○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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融合騎

―時空管理局艦アースラ・ブリッジ

 

「緊急警報。宙域Z-17にて、規格外の高位魔力反応を検知――!」

 

「該当エリアにて、“闇の書”の完成を確認。主制御ユニットが戦闘状態に入っています!」

 

オペレーターの報告に、リンディ提督はすぐさまモニターを確認する。そこに映し出されたのは、黒い装甲に包まれた女の姿――

 

「これは…闇の書の管制融合騎!?」

 

その周囲には歪んだ空間、吹き荒れる魔力の渦、そして暴走する攻撃魔法が制御不能に展開されていた。

 

魔力の渦に飲まれるなのはとフェイトの姿もモニターに映し出される

 

一方ーー

 

医療室のベッドに横たわっていたユウトは、目を開けた瞬間、嫌な感覚に胸を押さえた。

 

(これは……)

 

胸の奥で何かが警告を鳴らしている。

なぜだか分からないが闇の書のその中。はやての、叫ぶような心の悲鳴が、ユウトの胸に直接響いてきたのだ。

「……行かなきゃ」

 

ユウトは、まだ治りきらない傷だらけの体を無理やり起こす。

だが、立ち上がった瞬間、激しい痛みが全身を襲う。

 

「っ……くそ……っ!」

 

点滴の管を無理やり引き抜き、意識が揺れる中、それでも前へ進もうと足を動かした。

 

しかし――

 

「ユウトッ!!」

 

医務室の扉が開き、駆け込んできたのはアリシアだった。

彼の無謀な行動に、目を見開き、すぐさま彼の腕を掴む。

 

「やめてよ! まだまともに傷も治ってないくせに、どこに行くつもり!?」

 

「……行かなきゃ。あいつが――はやてが、完全に闇の書に呑まれちまう……!」

 

「…!どうしてその事を…!?

いや、それより そんな身体で、どうするつもりなの!?」

 

ユウトの目に、焦燥と怒り、そして悲しみがにじむ。

 

「……アイツらを、助けたいんだよ。なのはも、フェイトも、はやても……誰かが止めなきゃ、みんな死ぬ……」

 

「だけど! 今のユウトが行ったって……! 死ぬのは……ユウトのほうだよっ!」

 

アリシアの叫びに、ユウトの足が止まる。

彼女の手が震えていた。

 

「わたし……もう、ユウトが傷つくの、見たくない。お願いだから……もう少しだけ、ちゃんと回復してからでも……」

 

その声には、抑えきれない涙が混じっていた。

 

ユウトは苦しそうに唇を噛み、拳を握りしめた。

だが、それでも――

 

「……少しでいい。立って、動けさえすれば……もしかしたら止められるかもしれない」

 

その強い目を見て、アリシアは何も言えなくなる。

 

「だからごめん……アリシア。俺は行くよ」

 

その瞬間、彼の足元に浮かび上がる魔法陣。

転送術式を起動させる…。

「……ッ!」

 

アリシアは、ぎゅっとユウトの手を握りしめ――

 

「忘れ物……デバイス無しで戦場に行こうとするなんて…自殺行為だよ!」

 

『まったくです。』

その言葉に、ユウトはわずかに微笑んだ。

 

「忘れてた…ありがとアリシア。

いくぞ…相棒!」

 

そして、闇の中心へ向けて、少年はまた――歩き出す。

 

 

 

 

 

 

管制融合騎――黒き装甲に包まれたはやての体を乗っ取った管制ユニットが、全方位に展開した魔力を放つ。

 

「デアボリック・エミッションッ!!」

 

地を裂き空を砕くような濁流の魔力。魔力障壁では受け止めきれない、空間そのものを蝕む攻撃。

 

「くっ……!」

 

「っ!」

なのはは重ねるように多重に盾を展開し、耐え抜く。

 

「ごめん…なのは、助かった」

 

「ううん…私の防御、硬いんだから!」

 

爆風の先、空間が歪みきった中で、フェイトは深く息をついた。

 

(……やっぱり、ソニックフォームじゃ無理がある)

 

防御を捨てた超高速戦闘と空間攻撃は相性が最悪。

フェイトは魔力の流れを変化させ、バルディッシュに命じる。

 

「バルディッシュ、戻して!」

 

『Lightning Form――set up.』

装甲が変化し、機動と安定を兼ね備えた戦闘形態へ。

 

管制融合騎の方は無数の蛇を纏った姿をした、闇の書を武器に変換し、装備する

 

「しばらく休め…ナハト…ここからは私が主をお守りする。」

 

【了解。システム権限を管制融合騎に譲渡します。】

 

「…ッいくよ、フェイトちゃん!」

 

「うん!」

 

なのはとフェイトが並び、空中から挟撃態勢に移る。

 

「レイジングハート、コンビネーション攻撃パターン2」

 

『Buster Mode――』

 

「バインド、展開!」

 

『Restrict Lock』

幾重もの魔法陣が管制融合騎を縛りつけ、動きを止める。

 

「今っ!」

『Ecthelion Buster』

「バルディッシュ、いくよッ!」

『Thunder Smasher』

 

「「シューートッッ!!!」」

 

砲撃と雷撃が交差し、黒き装甲に炸裂する――!

 

だが。

一瞬にして逆回転する魔力の奔流が展開され、砲撃と雷が吸収されるように掻き消えた。

 

「な……!」

 

「防がれた……ッ!?」

 

その直後。

 

黒い魔力陣がふたりの足元に展開される。

 

『Restrict Lock――Deploy』

 

『Photon Lancer――Deploy』

 

管制融合騎の手から放たれたのは、二人が見慣れた技――なのはの魔力拘束、フェイトの雷の槍。

 

「えっ……!? これ、私たちの……!」

 

魔法が鏡写しのように現れ、2人はそのまま空中で拘束される。

 

動きを奪われ、身体を締めつける光雷の弾丸――

 

そして、管制融合騎が、ゆっくりと口を開いた。

 

「……“闇の書”が完成した今……主は、死ぬ定めにある。それまで…穏やかに滅びを……」

 

その声は、機械音声に似た無機質な響き。だが――そこには、震えがあった。

 

なのはが目を見開いた。

 

「……泣いてる……?」

 

フェイトも、驚きに息を呑む。

 

無表情の顔の下から、涙が流れていた。無感情に見えていたその瞳が、確かに濡れていた。

 

「その涙は……」

 

なのはが、声を震わせながら言葉を紡ぐ。

「……あなたがはやてちゃんのこと諦めたくないって気持ちがある証拠だよ。まだ……はやてちゃんは、生きてる。だから、まだ何とかなるかもしれない」

 

「……抗いたいんだよね……運命なんかに……」

 

フェイトの声も重なる。

 

「運命なんて何度でも覆せる……! だから……!」

 

話を遮るように攻撃する管制融合騎に対してフェイトは…

「…バリアジャケットパージ!!!」

 

『Sonic Form』

 

 

フェイトの装甲が剥がれ落ち、無理やり拘束から脱出し、なのはを救出する。

 

「伝わらないなら伝わるまで何度でも言う…助けたいんだ!はやても…あなたの事も!」

 

それを聞く管制融合騎の手が、わずかに、震えた。

 

その心に、ほんの一瞬だけ“はやて”の声が、響いたような気がした。

 

なのはとフェイトの訴えに、確かに揺れていた管制融合騎の心――

だが、そのわずかな人間らしさすらも、崩壊の足音に塗り潰されていった。

 

突然、地鳴りが響き渡る。

 

ゴゴゴゴ……ッ!

 

「っ……!?」

 

「この、音は……?」

 

なのはが顔を上げた瞬間、空間が震え、地平線から天へと突き抜けるように――

巨大な石の塔が、間隔を空けて次々と隆起した。

 

どれも500メートルを超す高さ、まるで世界を囲い、閉じ込めるかのように並び立つ。

 

「……なに、これ……?」

 

なのはの声が震える。

 

そのとき、管制融合騎の声が淡々と響いた。

 

「……早いな。もう、崩壊が始まったか……」

 

その仮面にも似た無表情の顔から、かすかな動揺の声が混じる。

 

「聞け……間もなく、私の意思も……主はやての意識も……全てが消える。

代わって現れるのは、闇の書の自動防衛プログラム――“ナハトヴァール”。

そうなれば残るのは滅びのみ……その前に、私は……主や騎士たちの願いのため……お前たちに穏やかな眠りを与える」

 

次の瞬間――

 

空に、無数の赤い魔力の槍が形成された。

 

「くっ……!」

 

なのはが身構える間もなく、それらは雨のように襲いかかってくる。

 

「この……駄々っ子ぉぉぉ!!」

 

『Sonic Drive』

 

フェイトのバルディッシュが激しく唸り、全身を金色の光が包む。

 

雷光となったフェイトが、槍の合間を縫い、真っ直ぐに融合騎へと飛翔する。

 

「そんなことさせないッ!」

 

「……お前にも、心の闇があるだろう。ならば、眠れ」

 

管制融合騎が片手を上げる。

 

【Absorption】

 

その一言と共に、フェイトが振り下ろしたバルディッシュの一撃は――

 

「――ッ!?」

 

闇の書に展開された黒い魔方陣に阻まれ、止まる。

 

次の瞬間。

 

「……そんな、嘘でしょ……!」

 

融合騎の掌がバルディッシュごとフェイトを掴み――

彼女の身体が、光と共に吸収されていった。

 

「……フェイトちゃん!!!」

 

なのはの叫びが、虚空に響く。

 

 

 

管制融合騎の声は静かだった。

 

「我が主も……あの子も……永遠の眠りの内にて、終わりなき夢を見る。

それは、安らぎ。生と死の狭間の、安寧なる夢。……それが“永遠”だ」

 

だが、なのはは涙をこぼしながらも、真っすぐ前を見据えた。

 

「……そんなの……違うよ」

 

「……」

 

「“永遠”なんて……そんなもの、ないよ……!

だって、夢は――いつか、目を覚ますものだから!!」

 

叫びと共に、再び光がなのはの周囲に集まり始める。

 

フェイトのために。

はやてのために。

 

“絶対に、手を離さないために”

 

少女の意志が、再び立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトが目を覚ますと――やわらかな光が、まぶたを照らしていた。

 

「……ん……」

 

フェイトはゆっくりと目を開ける。

頬に感じるのは陽のぬくもり。

草の匂いと、風に揺れる木々の音が優しく耳に届いてくる。

 

見慣れないはずの場所なのに、不思議と安心感があった。

 

彼女は芝生に寝そべっていた。

見上げれば、雲一つない青空が広がり――その隣には、笑顔の少年がしゃがみこんでこちらを覗き込んでいた。

 

「おはよう、フェイト」

 

「……ユウト……?」

 

夢を見ているようだった。

でも、彼の声は、いつも通りの少し照れた響きを持っていた。

 

「よかった、やっと目を覚ましたか」

 

「……ここは……どこ……?」

 

戸惑いを隠せずに周囲を見渡すと、すぐ近くにはアリシアが笑顔でブランコに乗っていた。

リニスがその背中を押していて、アルフは芝生の上で大きく伸びをしている。

 

さらに少し離れた場所では――プレシアが、木陰のベンチで本を読んでいた。

その表情は、かつて見たことがないほどやさしく、穏やかだった。

 

(……私…何してたんだっけ)

 

違和感がする

 

“本当にほしかったもの”が、全部そこにあった。

 

もう会えないと思ってた母の姿。

届かないと知っていた笑顔が。

夢にまで見た、家族のぬくもりが。

 

「フェイトー!!」

 

アリシアがブランコを降りて、笑顔で駆け寄ってくる。

リニスとアルフも手を振りながら近づいてくる。

 

「今日はお花見だよ! 桜、いっぱい咲いてるんだー!」

 

「みんなでお弁当食べようって話してたんですよ、フェイト」

 

「んもー、寝坊しすぎ。アタシより寝てたんじゃない?」

 

全員が、全てが、フェイトに優しかった。

 

(……なのに、なんでこの違和感が…私、何か忘れて…)

 

頭の片隅で、そんな声が響く。

でも、心は、今にも泣き出しそうだった。

 

「……ここは……夢……?」

 

ふとつぶやくと、隣にいたユウトが、優しく笑って言った。

 

「フェイト、まだ寝ぼけてるのか?」

 

フェイトは言葉を返せなかった。

でも、胸の奥が、ほんのわずかに、痛んだ。

 

なのはの顔が、一瞬だけ、脳裏をよぎった。

彼女の叫び。彼女の涙。

 

「……なのは……?」

 

小さな声が、風に流された。

 

「フェイト、なのはって誰だ…?」

 

「…あれ、私なにか言ったっけ?」

その呟きだけが、この世界に“違和感”を残した。

 

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