オリジナル要素多めの回です!!
感動の再会。
主と騎士、そして友が涙を分かち、確かに結び直した絆の輪――
だが、その余韻を静かに裂く声が響いた。
「――遅れてきてすまないが、そろそろ現状の話をさせてもらおう。」
はやてを中心に騎士たちが振り返ると、そこに立っていたのは黒の制服を纏う少年――時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだった。
その手には、一振りの銀のデバイス――《デュランダル》。
「……クロノくん……?」
なのはが思わず息を呑む。
彼の表情は冷静だったが、眉間には深い緊張が刻まれていた。
「これは、とある知り合いから託された…切り札だ。おそらく、ナハトヴァールへの有効打になり得る」
そう言って、彼ははやてを見据えた。
「……聞きたい。今のナハトヴァールは――どういう状態なんだ?」
はやては静かに目を伏せ、小さく息を吐いた。
「……あれは、闇の書に組み込まれた防衛機能の中でも一番危険なやつや。
本来は、主の意思が消えかけた時、完全自動で起動して周囲を“敵”と認識、破壊するまで暴走する。……あと数分もすれば、世界が巻き込まれる」
「……!」
なのはたちがざわつく。
喜びの雰囲気が、一気に張り詰めた緊迫へと変わる。
だが。
「……でも、何かおかしいんや」
はやてが言った。
その視線の先、空の一点に“ナハトヴァール”の残滓と思われる魔力の塊が浮かんでいた。
先ほどまで空間を引き裂くように暴れていたそれは――
今は、まるで眠るように静かだった。
光が脈打つでもなく、魔力が膨張する様子もない。
むしろ、縮小していくような、呼吸を浅くしていくような……
「……これは……暴走してない……?」
フェイトがぽつりとつぶやく。
「いや、それどころか……沈静化していってる……?」
クロノが眉をひそめ、デュランダルを持つ手を少しだけ下げた。
「はやてちゃん……?」
なのはの視線が、はやてに向けられる。
はやてはしばし沈黙し、やがて小さく首を振った。
「わからへん……普通なら、ここで世界の終わりの合図みたいに暴れだすはずやのに……。まるで、何かに“制御されてる”みたいな……」
その瞬間、リインフォースの声が、はやての中で微かに響いた。
『……何かが、“ナハトヴァール”のプログラムに影響を与えています……これは、主はやての意志でも、私でもない……何かが…』
リインフォースの言葉に、全員の背筋が凍った。
そして次の瞬間――
【…闇の書の完成を確認…人格プログラム復旧中…個体名、アダム・アンジェロのデータを修復します…】
電子的で無機質な声が、残されたナハトヴァールから突如として響き渡った。
その名を聞いた瞬間――
「まて……アダム・アンジェロだと!?」
クロノの目が見開かれる。
その声に、すぐさま反応したフェイトが戸惑いながら尋ねる。
「それって……!」
「……ああ、間違いない。アダム・アンジェロ……11年前の、前回の“闇の書事件”の主にして……ユウトの両親を殺した張本人だ!!」
ざわめく一同。
だが――
【……なるほど。既に、あれから十一年が経過したのか】
その声が落ち着いた口調に変わった次の瞬間、黒い粒子が収束し、そこに一人の男の姿が立ち現れた。
黒髪に銀の装束。背筋を伸ばした長身の男。
瞳の奥に狂気と知性を宿すその存在は、まぎれもなく――資料で見たアダム・アンジェロ本人だった。
「……!」
はやてが身を強張らせ、騎士たちが即座に警戒態勢に移る。
「アダム……!」
クロノが一歩前に出ようとしたその時――
なのはとフェイトがデバイスを構える。
「撃つよ、フェイトちゃん!」
「うん、いくよッ――!」
2人の魔力が収束し、閃光となってアダムを撃ち抜こうとした瞬間――
【無駄だ】
声とともに、アダムの背後に無数の魔法陣が展開される。
【――Divine Buster】【Thunder Rage】
先ほどの2人の魔法と全く同じ魔法が、まるで鏡のように展開された。
「なっ――!?」
砲撃がぶつかり合い、衝撃が空を裂く。
煙の中から姿を見せたアダムは、まるで何事もなかったかのように微笑む。
【いやはや、十一年前……闇の書が完成する直前、バックアップを仕込んでおいて良かったよ。まさか完成直後に主の命を蝕むとは……想定外だったが、結果的にはこのように復活できた】
その皮肉まじりの言葉に、リインフォースが鋭く問いかける。
『アダム……あなたの目的は何ですか』
【懐かしい声だな、管制ユニット、…いや、今はリインフォース…か。目的? あの時と変わっていないよ】
【全ての次元世界を、闇の書の力で掌握し、全ての生命を、私の研究材料とする――】
空がうねり、魔力が暴走し始める。
そして――
上空から、黒い影が降り立った。
「……そのために、研究の邪魔だった母さんと父さんを殺したのか」
その声に、全員が振り返る。
ユウト。
目に強い怒りを宿し、デバイスをゆっくり構える。
その姿を見て、アダムは面白そうに目を細めた。
【ああ、見覚えがあるぞ……その顔! なるほど、あの夫婦の息子か】
【いやー、彼らも良き素材だったよ。豊富な魔力量……闇の書の頁を埋めるのに最適だった】
ユウトの拳が震える。
だが、アダムは続けた――
【それにしても……命令は“目撃者は赤子でも殺せ”だったんだがなぁ……】
【シグナム。君たち、まさか“赤子”を見逃したのかい? やれやれ……命令も聞けない欠陥品だったわけだ】
その言葉に――
守護騎士たちの目が、怒りに染まっていった。
アダム・アンジェロの挑発に、最初に応じたのは――ヴィータだった。
「欠陥品で……悪かったなああああああああっ!!」
アイゼンにカートリッジをロードし、全力で突撃。
「行くぞっ、ザフィーラ!ヴィータを援護する!」
「了解!」
シグナムとザフィーラが同時に飛び出す。
「逃がしません、あなたは……っ!」
シャマルが後方支援と結界展開を開始する。
守護騎士4人が、まさに完全連携の陣形でアダムに迫る。
だが――
【無駄だと言ったはずだぞ?】
アダムが指を鳴らすと、全員の足元に展開される広域バインド。
「!?」
「動きがっ――!」
「ヴィータっ、下がれ!」
「くそっ……!」
そのまま地面を蹴る間もなく、アダムの手から放たれた黒雷が、シグナムの剣を弾き、ザフィーラの体を砕き、シャマルの防壁を消し飛ばす。
最後にヴィータのアイゼンが粉砕され、騎士たちは地面に叩きつけられた。
「……!」
誰もが目を見開いたその瞬間――
怒りに燃える、ユウトが飛び出す。
「アダム!!」
輝く魔力とともに、ユウトが両手のディジターにブレードを展開、全速で突撃する。
「よくも……よくもっ!!」
怒りが爆発し、近距離からの攻撃が解き放たれる。
だが――
【良い表情だ。だがそんな体で何が出来るんだい?】
アダムはその一撃を、まるでを風が撫でるかのように避け、返す拳でユウトの腹部を撃ち抜いた。
「ぐっ……あ……が……っ!!」
ユウトの身体が宙を舞い、地面に激しく叩きつけられる。
【――とはいえ、さすがに一対複数は面倒だね】
アダムは淡々と呟くと、はやての前にゆっくりと歩み寄った。
「やめて……!」
はやてが手を伸ばすが間に合わず、アダムはその手から《闇の書》を奪い取り、倒れたユウトの体に触れる
なのはとフェイトが叫ぶ間もなく――
【 Absorption.】
闇の書が開かれ、意識のないユウトの体が光に包まれ、黒き頁の中に吸い込まれていった。
「――ユウト!!」
「だめっ!!」
なのはの声も、フェイトの叫びも――届かない。
吸収が完了し、静かに閉じた闇の書を見下ろしながら、アダムは不敵に笑う。
【知っているだろう、リインフォース。深い闇を抱えた者ほど、夢の世界からは帰れない……】
【それが、“
リインフォースは震える声で反論する。
『それでも……彼には……まだ――!』
【ふっ……無意味な希望だ】
そして、震えるフェイトを見下ろしながら言った。
【そこの金髪の君。君も、一度捕らわれていたではないか。君ならわかるだろう。両親の敵を前に敗れた少年は、幸福な夢の中に酔いしれ、現実を忘れる……。君ももう一度あそこへ戻れと言われたら、耐えられるのか?】
フェイトは唇を噛みしめ、拳を震わせ、涙を流す
「じゃあ……ユウトは……もう、帰ってこられない……?」
だが――そのとき、前に出たのは、なのはだった。
「――いいや、帰ってくるよ。絶対に!」
「なのは……?」
「ユウトくんは、そんなに弱くない! 何度だって立ち上がってきた…泣いている女の子をほっといて夢なんて見てられない!…だから、戻ってくるまで、私たちはあなたを止めます!」
彼女の瞳は、どこまでも強く、美しく。
レイジングハートが紅く光る。
『Ready to fight. Set up.』
なのはが、決戦の構えを取った。
それに、応じて、フェイト、はやてたちも構えをとる。
【やれやれ、戦意は喪失せずか…効果的だと思ったんだが…まあいい。次の演出は…こんなのは如何かな?】
闇の書の中央に立つアダム・アンジェロは、まるで退屈そうに肩を竦めながら空を見上げた。
その前方では、なのは、フェイト、はやて――その場で動ける三人の最強格の魔導師たちが立ちはだかり、揺るがぬ意志でこちらを睨んでいる。
【厄介そうなあの三人の戦力を封じるにはこういうのが一番かな】
彼が手をかざすと、空間が歪み、三つの大規模魔法陣が重なり合うように展開されていく。
赤・青・黒の輝きが波打ち、各々の中心に、見覚えのある少女たちの“姿”が浮かび上がる。
なのは、フェイト、はやて――彼女たちに酷似したコピー。
それは闇の書が蓄積した、リンカーコアと戦闘データから精密に再現された「影」
【ただのコピーじゃつまらないな…適当に魂でも詰めるか。】
アダムは闇の書に蒐集された生物の自我を適当に選び出し影に埋め込む。
闇の書が不気味な音を立てて頁を捲り始める。
その深層から引き出されたのは、闇の書に封じれていた3つの魂――
【君たちの名を告げる――】
ーー
ーーー
ーーーー
三方向に分かれた魔力の奔流が、器に注ぎ込まれていく。
最初に目を開いたのは、深紅の瞳をした少女だった。
整った顔立ちに、感情を抑えた冷たいまなざし。
「……ここは。」
その白い肌に、なのはを思わせる装い。だが、瞳の奥には別の色が宿っていた。
次に目を開いたのは、水色の髪に髪飾り、フェイトに酷似した活発そうな少女。
「わっ、ここどこ!? って、うわ!身体動くし!力もいっぱいだ!」
子供のようにぱあっと明るく笑うその少女は、ぐるりと一周くるくる回って飛び跳ねた。
最後に、白銀の長髪が美しく揺れながら、優雅に目を覚ました少女がいた。
冷静かつ堂々たる態度で立ち上がり、右手を前に翳してアダムに問う。
「ふむ……久方ぶりの目覚めか。貴様が我を呼び出したか。我が名は――ロード・ディアーチェ。闇を統べる王として、この器、気に入ったぞ」
【君たちには、君たちのオリジナルーーー高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやて――その三名の戦力を、封じ込めてもらう】
アダムが命じると、三人は無言で頷き、それぞれの方向へ飛翔していく。
「……いくら封印を解いたとはいえ、我に命令するつもりか?」
「わーっはっは!ボクはいいよ!!! 行くぞーっ!待ってろよー、オリジナルーっ!」
「……レヴィ、その男が何者なのかも把握していないのに、そう簡単に従っていいわけがありません」
「ええー、だって暴れたいしぃ……!」
三者三様の反応が返る中、アダムは小さくため息をついた。
【……人格を入れたのは少し失敗だったかな。まあいい、こちらにも手段はある】
指を弾く音と同時に、三人の額に魔法陣が浮かび、強制的な制御信号が流れ込む。
「ッ……!? これは……!」
「うえー、ちょっとぉ……なんか変な感じする……」
「思考に干渉……なるほど、そう来るか外道が…」
一瞬の硬直ののち――
三人の体が、まるで操り人形のように静かにアダムの意志へと従う。
「任務を開始します」
「オリジナル! 逃げんなよーっ!!」
「王たる我が、決着をつけてやろう」
そして、模倣された“影”たちは、それぞれの宿敵のもとへと飛翔する。
三本の閃光が、三人の本物へと迫り――
運命を裂く新たな戦いが、今、幕を開けた。
リーゼ姉妹とグレアムさんの話大幅カットですまない……クロノ以外とほとんど絡まない+無限書庫での捜査はユーノ君が早い段階で始めてた+本作は映画版A’s見直してから書き始めたの三点コンボでカットされちゃった……
地味に以前名前だけ出てたアダムはユウトくんがいる分敵も強くしないとなってことで登場してもらいました。