○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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鏡・幻想・決戦

「フェイト! 前方、高速で何かが――!」

 

アルフの声を聞き終える前に、稲妻のような影が目の前へ飛び込んできた。

 

「いっけぇぇぇぇぇーーーっ!!」

 

突風とともに振り下ろされた水色の魔力刃。

即座にバルディッシュで受け止めたフェイトだったが、想像以上の重量と速度にバリアごと地面へと叩きつけられた。

 

「くっ……!」

 

「うわー!やっぱオリジナルは強いな!今の防ぐとかさー、反応速すぎ! いいねいいね! もっとやろーっ!」

 

声の主は、自分に酷似したデバイスと装備を纏い、飛び跳ねるように後方へ着地した少女――レヴィ・ザ・スラッシャー。

 

フェイトのバリアジャケットを思わせるシルエットだが、その表情はまるで悪戯っ子のような無邪気さと、戦いに対する純粋な楽しさに満ちていた。

 

「……あなたは、何者……?」

 

「僕は“キミのコピー”だって! だから……オリジナルと戦うの、すっごく楽しみだったんだーっ!」

 

そう叫んだ直後、地面を蹴って飛ぶレヴィ。その速度は、フェイトの全力と同等か、それ以上。魔力を噴射する脚部装甲から、青白い閃光が迸る。

 

(速い……けど、読めないほどじゃ!)

フェイトは空中に飛び上がりながら回避、すれ違いざまにフォトンランサーを生成し、連射。しかしレヴィはそれをまるで読み切っていたかのようにジグザグに回避し、反転して魔力刃でフェイトに迫る。

 

「そんな弱気の攻撃じゃなくて、もっと本気で来てよっ!!」

 

「こっちは本気でやってます……!」

 

少し怒りながら、バルディッシュをハーケンモードに変形させ、リーチを伸ばして牽制。

レヴィは蛇のようにそれを回避して距離を詰め、バルニフィカスを構えで突撃してきた。

 

「いいよ! オリジナル、すっごく楽しくなってきたねぇっ!」

 

「あなたは、なんでそんなに笑って戦えるの……?」

 

「だって楽しいもん! 暴れるのは好きだし、相手が強ければ強いほど、こうして気持ちよくなれるんだよ!」

 

レヴィの瞳には、悪意も憎しみもなかった。

そこにあるのは、ただ戦いという行為そのものへの快楽。

野性的な感情のままに突っ込む彼女の姿に、フェイトは一瞬、かつての自分――母に認められたいがためだけに、傷つき続けた日々を思い出した。

 

「でも……それは、虚しいよ」

 

「え?」

 

「戦う理由がそんなんじゃいつか、いつか自分の心が壊れるよ……!」

 

 

 

 

 

 

「……来るで」

『はい、主はやて、ご注意を』

 

はやてが杖を構え、鋭い視線を少女へと向けた。

 

白銀の髪を風に揺らし、堂々と宙に立つその存在――ディアーチェ。

高貴で気品すら感じさせる佇まい。自称ではあるが王という肩書きに、偽りのない威厳が宿っていた。

 

「貴様が、この身体の元となった“闇の書の所有者”か」

 

ディアーチェが静かに言葉を放つ。

 

「我は王にして、制圧と破壊の権能を携える者。“影”の身なれど、王としての誇りは失っていない」

 

「ほな……ウチも、“夜天の主”として――覚悟、見せんとな」

 

リインフォースの光が、はやての背に淡く揺れる。

 

『主はやて、あなたの初陣です。どうか無茶なさらず…』

 

「かかってきぃ――やッ!」

 

はやてが魔法陣を展開し、周囲の空間に光の結界を敷くと同時に、広範囲爆撃型の魔法を複数同時起動。

 

「いくで!クラウ・ソラス!」

 

魔力の槍が降り注ぐ中、ディアーチェはマントを翻し、重厚な魔法盾で受け止める。

 

「狙いが甘いな」

 

ディアーチェが詠唱もなく、返しの一撃に直線型の魔力砲を放つ。

巨大な光が一閃、はやての位置を貫く――。

 

「……甘く見てもろたら困るなぁ!」

 

真横からはやてが現れ、連続魔力弾を撃ち込む。

その一撃一撃が高密度かつ綿密な制御によって変化しており、リインフォースの魔法支援が背後から流れていることが伺えた。

 

「成程。双魂の力か。ならば、こちらも全力で応じねば失礼だな」

 

ディアーチェはバリアで一度全攻撃を押し返すと、魔法陣を重ねるように展開し始めた。

 

「王の誇りにかけて気高き闇をもって応えよう。―ドゥームブリンガー!」

 

複数の球状魔力核が空中に浮かび上がり、はやてを中心に包囲、軌道を変えながら一斉に襲いかかる。

 

『主…上昇して回避を!』

 

はやてが指示に応じて跳躍、爆撃の中心から抜け出すが、その背後にディアーチェが瞬間移動のように出現する。

 

「――甘い」

 

「っ――!」

 

ディアーチェの刃がはやてに迫る。

 

しかし――

 

『防壁展開!』

 

リインフォースの声と共に、青白いバリアがはやてを包む。

 

ディアーチェの魔力で作った刃はそれをわずかに貫いたが、直撃には至らず。

 

「なるほど……融合騎に助けられたな」

 

「そや、ウチは一人やない。せやから、こんな時でも――」

 

はやてが両手を掲げ、空中に幾何学的な魔法陣を大量展開。

 

「負けたりせえへん!!」

 

球状の魔力砲が、リズムのように順番に連続炸裂しながら、ディアーチェを囲むように襲いかかる。

 

「面白い――王たる我に、ここまで通じるとは!」

 

ディアーチェが笑い、同時に自身の身体に漆黒の魔力をまとい、全方向展開型の攻撃魔法を展開。

 

激突する力と力。

天と地の間に、白と黒の閃光が連続で爆発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あなたが、私の“影”……?」

 

なのはがゆっくりと空に浮かび上がり、目の前の少女と対峙する。

そこに立つのは――整った顔立ちと紅い瞳を持ち、彼女に酷似したバリアジャケットを纏う少女。

 

「私は、シュテル。私に課せられた使命は一つ。あなたを止めることです。」

 

なのはの声に対し、シュテルは淡々と告げる。

その声音には熱も怒りもない。ただ静かに、論理とプログラムに従うように――だが、その瞳には確かな意志が宿っていた。

 

「なら、全力で来てね。私、こんなとこで足止めされるわけにはいかないから!レイジングハート!!」

 

『All reday.』

 

レイジングハートが淡く光を放つ。

 

同時に、シュテルが片手を翳し、魔導デバイスを展開する。

 

「ルシフェリオン――起動」

 

一瞬の沈黙。

次の瞬間、双方の足元で爆風が巻き上がった。

 

「ディバイン――シューター!!」

 

「パイロシューター。」

 

二人の放った魔力弾が空中でぶつかり合い、相殺。

 

だが、そこで止まらない。

 

なのはは次の魔法を重ねる。

 

「カートリッジロード…アクセル――シューターッ!」

 

数十の光弾が異なる軌道を描きながら飛翔、空間そのものを射抜くような弾幕。

だが――

 

「分散弾道、予測完了です。」

 

シュテルが魔力の翼を羽ばたかせ、一瞬でその間隙を縫いながら接近。

 

「接近戦……!」

 

なのはが咄嗟にレイジングハートをバトンのように回転させ、迎え撃つ。

 

ガキィィンッ!!

 

デバイス同士が火花を散らしながらぶつかり合う。

 

「この反応速度……本当に私のコピーなの?私より…強い気がするけど!」

 

「どうでしょうか……私は、あなたに迷いがあるように感じますが」

 

「そりゃあ、迷うよ。だって人間だもん…。いきなり友達が封印されたりそっくりさんと戦うことになったら悩んだり迷ったりするよ。それでも……迷って悩んで、ここまで強くなったんだから!!」

 

なのはが一気に距離を取り、空中高く跳躍する。

 

「レイジングハート、最大出力――!」

 

『Divine Buster・Full Drive』

 

巨大な光の砲口が生まれ、雷鳴のような魔力の唸りが空に響く。

 

「――シュートッ!!」

 

地を抉るほどの極太砲撃が、シュテルを飲み込むように直進。

 

だが――

 

「……こちらも、全力で応じましょう。ディザスター、ヒート!!」

 

 

シュテルが展開した赤い砲撃が、まっすぐなのはの砲撃と激突。

ピンクと赤、二つの魔力が空中でぶつかり、巨大な球体爆発となって炸裂する。

 

爆風の中を、再び両者が交錯する。

 

なのはは一瞬の隙を突いて、砲撃を命中させるため、バインド魔法レストリクトロックを展開。

だが――

 

「おや、考えることは同じでしたか。」

シュテルもまた、砲撃魔法を放つ準備としてバインド魔法ルベライトを展開。

 

二人は、完全に、互いのバインド魔法にがっちりと捕縛されていた。

 

動けない。

 

魔力を放つことも、デバイスを操作することもままならず、

両者は浮遊状態のまま、ぴたりと停止し――

 

ただ、真っ正面から、目を見つめ合う形になった。

 

「……」

 

「……」

 

およそ30秒。

 

世界は、沈黙に包まれていた。

 

激しい砲撃と怒涛の近接戦闘を繰り広げていた空間に、奇妙な静寂が満ちる。

 

顔を動かすことさえできない状況の中で、

なのはとなのはの影――シュテルは、ただ互いを睨むしかできなかった。

 

シュテルは微動だにせず、まばたき一つせずなのはを見つめていた。

そのあまりの無表情ぶりに、なのははじわじわとツッコミたい衝動を抑えることができなかった。

 

(え、ちょっと待って……気まずくないかな?)

 

(こっちも真剣勝負だし、気迫とか見せたいけど……顔カチカチだし、シュテルの無表情何考えてるかわからなくてなんか怖いし……)

 

どこかに逃げ出したい、けど逃げられない、地獄のような30秒。

 

――そして、人生で最も長く感じた30秒間、必死さをみせ拘束を解いたなのはだった。

 

「っ、解けたッ!」

 

同時にシュテルも淡々と魔力を溢れさせ、拘束を解除。

 

静かに、冷静に、言った。

 

「……では、再開しましょう」

 

「この空気でっ!?!?!?!?」

 




マテリアルたちの性格は本来のものではなくアダムの洗脳で少し歪んでいるという小ネタがあったりなかったり……。
ちなみになのは達三人対マテリアル三人の戦いの裏では、アダム対守護騎士とクロノたちが決戦繰り広げています。
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