○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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VSガイル戦の続き…!
ガイルのモデルはまんま某格闘ゲームのサマーソルトさんです


闘争の果てに

放たれた魔力砲は俺を掠め、轟音とともに天井を突き抜けた。

分厚い鉄とコンクリートが、まるで紙みたいに引き裂かれ、空へ向かって巨大な風穴を開ける。

破砕音が床を揺らし、粉塵が細かい雨のように降り注いだ。

瓦礫の隙間から、外の冷たい空気が一気に流れ込み、血の匂いをさらに濃くする。

 

撃ち落とされた俺は、仰向けに床を転がり、荒い息を吐く。

痛む肩を押さえながら、必死に体を起こそうとするが、ガイルは容赦なく杖を突きつけてきた。

 

「これが最後の警告だ。大人しく人質の居場所を教えろ。」

 

その瞳は、冷たい光を帯びていた。

杖の先端から立ち上る微かな風が、まるで息すら凍らせるように感じる。

 

「…さっきから、とどめをさせる場面はあったはずだ。なんであんたはそこまでして…あの女の子を狙うんだ」

 

「…話す必要ないといったはずだ。」

 

「なら……あんたに勝って聞き出してやるよ」

 

「なに…?」

 

俺は、地面に倒れたまま天井を仰ぎ見た、そのとき――

要塞の内部を照らしていた灯りが、

 

パチッ。

 

という乾いた音を立てて、一斉に消えた。

 

闇が、武器庫を満たす。

非常灯すら灯らず、完全な暗黒。

ただ、砕けた天井の向こうから、粉塵を透かして朝焼けの光がわずかに差し込んでいた。

 

「ばかな…停電だと…!?」

 

ガイルが低く呻いた。

その声に、わずかな動揺が混じっている。

 

ゆっくりと立ち上がりながら、血の滲む口角を袖で拭う。

息は荒いが、俺は笑みを浮かべた。

 

「……お前が砲撃で撃ち抜いたその先には、この要塞の中枢…電子制御室があったんだよ。」

 

「あの特攻はそれが狙いか……! だが、どうやって制御室の場所を知った!?」

 

ガイルの表情に、はっきりと衝撃が走る。

俺は肩で息をしながら、ゆっくりと答えた。

 

「場所を知れたのは…ティーダさんが残してくれた魔法のおかげだよ……」

 

そういいながら、制服の隙間から弱弱しくもオレンジ色に点滅するティーダさんのサーチャーを取り出す。

 

「私が倒した、あの青年…そんなものを残していたのか」

ガイルの目に、焦りと動揺が交錯する色が揺れていた。

 

「…だが、停電を引き起こし外の兵器が止まろうと、お前が今ここで助かる道は――いや、違う。AMFの停止が狙いかッ」

 

ガイルの声が、初めて焦りに濁る。

俺は肩で荒く息をしながら、血の味を噛みしめる。

口角に薄い笑みが浮かんだ。

 

「……その通り、だよッ……!」

 

左手に残るアンブレイカブルを、ぎゅっと握り直す。

指先が痛むほど力が入る。

 

そして、叫ぶように声を張り上げた。

 

「起きろ……アインス!!」

 

頭の奥――ずっと霞がかって遠かった意識に向かって、拳を叩きつけるように思想いを送る。

暗く沈んだ闇の中で、ピキリ、と氷が割れるような感覚が走った。

同時に、胸の奥が灼けるように熱くなる。

次の瞬間、ほとばしる奔流のような魔力が、全身を駆け巡った。

 

『ようやく…繋がったな、ユウト。』

 

どこか淡々と、それでいて嬉しそうなアインスの声が、はっきりと脳裏に響く。

 

「ああ……お待たせ、アインス。」

 

呼吸が荒いまま、俺は震える笑みを浮かべた。

 

ガイルの瞳が、ゆっくりと見開かれる。

 

 

「少年、なんだ…その姿は……いや、なんだ、その魔力は……!お前は一体何者なんだ…!?」

 

地面に散った割れたガラス片に、普段と異なる自分の姿が映り込む。

髪は白く変色し、バリアジャケットも白を基調とした装いへと変わっていた。

無理に力を引き出しすぎた結果、そのままリヒトフォームへ移行してしまったらしい。

 

「長々と説明してる暇はないな……とりあえず、これが俺の本気ってことで……第2ラウンド、行かせてもらう!」

 

「……ッ、レアスキル持ちというわけか。羨ましい限りだ……」

 

皮肉っぽく吐き捨てながらも、迎撃を行うガイルの動きには迷いがない。

風の魔法と魔力弾を織り交ぜ、さっきと同じコンビネーションで容赦なく攻め込んでくる。

けれど、今の俺は――

 

『ユウト、二時の方向から攻撃。半歩、前へ避けろ!』

 

「ああっ……!!」

 

「チッ……AMFが解除された今、魔力感知は誤魔化しきれないか……」

 

先程とは違う。今の俺には優秀なバディがいる。

アインスの声に従い、目に見えない風の刃を余裕を持って回避し、魔力弾も相殺する。

すぐさま、先ほど投げつけたディジターを拾い上げた。

 

「さっきはごめんな、相棒……!」

 

『No problem. I’m ready.』

 

「なるほど……ただの二刀流じゃなく、マルチデバイス……。」

 

「AMFの影響もない今、処理能力はさっきまでとは桁違いだぜ……。あんた、ついてこれるか?」

 

「ふっ……舐めるな、少年。これでも、かつてはエースと呼ばれた男だッ!」

 

「なら……行くぞ! ディジター、オーバードライブ……イグニッション!」

 

『OVER BOOSTER IGNITION!!』

 

手にした二振りのデバイスから、過剰ともいえる魔力が迸る。

オーバーブースト――俺単独で実現する高速戦闘形態へ、バリアジャケットも、デバイスも変形していく。

これなら、風の刃や魔力弾を避けながらも一気に接近戦に持ち込める!

 

「まずは一発ッ!!」

 

「ッ……!」

 

迫る風の刃をくぐり抜け、

ここに来てようやくガイルに攻撃をクリーンヒットさせる。

壁1枚を開け、さらに奥の廊下の壁までガイルを吹き飛ばす。

 

「……やるな、少年。」

 

「こっちも大概だけど……そろそろ倒れてくれてもいい頃合いだろ……!?」

 

完璧に攻撃を当てたはずなのに、ガイルはゆらりと立ち上がる。

周囲に展開していた風の魔法をすべて解除し、自身の強化に魔力を集中させ始めた。

 

空気が、瞬く間に張り詰めていく。

 

変化は直ぐに訪れたーー

 

「……っ、あいつの姿が……消えた!?」

 

『違う。奴はお前の目の前に――』

 

「遅い!」

 

膨大な魔力を集めていたガイルの姿が突然消えて、周囲を警戒する俺に対して

アインスが叫ぶが…言葉を言い切る前に衝撃に襲われる。

 

呼吸が止まり、視界がぶれる。

 

(これは……!)

 

「風の魔法を、自分にかけた透明化……!」

 

『それだけじゃない。どうやら奴の風は魔法で編み出したものじゃないらしい。素の魔力自体に風の力が宿っている。奴はシグナムやフェイトと同じ――変換資質の持ち主だ! 透明化は、魔力による身体強化の副産物にすぎない可能性が高い……!』

 

「ッ……強敵だな……!」

 

額から滴る血を拭いながら、俺はガイルの気配を探る。

だが、周囲の空気はまるで湖面のように静まり返り、一切の気配を感じさせない。

感じられるのは膨大な魔力が動き割っていることだけ…

 

『…来るぞ、さっきより速い!!』

なんとかアインスの指示とオーバーブーストのスピードで、透明化したガイルの連撃を避け続ける。

だが、その本体から繰り出される予測不能の打撃に加え、隙を埋めるように飛んでくる風の刃の嵐。

俺は徐々に追い詰められ、防戦一方に陥っていた。

 

「まさか……リヒトを使って、こんな苦戦するとはな……!」

 

歯を食いしばりながら、荒い息を吐く。

額を伝う汗が目に滲むほど、動きは限界に近い。

 

『焦るなよ、ユウト。向こうも、こちらのスピードを捉えきれていない。状況は五分だ……チャンスを逃すな!』

 

「分かってる……それに、透明な攻撃の対処は……さっきやった!!」

 

言い放つと同時に、俺は地面にディジターを突き立て、魔力弾を撃ち込む。

爆ぜる衝撃と共に、濛々と砂埃が武器庫全体に広がっていく。

 

視界は茶色く染まり、微かに光を反射する粒子が乱舞する。

その中で――

 

砂埃が、まるで人型の空間を空けるように、一か所だけ不自然に流れを避けていた。

 

「そこかッ……!!」

 

目視した瞬間、全身の魔力を瞬間的に脚へ集中させる。

高速の踏み込みで、空白の場所へ突っ込むと、アンブレイカブルを真横に薙ぎ払った。

 

だが――

 

「これは……!?」

 

刃は、確かに空間を斬り裂いたのに、手応えは一切なかった。

すぐさま視界の隅で、冷たい声が響く。

 

「二度も同じ手は喰らわん……焦ったな、少年!」

 

刹那、背後から衝撃が迫る。

ガイルの魔力弾が、寸分の狂いもなく俺の背中を捉えようとしていた。

 

「しまっ――!」

 

『まだだッ!!』

 

アインスの声が脳裏を叩く。

同時に、俺の意思よりも速く魔力障壁が展開される。

 

――ガァンッ!!

 

鈍い衝撃と共に、風を纏った魔力弾がバリアを叩く。

衝撃はあったが、致命傷は免れた。

 

「ッ、これを防ぐか……!?」

 

振り返ったガイルの顔に、わずかな驚きが走る。

 

俺は口元を拭いながら、不敵に笑った。

 

「あいにく……優秀なパートナーに恵まれたもので……!」

 

背後から決定打を放とうと、ガイルが足を止めた。

そしてそれを防ぎきった俺は足を動かし続けた

 

状況は――完全に俺に傾いていた。

 

「……これで決めるぞッ!! カートリッジ!!」

 

『Cartridge Load. impact mode Ready.』

 

アンブレイカブルが、鋭い駆動音と共に眩い光を放つ。

溢れ出す魔力の奔流が、腕を震わせるほどの圧力で集束する。

 

ガイルが低く笑みを浮かべ、杖を構え直す。

 

「……ッ、来い、少年!!」

 

「――インパクトッ!!」

 

全身の魔力を叩き込むように踏み込む。

アンブレイカブルの砲口がガイルへ向き直る。

 

『Unbreakable Impact・Charge Shot!』

 

轟音が、空間を切り裂くように響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

激しい光と衝撃が収まると、部屋の中のものはすべて吹き飛び、残ったのは倒れたガイルと、立ち尽くす俺だけだった。無残に砕けた壁の先には、まだ夜明け前の空が薄明るく広がっている。

 

「…俺の勝ちだ、ガイル。」

 

俺は息を荒くしながら、アンブレイカブルを握りしめる。

 

「……まだだ。俺はまだ……こんな所で、倒れるわけにはいかんのだ。」

 

さっきとは逆に、今度はガイルが倒れ込んだ体勢のまま俺を見上げる。

 

「なぁ、ガイル……なんで俺にトドメを刺さなかったんだ? さっきも言ったけど、チャンスはいくらでもあったはずだろ。」

 

「……半分は人質を取り返すため、もう半分はそうだな……癖かもな」

 

「……癖?」

 

「局員として働いてた時の癖さ……相手を殺さずに捕らえる。そういう戦い方が……体に染みついてたのかもしれん。」

 

「……なら、なんで犯罪組織にいるんだよ。」

 

ガイルは苦しげに、しかし皮肉げに笑った。

 

「青いな……なら逆に問おう。少年――管理局は、本当に善だと、言い切れるか?」

 

「そんなの……当たり前じゃ――」

 

「そう。管理局は善たる存在であるべきだ。だが……組織である以上、権力や、腐敗が必ず生まれる。」

 

俺は言葉を失った。

 

「例えば、君たちが助けたあの人質の少女……あの子は、ある企業の重役の娘だ。」

 

「……身代金目当てで攫った、ってわけじゃなさそうだな。」

 

「あぁ……俺にはかつて、任務先で孤児になった少年を養子に迎えた。真っ直ぐで、優しい子だった。……だが、ある日、交通事故で……命を奪われた。」

 

倒れながら話すガイルの声は、どこか別人のように弱々しかった。

握り締めた手が、苦しげに顔を覆う。

 

「それだけなら、不慮の事故で終わった話だ……だが……問題はその後だ。息子を轢いた犯人は、先ほど言った企業の重役だった。あいつは酒を飲んで運転し、学校帰りの息子を轢いて逃げた。すぐに近くにいた管理局員に拘束された。だが――」

 

ガイルの瞳が、今までにないほど怒りに燃えた。

 

「翌日、奴は釈放された。」

 

「な……っ!?」

 

「信じられるか? 現行犯で捕まえたはずだった。だが上層部はこう言った。『事件当日、被疑者は会社での会議に出席しており、アリバイがある』と。……その直後、管理局はその企業から多額の支援金を受け取っていた。」

 

「そんな……」

 

「俺は自分の正義が信じられなくなった。管理局を辞めようとしたとき、直轄の上司に言われたよ。『空のエースだったお前が、血の繋がらない捨て子を失った程度で心を病むとは残念だった』……だとよ。」

 

「……ッ」

 

思わず、俺は血のにじむほど拳を握りしめた。

 

「……あの娘を攫ったのは、息子を奪ったあいつを引きずり出すためだ。奴の子を人質に、息の根をこの手で止める。それが俺の復讐だ。犯罪組織に身を置いたのは……管理局上層部への嫌がらせでもあった。かつて“空のエース”と呼ばれた俺が犯罪者になれば……管理局のイメージは地に堕ちるからな。」

 

「……それで……あんたの気が晴れるのか?」

 

「なに……?」

 

「あんたの悲しみも、怒りも……正当だと思う。だけど――それを理由に、罪のない子どもを巻き込んでいい理由には……ならないだろ」

 

「正論だな……だが、綺麗事だけじゃ、何も変わらん! 息子の無念を晴らすために、俺は――」

 

「……あんただって分かってるだろ!! そんなことしたって……息子さんが報われるわけじゃない! むしろ……悲しむだけだって!!」

 

「お前に何が分かるッ!!」

 

「分かんねぇよ!! あんたや息子さんがどれだけ苦しんだか……でも!! 今のあんたは……息子さんの命を奪った奴と同じことしてるだけだって、分かるだろ!!」

 

「……黙れェッ!!」

 

怒号とともに、ガイルが風の魔力で体を無理やり起こし、こちらへ飛びかかってくる。

 

「……俺はあんたを否定しない!! それでも、だからこそ――俺は、あんたを止める!!」

 

ガイルの拳に、ただ我武者羅に自分の拳を重ねた。

――ズドンッ!!

 

激しい衝突音のあと、まるで嘘のように、周囲を吹き荒れていた風がピタリと止んだ。

 

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