無数の赤い魔力の槍がなのはに向かって降り注ぐ
「っ――くううっ!!」
レイジングハートを構え、バリアを展開するも、完全には防ぎきれない。
何本かの魔力槍が、外装をかすめ、腕と足に衝撃を刻む。
それでも、なのはの視線は、真正面にいる“あの姿”を捉え続けていた。
かつてのはやての面影を残したまま、黒き装甲に包まれ、無表情でなのはを見下ろす――闇の書の意思。
その手には、かつてなのはやフェイトが使った魔法が展開されている。
蒐集したリンカーコアが、今はなのはを仇なすための力となっている。
地を割るような斬撃が襲いかかり、避けきれずに吹き飛ばされ、そして背中から地面に叩きつけられ、煙と土埃に包まれた。
咳き込みながら、なのはは力なく煙の中に身を隠す。
「っ……はぁ……はぁ……」
痛む身体を無理やり起こし、腰のマガジンに手を伸ばす。
カートリッジのスロット数を確認する。
「……残りマガジン、2つ……カートリッジは、12発……」
焦りが心に滲む。
(何か強い一撃を……直撃させなきゃ…………!)
握る手が震える。だが、諦める気持ちは微塵もない。
(フェイトちゃんを取り戻す……そしてはやてちゃんを……絶対、助ける……!)
スロットをリロードし、再び砲撃モードへ変形させたレイジングハートが低く唸る。
『All systems ready. Standing by.』
「ありがとう、レイジングハート……」
足元から魔力を噴出し、空中へ舞い上がった。
そして再び――激突。
咆哮のような魔力の嵐がぶつかり合い、激しい光と衝撃が空間を切り裂く。
バリアと攻撃、回避と反撃の応酬。
だが、明らかに――なのはは押されていた。
消耗し、負傷し、それでも歯を食いしばって放つ魔力砲撃は、ことごとく防御陣に弾かれていた。
そして。
「――もう、いい。お前も、眠れ」
管制融合機の声が、無感情に響いた。
広がる無数の封印陣。眠りへと誘う優しい声が、空間を包む。
けれど。
「……いつかは、眠るよ」
その言葉に、闇の中でひときわ澄んだ声が響く。
「でも、それは……今じゃない!!」
なのはの瞳は、決して折れていなかった。
どんな絶望の中でも、守るために立ち上がる者の強さを宿していた。
「まだ……あたしには、やらなきゃいけないことがあるんだ!」
再び、レイジングハートが赤く輝いた。
『Load Cartridge――Ready』
「この一撃で――絶対に、取り戻すッ!!
エクセリオンモード、ドライブ!」
レイジングハートが赤く輝き、魔力の波が爆ぜた。
『Ignition.』
魔力が収束し、杖の全身がまばゆい光に包まれる。
刃が伸び、羽が開く――まるで一振りの神槍のような姿。
「悲しみも……悪い夢も……全部、終わらせてみせるッ!!」
なのはの両目がまっすぐ敵を捉えた。
対する管制ユニットは、冷たく言い放つ。
「……ひとつ覚えの砲撃。通ると思ってか――!!」
【Photon Lancer: Genocide Shift】
掌から生成された無数の魔力槍が空に展開され、刹那にして陣形を組む。
それは空にいる全ての存在を無差別に撃ち落とす完全包囲陣形――だが。
「……通すよ!!」
なのはの声が炸裂する。
『A.C.S. stand by.』
レイジングハートが呼応し、魔力の構造変換を開始。
なのはは強く握りしめる。
「レイジングハートが……力をくれてる……!
“泣いてる子を、救って”って!」
その願いを、光に変えて――
『Strike Frame』
「エクセリオンバスター・A.C.S――ドライブッ!!!」
カートリッジを3発。
圧縮された魔力を翼に転送、光を推進力にして空を突き進む。
まばゆい魔力の翼と、突き出された光の刃。
それはまさに――なのはのすべてを込めた、最後の
光の槍が降り注ぐ中、なのははそのすべてを振り払うように突き進む
「とどいてぇぇぇえええッッ!!」
突撃が、管制ユニットの前に展開された防壁にぶつかる。
重ね張りされた四重結界が軋む。歪む。だが――
「お願い、通して……! フェイトちゃんが……はやてちゃんが……そこにいるんだからぁぁぁぁッ!!」
刹那、レイジングハートの魔力が爆発的に上昇。
その声と共に、光の刃が防壁に穴を穿つ。
「――いっけぇぇぇぇぇっっ!!」
『Excellion Buster――A.C.S., FIRE!』
砲撃が、防壁の開口部から突き刺さるように放たれた。
白と紅が混ざり合った魔力の奔流が、ナハトヴァールの中心に直撃する。
「ぅあ……っ!? な……っ――」
防壁が崩れ、黒い装甲に砲撃が直撃。
魔力の爆風があたりを包み込み、空間がひび割れていく――
「届いて……お願い……みんなのところに!!」
光の中で叫ぶなのはの声が、はやての心に届くように――
そして、フェイトの元まで届くように力強く響く
空を裂き、大地を砕く光が放たれた瞬間――
その衝撃は、現実だけでなく、もうひとつの“世界”にも届いていた。
揺れる風、やさしい太陽、笑い声。
目の前では、ユウトが、アリシアが、アルフが、リニスが――プレシアが、穏やかに談笑している。
立ち上がるフェイトの表情は、前回とは違っていた。
もう、怯えてはいない。戸惑ってもいない。
ほんの少し前までの自分なら、ここに永遠を望んでいた。
でも今は――
(……今のわたしにとって、ここはただの“甘い檻”)
フェイトがその場を後にしようとすると……
そのとき、ユウトが優しく微笑みながら歩み寄ってくる。
「どこ行くんだ?フェイト……ここにいれば、誰も傷つかない。だれも、悲しまなくて良いんだぞ?」
「……違うよ。私の大切な人は…なのはは、今泣いてる。わたしがいない場所で……わたしのために、戦ってくれてる」
「なのはなら、大丈夫。あいつなら一人でも誰かを救う力を持ってる。お前はもう充分頑張った。もう戦わなくていい。苦しまなくていい。
ここにいれば、全部忘れられるよ。フェイトの望んだ、幸せな世界なんだから」
その言葉に、フェイトは小さく首を振る。
「……それは“本物”のユウトなら、絶対に言わない言葉だよ」
「……!」
「本物のユウトなら……わたしが逃げてたら、怒ると思う。
戦わないって言ったら、きっと呆れて、それでも背中を押してくれる。
……だからこれは、わたしの“願い”で作られた、私にとっての都合のいいユウト」
夢のユウトの表情が、そこで初めて固まった。
何も言えなくなった“存在”に、フェイトは静かに歩み寄る。
「これは夢。現実じゃない。
プレシアも、アリシアも……アルフも、リニスも……みんな、生きてる。
ちゃんと、未来に向かって歩いてる。」
涙が一筋、頬を伝う。
けれど、それは後ろ髪を引かれる未練ではなく、“決意”の証だった。
「だから、わたしは行くよ。――この妄想を、いつか現実のものにするためにしてみせる。」
胸元で、雷光が煌めいた。
『――Access Code Accepted』
金色の魔法陣が、フェイトの足元に広がり――そこから浮かび上がるのは、バルディッシュ。
『Zanber Form――Ready』
バルディッシュが刃を伸ばし、巨大な雷の大剣となる。
その光が、夢の空を切り裂くように輝いた。
「いい子だ……いこう、バルディッシュ」
『Yes, sir.』
フェイトは大剣を大きく振りかぶる。
「この夢に……さよならを告げよう!」
振り下ろされたザンバーの一撃が、世界の地平を真っ二つに裂いた。
崩れ落ちる草原、消えていく夢のユウト、アリシア、そして微笑むプレシア。
「――なら、やりきれよフェイト。」
最後に聞こえた、ユウトの声は――本物のように、やさしかった。
「……行ってきます。私が今、いるべき場所へ!……疾風迅雷!!」
『jett zanber』
次の瞬間、フェイトの身体は光の中から現実へと解き放たれる。
その姿は、かつてないほど強く、そして美しかった。
(待ってて、なのは――今、戻るから!)
空想の世界は切り裂かれ…眠りから覚める。
それは、なにも運命の少女の場所だけではない…その一撃は夜天のもとにも響き渡る
暗い闇のなか、はやては、深いまどろみの中を彷徨っていた。
そして、金色の光が闇を照らすのと同時に、少しずつ意識を取り戻していく…
(私は…ここで何してるんやろ…)
始めてルビ振りいれてみた……いろいろ機能があって使いこなせる気がしないですね