○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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365日後のクリスマス その4

「わぁーっ!これ、フェイトが作ったのか?うまそうだな!」

 

ヴィータがテーブルに並べられたクッキーをひとつ手に取り、バリッと噛みしめる。そして、その大きな目を見開いた。

 

「フェイトちゃん、すごいね。甘さもちょうどいい……うん、これは翠屋として負けてられないね?」

 

なのはがそう呟きながら、ちらりと俺の方を見る。

 

「こっち見るな…そこは自分で作るっていうところだろ。」

 

「わたしは看板娘としてウェイトレスさんで、お菓子担当はユウトくんだから?」

 

……なんか、今日はなのはが機嫌いいな。というか、余裕すら感じる。たまにフェイトの方をちらちらとみている気がするが。……いや、考えるのはやめておこう。今ここで踏み込んだら、あとが怖い。

 

リビングの一角では、シグナムとシャマルが料理を運びつつ、プレートを整えていた。その隣では、ザフィーラがいつも通り寡黙にジュースを配っている。変わらない空気。けれど、あの日々を越えて、ようやく迎えた「普通の時間」――その重みが、今は心地よかった。

 

「皆そろったねー、じゃあ……」

 

はやてがソファの上に立ち、手を上げて声を張る。

 

「今日まで色々あったけど、シグナム達が自由になって、こうしてまたみんなで集まれたこと――ほんま、嬉しい…だから!今日はみんなでめいっぱい楽しもうな!」

 

「「「おーっ!!!」」」

 

全員の声が重なる。笑顔、笑顔、その中にいる俺も、自然と頬が緩んだ。

 

「……うん。今日ぐらい、羽目を外して楽しむか。」

 

『ええ…私たちも行きましょうユウト。』

 

リインフォースの声に背を押されるように、俺はまず今日の主役――はやてのもとへ向かう。

 

「よう…はやて、楽しんでるか?」

 

「もちろん、みんな楽しそうでよかったわ。こういう時守護騎士のみんな盛り上がらんかなって心配しとったけど、シグナムとかもフェイトちゃんとさっきの模擬戦の感想会で楽しそうや」

 

「やっぱ頭ベルカの評価は変わらないな…はやてって、こういう時いっつも一歩引いて見てるよな。お前が一番こういうの好きそうなイメージあるのに」

 

「そやなぁ、うちお祭り行事は大好きなんやけど…やっぱ私は守護騎士みんなの保護者みたいなものやからなぁ…みんな可愛いうちの子や、みんなが楽しそうなのが1番や。」

 

「保護者ポジションってやつか。……なんかお母さんみたいだな」

 

「せやろ?リインフォースもうちの娘やし…リインと同化してるユウトくんも、うちの子やな」

 

「やめろよ…年下のお母さんってなんか犯罪臭すごいし」

 

 

「照れなくてもええんやで?それにしても…ユウトくんとクロノくんって年上って知った時は驚いたわ。」

 

「まぁ、俺は記憶戻るまでは年齢も不詳だったからな…なのはに拾われた時はヴィータぐらいに背低かったし。」

 

「なにそれ、めっちゃ気になるやん……写真とかないん?」

 

「あるけど……見せたくない」

 

『主はやて、ディジターの記録領域にその当時の集合写真ありますよ』

 

「ほんま!?見せてー!」

 

「見せたらしばらく表出させないからな、リイン」

 

『……え』

 

「ユウトくん、ケチやなぁ。でもその低身長から今の身長まで伸びるとか……えらい成長やなぁ。クロノくんより高いやろ?」

 

「まあな。シグナムよりは低いけどな」

 

「でもユウトくん私たちの二個上やろ?18とかになったらどこまで伸びるんやろなぁ」

 

「……さすがにシグナムは超えたいかな」

 

「いまの身長だと、シグナムの胸が丁度目線に合うもんな。」

 

「そうそう、毎回顔を見上げるのが大変で…って何言わせてんだ。」

 

「ええやんええやん、あのおっぱいは男も女も関係あらへん…あれは、凶器や」

 

「あ、主はやて…ご客人の前でなにを!?」

 

「おっさんかよ…あ、フェイトに変な嘘つくの辞めてやれ。昼間あいつ、恥かいてたぞ。」

「えぇ…フェイトちゃん本気で信じてたん?ないわぁ…うちでもシグナムぐらいしか信じてないで?」

 

「むしろシグナムは信じたのかよ。」

 

「シグナムは頭硬いからなぁ…ヴィータでも嘘って分かったのに…私のことになるとなんでも信じてもうからなぁ。」

 

「ま、嘘もほどほどにな…フェイトの本気で怒った所見たことないから…どうなるか分からんしな」

 

「怒るで言うたらさっきのなのはちゃんやな…あの無表情で淡々と詰めてく感じ、いやな学校の先生って感じで苦手や」

 

「学校の先生は多分生徒のこと思って怒ってるから…なのはは普通にキレてそうだけど」

俺ははやてとの会話に苦笑しつつも、ふと背後に気配を感じた。嫌な予感がして振り向くと――

 

「なにかいったー?」

 

背後から、ツインテールがぴょこっと浮かび、冷ややかな笑みを浮かべるなのはの姿が。

 

「「いえ、なにも!」」

 

反射で同時に答える俺とはやて。ヴィータがちじこまってるのも見えて、なんか既視感すらあった。

 

「じ、じゃあ私はフェイトちゃんとこ行ってくるな。ほな!」

 

「おい!置いてくなって!」

 

「…どこ行くの、ユウトくん?」

 

「やだなぁ、なのは。俺がお前のこと置いてどっか行くわけないだろ。う、うん……それより、どうかした?」

 

「ううん。ヴィータちゃんと話してたら、ユウトくんとはやてちゃんがこっち見て喋ってたから、ちょっと気になっちゃって……ね、ヴィータちゃん」

 

「ま、まぁな。あたしは付き添いだが」

 

「……てか、いま思ったけどお前ら、なんでそんなボロボロなんだ?」

 

「あー、ユウトくんさっき来たばっかだもんね。」

 

「シグナムとフェイトが模擬戦する前、あたしらもやり合ったんだよ。ちなみにあたしの勝ちな!」

 

「もう1回やってたら私の勝ちだったよ!…ヴィータちゃん、後でもう1回やろ」

 

「お前、そう言って3回はやったろ…」

 

「そんだけやって全敗だったのか?」

 

「……うぅ。闇の書事件の時ヴィータちゃんに勝てたの奇跡だったのかな」

 

「まぁまぁ、落ち着けなのは。ヴィータとか見た目はともかく守護騎士達ってみんな歴戦の戦士だから…強いのは当たり前だって」

 

「あの時はあたしらみんな迷いながら戦ってたしな…まぁ、あの時お前らが止めてくれなかったら今頃あたしらここにいないし感謝してるぞ。」

 

「それはそうだけど…やっぱり負けるのは悔しいよぉ。」

 

「戦闘ってやっぱ気持ちの持ち方で大きく変わるよな。今日のフェイトもすごかったし……なのはのボケで負けたけど」

 

「なぁユウト……あの“紫電一閃”って、日本の言葉にもあるんだよな?」

 

「ああ。四字熟語ってやつだな。」

 

「私って文系科目苦手だから……」

 

「魔法の才能の代わりにいろいろ捨ててるよな、お前……」

 

「そ、そんなことないもん!」

 

ツインテールを軽く揺らして抗議するなのは。けど、その表情は少しだけ不安げで、強がりに見えた。

 

「あーはいはい。……とにかく、ちゃんと強くなってるよ、なのは。俺から見ても、お前は優秀な魔導師だよ。だから焦らなくていいと思うぞ?」

 

「本当?」

 

「ほんとにほんと。俺なんかよりずっと強いよ、お前は」

 

そう言った瞬間、なのはの頬がほんのり赤く染まる。照れてるのか、それとも信じたくて安心したのか――その曖昧な笑みが、やけに印象に残った。

 

「そういえば、ユウトくんって通常時だと魔導師ランクB相当なんだっけ…模擬戦とかだと普通に私やフェイトちゃんにも全然負けてないけど…なんで?」

 

「ああ、それこそさっき言った“戦闘特化”ってやつがそのまま反映されてるんだよ。対人重視の魔法に偏って、救助任務だと融通が効きづらいんだよな。」

 

「ああ…そういや同じ理由で、私達のエンシェントベルカの魔法は時代に合わなくなって廃れたって聞いたな。」

 

「でも、ユウトくんはミッド式だよね?」

 

「ああ、一応リインフォースがサポートしてくれればベルカ式も使えるぞ。ミッドの魔法込みでランクが低い理由は単純で……素の魔力量がなのはやフェイトの3分の1くらいしかないからな」

 

「それってそんなに違うの…?」

 

「うん。たとえば、救助活動でで大型施設の中心から脱出する想定の時とか。なのはなら、バスターで一撃で壁ぶち抜いて外までの道を作れる。けど俺の場合は……一個一個の瓦礫を魔法でどかしてって歩いて逃げれる道を作るぐらいしかないんだよ。砲撃の威力調整も苦手だしな。とにかく効率で言えば、どうしたってなのは達に劣るんだよな」

 

「魔導師ランクって、そういう実用面も評価対象なんだ…って、いくら私でもそんな大型施設に穴開けるようなことはしないよ!」

 

「いや…どうだろうなぁ、なのはだし」

 

「ちょっと!」

 

「いやほら、一度“助ける”って決めたらさ、手段とか完全に無視する傾向あると思ってるから」

 

「それは、確かに……」

ヴィータがぼそっと呟く。

 

「知ってるかヴィータ、フェイトの事件の時もすごかったんだぞ? フェイトを止めるためとはいえ、バスター撃ったあとにブレイカーまで撃ち込んだんだから。さすがにフェイトが死んだかと思った。」

 

「フェイトちゃんは避けたからいいの!」

 

「いや、それ避けなかったら死んでたからな? ていうかお前、自分の火力がどれだけやばいか理解してるか?」

 

「そういやあたしも…なのはにエクセリオンブッパなされた時は闇の書の再生機能あったはずなのに消滅したと思ったしな。」

 

「……それは、なんか、ごめんね?」

 

謝るなのはの声が、ちょっと小さくなる。けれど、俺はそれを責める気にはなれなかった。

 

みんな、自分にできることを信じて、やれることをやってきた。たとえその手段が多少過激でも、目的は――誰かを守るためだったから。

 

「まぁ、結果として今こうして一緒に笑ってられるわけだし、誰が間違ってたとかは言わないけどな」

 

俺は苦笑しながら、少し視線を落とす。

するとヴィータが考え込んでから話し出した。

 

「ていうかフェイトってなのはとガチで戦って勝ってるんだ…模擬戦ならともかく、ここ一番の本気モードなのはに勝つなんて……凄いな?」

 

素直な感想が口をついて出た。フェイトの強さはよく知ってるつもりだけど、あのなのはを押し切ったと聞くと、やっぱり驚く。

 

「あん時はフェイトのメンタルもそこまで悪くなかったし……俺が対なのは戦に向けて作戦立ててたしな」

 

そう説明しながら、俺はその時の戦略を脳裏に思い出す。弱点の読み合い、魔力の運用、配置と射線――あれは本当にギリギリの勝負だった。

 

「そうそう!ずっと文句言いたかったんだよそれ!」

 

突然声を上げたなのはが、じりじりと詰め寄ってくる。

 

「なんで私、そんなに警戒されてたの!?私、フェイトちゃんとユウトくん、それにアルフさんをユーノ君と二人で相手にしなきゃで大変だったんだよ!」

 

「いや……お前の砲撃一発で3人落ちるから対策するだろ普通……」

 

「てか、敵だったフェイトはともかく……魔法に出会うより前から同居してたユウトが、なんでなのはと戦ったんだ?」

 

「ああ、まあ……タイミングが悪かったんだよ。魔法と出会った頃は、丁度なのはと入れ違いみたいな感じで、長く顔合わせてなくてさ。気づいたら事件が進行してて、別の陣営で動いてたんだ」

 

「あの時はほんとにびっくりしたよ…」

 

なのはが目を細めて呟くのに、俺も苦笑で返す。あれは、誰もが予想できなかった展開だった。

 

「…ふーん。なぁ、フェイトとなのはとユウトだったら誰が1番強いんだ?」

 

「うーん……模擬戦なら勝ったり負けたりだし、なんでもアリだったらリインフォースのサポート込みで俺かもな。でも、素の状態でってなると、やっぱなのはかフェイトかなぁ……」

 

「うん。最近の戦績見てると、ユウトくんが一歩リードだよね。けど、地力だけなら私とフェイトちゃんが拮抗してるし……でも、」

 

「……なんだよ。“でも”とか“だけど”とか、ハッキリしないなぁ…」

 

ヴィータが眉をひそめて問い返すと、俺となのはが揃って視線を逸らした。

 

「だって……ねぇ?」

 

「なぁ?」

 

「……あーもう、なんだよ。誰が1番強いんだよ結局?」

 

「1番は……なんでもありのフェイトだな」

 

「うん。覚悟決まってるっていうか、なんでもやるえげつなさあるよね」

 

「フェイトって普段落ち着いてる感じするけど…?」

 

「いや、よく思い出せヴィータ…あいつ、勝つためなら攻撃カスったら死ぬくらいの防御力になるまで装甲削るんだぞ?」

 

「あー…」

 

「しかもこの前なんか、任務中に幻影魔法使って、雷の魔力で編んだサーチャーに自分の姿貼り付けて敵地に送り込んでさ……敵に見つかったら自爆させてたぞ」

 

「え、えげつないことするんやねぇ…」

はやてが感心したように呟くが、俺は思わず口を挟んだ。

 

「あれ、某忍者漫画の先生の雷遁○分身だろ絶対……」

 

「言われてみれば……魔力の消費量の激しさを含めてまんまそれだよね」

なのはが吹き出す。

 

「まぁ、とにかくあれされたらシンプルな戦い方しか出来ない俺とかなのはだとあれやらだしたら正直勝てる気しないな…本人と雷の幻影の二択ずっと押し付けられたら戦闘中にそこまで頭回らないな。」

 

「ねー。」

 

「なんか…フェイトの見る目変わった気がする」

 

ーーーーーーーーーー

 

「くちん!」

 

「…なんや、フェイトちゃんいかにもあざといくしゃみして…」

 

「あ、あざとくなんてしてないよ?」

 

「そーだよ、はやて!フェイトはこれが素なんだから…生まれつきこうなんだよ!!」

 

「アリシア…それ褒めてないよ…!?」

 

 

 




個人的にリリカルなのは世界の戦闘力は電王世界の「戦いはノリのいい方が勝つ」にある程度乗っ取ってると思ってます。
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