ブルーアーカイブ異聞録 カヤ*転生者 作:連邦生徒会のモブ書記
第1話∶対策委員会へようこそ!
私が連邦捜査部シャーレの手伝いを行うようになって数日が経過した。
この数日でシャーレの噂はSNSを中心に広がり、元々あった嘆願に加えて更なる嘆願が矢継ぎ早に送られて来ている。
これは良い兆候でもある。それだけ生徒にシャーレが受け入れられているという事の裏返しなのだから。
「先生、この支援要請はいかがでしょうか?」
その中でふと気になる支援要請を見つけたので先生に渡す。
差出人はアビドス高等学校の奥空アヤネという人物からだ。
手紙には丁寧な文章で、アビドス高校の置かれている厳しい現状と窮状に対する支援要請が書かれている。
「"アビドス高等学校?"」
「昔は巨大な自治区でしたが……気候の変化等の原因により昔日の面影はありません。」
「"気候の変化で?"」
「元々の土地柄については私も詳しくは知りませんが、砂漠化が進んでいるという情報は得ています。」
アビドスでの気候変動については私的な調査を行っていたが防衛室長になるまで時間が足りずそれ以上の調査は出来ていない。
つまり、現地の事前情報が少ないのだ。
「噂によると街の中心部で遭難する人が居るという話もあります。………もし真実であれば相応の準備が必要になる可能性がありますね。」
「"それは流石に誇張が過ぎない?"」
「ふふふ・・・あくまで玉石混淆の噂話ですからね。」
流石に冗談が過ぎるだろう。
私も先生もここで迂闊にも下調べを怠ってしまった。
このツケは後々私達に回って来るのだが、今はまだ知る由もなかった。
「それよりも学校が武装組織に襲撃されているのは由々しき事態です。」
衰退したとはいえ自治区の中心とも言える学校を襲撃するにはそれなりの動機づけと戦力が必要だ。
十中八九背後にバックボーンが居るだろう。
「"アビドスに出張する"」
先生の判断は即決であった。
「弾薬や支援物資の手配は道中に行います。アビドスでしたら少々伝手がありますので。」
乗りかかった船である。幸いにも数日間はリモーワークでも差し支えのない業務しか入っていない。
「"助かるよ、カヤ"」
私は『とある会社』にメールを送信し、追加で装甲指揮車の手配をユメノちゃんにお願いした後先生に付き従ってシャーレを退出し、一路アビドスに向けて出発した。
シャーレから出る直前
「あぅぅぅ………私の出番取らないでくださいよ〜」という声が聞こえた気がするが、シャーレには先生と私しか居ないのでおそらく気の所為だろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
熱い日差し、照り返すのは黒き
ここはアビドス砂漠
「私のミスでした」
思わず呟いた。
「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての
「結局、この
「"カヤ、大丈夫?"」
先生が精神的ダメージを受けて打ちひしがれる私を心配してくれるが、明らかに肉体的な限界を迎えようとしているのは先生の方だ。
「私は大丈夫です。過酷な環境には慣れていますので、むしろ先生の方が……せめて指揮車に乗れていればこんな事にはならなかったのに。」
アビドス砂漠で遭難して3日目。
こうなってしまったのはいくつかの不注意と不幸が重なったことが原因だ。
アビドス中央線に乗りアビドス高校への最寄り駅で下車した所、駅の正面では不良生徒による戦車まで持ち出した
私は先生の安全を最優先する為、
これが全ての間違いだった。
私達は事前情報不足もあってか、アビドス高校とは逆方面に逃げていたのだ。
本来、アビドス中央駅付近の『とある会社』の建設予定地で支援物資を積載した私専用の装甲戦闘指揮車『疾風号』(個人所有)を受領し、そこからは装甲車でアビドス高校へと向かう予定であった。
一応
私が居なくても結末は対して変わらなかった気がするが
完全に私の失態である。
「"とりあえず……カヤが大丈夫そうで良かったよ"」
先生が
砂漠を想定していたので最低限の水と食料は携行していたが、まさか補充出来る店が存在しない事は頭に無かった。
とりあえず優先的に先生は携行した水分等の補給をしてもらう事にし、とある事情で過酷な環境に耐性のある私は廃屋などから入手した保存期間の少し怪しい非常食で済ませる。
「"ごめんね、大人なのに"」
「いえ、むしろ先生に倒れられた方が困ります。」
先生は申し訳なさそうにしているが、この状況は私の失態が原因でもある。
兎に角、現状を整理すると
①砂漠の真ん中で2人きり、アビドス高校の方向も天測を用いた大まかな向きしか分からない。
②デバイスは圏外、仕事も数日分を先行して送ったので救助には
③携行食料は2日分(2人)、先生に優先して食べて貰えればしばらく持つが、何より水が乏しい。
④現地に直行したため私達がアビドス高校に向かっている事をアビドス高校の生徒は知らない。よって現地人による捜索隊は期待出来ない。
⑤先生の体力が限界(一番深刻)
なかなかの詰み具合である。
(キキーッ)
「………大丈夫?」
頭を抱えそうになったその時、救いの神は意外な所から来た。
ロードバイクに乗った銀髪の少女が私達を見つけて声をかけてくれたのだ。
第一村人発見………ということを考える余裕もなく。
「強盗に遭ったとか?もしくは事故?」
「いいえ、単純に遭難しました。」
端的に現在置かれている状況を話す。
「ホームレスじゃないって事?」
確かに私の着用している連邦生徒会の制服も、先生のスーツも砂まみれで汚れているが、ホームレスに見られてしまったのは少し悲しい。
ここで私達がアビドスに来て遭難している経緯を話す。
「用事があって一昨日この街に来たけど、遭難して補給も出来ず力尽きかけていた、と。」
「はい、なんともお恥ずかしい話ですが。」
「ああ。ここは元々そういう所だから。食べ物がある店なんか、とっくに無くなってるよ。」
噂話はどうやら事実だったようだ。
「こっちじゃなくて、もっと郊外の方に行けば市街地があるけど。」
どうやら中心部ほど栄えているという考えは間違いだったようだ。
「土地勘がない?………なるほど、この辺は初めてなんだね。」
「見た感じ、連邦生徒会から来た大人の人みたいだけど………お疲れ様。学校に用があって来たの?」
「この近くだと、うちの学校しかないけど……もしかして『アビドス』に行くの?。」
地獄に仏とはまさにこのような事である。広い砂漠の中で探していたコンタクトレンズを見つけたような状況なのだから。
「………そっか。久しぶりのお客様だ。それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだから。」
銀髪の少女が道案内をしてくれる事になったが、ここで重要な事を思い出す。
先生の体力が限界なのだ。
「え?疲れて動けない?どうしよう、これ一人乗りだから……」
先生を背負いたいのは山々だが、私はキヴォトス内でも1位2位を争えるくらい非力な自信がある。
60キロ程度の成人男性を背負って歩ける自信がない。
私が逡巡していると………
「まあ、その方がいいか」
銀髪の少女はロードバイクを路肩に停めると、先生を背中に背負った。
「ロードバイクは私が運びます。」
「……あ、待って。」
私がロードバイクを押そうとした時、銀髪の少女が少し困った顔をしていた。
「どうかされましたか?」
距離が離れているので先生と銀髪の少女が何か話しているがよく聞こえない。
「………気にしない……むしろいい匂い……まあ良いか」
少しやり取りが気になったが銀髪の少女はそこまで気にしている気配は感じられないので気にしない事にする。
「それじゃ……しっかりつかまってて。」
そう言うと銀髪の少女は……
「え?」
凄まじい脚力でダッシュを始めた。
その日、私の足の筋肉は死んだ。
STANDBY∶0 MAGAZINE 11/12