楽園なんてなかった。   作:焼きすぎて焦げた炭

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今は無き初投稿のリメイクなので実質初投稿です。

今連載している別の小説もありますがそちらと交互にやっていきます。

高評価と感想、お気に入り登録してくれるとそれぞれの数だけ私が奇声を発しながら喜びます。



【零章】楽園に行きたかった
いきたかった。


 

物心ついた時から、俺は独りだった。

 

このキヴォトスの最下層、ブラックマーケット。そこの一角で俺の人生は始まった。

誰かを求めた。人は、一人では生きていけない。ましてや、子供など。

さっさと諦めるのが吉だ。まあ死ぬだろうが、運が良ければもしかしたら奴隷程度には成れるかもしれない。

 

でも———

 

「しに、……たく……ない。」

 

何処かで誰かが発していた言葉。俺が発した初めての言葉がそれだった。

 

幼いながらにその『誰か』の言っていた『し』と言う言葉が何よりも恐ろしく、何もかもの終わりの事だと理解した。

 

そしてそれが、己の身に近付いている事も、理解した。

 

いきたかった。

 

裏路地なんかじゃない、もっと綺麗な場所で『生きたかった』。

こんな所ではなく、もっと美しい場所に『行きたかった。』

 

俺は何の為に生まれてきたのか。

俺は何をしに生まれてきたのか。

 

分からないまま『し』を迎える(終わる)事は絶対に嫌だった。

 

だが、限界は来る。

最近は雨が降らなかったし、ごみ箱も軒並み荒らされてて、飲まず食わずでもうすぐ三日経つ。

 

『し』が、来る。

 

何故?分からない、どうして俺がこんな目に。

 

「し…にたく……な…い。」

「いや……だ。たすけ……て。」

「だれかぁ……。」

 

語彙なんてものは無い。俺は誰かの発した醜い喚き声を馬鹿の一つ覚えの様に繰り返す事しか、出来なかった。

 

そんな俺に手を差し伸べたやつが居た。

 

「……だいじょうぶ?」

 

そいつは俺よりもっと小さい子供だった。情けない話だ。本来なら逆であるべきだ。

だがそいつは、俺に自分がやっと手に入れたであろうパンを半分分け与えた。

 

無我夢中で貪った。喉に何度かつまりかけたが無事にそれを飲み込むと、そいつは居なくなっていた。

 

俺は安心を感じたその直後にまた絶望した。

こんなうまい話が、そう何度もあるだろうか。

 

俺はこの時、自分の中の『幸運』と言うものを使い果たしたとさえ思えた。

 

それからはとにかく、よく『視る』ようになった。

 

『誰か』の悲鳴を、動きを、表情を。

よく視て、考察し、セーフティに動く。

 

そうしていく内に、俺は何かを盗む才能があると知った。

金を持ち、油断しているやつから奪った。

 

人から盗んだ金で初めて腹いっぱいになるまで飯を食った。

 

気分が良かった。何もなかった自分から脱却し、『成長』できたとさえ感じた。

 

盗み、飯を食う。足りなくなればまた盗む。

そこに何も感じなかった。ここに居る金持ちは様々な人間から奪っているのだから、むしろ当然とさえ感じた。

 

だが、そう上手くは行かなかった。盗みがバレた。

 

油断、慢心、原因は色々あったがそんな事を反省する暇は無かった。

 

簡単に言うと『汚された』。

どうやら俺のような『人型の男』と言うのは大変珍しいそうで、人間としての尊厳を弄ばれ、二日間何も食えずに裸で何処かの路地に捨てられた。

 

死んだなと思った。

もはやどこへ行く体力も残されていなかった。

目的地もなく這ってでも前に進んだ。

 

死にたくなかったから、

それだけの理由で。

 

だが気力で動かしていた体も遂に動かなくなった。

深い眠気に誘われて、俺の意識は闇の中へ落ちた。

ああ、終わってみれば呆気なくて、虚しい人生だったな。

 

———

 

———

 

———

 

「えっ!?この子……、どうして裸でこんな所に?とにかく、助けないと!!」

 

———

 

———

 

———

 

目が覚めると、そこは見知らぬ天井だった。

どうやら此処は『教会』というもので、俺はここの管理をしている若いシスターに拾われた様だ。

 

シスターの名は『アマカ』といい、とても優しかった。その若さで両親は蒸発。育ててくれた祖母は数年前に死んだらしい。

そして、祖母の教会を守る為、『トリニティ総合学園』とやらを中退し、バイト詰めの生活をしていた。だが、アマカは折れたりしなかった。

 

彼女は色々な事を教えてくれた。最低限の勉強だけではない、人としての倫理観というものを教わった。

 

俺がアマカを助ける為に顔も知らない誰かから金を盗んできた時、泣きながら平手打ちをした後、抱きしめてくれたこと。

俺が盗んだ相手を必死に探し、一緒に謝りに行ってくれたこと。

『あの事』を思い出して吐きそうになっている俺の隣で手を繋いで寝てくれたこと。

他愛のない話を語り合い、笑い合うこと。

そんな事を通して、俺は『愛情』を知った。

 

アマカの様になりたいと思った。

 

俺はブラックマーケット生まれということで周りの人間から疎まれていた。

 

「出ていけ。」「汚らわしい。」「気持ち悪い。」「見ているだけで不快。」

ありとあらゆる暴言を受けた。だが俺は何もしなかった。

アマカの様な人間のほうが少ないなんて当たり前のことだと分かっていたし、何より俺は確かにあの場所(ブラックマーケット)で屑だったから、今は受け入れた。いつかアマカの様になって認めてもらおうと考えた。

 

ここにいれば、俺はもっと優しく、聡く、強く在れると思った。

 

アマカの下に居れば。

あの、善人の様になりたいと願い続ければ、いつか。

 

きっとアマカみたいな『いい人』が本当に幸せになれると思えたから。

 

だからさ——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アマカ(善人)がさ、何者かによって放火された教会で焼死するなんて、思わなかったんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

なあ、俺は、アマカは、そんなに悪いことをしたのか?

あんな善人が死ぬまで信じていたんだ。いるんだろ?教えてくれよ。神様。

 

結局、幸せになるには、どうしたらいいんだ?

なあ、誰か(アマカ)。もう一回だけでいいんだ。教えてくれよ。

 

 





煽てると執筆が速くなるらしい。
他の作品も見てそこでも煽てるとともっと速くなるらしい。

見たい話はありますか?【50くらい集まったら書きます】

  • オボロとアマカのほのぼの話
  • 4バカのドタバタ話
  • うるせえ本編書け
  • 好きにしろ
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