○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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新部隊編始まります~!
原作キャラ何人か出していきたい


焔の迷い

 大晦日のトラブル騒ぎと、桃子さんへの説得から数日――。

 

 俺、ユウトは今、ミッドチルダの街を歩いている。

 

 ……というのも、新たに設立される新設部隊には、陸士部隊と海兵部隊からそれぞれ選抜された人材が出向するらしく、その調整のために一足先に合流することになったのだ。どうやら、新部隊の結成はお偉いさんたちの間でも結構注目されているらしい。

 

 向かう先は、武装隊の宿舎――つまり、俺たちがこれから暮らしていくことになる建物だ。

 

 けど、正直な話、最初に目に入ったその外観は、俺が想像していた軍の拠点とはだいぶ違っていた。

 

 もっとこう……無骨な鉄と鋼の塊みたいな、いかにも軍隊らしい建物を想像してたんだけど、目の前のそれは意外と普通のビルに見える。ミッドチルダの建築技術ってすごいんだな……いや、それ以前に、俺が偏見持ちすぎだったか。

 

 「……ブツブツ……」

 

 そんなことをひとりごちていると、不意に視界の端に見覚えのある姿が映った。

 

 長い桃色のポニーテールが風に揺れている。その人物は、まるで迷子のように建物の前をうろうろと歩き回っていた。

 

 「……シグナム?」

 

 声をかけると、彼女はハッとしたように振り向いた。

 

 「……!? ……なんだ、ユウトか」

 

 険しい表情が少しだけ緩んでいくのが分かった。彼女もどこか緊張していたのかもしれない。

 

 「どうかされましたか?」

 

 一応、シグナムは新部隊の隊長になるって話だったのを思い出して、少しだけ敬語を混ぜてみる。すると、彼女はほんのわずかに目を細め、苦笑しながらこちらに歩み寄ってきた。

 

 「……なんだ、お前の敬語は慣れんな……」

 

 「失礼だな。これでも記憶を失う前は、誰にでも敬語だったらしいぞ、俺」

 

 「そうか……いや、それより丁度いいところに来た」

 

 シグナムは周囲を見回すようにしてから、小さくため息をついた。

 

 「兵舎の前で何をうろついてたんだ?」

 

 そう聞き返すと、彼女は不意に真剣な表情になって――とんでもないことを言い出した。

 

 「その……私と、隊長を交代してくれないか?」

 

 「……は?」

 

 一瞬、何を言ってるのか分からなくて、思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

 

 俺と隊長を、交代? 何だそれ、新年早々冗談きつすぎないか……?

冗談かと思った。でも、目の前のシグナムは至って真剣だった。まっすぐな瞳に冗談の影なんて一切ない。こっちが引くぐらい本気で言ってる。

 

 俺はそっと眉をひそめて、声のトーンを落とした。

 

 「……なあ、シグナム。頭でも打ったか?それとももとから頭悪かったか?」

 

 「なに!?」

 

 ビクリと肩を震わせ、シグナムが怒鳴る。けれど、声に覇気がない。怒っているようでいて、その実、何かに怯えているようにも見えた。

 

 「落ち着けって。何があったんだよ、詳しく聞かせてくれ」

 

 俺の言葉に、シグナムはしばらく逡巡した後、少しだけ目を伏せて、小さく呟いた。

 

 「……私は、局員としてはまだ新参者だ。今の時代の常識も、戦術の変化も、正直、まだ追いつけていないこともある。そんな私に……部隊の命を預かる自信がないんだ」

 

 そう言ったシグナムの顔は、剣士としての誇りに満ちたあの姿とはまるで違っていた。自信が揺らいでいる、不安そうなその表情が逆にリアルで、どこか人間味があって……正直、少し驚いた。ほんとに夜天の書のプログラムだったのか?

 

 「……まぁ、つまり隊長としてやっていける自信がないから、代わってほしいってことか?」

 

 そう聞くと、彼女は小さく肩をすくめて肯定する。

 

 「まぁ……そうなるな」

 

 「いや、無理だろ」

 

 即答だった。

 

 「なっ……!」

 

 心底驚いた顔でこっちを見るシグナム。いや、そんなに驚かれるようなことかこれ。

 

 けど、まぁ……裏事情も少しは知ってる身として、俺にも言えることはある。

 

 ――クロノから聞いた話だと、今回の新部隊は広報的な意味合いも強い。戦闘力だけなら最強クラスの守護騎士たちが揃っていて、彼女たちがカートリッジを回して戦う姿は、まさに“広告塔”にうってつけってわけだ。

 

 見せ場の演出には「肩書き」も必要だ。つまり、表向きのリーダーは、シグナム以外にありえないってこと。

 

 「別に、そんな気を張らなくても大丈夫だよ。俺たちは指示された任務をこなせばいいだけだし、もし失敗しても、はやての顔に泥を塗るとか、そんな大げさな話にはならないよ」

 

 シグナムがむぅっと眉を寄せてうつむく。

 

 「むぅ……」

 

 「お前はいつも通り、守護騎士に命じるような感覚で隊を引っ張ればいいんだって」

 

 「そうもいかんだろう。今回の部隊には他の部隊から出向してくる者もいる。それはつまり、管理局全体から見た我ら守護騎士、ひいては主であるはやての評価にも関わるのではないか……」

 

 まじめか。いや、知ってたけど。

 

 俺は思わず小さく笑ってしまう。だけど、まっすぐな責任感が、少しだけくすぐったかった。

 

 「……いや、むしろ普段のお前を見せるだけのほうがよっぽど楽だと思うけどな」

 

 「なぜだ?」

 

 「管理局全体で見ても、お前に勝てるやつなんてそうそういないって。偏見もたれてても実力で評価を勝ち取ればいいだろ?」

 

 「実力か…目の前に一度私に勝った男がいるのだが?」

 

 「この前の模擬戦は完敗だったっての……。事件の時は、お前の剣が迷いで鈍ってたから俺が勝てただけだ。さ――行くぞ、“隊長?”」

 

 からかうように肩を叩いて先に歩き出すと、シグナムは一瞬だけぽかんとした顔を見せて――やがて、ふっと息をついて、俺の隣に並んできた。

 

 「……ふぅ。すまん、少し……弱音を吐いたな。だが……少しだけ、楽になった。行こうか、ユウト」

 

 その声は、先ほどまでの不安を吹き飛ばすように、確かで、頼もしさを取り戻していた。

 

 俺は笑ってうなずく。

 

 「おう、任せろよ。お前らのフォローも、一応仕事だしな」

 

 

 

 




今回短め、というより私生活忙しくなりそうで更新が怪しくなってきました…。
なるべく時間取れたら書き貯めします。
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