○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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始まりの日

——暗闇の中、光が瞬いた。

 

まるで水の底にいるような、不思議な浮遊感が俺を包む。視界はぼやけ、身体の感覚も曖昧だ。

 

ここは……夢?

 

そう思った瞬間、目の前の闇が裂けるようにして、一つの光景が浮かび上がった。

夜の森。空には黒い雲が渦巻き、地面は焦げたようにひび割れている。大気はざらつき、どこか重苦しい。何かがうごめいている。

 

視線を向けると、その中心にいたのは——ひとりの少年だった。

 

「——はあっ!!」

 

銀色の光が疾る。彼の手の中から放たれた光が、闇を切り裂いて飛んでいく。しかし、黒い影は容易くそれを弾き返した。

 

黒い影の塊。まるで巨大な獣のように歪んだその魔物は、無数の触手のようなものを蠢かせながら、低いうなり声をあげる。その身体の中心には、青い宝石の様なものが光って見える。

 

「くっ……! なんて力だ……!」

 

少年は、悔しげに歯を食いしばる。額には汗が滲み、息も荒い。

 

それでも彼は怯まなかった。

 

魔法陣が展開され、彼の周囲に淡い光が瞬く。次の魔法の詠唱が始まる。

 

「栄えたる響、光となれ許されざる者を封印の輪に、ジュエルシード封印……!」

 

だが、次の瞬間——

 

ズシャアッ!!!

 

黒い魔物が突進してきた。圧倒的な速度。少年は咄嗟にバリアを展開するも、力の差は歴然だった。

 

「——ぐっ!」

 

衝撃が全身を貫き、彼の小さな身体が吹き飛ばされる。

 

地面に叩きつけられ、視界が揺れる。口の中に砂と血の味が広がった。

 

強い……このままじゃ……!

 

少年が必死に身体を起こそうとするが、黒い魔物はすでに次の攻撃の準備をしていた。触手が無数に広がり、闇が凝縮されていく。

 

このままでは、彼は——

 

「……ユーノ!」

 

俺は思わず叫んだ。

 

その瞬間——

 

視界が、一気に白く染まる。

 

まるで水面に落ちる波紋のように、夢の世界が揺らぎ、光が弾ける。

 

——目が覚めた。

 

俺は勢いよく飛び起きた。

 

心臓が激しく打ち、額には冷や汗が滲んでいた。夢の感覚があまりにもリアルで、まだ鼓動が収まらない。

 

「……今のは、夢……?」

 

少年。魔法のような光。黒い魔物。

 

知らないはずの光景なのに、何故か懐かしく感じる。

 

あれはただの夢なのか、それとも——。

 

胸の奥に残る、奇妙な感覚を抱えたまま、俺は静かに息を整えた。

 

俺、ユウトが高町家に居候して2年と3ヶ月の月日が流れた。

未だ記憶の手がかりはなく、特に進展のないまま過ごしている

 

普段はなのはと一緒に私立聖洋大付属小学校に通い、休日は翠屋の方で

手伝いをしている。

 

「ユウトくん!起きてるー?もうすぐ学校行く時間だよー!」

 

1階からなのはの声が聞こえる。

この2年間で随分と仲良くなったもので、良く周りからは本当の兄弟みたいだと言われる。

正直、なのはの近すぎる距離感に振り回されてることが多いのだが…

 

正直小学校はなんだか退屈だ。

勉強も授業を聞いているだけで大体のことはできる。

 

なのはとは行きはスクールバスで一緒だが、帰り道もなのはは友人である月村・バニングスのお嬢様コンビと塾にいくため一緒に帰ることがない。

 

はぁ…勉強サボって成績下げて塾に通わせてもらうかと何度考えたが、

居候させてもらい、学校まで通わせてもらっている高町夫妻にはこれ以上迷惑かけられない。

 

最近は空いた時間に恭弥さんに剣道を教えてもらい、体を動かして時間を潰している。

 

「ユウトくーん、ねえ、起きてるのー?」

 

ドアが開き、明るい声が響く。

 

「ああ、ごめんなのは。ちょっと考え事してた。すぐ行くよ」

 

「うん、朝ごはんできてるよ! もうみんな食べ始めてるから、早く来てね!」

 

「うん……分かった」

 

まだ夢の余韻は残っていたが、いつまでも考えていても仕方がない。気を取り直してベッドから起き上がる。

「ユウト、おはよう! ちゃんと眠れた?」

 

美由希さんが隣の席で、食パンをもぐもぐしながら尋ねてくる。

 

「ん……まあ、一応は」

 

「えへへ、じゃあよかった! でも、ちょっと眠そうだね」

 

「ああ、今日変な夢見てちょっと寝覚めが悪く…」

 

 

「美由希、行儀悪いぞ。口の中のもの食べ終えてから話せ。ユート、おかわりいるか?」

 

恭弥さんが、俺の皿をちらりと見てくる。

 

「いや、大丈夫です。ありがとうございます」

 

俺は正式に高町家の一員として迎えられた。初めの頃は記憶がない俺が学校に通うのは少し不安だったが、何度もなのはが「大丈夫だよ!」と元気づけてくれた。 あれから2年、3年生になった今は学校に通うのも慣れてはきた。

 

「じゃあ、そろそろ準備しよっか!」

 

「うん」

 

食事を終えた俺は、なのはと一緒にカバンを持って玄関へ向かった。

 

 

その後、恭弥さんにバス停まで見送ってもらいなのはと雑談して暇をすごした。

 

ほどなくして、スクールバスが到着する。ドアが開き、生徒たちが次々と乗り込んでいく。

バスの中にはすでにたくさんの生徒が乗っていて、それぞれ友達と話し込んでいる。

 

「あ、アリサちゃん!2人とも来たよ!」

「お、ほんとね!なのは〜!こっちこっち!」

 

 

奥の席から、二人の少女が手を振っている。

 

一人は落ち着いた雰囲気の黒髪の少女、月村すずか。

もう一人は金髪のツインテールを揺らしたアリサ・バニングス。

 

「すずかちゃん、アリサちゃん!おはよー!」

「おはよう。すずか、アリサ。」

 

「おはよう、なのはちゃん。ユウトくんも、おはよう。」

 

すずかは穏やかな微笑みを浮かべて、俺にも挨拶をしてくれる。

 

「おはよう、ユウト。今日もちゃんと目ぇ覚めてる?」

 

アリサは冗談めかして言いながら、俺の顔を覗き込む。

 

「……そんなに眠そうに見えるか?」

「見えるわよ。目が半分くらいしか開いてないじゃない」

 

「う……ちょっと寝不足なだけだ」

 

「もう、夜更かしでもしてたの?」

 

「いや、そういうわけじゃ……」

 

夢のことを説明するのは面倒だったので、言葉を濁す。

「まあいいわ。今日は一限体育があるから、ちゃんと目覚ましておくのよ?」

 

「体育か……何をやるんだ?」

 

「今日はドッチボールだったと思うよ」

 

すずかが優しく教えてくれる。

 

「ドッチボールか……」

なのはの方を見る。なのはは運動神経があまり良くないのか、公園で遊ぶ時はよく転んだり変なミスが多いため、怪我しないか心配だ。

こちらの目線に気づいたのか、なのははこちらを見て首を傾げてる。

 

「あら?ユウト、なのはの心配してる余裕あるのかしら?」

 

「ん?どういう事だ?」

 

「ふふふ…今日の体育はたぶん男女対抗よ?こっちには秘密兵器のすずかがいるんだから!」

 

「もう…アリサちゃん!私そんな強くないよー!」

 

「へー、月村さんってそんなドッチとか上手いんだ…」

 

体育の授業は普段は男女で別れて行われるから、女子で運動神経が良い人とか知らないな…月村さんとか、The大和撫子って感じのおっとりとした雰囲気でそんな元気にスポーツするイメージではなかったが…

 

「まぁ、俺もスポーツやってるし、運動神経けっこう良い方だと思ってるから結構勝つ自信あるよ。それに、男子にもプライドがあるしな。」

 

「へぇ…言うじゃない。買ったら今度アイスでも奢りなさいよ」

「いいぜ?じゃあ俺が買ったら翠屋のシュークリームで」

「あんたそれ何時でも食べれるじゃない…変なとこで営業かけるんじゃないわよ…」

「もー、2人とも!賭け事はダメだよー!」

 

そうして雑談しているうちに、学校に着いたようだ。

朝のHRを終え、いよいよ体育の時間だ。

 

「よし、ユウト!ちゃんと頭スッキリさせて、負けても言い訳のないようにね!」

「ああ、また後でな」

 

そう返事をするとアリサはほかの女子たちと更衣室に向かった。

さて…こちらも着替えを終えたらグラウンドに行くとするか。

まぁ、よっぽどの事がなければ勝てるだろう。

 

ーー6時間後

 

学校が終わり、1人で下校する。

 

まさかすずかに最後人数差6人いたのに逆転されるとは…

 

あのおっとりとした怪物は片手でクラス1の強肩である山田くんの球を受け止め、

そのまま「えいっ」とまるで力が入ってない声で剛速球を放ち残っていた男子全員をつぶし始めた…。

そこからはあの悪魔の独壇場であった…正直、最後に狙われた時は普通に命の危険すら感じた。

「はぁ…にしても女子チームに負けるとは…」

 

男子の面目丸潰れである。

もし美由希さんにバレたら、家でもいじられるだろう…

 

今日は公園の方で素振りでもしてから家に帰ろう…

ため息をつきながら歩くと地面に輝く石を見つけた。

 

まるで見るものを吸い込むような蠱惑的な魅力を感じ思わず心惹かれる。

物珍しさに惹かれなんとなくポケットに入れて公園へと向かった。

 

ーーーそれは、ポケットの中でひとりでに輝き始めていた。

 

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