ブルーアーカイブ異聞録 カヤ*転生者 作:連邦生徒会のモブ書記
「カヤちゃん、お説教です。」
アビドスでの件をユメノちゃんに相談した所、久々に彼女の教育的指導が始まった。
「カヤちゃんのやり方は正しいです。でも、ミレニアム時代の悪い癖が出てしまっています。」
借金そのものが増える原因となった砂漠化を改善し、アビドスに人を戻す事で学校としての収入を増やし借金完済に繋げる。
環境問題を解決すれば雇用を生む工場の誘致は可能であり、地価も安くかつての路線網が閑散として残るアビドスであるからできる再開発計画もある。
それが私の提案しようとしていたやり方だった。
「その『やり方』はアビドス高校の生徒達にとって本当に必要な事なのでしょうか?」
ユメノちゃんは続ける。
「シャーレはあくまでも『問題解決』のための組織です。」
「そして先生は、生徒の意思を尊重している」
ここまで言われて得心した。
私はどうやら最初の時点からお節介だった。
「今回の私は出しゃばりのコンサルタントのような真似をしていたという事ね。」
『どうしたいか』を決めるのは私でも先生でもなく、アビドス高校の生徒なのだ。
『今、すぐ 守りたい』という気持ちが先行して正論の暴力を振るってしまっていたようだ。
「つまり『最善手』が何時だって最適解とは限らない、という事ね。」
私は自嘲する
「そうです、アビドスは彼女達が今まで必死になって守って来たものです。それに…………カヤちゃんの責任ではありませんが、私達は恨まれる立場にあります。」
「わかっているわ……だからこそ今回はそれが裏目に出てしまったのだけれど。」
恨まれる事はこの役職……いや、連邦生徒会に入った頃から覚悟は出来ていた。
それはキヴォトスの行政を司る連邦生徒会の義務であり職責である。
「遠回りだとしても『
私は急ぐあまりに大切な事を忘れていたようだ。
「『
自分の言葉が自分に突き刺さる。
脳裏にフラッシュバックするのは崩壊した町、絶望に呑まれる人々の表情。
私いつ崩壊するかもわからない脆い日常を守りたかっただけなのだ。
訪れるかもわからない不確定な未来を得る利子のために今日を死なせてしまっていては本末転倒なのである。
『今日という現実』を守らなければ『明日という奇跡』は訪れない。
明日奇跡が起こるかも知れないという言葉を
キヴォトスの『今日』を、ありふれた日常を『明日が来ること』の保証の為に『今、すぐ』守る
だけれどもその『今、すぐ』という考えが行動の失敗に繋がってしまった。
しかし、気づいた以上はもう間違えてはいけない。
「アビドス高校の借金関係の調査報告書はあるかしら」
プランBとして蕪木副官に指示していたアビドス高校の調査報告書を受け取る。
「さて、一体どんな厄災が砂漠に埋まってるのでしょうか?」
頭を痛めながらも私は資料に目を通した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数日後、ようやく仕事が一段落した私は日も暮れた頃にアビドス中央駅にたどり着いた。
衰退著しいアビドスであれども流石に中央駅付近ではネオンに彩られた夜の街が雑踏を照らしている。
流石にこの時間帯からアビドス高校に向かう事も難しいので今夜はアビドス中央駅付近のホテルに宿泊する予定だ。
部屋は1泊5000クレジット程度の典型的なビジネスホテル。
シャーレの経費を使用している以上、絶対に贅沢は許されない、
「さて………夕食はどうしましょうか?」
チェックインを済ませ部屋でゆっくりしようとするも、普段の癖からから何か仕事をしていないと落ち着かない。
現在できる仕事は終わっているので夕食でも食べて気を紛らわせようとする。
素泊まりかつホテルに食堂は無いので夕食を手に入れるとしたら外食ないし店での購入となる。
もちろん外食という選択肢は無い
決して経費節減ではないが、冒頭に述べたようにどうも私の身体は贅沢品を受け付けない傾向にある。
最低限のサプリメントと生鮮野菜と乾パンがあれば生きられる体質なのだ。
サプリメントと乾パンは携行しているが生鮮野菜は流石に持ち歩いていない。
最悪生鮮野菜が無くとも問題は無いのだが数少ない好物なのだ
故に淡い希望で生鮮野菜を探して夜の街を歩いていると・・・・
「・・・そんな事できない」
黒髪ツインテールの少女が近づいて来る姿が見えた。
「黒見・・セリカさん?」
「・・・・あんたは確か・・・」
「シャーレの不知火カヤと申します。」
黒見セリカは若干疲れたような表情になる
「ほんと今日は色々あるわね・・・何か用なの?」
「いえ、シャーレの業務として泊まりがけでアビドスに来たのですが生鮮野菜が欲しくなってしまいスーパーを探しています。」
すると黒見セリカは途端に呆れた表情になり
「アビドスでこんな時間にスーパーが空いているはずないでしょ・・・近くにコンビニがあるからそこで買いなさい!」
なんだかんだで面倒見がいいのか丁寧にコンビニの場所を教えてくれた。
「まったく・・・先生といいあんたといい調子が狂うわ。この前の遭難といい先生の補佐ならしっかりアビドスの事を調べてから来なさい!!」
ぐうの音も出ない、それはたしかに私のミスでした!
それと・・この前の件についても今、謝るべきだと考えた。
「先日の件も含めて申し訳ありません。あなた達がどのような思いでアビドス高校を守って来たかという事を私は考えられていませんでした。」
私は頭を下げる。
黒見セリカは驚き、少しバツの悪そうな顔をしながら
「私も・・・途中で話を遮って、悪かったと思っているわ」
彼女に非は無いはずなのに謝罪をする。
「あの時、怒られたのは当然だと思います。それだけこの地を大切に思われているのですから」
黒見セリカはむず痒そうな表情をしながら
「この辺も結構人が居なくなったし、治安も悪くなって来たから気を付けて帰るのよ」
畳かけるように会話を終わらせる。
そんな彼女の優しさに
「ご心配ありがとうございます。腕に自信があるとは言えませんが、逃げる事くらいはできますので、セリカさんの方こそお気をつけてください。」
つい心配彼女をしてしまう。
「人の心配をする前に自分の心配をしなさい!」
こうして私達は別れた。
翌日の騒動も知らずに、
STANDBY∶0 MAGAZINE 11/12