楽園なんてなかった。   作:焼きすぎて焦げた炭

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いいですか、怒らないで聞いてくださいね。
元ネタがあるとは言えギャグ小説と鬱小説同時連載なんてバカじゃあないですか。脳が切り替えられねぇ…。誰ですか始めた人は……。私でしたね。何とかしてやっていきます。

舞台は過去編から二年後。
ブラックマーケットで無様に死にかけていた所を蒼森ミネに救われたオボロはトリニティに進学しました。
その後は外面の良さで一定の地位を獲得できたようです。
補修授業部が発足する直前からですが最初未来描写を挟んだせいで時系列がかなりめんどいので後書きにサラッと書いておきまする。



【一章】楽園条約・一


―――分かっていたはずだ。

 

―――知っていたはずだ。

 

トリニティ(ここ)には、陰湿なやつが少しだけ多いと。

水面下での権力争いが激しい所であると。

 

だからこそ俺は護ろう。

その中でも明るく、気高い人達を。

何も知らず日々を謳歌出来ている人達を。

 

ヒフミの勇姿。あの日、報復と怒りに塗れたこのトリニティを救った奇跡。

あれを見た時から

そう、決めた筈だった。

 

今日は雨だった。

 

雨は、嫌いだった。

天使(アマカ)を失って地獄に帰った時も、

救い(皆んな)を失って地獄で嘆いた時も、

 

雨は俺の熱望する心を嘲笑うかのように降り、身体から熱を奪っていった。

やめろ。無駄だ。諦めろ。

そうしている様がお似合いだと。

そうしている事がお前らしいと。

 

雨は、天啓だった。

天使(アマカ)を失って地獄に帰った時も、

救い(皆んな)を失って地獄で嘆いた時も、

 

雨は俺の熱望する心を引き留めるように降り、身体から毒を奪っていった。

やめろ。駄目だ。止まれ。

その道ではお前に救いはないと。

その道ではお前に破滅が来ると。

 

嗚呼、雨よ。お前は何故それ程まで優しいのだ。

俺が熱という悪魔に浮かされ、崖へと誘われてゆく時、雨は俺を沈め、地に足を着けさせんとしてくれていたのだ。

 

雨こそが救いだった。雨こそが味方だった。

俺は愚かにも、その事に今やっと気が付いた。

そしてそれは、もはや手遅れとなった今でも変わらない。

 

周囲を見る。

美しく整えられ、守ってきたであろう肌は腫れ、骨は折れ、全身から血を噴き出して倒れている者達。

誰によるものかは言うまでもない。

 

己の手を見る。

血に濡れ、紅を超えて深紅へと至った手。

辛抱の足りない屑の罪に塗れた愚かな手。

雨は強まり、そんな俺の深紅を洗い流そうとする。

 

もういい。やめろ、やめてくれ。

 

嗚呼、雨よ。どうかこんな恩知らずの事など忘れ、お前を正しく理解する者の下へ行ってくれ。

 

倒れている奴らを殴った時、撃ち抜いた時、

俺は何と言っていただろうか。

 

あぁ、思い出した。

『かえせ』、だ。

『返せ』。『帰せ』。『還せ』。

 

俺の大切な家族達を返せ。

 

俺をあの温かかった家に帰せ。

 

俺から奪ったお前等を土に還せ。

 

お前らのような人間がいるから、俺は―――と。

 

下らない。お前のような人間だから失ったのだろうに。

 

こういった時は乾いた笑いが出た。

だが、最早そんな笑いすらも出せない。

 

 

死にたい。いや、死なねばならない。

俺が生きる事は罪だ。流されるまま生きた俺は罪人だ。

生きたいなどと浅ましく考えた事が間違いだった。

これまで天使から、仲間から、天から与えられたチャンスを俺は全て無駄にし、踏み躙り、ここまでズルズルと生き続けた。

 

―――生き続けて、しまった。

 

死のう、今から。

逝こう、家に帰ろう。

 

そして、そこで還ろう。

『数年で様変わりした帰り道』を歩き、目的地を目指す。

 

俺の愛情(哀情)の始まりへ。

焼け落ち、骨の埋まってない墓だけが在る。あの場所へ。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

トリニティ自治区の一角で、茶会が開かれた。

男女一人ずつで計二人。

しかしその雰囲気は甘いものではなく、それどころか張り詰め、緊迫した雰囲気が広がっている。

 

「……。」

 

「どうかされましたか?」

「お茶にもお菓子にも変なものは入っていません。別に、上司である私よりも先に食べる事についてとやかく言及するつもりはありませんよ?」

「第一、本日は私が開いた会で貴方は客なのです。遠慮する事はありませんよ。」

 

「御託はいい。『お前がオレをセーフハウスに呼んだ。』それが全てだ。条約締結前でピリ着いている時に私用でホストであるお前が危険人物を呼ぶか?」

「表には出せない類の仕事だろう、今度は何をすればいい。条約反対派を表舞台から引きずり落とせばいいのか?」

 

少年のその答えに満足した様に少女は含み笑いを浮かべ、紅茶を一口飲む。

 

「ふふ…流石オボロさん。話が早くて助かります。はい、概ね間違ってはいません。」

 

「オボロさん、貴方には―――」

 

 

 

 

 

 

 

「―――『補修授業部』に入部してもらいます。」

 

 

 

 

「…………へ?」

先程までの雰囲気とはうって変わり間の抜けた声が静まった部屋に響いた。

 

「お、おい!?ちょっと待ってくれよナギナg「ナギサ様。」ハイ…ナギササマ……。」

 

呆れた様に一つ息をつき、改めて『ティーパーティー現ホスト桐藤ナギサ』は『ティーパーティー役員 砂月オボロ』に職務内容を伝える。

「今度、成績の振るわない生徒達を集めた『補修授業部』を結成します。そして貴方にはその中で新しく赴任した『シャーレの先生』と共に教鞭をとって貰います。」

 

「……?分からないな。それがどうして『条約反対派を引きずり落とす事』に繋がるんだ?」

 

「話は最後まで聞きなさい。勿論、唯の家庭教師的な役割であればわざわざ貴方を使いません。貴方にはやってもらいたい仕事がありますからね。」

「補修授業部。その中に、『トリニティの裏切り者』がいます。貴方はそれを見つけ出し、退学させる手伝いをして頂きたいのです。」

 

「……その定義と確証は?」

 

「『エデン条約を破壊し、トリニティに混乱をもたらそうとする者』。確証はありません。唯、生徒会の情報網を全て使って調べ上げた。この事実によって私は補修授業部に裏切り者がいると『確信』しています。」

 

「そして、こちらが容疑者、もとい今回の補修授業部メンバーになります。」

ナギサがテーブルに封筒を置き、それをオボロは雑に手に取る。

 

【浦和ハナコ】

選出理由

進級時から成績の著しい低下。また、校内を水着で徘徊するなどの奇行。

 

「(絶句)」

「私情を持ち込む事は良くありませんが、トリニティの品性の為に裏切り者で無くても退学させた方がいいような気がします。」

「……そう思う。」

 

【白州アズサ】

選出理由

トリニティ外部の学校からの急な転校。立て籠もり、暴力沙汰等の問題行為。

 

「……。」

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。」

 

【下江コハル】

選出理由

特になし。事故。実力で補修授業部送りになった。強いて上げるなら正義実現委員会への牽制か。

 

「草。」

「辛辣ですね。元正実である貴方の後輩でしょう?」

「乾いた笑いすらでねぇって事だよ…。」

 

【阿慈谷ヒフミ】

選出理由

ブラックマーケットに出入りしている。また、銀行強盗団の長という噂がある。

 

「アンタがよく呼んでたから知ってるけど一見普通に見えてそんな一面が―――ってどうしたナギサ様。」

「……なんでもありません。」

「そうか。」

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 ̄ ̄

 

 

 

「そういやナギナg「ナギサ様。」……『退学』つってもそう簡単に出来る物じゃないだろ?そこはどうするんだ?。」

 

「そこは、『シャーレ』を使います。あの超法規的機関の力を借りれば可能です。」

 

「わーお用意周到。おっかないね〜。」

 

「それで、この依頼。受けてくださりますか?」

 

「……あぁ、勿論さナギサ様。元よりそれ以外の選択肢なんて、オレには無いんだからな。」

 

空洞のような瞳で少年は言う。第一、オボロがここで生活できているのは全て生徒会が許しているからに過ぎない。こうして軽口を叩けど、機嫌を損ねればこんなちっぽけな1存在など相手は容易く潰せる。

 

だから、上の指示には従うしかない。

最も、オボロには逆らう気もそれをする気力もないが。

 

「……本当に、受けてくださるのですね?」

 

「くどい。やる以外の選択肢ないだろうにさ。全く、意地の悪い人だよ、ナギサ様は。」

 

「……。」

書類しまい背を向け、軽く手を降って少年は立ち去る。

少女はそんな少年を、唇を噛み締めながら見送った。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

一つ、ナギサ様に言わなかったことがある。

それは、『裏切り者』の正体がわかったかも知れないということだ。

 

「『白州 アズサ』ねぇ。」

この時期に転校してくる者は少ない。だからコイツの事は軽くだけ調べていた。

 

明らかに戦闘慣れした動き、ガスマスク。そして時々口にするらしい『虚しい』と言う言葉。

 

あの日、救いを失った日。

皆を殺した奴等の一人が口にしていた言葉と一致する。

気にしない様にした。何かの間違いだと思う事にした。

 

だが、今日のナギサ様の話。

「『トリニティに裏切り者がいる』…か。」

 

そしてその候補にいる『白州アズサ』。

いや、まだ確証を得たわけではない。予測を事実であるかの様に語る事は情報屋として失格だ。

 

なにより、奴がもしあのクソッタレ共の仲間ならば、決着を着ける権利は俺にある。

だから悪いな、ナギサ様。

この件は俺が個人的にも進めさせてもらう。

必ず情報を吐かせ、あのクソッタレ共との因縁をを終わらせてやる。

 

それは俺を虚無から解放し、色を取り戻させるだろう。

それは俺を悪夢から解放し、生まれ変わらせるだろう。

 

 

 

そうしてもし、生まれ変われたのなら―――

 

 

 

「皆の光を、正面から受け止められるのだろうか。」

深海かと見紛うほどに暗い、己の視界。

 

ナギサ様のように誰かがオレを受け入れ、認める度。

そいつ等が周りからの目を気にせず、話しかけてくる度。

 

俺の目は焼かれ、その光景を直視できなくなる。

いつの間にかこのオーダーメイドのサングラス(コイツ)が無いとまともに前すら見れなくなってしまっていた。

光を殆ど通さず物の輪郭の識別にすら苦労するこの視界(世界)でしか、俺は堂々としていられなくなった。

 

過去に決着をつけ、俺が本当に『オレ』に成った時。

きっと俺は、色を取り戻した世界で改めてここにいられてよかったと伝えられるだろう。

 

ただ、始めはナギサ様が良いな。

始めて俺の目を焼いた(オレを認めてくれた)彼女に、伝えたい。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

一つ、オボロに言えなかった事がある。

それは、退学になる可能性があるのはあの四人だけではないということ。

 

彼に渡さなかった最後の書類を見つめる。

 

【砂月オボロ】

選出理由

ブラックマーケット出身でそれ以上の過去が不明。潜入や情報屋として非常に優秀。

 

彼をスカウトしたのは単純に実力があったからだった。

人望があり、尊敬され、何よりも1年生の最終成績が浦和ハナコに次いで2位。

 

そんな人物を己の派閥に引き入れる為だった。

 

しかし彼はそんな欲にまみれた私の行動に感謝し、これまで様々なことをやってくれた。

皆がやりたがらないことを進んでやる様。

『自分に向いているから』と、汚いこともやる様。

 

気がつけば仕事の相談を彼にするようになった。

 

私にとってヒフミさんと同じ。いや、立場の壁がある彼女とはまた違う、上司と部下である筈だが、同時に対等な友人であるように思えた。

互いに立場があるから少しだけ話しにくくなってしまった幼馴染に相談したかった事を、私は彼に伝えていた。

 

だからこそ、こんな事はしたくなかった。

この選択は、私を支えてくれた二人を地獄に叩き落とす選択になるから。

 

更に言うなら彼は浦和ハナコと違って二年生になっても優秀だったから、補修授業部に入れる為にこの様な手段を取ることになってしまった。

 

つまり彼は現在、自分で自分の首を絞めているのだ。

それを知った時、彼はどんな顔をするだろうか。

私に対して、どんな感情を抱くだろうか。

 

軽蔑か、それとも―――

少なくとも良いものではないだろう。

 

もはや『ごめんなさい』で済む問題ではない。

それでも私は、この世で一番大切な幼馴染を選んだ。

 

直に私は死ぬだろうから、あの世で二人への行いを懺悔しながら喜んで苦痛を味わい続けよう。

 

だが、一つ叶うのなら。

ヒフミさん、オボロさん。

裏切り者を見つけ出し、貴方達が此処へ帰還する事を、

地獄で苦しむ『罪人()』を忘れ、幸せに溢れる事を、

 

 

 

私、桐藤ナギサは願っています。

私は一人、セーフハウスで祈りを捧げた。

 




時系列
家に帰ろうとしているオボロ(未来)
ナギサ様と話してるオボロ(現在)

あと試験的に朝に投稿してみました。また新しくアンケート貼っつけておくのでいつに投稿してほしいかぜひ投票してください。

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