○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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セカンドミッション

夜の空気がひりつく中、一発の魔力弾が鳴り響く。

 

場所は、ロストロギアなどを遺跡から不法に採掘し密売に関与していた小規模な犯罪組織の隠れ家。

 

先の任務で壊滅させたグループの残党らしく、武装こそ貧弱ながら、魔道具の違法改造によってそれなりの戦闘力を備えている。

先ほどの発砲音は、どうやら違法改造された魔道具の試射らしい。

 

そんな彼ら残党を捕らえるために、特務行動隊に下された司令は――まさかの、長期間の張り込み。

今日で14日目。つまり二週間目に突入している。

 

「……長ぇ……。」

 

思わず、吐息混じりに呟く。

少数精鋭で潜伏任務に適している特務隊とはいえ、さすがに応える。

夜風に冷やされた体が、じわりと節々に軋むように痛い。

 

『…そろそろ奴らも油断する頃合いだな。ティーダ、索敵頼む。』

 

『了解』

隊長――シグナムの号令が、無線越しに聞こえた。

その声を聞いた瞬間、疲れでだらけ始めていた意識を一気に切り替える。

 

「ユウト、調子はどうだい?」

 

隣でティーダさんが軽く肩を叩いてくる。

すでにデバイスを展開し、油断なく周囲を見渡していた。

 

「まあ、体調はばっちりですよ、ほら」

 

ディジターを起動させると、淡い光が俺の腕元を包む。

夜の闇に魔力光が滲む。

 

「周囲の魔力反応、十二体。恐らく見張りだ。深部にさらに強い反応が集中している。リーダー格かな。」

 

ティーダさんが淡々と告げる。

さすがに二週間も潜伏し続けただけあって、敵の配置はほとんど把握済みだ。

 

「なら行ってきます、ティーダさん。」

 

「うん、バックアップは任せてよ。」

 

夜の空気が、緊張に震える。

長い長い張り込みの末、ようやく訪れた突入の時。

俺はディジターを構え、深い呼吸を一つついた。

 

そして、静かに闇の中へ駆け出した。

『フロント陣、まずは入り口を抑えろ!』

 

シグナムの号令と同時に、俺を含めた三人の隊員が前へ飛び出す。

 

「先手必勝…リボルバーナックル、カートリッジロード!」

 

クイントさんが先頭で拳を光らせ、真正面から突っ込んだ。次の瞬間――

 

「犯罪者に慈悲はありませんッ!!」

 

一撃。

入り口の見張りをしていたであろう魔力強化を施された盾を持っていた男が壁に埋まった。

 

「おっかねぇな、クイントさん……」

 

思わず呟くと、すぐ背後から声をかけられる。

 

「ユウト、任務中に私語はいけません……」

 

「いや、師匠……さすがにやりすぎじゃないですけね、あれは……」

 

ゆるんだ気持ちと剣を構え直しながらも、ついぼやく。

隣の師匠も小さく肩をすくめた。

 

「まあ……この二週間、ほぼ栄養食だけでしたから…食べ盛りな彼女にはストレスだったんでしょうか」

 

「……食べ物の恨みって怖」

 

そんな一連のやり取りをみていた敵の一人が、血相を変えて叫んだ。

 

「て、敵襲……!!」

 

「制圧――開始よッ!」

 

クイントさんが、さらりと言い放ったかと思うと、今度は四人まとめて一撃で吹き飛ばす。

 

「あっ、またカートリッジ使いながら吹き飛ばした……」

 

「戦闘データは後で見られるんですし…あまりやりすぎずに、大怪我を出さない方が…聖王協会としてはクリーンなイメージを出せてうれしいのですが…」

 

「このままじゃ物騒なものってイメージしかないです……」

 

呆れる俺の横で、師匠がヴィンデルシャフトを静かに抜く。

そのまま足音ひとつ立てずに、一人、また一人と敵を背後から気絶させていく。

暗殺者かと思うほどの身のこなしだ……シスターのはずなのに。

 

「こ、こいつら……やべぇ、ずらかるぞ!」

 

敵の一部が外へと逃げ出した。

 

「あ、逃げた……」

 

「よっぽどクイントさんが怖かったんでしょうね」

 

「いや師匠も大概……」

 

「何か言いましたか?」

 

「い、いえ…何も。」

 

背筋に冷や汗を感じつつ、俺は剣を握り直した。

 

外へ飛び出しながら通信を入れると、待機していたティーダさんとヴァイスが即座に反応した。

 

「ごめんバックアップ班…残党、東側通路を逃走中!」

 

『ティーダ、カバーいけそうか?』

 

「うん、まかせてよ、ヴァイス。――ロードカートリッジ、マルチレイド!」

 

裏口を抑えるために隠れていたティーダさんが木陰から現れた。

拳銃型デバイスが光りを宿し、魔力弾が次々と空を裂く。

放たれた弾丸は、逃げる敵の足元を次々に撃ち抜き、動きを封じた。

 

そして直後、師匠とクイントさんによって無力化されていく。

今回は出番なさそうかな…そう思った矢先。

 

『ユウト! 拠点内部から大型熱源反応!!お前から見て左側から装甲持ちが逃げてくぞ!』

 

ヴァイスの指示が耳元の通信機から響いた。

とっさに建物の窓ガラスに視線を向けると、巨大な影が高速で視界を横切り、出口へと突き進んでいくのが見えた。

 

「うん、見えたよ! 大型の機動兵器を確認――アンブレイカブル、は威力調整むずいかな…《フォースバスター・シャープシフト》!」

 

『SNIPE FORM.』

 

デバイスを狙撃形態に変形、高まる魔力を一点に集中させ、走り去る装甲車のような兵器を照準に捕える。

 

(装甲を抜きながらも、衝撃を抑えてパイロットを狙えるポイント、フレームの隙間……あそこなら!!)

 

「行けっ!!」

 

魔力弾が放たれると同時に、視界が一瞬白く弾けた。

精密に制御された魔力弾が、装甲と装甲の間のわずかな隙間を貫き、内部へ滑り込むように突きぬけた。

閃光の中、装甲車のドライバーシートで何かがぐらりと傾いた。

そして――パイロットはそのまま意識を失い、突っ伏した。

 

「よし……命中!」

 

しかし、気絶したパイロットの足はペダルから離れず、機体は勢いそのまま山道へ突っ込んでいく。

 

「ッ…まずいな」

 

『ユウトくん、カバーしますね!』

 

優し気な声と同時に、林の向こうから薄い光の糸が現れて幾重にも絡みつく。

シャマルの張った糸が次々と装甲車に重なり、その巨体はまるで蜘蛛の巣に絡め取られるように徐々に減速し――ガクン、と音を立てて完全に停止した。

 

『中の人も捕まえましたよ~!』

 

通信の向こうから、シャマルの明るい声が届く。

俺は深く息を吐き、ディジターを肩から下ろした。

 

そしてその後も順調に残党たちは次々に動きを封じられ、静かになっていく。

 

だが、次の瞬間――

 

「やめろォ!! 近づくな!」

 

倉庫の奥から、怒声が響く。

現れたのは、黒いローブに鎧を纏った大男。

その手には拳銃が一つ。そして銃口の先には――反対の手で押さえつけられた小さな少女。

髪はぼさぼさで、頬には涙の跡。

怯えきった目が、俺を見つめていた。

 

「武器を捨てろ…! 少しでも怪しい動きを見せたらこいつの命はねぇからな!」

 

大男の声は、ただの威嚇ではない。

追い詰められた獣のような、切羽詰まった本気の殺気が滲んでいた。

 

俺はディジターをゆっくり下げ、視線で周囲を探る。

師匠たちも、一瞬で沈黙して構えを解いた。

緊張が空気を張り詰め、冷たい汗が背中を伝う。

 

いつでも目の前の大男を攻撃する準備は整っている。

けれど今は、少女を巻き込む危険が高すぎる。

 

「落ち着けって……! こんなことしたって、あんたが逃げ切れるわけじゃ――」

 

「うるせぇ!! 逃げるとか関係ねぇんだよ!!

ここまできたら……もう、俺は――!!」

 

大男の目に、一瞬、怯えとも絶望ともつかない影が走る。

それがなにをしようとするのかわからない、怖さを感じさせる。

 

(やばいな、少し錯乱しているのか……このままだと……)

 

『チッ、こう来るか…』

ヴァイスの舌打ちが通信越しに聞こえる。

 

前回の任務で似たような状況があったから、こういう展開はある程度覚悟していた。

だが実際目の前にすると、やはり心臓が速くなる。

ゆっくりと、相手に聞かれないように通信機ではなく念話を飛ばす。

 

【ヴァイス……カバー頼めるか。いまからティーダさんが気を引くからーー】

 

『ああ……だが焦るなよ。そいつ、もうヤケクソだ』

 

ヴァイスの低い息遣いが、通信機越しに揺れた。

 

【わかってるよ…それじゃ、カウントと同時にフォーメーション開始だ。3…2…1!!】

 

俺のカウントに合わせてティーダさんが、自分のデバイスを大男の足元すこし手前に投げ落とした。

 

「ほら…これでいいかい?」

 

「わかりゃいいんだよ、わかれば…ほら、隣のやつも早くこっちに武器をよこせ!!」

 

大男は荒い呼吸を吐きながら、デバイスを拾おうと慎重に一歩、また一歩と近づく。

そして――木々の隙間が少ない、後方に待機していたヴァイスの射線がわずかに通る位置まで移動した。

 

 

ヴァイスが深く息を吸い、銃を構える音が聞こえた。

 

《Storm Raider. Target Lock》

 

『いくぜ……外しは、しない!』

 

その声の直後、一発。

 

乾いた衝撃音が空気を裂き、大男の腕をかすめた。

大男の手がはじかれ、持っていた拳銃が金属音を立てて床に転がる。

 

「ったァッ!?」

 

『今だ!』

 

ヴァイスの叫びと同時に、俺は魔力を脚へ集中させ駆け出した。

 

「――《フォースブースト》!」

 

《Force Boost!》

 

視界の端で背景が線となり、激しい空気抵抗を肌に感じながらも、大男との距離を一瞬でゼロに詰める。

 

「くそっ――!!」

 

大男が必死に少女を盾にしようとするが――遅い。

 

「チェーンバインド!」

 

魔法陣が大男の四肢を光の鎖が絡め取る。

硬質な音を立てて拘束が締まり、巨体が大きく揺れた。

ガクンと膝をつき、そして少女が解放される。

 

怯えた瞳が、俺を見上げていた。

 

「大丈夫、怪我はないかい?」

 

少女を抱き寄せると、かすかに首を縦に振るその体は、まだ小刻みに震えていた。

「うん…お兄ちゃん…ありがとう」

 

「よく泣かなかったな。偉いぞ…」

 

少女の肩をゆっくりとさすってなるべく落ち着かせる。

大男を拘束してから、どれくらい経っただろう。

息をつく間もなく張り詰めていた空気が、ふっと緩んだ。

 

『周辺の状況確認……状況終了です~!』

 

シャマルの通信が響き渡った瞬間、周囲の空気が一変する。

緊張で尖っていた全員の動きが、一斉に緩んだ。

 

「うむ……上々だな」

待機していたシグナムが静かに呟き、周囲を見渡す。

 

クイントさんは満足げに笑い、ティーダさんとヴァイスが軽く拳を合わせる。

 

「ふぅ……今回もギリギリだったね」

 

「ったく……心臓に悪ぃわ、いつも通り…な、ユウト?」

 

ヴァイスがぼやきながらも、こちらに向けて小さく笑った。

そして俺は――ふと思い出す。

 

「……やべ、俺だけカートリッジ使ってない」

 

思わず、周りをそっと見渡す。

視界の端で、ヴィータが鋭い目つきでこちらをじぃっと見ていた気がして、俺は慌てて視線を逸らした。

 

ティーダさんがくすっと笑いながら、俺の肩を軽く叩いてくる。

 

「部隊に指針的に、なるべくカートリッジの実戦データ集めないとだからね。……言い訳、ちゃんと考えときなよ、ユウト。」

 

「……はぁ、やっぱ怒られるやつか……。」

 

勝利の空気が辺りに満ちているのに、俺だけが胃の奥を軽く締め付けられるような気分だ。

 

仲間たちの笑い声が、やけに耳に響いていた。




なのは20Th記念リリカルウォッチパーティー…行きたい!!
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