子が、ぱっと笑顔で振り返る。

 

「お帰りなさい!ひさしぶりね…なのは達、まだ帰ってきてないけどどうしたの?」

 

「お久しぶりです。たまたま近くに帰ってきてたのでちょっと恭也さんに会いに来ました。話したいことがあって…」

 

真剣そうなユウトの表情を見て、何かを察したのか何も聞かず、桃子は案内する。

 

「まあ……そういうことなら裏庭にいるわよ。普段と同じように稽古してるわ」

 

「そうですか、ありがとうございます」

頭を下げて礼を言い、ユウトは家の裏手――道場へ向かった。

 

竹刀と木刀が交差する音。伝わる道場の緊張感。

 

その中心にいたのは、静かに構える長身の剣士――高町恭也だった。

 

「ユウトか…帰ってきてたのか?」

 

「恭也さん。いえ、師匠。俺に……二刀の剣術を教えてほしいんです」

 

「お前に御神流を教えないと言ったはずだ。…理由は?」

 

問いは短い。だが、その声音には剣士としての“覚悟を問う”圧があった。

 

ユウトは一歩、恭也に近づいた。

 

「俺は……これからもっと強くならなきゃいけない。今のままじゃ、守れないものが多すぎる。だから、どんな敵にも立ち向かえるようになりたいんです。御神流を俺に教えないのは…まだ俺に覚悟が足りてないからって以前おっしゃいましたよね。」

 

「そうだ、それにお前はまだ子供だ。こんな平和な世に、殺人剣を教えるわけにはいかない」

 

一呼吸おいて、ユウトは続けた。

 

「大切な人たちを守るために――それが、俺の覚悟です」

 

その言葉に、恭也の目が細くなる。

 

「戦うための覚悟ではなく、守るための覚悟か…」

 

ユウトは真っすぐに頷いた。

 

しばし沈黙の後、恭也は道場の奥から二本の木刀を取り出した。そしてそのうちの一本を、ユウトの足元にそっと置いた。

 

「いいだろう…お前になにかあったかは聞かない。教えはしないが…御神流の一端見せてやる」

 

木刀を手にしたユウトの両手が、わずかに震えた。けれどその目は、決して逸らさなかった。

 

夕焼けの中、ふたりの剣士が向き合い、静かに構えをとる。

 

「構えろ、ユウト」

 

「……はい!」

 

その一声で、地を蹴る音が響いた。

 

 

守護騎士たちは負傷した体を休めながら、それぞれは自らの主ー八神はやてと出会った日のことを思い出す。

 

夜。静かな部屋の空気には、読書灯の明かりと、本をめくる音だけが満ちていた。

 

ベッドの上ではやてが本を読みながら、ふと顔を上げた。

 

「なあ、ヴィータ。さっきの話……“闇の書”って、どこまでが本当なん?」

 

隣にいたヴィータは一瞬、表情をこわばらせる。

 

「それは……」

 

「魔法のこととか、守護騎士のこととかイマイチ理解できひんかったけど…ねぇ、みんな。」

 

呼びかけに応えるように、シグナム、シャマル、ザフィーラが姿を現す。

「私たちは、“闇の書の守護騎士”。主であるあなたを護るために、この世界に生まれたプログラムです」

 

「……そうか。さっきもうちのこと、車の事故から護ってくれてたんやな」

 

はやては、ふわりと微笑む。

 

「せやけどな……“蒐集”とか、そういうのはアカンで。誰かを傷つけてまで、何かを得るのは間違ってると思う」

 

静かな、けれど揺るがない声。

 

「それが“うちの願い”や。……このまま、普通に生きてたい」

 

四人の守護騎士は、その言葉に頭を垂れるように頷いた。

――そのときは、確かに、そう誓った。

だが――

 

数日後。

 

医療端末に接続された診断データを見つめながら、シャマルの手が震えた。

 

「……これは……」

 

データには、はやての身体に進行する原因不明の神経麻痺の兆候が、明確に現れていた。

末端の感覚鈍麻、徐々に侵される脊髄。麻痺はすでに膝上まで達し、次は上半身――

 

「……この進行速度……まさか、“闇の書”のが……」

 

「主が蒐集を拒み続けているせいで、逆に彼女の身体が代償を払わされている、というのか」

 

シグナムが沈痛な声で呟く。ザフィーラも拳を握りしめた。

「このままでは、主は……」

 

「でも……はやては蒐集はダメって!」

 

ヴィータの声は震えていた。

 

「はやてちゃんは蒐集はダメって言ってたけど……でも、でも……このまま放っといたら……!」

 

シグナムは、決意を込めて顔を上げた。

 

「――だったら、黙ってやろう。彼女に、気づかれないように。私たちだけで、彼女を救うために」

 

誰も反論しなかった。

 

それが、主の意思に反していると知りながらも。

 

それでも、彼女を救うためには、それしかないと――

 

静かに、結界と魔力収集の術式が準備され始めた。

 

その夜から、闇の書の守護騎士たちは動き始め今に至った。

 

 

 

 

それぞれは物思いにふけるのを、やめて、今後について話し始めた。

「もし次があったら…あの少年はどうする?」

 

「魔力暴走によるあの強さ…恐らく身体にも悪影響はあるはずだ、長くは持たないし軽々しく使えるものでは無いと思うが…」

 

「それでも、次やりあったらまずいなよな…」

 

「ええ…私は実際には戦ってないからみんなほど凄さは分かってないけど…遠くから見てた分わかったこともあるわ。」

 

「なんだ?」

 

「あの白い姿の少年…たぶん、肉体を持ってないわ。身体に見える部分は魔力を人の形に無理やり押し込めて形成されてる見たい。」

 

「だから切断した腕が直ぐに再生したのか…」

 

「でも、男の子の方も驚いてたからあれが通常って訳じゃなさそうね。多分普段は普通の人間みたい。」

 

「その男とやらだが…お前たちも、少し気づいているんだろう。」

 

最初に重い口を開いたのは、ザフィーラだった。

 

「先日の蒐集……あの少年のリンカーコアが闇の書に弾かれた。発言が正しければ恐らく前回の我らが既に蒐集を終えていた。」

 

「……うん」

 

ヴィータが、俯きながら口を開いた。

 

「あたしはなんだか……前に、似た気配を……感じたような、気がする。記憶の奥に、何か引っかかっているんだ。けれど、はっきりとは思い出せない」

 

「私も同じ感じね…私たちが、闇の書と共に転生して目覚めるたびに記憶が曖昧なのはいつも通り…けれど……それでも、」

 

「……シャマル?」

 

シグナムが呼ぶと、シャマルはかすかに震える指先で、自分の胸に手を当てた。

 

「あの男の子を見た時、反射的に思ったの。“ごめんなさい”って……私は、何を謝ろうとしたのか、わからないのに」

沈黙が降りた。

 

夜の帳がすべてを覆うように、誰の口からも次の言葉が出てこなかった。

 

ただ――

 

誰も覚えていないはずのその“罪”だけが、消えずに彼女たちの中に刺さっていた。

 

「彼が、私たちに向ける怒りは……きっと正しいのだろう」

 

シグナムが、静かに呟いた。

 

「だが、我らが主に……主はやてにだけは、あの怒りを向けさせてはならない」

守護騎士たちは、ただ無言で頷いた。

 

記憶になくとも、背負うべき罪は生まれながら持っていることも

 

そしてそれが、今も彼を蝕んでいることを――彼女たちは知っていた。

 

それでも騎士たちは止まれない。

 

Sideはやて

 

午後の陽射しがやわらかく差し込む

 

リビングに座るはやては、ぽつんと広くなった空間に目を向けていた。

いつもならヴィータがソファの上でテレビを見て、シグナムは掃除の手伝い、シャマルはおやつを用意しながらおしゃべりしてくれていた。

 

ザフィーラも静かに部屋の隅に佇み、視線だけこちらを気にしていてくれた。

 

でも、最近は――

 

(みんな、夜遅くまで帰ってこーへん……どこに行ってるんやろ)

 

はやては、膝の上のブランケットを握りしめた。

聞けば「買い物」「鍛錬」「散歩」と言われる。でも、皆が一斉に、何度も、というのは明らかに不自然だった。

(……私に、気遣ってんのかな)

 

疑問はあった。でも、それ以上に、寂しさが大きかった。

 

そのままでは気持ちが塞いでしまいそうで――

はやては決心したように声をあげた。

 

「……たまには、外出しよかな」

久しぶりに来た図書館は静かだった。

 

館内は秋の空気を取り込んで心地よく、ページをめくる音と、小さな囁き声だけが響いていた。

 

はやてはお気に入りの歴史書のコーナーに向かい、低めの棚を見つめながら車椅子を止めた。

 

けれど――

 

「……あ」

 

上段にある一冊がどうしても取れない。

 

立ち上がることもできず、諦めようかと思ったそのとき――

 

「手、届かない?」

 

優しく、透明な声が後ろからかけられた。

 

振り向くと、整った黒髪を揺らし、丁寧な制服姿の少女が立っていた。

涼やかな瞳が、まっすぐにはやてを見つめている。

 

「よかったら、取ろうか?」

 

「……え、あ……うん、おおきにな」

 

そうして手渡された本を受け取りながら、はやてはぽつりと尋ねた。

 

「もしかして……同じ学校?」

 

「うん。聖祥大附属小学校の月村すずか。あなたは?」

 

「八神はやてっていいます。……今は、ちょっと休学中やけどな」

 

「そうなんだ。よかったら、少しだけ一緒に本、読まない?」

 

思いがけない言葉に、はやては目を丸くして――そして、笑った。

 

「うん。ぜひ!」

 

しばらくして、図書館の静けさのなか、日差しが少しずつ傾きはじめていた。

大きな窓のそば、椅子を並べて本を読むふたりの少女。

 

すずかはそっとページを閉じて、はやての方へ目を向けた。

 

「ねえ、はやてちゃん」

 

「ん?」

 

「……学校、休んでるって言ってたけど、普段は誰かと会ったりしてる?」

 

はやては、ほんの少しだけ目を伏せた。

すずかの声に悪意はない。けれど、ふと胸の奥がチクリと痛んだ。

 

「……家には、親戚が4人いま泊まってくれてるよ。友達、って言えるほどの人は、おらへんけど…この足やから、あんまり外にも出えへんかったし」

「……そっか」

 

「でもな……」

 

はやては、ふわりと微笑んで付け足す。

 

「ひとりだけ、昔ちょっとだけ一緒に遊んでくれた子がおってん。“ユウト”っていう男の子や。ほんまにちょっとだけで……半年ぐらい前まで会ってたんだけど、最近は全然みてないなぁ。」

 

その名前に、すずかの表情が驚きに染まった。

 

「――え? ユウトくんって……もしかして、ちょっと目付き悪くて無愛想な、ユウトくん?」

 

「え……知ってるん?」

「知ってるもなにも、ユウトくん、なのはちゃん…私の小学校の友達と一緒に住んでたの。……少し前まで、日本を離れてたんだけど、最近帰ってくるってなのはちゃん言ってたような…」

 

はやての目が、大きく見開かれた。

 

「……もしかして、ユウトに会えるん?」

 

「うん。今はまたなのはちゃんたちと一緒にいると思うよ。もしよかったら――明日、私と一緒に会いに行かない?」

 

言葉の端に、どこか優しい光が宿っていた。

すずかの申し出に、はやてはゆっくりと頷いた。

 

「……うん。行きたい。ユウトに、もう一度、会いたい!」

 

話を終え、図書館の出口を出ると、夕暮れの空に赤みが差していた。

 

入り口のすぐ先で、ひときわ目立つ長身の女性――シグナムが、静かに佇んでいる。その隣には、少し落ち着きがない様子で辺りをキョロキョロしているヴィータの姿もあった。

 

「はやて!」

 

ヴィータが先に気づき、パタパタと駆け寄ってくる。

 

「探したぞー。家に帰ったら居なくて焦ったんだ!もう本ばっか見て、帰るの忘れてたんじゃないのか?」

 

「ごめんごめん、すずかちゃんと本の話しとったら、ついついな」

 

はやては笑いながら、隣にいるすずかに軽く視線を送った。

 

「紹介するね。こっちは月村すずかちゃん」

 

「こんにちは。はやてちゃんにはお世話になりました」

 

すずかが丁寧に頭を下げると、シグナムが小さく会釈し、ヴィータは少し照れたように手を挙げた。

 

「……あんまり人と仲良くするの、得意じゃないけど……よろしくな」

 

「うん、こちらこそ」

 

すずかは優しく笑った。

 

「じゃあ、今日はこれでバイバイやな。また明日、連絡するな」

 

はやてがそう言うと、すずかは名残惜しそうに手を振り、図書館を後にした。

 

その姿が見えなくなった頃、ヴィータがふと横を向く。

 

「……なあ、はやて」

 

「うん?」

 

「さっきの子、友達?」

 

「うん。今日初めて会ったけど、すごくええ子やった。でも……明日は、もっと昔からの、大切な子に会うんや」

 

ヴィータは目を瞬かせる。

 

「ふぅん……その“昔の友達”って、どんなやつなんだ?」

 

はやては、遠くの空を見上げながら、静かに口元をほころばせた。

 

「――“ユウト”っていうんよ。半年ぶりに会えるんや。」

 

その名前に、守護騎士たちは特に反応を示さず、聞き流す。

はやては、軽やかに続ける。

 

「なぁ、ヴィータ。明日、紹介させてな。ユウトくんと皆をずっと会わせたいって、思ってたねん」

 

ヴィータは、その言葉に素直に頷いた。

 

「……わかった。楽しみにしてる」

 

 

次の日、 朝の光が障子越しに優しく差し込む。

はやての家は、いつも通り静かな朝を迎えていた。

 

――が、その静けさを破るように、階段を下りる足音と、玄関の扉がそっと開かれる音が聞こえた。

 

車椅子をそっと動かし、はやてはリビングの扉を開ける。

 

「……どこ行くん?3人ともこんな朝早くに…」

 

出かけようとしていた三人の守護騎士たちが、振り返る。

 

「おはようございます、主」

 

「……みんなでお出かけ?」

 

シャマルが柔らかく微笑んだ。

 

「はい。ちょっとだけ、野暮用でして…」

 

「……そか。気ぃつけてな!」

一瞬の間があったものの、はやてはそれ以上なにも問わなかった。

きっとまだ、自分に気を使ってるのだと、そう思って。

 

シグナムとシャマルは軽く会釈し、ザフィーラは無言のまま、はやての姿をまっすぐ見つめ、深く頷いて玄関を後にした。

 

戸が閉まり、家の中にふたたび静寂が戻る。

 

「……行ってもうたなあ」

 

はやては独り言のように呟いてから、振り返った。

 

「ヴィータ」

 

呼ばれた小さな影が、奥の廊下から顔を覗かせた。

 

「悪い、遅れた」

「ううん。待っとったで」

 

ヴィータはキャップを目深にかぶり、はやての車椅子のハンドルをそっと握る。

 

「ユウトって奴だっけ。会うの楽しみなんだろ?」

 

「うん。久しぶりに会うし、ちょっと緊張してるけど……どんなふうに変わってるか、楽しみでもあるなぁ」

 

「じゃあ、しっかり楽しめよ。アタシも着いてくけど…あんま気にすんなよ」

 

「うん。ありがとな、ヴィータ」

 

そうして、少女と守護騎士は肩を並べて、ゆっくりと家を後にした。

 

集合場所――公園の中央、噴水のそば。

風に揺れる木々の下、先に待っていたユウトは腕時計をちらりと確認した。

 

「もうすぐ、か……」

 

ぽつりと呟いた直後、芝生の向こうから小さなシルエットが二つ、こちらへと近づいてきた。

 

「はやてちゃん、あれ、ユウトくんだよ」

 

すずかの声に振り向いたユウトの目に、まず飛び込んできたのは――

 

「…お前…」

 

(なんでこいつがここに!?)

 

ヴィータとユウト

互いに顔を見合わせた瞬間、二人の表情が見事に揃った。

 

「「……ッ!」」

緊迫した空気が流れる。

無理もない。ユウトはなのはが蒐集された怒りにまかせて暴れ回り、ヴィータとそのときに戦闘し、吹っ飛ばした。ヴィータはユウトの髪の色や魔力量から確信はしていないが顔や雰囲気から昨夜戦った相手だと疑っている。

2人ははやてのいる手前、戦闘こそしないが、緊張感が走る

だが――

 

「ユウトーーーっ!」

 

そのやり取りを吹き飛ばすように、明るく元気な声が芝生の向こうから響いた。

 

「わっ……!」

 

振り返った瞬間、車椅子が猛スピードで突進してきたかと思うと――

 

ドンッ!

 

「うぐっ!? は、はやてぇ……!?」

 

ユウトの胸に、軽く衝撃が走る。

そのままよろけて、背後のベンチに思わず倒れこむ。

「会いたかったんよぉ〜……! ほんまにぃ……!最後に会ったの…夏祭りの時やんな!もう4ヶ月はたってしもうて〜寂しかったんよぉ!」

 

はやては、全身で彼に抱きついていた。小さな身体からは信じられないほどの力で、ぎゅっとしがみついている。

 

ユウトは頭の中が真っ白になりながらも、ぽつりと呟いた。

 

「……重い…はやて…」

 

一拍置いて、肩にのしかかるその重みとぬくもりが、懐かしさと共に胸に染み込んでいく。

 

(……ヴィータ…守護騎士と共にいるってことはやっぱりはやてが…)

 

はやての腕の中で、ユウトはそっと目を細めた。

 

「はやて、落ち着けって……そいつ、息できてないぞ……」

 

「ごめんなぁ! でもな、ほんまに会えて嬉しかったんよ、ユウト」

 

ようやくユウトから離れたはやては、明るく笑いながら頬を紅潮させていた。

その表情は、昔と何も変わらない――そう思えた。

 

ユウトは息を整えながら微笑み返す。

 

「元気そうで、安心した。前より顔色も良さそうだし」

 

「せやろ? ヴィータやシグナムたちが、毎日よう世話してくれるからや」

 

隣で名前を呼ばれたヴィータは、「ん」とだけ返事をしつつ、じっとユウトの顔を見つめていた。

 

その目は、どこか探るようで、敵意とまでは言わずとも油断はしていない――そんな鋭さがある。

 

(……こいつ、やっぱ気づいてるな)

 

ユウトは、心の中で静かに意識を切り替える

【……おい、聞こえるか?】

 

突如、脳裏に響く少年の声に、ヴィータの目がわずかに細められた。

 

【……ああ、聞こえてる。やっぱ、お前…昨日の!】

 

【こっちの台詞だ。まさか守護騎士が堂々と外を出歩いているとはな】

 

数秒の沈黙。

 

【……で、それがどうした。ここでやり合うか?】

 

【はやての前じゃなきゃな。それより聞きたいことがある】

 

ユウトの表情は、はやてに向けたまま、柔らかい笑みを崩さない。

 

心の中で殺伐としながらヴィータとの念話をつづける。

 

【ひとつ、確認したいだけだ。……蒐集を始めたのは“お前たちの独断”か、それとも“はやての命令”だったのか】

 

ヴィータは答えなかった。だが、その僅かな沈黙が、全てを物語っていた。

 

【……まぁ、優しいはやてがそんな命令なんてしないって分かってるが…】

 

【……何が言いたいんだよ。】

 

【……お前ら、今度またフェイト達に手を出したら許さない】

 

その言葉に、ヴィータの目が一瞬、わずかに揺れた。

 

【――安心しろよ。1度リンカーコアを蒐集したヤツに興味は無い…アイツらの方から挑んできたら分からないが】

 

【……】

 

念話が途切れたその瞬間、再び現実の会話が耳に戻ってきた。

 

「――でな、ユウト! せっかくやし、今日はうちの家にも寄っていかへん?お泊りでもええで?」

 

「……あ?あ、あぁごめんな、夜は…」

 

表面上は笑顔で会話が続く中、

ユウトとヴィータの視線だけが、互いを深く見据え合ったまま離れなかった。

 

静かな睨み合いは、ユウトとはやてがそれぞれの帰路につくまで続いた…





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