○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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最後の希望

――黒と白の流星が、交錯する。

 

地響きと共に吹き荒れる魔力嵐。

崩壊しかけた空の下、闇の書が作り出した黒塔を背にして――

その頂で、ふたりは対峙する。

 

アダム・アンジェロはゆっくりと手を広げ、ユウトを見据えた。

 

【君が“最後の希望”か、それとも“絶望への足がかり”か……さて、どちらになるのだろうね?】

 

「……どっちでもいい。俺は、お前を止める。それだけだ!」

 

ユウトの声が空を切り裂くように放たれる。

その背に、白の魔力が奔流のように逆巻く。

 

ディジターが音を立てて展開される。

右腕から伸びた刃に続き、左腕にも白刃が出現――

 

「――カラミティ・クロッシング!」

 

ユウトが二段加速で飛び込む。

空間を蹴り、軌道を瞬時に変えながら、一気に距離を詰める。

 

『Boost Break』

 

交差する二刀の軌跡。

御神流と魔導戦技の融合――

その斬撃が、空を、法則を、裂いた。

 

刃が、アダムの防御魔法を斬り裂く。

 

【!】

 

肉体を守るナハトの装甲が裂け、アダムの肩にわずかな傷跡が残る。

 

【……ほう。ナハトの防御を突破するとは、面白い】

 

アダムが右掌を突き出す。

赤黒い液体――血のような魔力から、鋭い槍が生成される。

 

それが一閃、ユウトの肩を狙って飛ぶ。

 

だが――

 

「――エスカッシャン!」

 

ディジターの刃がたたまれ、ユウトの左腕から多重防御が展開される。

爆音とともにカートリッジが弾け、大型の八角形の魔力盾が槍を弾いた。

 

一瞬の爆風。煙が吹き上がり、視界が白く染まる。

 

(ここだ――!)

 

煙の向こうから飛び出すと同時に、アダムは空間跳躍で後退した。

 

【なるほど、防御と攻撃の切り替えが洗練されている。だが――】

 

彼が手を広げたその瞬間、空に魔法陣が展開される。

 

【これは……逃げ切れるかい?】

 

数百、数千の魔力弾。

あらゆる角度から襲いかかる全方位砲撃。

 

「フェイトのフォトンランサー、それも殲滅仕様か……!」

 

ユウトは即座に魔力盾を再構成する。

 

「――シールド転換、インカッシャン!」

 

『Casting: Inscussion』

 

大型防壁を圧縮し、小型反射盾へと変形させる。

その鏡のような面は魔力を弾き、次々と撃ち返していく。

 

空中に魔力光が四散する。

爆ぜる光と風の中を、ユウトは疾駆する。

 

「まだまだ……!」

 

目が細められる。意志の炎が灯る。

 

「――ディジター、アリシアの“切り札”、いくぞ!」

 

『System rock off』

 

「システムT.O.B――ドライブ!」

 

『Boost Limit Release――System Overload』

 

白い光が、ユウトを包んだ。

 

その髪も、バリアジャケットも、すべてが純白へと変化する。

ディジターの刃が蒼白い輝きを放ち、空気すら震えるほどの魔力が溢れ出す。

 

ユウトの身体は、魔力の奔流に包まれて輪郭すら曖昧になる。

それでも、崩れない。人としての“形”を、意志で留めていた。

 

アダムの表情に、初めて明確な動揺が浮かぶ。

 

【これは……以前、シグナムとの戦闘で見せた白い姿……いや、それ以上に……制御ができているのか!?】

 

「――スマッシュ!!」

 

ユウトの身体が空気を切り裂く。

銃棍が唸り、魔力を纏った拳がアダムの腹部を撃ち抜いた。

 

【……ッく!】

 

アダムの身体が大きく吹き飛び、

その手から零れた夜天の書が回転しながら地へと落ち、はやての元へと転がる。

 

ユウトは旋回しながら体勢を立て直し、左腕の砲撃モードに切り替える。

 

「――アンブレイカブル・ブラスター、ファイアッ!」

 

『Charging――Unbreakable Blaster!!』

 

高出力魔力が収束され、銃口から放たれる光の刃。

一直線にアダムを貫く。

 

――直撃。

 

爆発音。熱風。

だが、アダムの肉体は闇の再生機構で修復を始める。

 

【なぜ……ナハトを取り込んだ私が……ここまで追い詰められている!?】

 

なおも放たれるユウトの光。

怒りと覚悟のすべてが、その一撃に乗っていた。

 

アダムは即座に転移魔法で回避するも――

その肩口が焦げ、衣が焼け落ちる。

 

【なぜだ……なんなんだ、この力は……!】

 

白い息を吐きながら、ユウトは静かに言った。

 

「お前がナハトの力なら――

こっちは“夜天の書そのもの”の意志と繋がってる」

 

「力が互角なら……あとは俺自身の“想い”で勝つだけだ!」

 

白と黒――

世界の希望と絶望を背負った、ふたりの決戦が、いま続いている。

 

そして――

その結末は、すべての未来を左右する。

 

アダムの肩から立ち上る煙。

焦げた外套を払いながらも、その顔からはもはや余裕の色が消えていた。

 

【……なるほど。ようやく理解したよ、ユウト】

 

その声にはわずかな震え。

ユウトの力が、彼の“理解の範疇”を越え始めている。

 

【君の力は“本物”だ。だが……君は人の身だ。強大な魔力は、君自身を蝕むッ!】

 

背後からあふれ出す魔力が脈動し、黒い波紋を生み出す。

アダムはそのまま転移し、遥か上空へ。

 

【時間という運命は私に味方している……しかし、時間切れを狙うのはいささか不格好だな!!】

 

空に“穴”が穿たれる。

闇の書の力、その奥深くから引きずり出された真なる扉が開いた。

 

【真なる闇にて敵を滅することこそが我が王道!!】

 

胸元のナハト・コアが赤黒く明滅し、内側から脈打つ音が響く。

それはまるで“心臓”――いや、“悪意そのものの鼓動”。

 

「……ナハトヴァールの暴走……? まさか、もう抑えられなく……!」

 

【違うさ!自ら解き放ったのだッ!!この世界を思い通りにするために……!】

 

アダムの身体から魔力が炸裂した。

 

――その瞬間、空間が砕けた。

 

空が揺らぎ、大地がうねり、黒き奔流があたり一帯を包み込む。

 

「っ――なに、この魔力……!」

 

ユウトが即座にディジターを構えるも、展開が追いつかない。

 

【見よ……これが“真なる闇”の姿――】

 

アダムの肉体が裂け、そこから現れたのは――

異形の怪物。

 

人の形を保ちながらも、右腕は黒槍に、左腕は螺旋を描く魔力の蔦。

その瞳は爛々と光り、蛇のように裂けた瞳孔がユウトを射抜く。

 

【私という存在の、“真なる誕生”だ!】

 

アダムの背後に広がる巨大な魔法陣。

半径数キロに及ぶ空間再構成魔術――世界を巻き込む広域殲滅攻撃。

 

【目覚めろナハト…システムコール――!全周域、再構成魔術による空間消滅攻撃、発動準備】

 

魔法陣が唸りを上げ、光を帯びて回転しはじめる。

 

「この魔力……直撃したら街どころか、ここら一帯吹き飛ばすつもりか……!?」

 

【かつて闇の書を滅ぼした“アルカンシェル”その再現だ……この世界に、終焉を見せてやろう!】

 

直後、全ての空間が沈んだ。

 

地面が蠢き重力が反転するかのように、空が落ちてくるような圧力を感じる。

遠くで見守っていたなのはたちですら、圧に膝をついた。

 

【さあ……ユウト。君の“想い”とやらで、この世界を守れるのか……?】

 

魔力の嵐に押され、ユウトの身体が地へ叩きつけられそうになる。

だがその背に、白い魔力がもう一度、そっと触れた。

 

「……絶対に、誰も……傷つけさせないさ……!」

 

『マスター! この距離からでは、砲撃阻止は困難です!』

 

「父さんが言ってたろ!魔法はイメージの世界ッ!今の俺は……なんだってやれるはずだ!」

 

次の瞬間、ユウトの白いバリアジャケットがさらに輝きを増し、両手のディジターが同時に閃光を放つ。

 

必要なのは、遥か上空にいるアダムに届かせる最速のスピード……

 

イメージするのは、誰かのために戦い、傷つきながらも抗う運命の少女

(フェイト……力を貸してくれ!)

 

黄金の稲妻が走る。

白の魔力と重なり、雷撃の波動がユウトの全身を包み込む。

 

『魔力変換:電気適正獲得――これならっ!』

 

「ディジター――オーバーブースト……スマイトモード!」

 

『Lighting Parameter、Active Mode:Smite ON!』

 

白と金が混ざり合い、ユウトの姿が光の中心へと変わっていく。

 

【なに……この力……!】

 

アダムが一歩、退いた。

 

ユウトが足元に魔法陣を展開し――

 

「――ソニック!」

 

『Sonic Move ACTIVATE.』

 

空間が裂けた。

 

音を超えた疾走。雷光の軌跡が空を走り、上空にいたアダムの背後へと出現する。

 

「どこを見てる!」

 

【――ッ!?】

 

ディジターに走る雷光。

雷の魔力が、一点に集中。

 

「――インパクト!!」

 

『Lightning Impact!!』

 

雷鳴が天地を貫いた。

 

その一撃が、アダムの背中に突き刺さり――

稲妻が全身に奔り、魔力の流れを打ち砕く。

 

【がはっ……!?】

 

 

アダムの動きが鈍り、そして電撃による痺れがアダムの体を蝕む。展開されていた魔法陣の輝きが弱まり、展開されていた魔力が空気中に拡散していく。

 

ユウトは即座に距離を取り、空中で旋回する。

 

【それは……闇の書の蒐集した力を再現する能力であのクローンの真似事をしたのかッ!!】

「……術式は止めた。大規模魔法は撃たせない!」

 

アダムが膝をつき、肩を震わせる。

その顔には、初めて“恐怖”という感情が浮かんでいた。

 

地面に崩れ落ちそうになったアダムが、肩を震わせて立ち上がる。

 

【まさか……この私が……こんなに子供にぃっ……!】

 

その顔は、怒りとも、動揺ともつかない――恐怖と呼ばれる感情を浮かべていた。

 

「次で終わりにする……!」

 

ユウトの瞳に走る雷光と白の輝き、動きが止まったアダムに狙いを定める。

 

『sword mode Ready.』

 

ユウトは、両腕のディジターを静かに振り上げて変形させ、双剣状態に変えーー

 

金属が重なり合うような音と共に、ディジターの刃が伸び、鋭く研ぎ澄まされていく。

右、左、それぞれの手に収まる白銀の光刃。

魔力の奔流が、ユウトの周囲を旋回し始める。

 

『Unite ON.』

 

電子音が鳴る。

 

二本の刃が、中心で磁力のように引き合い、重なる。

刹那――衝突音とともに、双剣は巨大な一振りの大剣へと変貌する。

 

剣の縁をなぞるように、白い雷が走った。

 

「――切り裂け、雷鳴!」

 

『Lightning Thrasher』

 

大剣が振り下ろされた瞬間、雷が叫んだ。

 

天を裂くような轟音。

斬撃は白い稲妻となって夜空を貫き、地を這い、アダムへと襲いかかる。

白い魔力と雷光が螺旋状に交差し、まるで雷神が振るう審判の剣のようだった。

 

アダムが、はじめて“恐怖”に目を見開く。

 

その背後には、なお展開された巨大魔法陣――

空間そのものを消し飛ばす「再現・アルカンシェル」。

そして、自らの守りに展開した漆黒の結界。

 

【やめろォォォォォォ!!!!】

 

絶叫とともに、ナハトヴァールの力を解放。

 

空間が悲鳴を上げる。

異形の翼が開き、黒い触手状の魔力が幾重にも絡み合って防壁を形成する。

 

だが――

 

「無駄だッ!!」

 

ユウトの叫びと共に、雷が炸裂した。

 

巨大な剣が、すべてを断ち切る。

まず結界が裂け、続いて異形の装甲を貫き、ついにはアダムの胸――心臓の位置へと達する。

 

「ここが……お前の、終点だ!!」

 

その一撃が導いたのは――天を貫く光柱だった。

 

爆裂のような光が、夜天の書の中枢を巻き込みながら、闇の塔をなぎ払う。

空が裂け、星々がその隙間から顔を出す。

破壊の魔法陣は、まるで紙のように砕け散り、「再現アルカンシェル」は発動不能へと追い込まれた。

 

アダムの身体が白雷に焼かれ、空へと弾け飛ぶ。

 

【……なぜ、私は……こんな子供に……私の闇の書の力は……無敵のはずだったのに……】

 

声が震える。

 

かつての支配者の顔に、今はただ驚愕と――恐れがあった。

 

「ハッ……どっちが子供だよ……」

 

ユウトの冷静な吐き捨てが、最後に届く。

 

アダムの姿は、空の彼方に消えていった。

漆黒の魔力が霧散し、虚空に沈んでいく。

 

――そして、戦場に訪れる静寂。

 

砕けた魔力の粒が舞い、雷鳴の余韻が遠くでささやくように残っていた。

 

黒に染まっていた空は晴れ、夜の星々が、久しぶりに姿を現す。

 

空に佇むユウトの姿が、白く輝いていた。

 

肩で大きく息を吐き、ゆっくりとディジターを下ろす。

白い魔力が穏やかにほどけていく。

 

『……ミッション、コンプリートです。マスター』

 

ディジターの静かな声。

 

ユウトはかすかに笑みを浮かべて呟いた。

 

「……ああ。終わったよ、ディジター……」

 

白い魔力がふわりと霧のように舞い、ユウトの身体から抜けていく。

バリアジャケットの白が淡くほどけ、全身の力が抜けた。

 

「――っ……!」

 

次の瞬間、ユウトはふらりと体勢を崩し、そのまま地面へと落ちていく。

 

ごう、と風が吹いた。

 

地面に倒れ込んだその身体を、誰よりも早く見つけたのは――フェイトだった。

 

「ユウト!!」

 

フェイトが駆け出す。その後ろから、なのは、はやて、守護騎士たち、みんなが一斉に走り出してくる。

 

彼らの目に映っていたのは――確かに、希望の灯だった。

 

地に伏しながらも、なおその顔に穏やかな安堵を浮かべる少年の姿に明日を見出す。

 

アダム・アンジェロの肉体が雷に焼かれ、砕け散りながら空へと溶けていく。

断末魔のように上がる白煙が夜空へ消える中、声が、空間に滲んで残った。

 

【……認めない……こんな結末……私は……認めない……!】

 

その言葉を最後に、黒く濁った魔力が霧散するように拡散し――そして、爆ぜる。

 

ユウトは、膝をつきながらも、なお身体を支え、戦いの終結を静かに受け止めていた。

 

だが――

 

地面が、震えた。

 

微かな振動。

次第にそれは確かな揺れへと変わり、アダムが崩れ落ちた地点から、黒い瘴気が噴き出すように吹き上がった。

 

「……なんだ……?」

 

ユウトが顔を上げた瞬間、ディジターの警告が走る。

 

『マスター、魔力反応を検知。異質な干渉、構造体を検出――』

 

「ああ、ナハトヴァ―ルだろ?予想はしていただろ」

 

『違います!もう一機、別の敵性反応が――!』

 

同時に、アダムの最後に触れていた闇の書の魔力構造体が不気味な音を立て、再構成される。

 

空間に異音が響いた。

 

――ズン……!

 

空が開く。

 

十重にも重なった黒い魔導陣が空中に浮かび上がり、その中心から“それ”は立ち上がった。

 

少女の姿――

けれど、その存在から放たれる魔力は“生物の領域”ではなかった。

それは、まるで拒絶そのもの。

 

存在してはならないもの。

呼び出されてはならないもの。

 

「なんだ……これは……」

クロノが声を震わせる。

 

 

少女は一言も発さない。

ただ虚ろな瞳を空へ向け、ゆっくりと顔を上げる。

 

その瞬間――

 

ユウトの身体から、突如“植物”が生えた。

 

「っ――ぐッ……!?」

 

一本、二本……否、数十本。

魔力で覆われた木の根が、ユウトの肩、腹、背中から“内部”を突き破るように生えてくる。

 

「ユウト!!!」

フェイトが駆け出そうとする。

 

だが――

 

ザフィーラ、シグナム、ヴィータたちも同時に防御を構えるが、その場に釘付けにされたように動けなくなる。

 

周囲の空気が、凍りついた。

 

放たれる魔力の格が、違う。

“存在そのもの”が拒絶されている気分を感じさせる。

 

リインフォースが叫ぶ。

 

『距離を取ってください!彼女、ユーリの能力は「結晶樹」――対象の生命エネルギーを外部結晶化し、即座に体外へ排出します!』

 

「でも逃げたら……ナハトヴァールが……!」

 

 

ユーリと呼ばれた少女。

 

彼女は、まるで人形のように、ゆっくりと地面に“着地”する。

 

――その瞬間。

 

地面から黒い樹が生える。

 

それは木の枝のようでいて、先端は鋭く、冷たい槍のようだった。

 

半径20メートル以内に存在するあらゆる魔導師の身体を覆うように伸び、封じる。

 

「なっ……!?」

 

動こうとするだけで、刺突が生じる。

 

ザフィーラが一歩踏み出そうとしただけで、彼の足元の空間が“抉れた”。

 

不可避。不可防御。不可視に近い“拒絶”。

 

生命としてあることそのものを、拒絶される。

 

「……こんなの……どうすれば……!」

 

はやての声が震える。

なのはでさえ、バリアを張るだけで精一杯。

苦し紛れに放たれたフェイトの一撃も、ユーリの周囲に届く前に結晶化した植物に阻まれ空に溶けていく。

 

少女は、言葉を発さない。

 

淡い瞳に光はない。アダムのプログラム通りにただ無機質に、機械的に――全てを拒絶するために存在する。

 

これは調和の魔導体系ではない。

“存在の矛盾”――その極致だった。

 

「……やっと……終わったと思ったのに……とんだ置き土産しやがって……」

 

圧倒的な絶望のなか、誰もが言葉を失う。

 

たしかにアダムは死んだ。――最後に遺したものこそが、ナハトヴァールを一刻も早く止めなければならないこの状況にとって最大の“災厄”となった。




マテリアルズを先行登場させたならもちろんこの子も出てくるよな…ということでユーリちゃん登場です。ちなみに能力・スペックはデトネ準拠です。
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