ブルーアーカイブ異聞録 カヤ*転生者    作:連邦生徒会のモブ書記

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※キヴォトスで標準的な教室の机の天板は防弾仕様です(迫真)


第2話∶アビドスでの初日

あれからアビドス高校にたどり着いた私と先生であったが、私達を助けてくれた少女ーーーー砂狼シロコが人攫いの疑いをかけられたり一筋縄ではいかなかった。

 

無論、先生が自分の立場を明かした事でその容疑は氷解したのであるが、

 

「これは……ABCグループ製の弾薬です!」

手紙を出してくれた少女ーー奥空アヤネさんが『とある会社』から支援物資として送られた荷物を開封して驚く。

 

それもそうである。キヴォトスでも知る人ぞ知る会社が製造した純正品の弾薬が大量に補給されたからだ。

 

キヴォトスで毎日湯水の如く使用される弾薬の半数はカイザーコーポレーション製ではなくABC(Aleph&Bullet Chemical)グループの一社であるABC火薬が製造を担っている。

 

「一応『試供品』という形になりますが……アビドス支部の『厚意』でリストに加えさせて頂きました。」

新開発の高性能火薬を使用したショットガン用の銃弾や携帯用対戦車火器(110mm個人対戦車弾)携帯用防空火器(M A N P A D S)といった、そこそこお値段の張る消耗品のセットだ。

 

キヴォトス人にとって武器とは己の安全保障の具現化である為、その武器が弾薬不足で使えない事が何処まで心細いが私には分かる。

 

「ん、カイザーコーポレーション製の粗悪な弾薬しか手に入らなかったから助かる。」

 

「あと……これは……」

 

「それもABCグループからの厚意でリストに加えて頂いた飲料です。」

 

とある品種のみかんの果汁をそのまま抽出したストレートジュースだ。

トリニティに流れれば250mlが6本入りで18000クレジット程度の価格は付く数量限定販売のABCビバレッジ(飲料)では名の知れた人気商品である。

更にブラックマーケットではその数倍するという噂もある。

 

「これはあくまでも企業の厚意です。送られた飲料の量が多少多くても所詮は食べ物。その後の品物がどうなろうと誰も気にする人はいません。」

形式というのは大切だ。表立ってアビドスを支援すれば私の立場的に連邦生徒会として動いた事になりかねない。

これは各自治区の問題に不介入の方針を取る現在の連邦生徒会の意向に反するものとなる。

 

あくまで『地元企業の厚意』という形にするべきである。

 

「………支援に感謝します」

アヤネさんには意図が伝わったようだ。

 

私にはこの程度の助けしか出来ない事が申し訳なくなる

 

「弾薬が届いた事をホシノ先輩に知らせなきゃ!」

黒髪ツインテールの少女ーーー黒見セリカが『ホシノ先輩』という人物を呼びに行こうとしたその時、

 

(ダダダダダダッ!)

 

突如外から銃声がした。

 

「武装集団が学校に接近しています! カタカタヘルメット団のようです!」

 

「あいつら………!!性懲りもなく!」

場の空気が一転して緊張に包まれる。

 

幸いにして弾薬の補給は間に合ったが、敵襲を喜べる状況ではない。

 

「ホシノ先輩を連れてきた!!先輩!!寝ぼけてないで、起きて!」

 

「むにゃ・・・・・・まだ起きる時間じゃないよー。」

黒見セリカが小鳥遊ホシノを連れて来たが、どうやらまだ寝ぼけているようにも感じられる。

 

「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!!こちらの方はシャーレの先生です。」

 

「先輩、しっかりして!出動だよ! 装備持って!学校を守らないと!」

 

そして小鳥遊ホシノは奥空アヤネと黒見セリカに発破をかけられる形で目を覚まし、戦闘態勢に入った。

 

「校舎裏に装甲指揮車が停めてありますのでそこで指揮を」

 

「"そうしようか"」

 

指揮車であれば小型偵察ドローンから送信される映像をモニターで確認でき、敵の位置が分かる上に装甲化されている為銃弾などを弾く事が出来る。

無防備な先生が危険に晒されることは無い。

 

「私がオペレーターを担当します。」

アヤネさんが先生の指揮のアシストとしてオペレーターを担当してくれるようだ。私にはアビドス高校生の戦闘ポジションも高校内部の構造も把握出来ていないので助かった。

 

ドローンで偵察したヘルメット団の戦力は大きく前衛隊・中衛隊・後衛隊の3隊に分かれており、戦車は無く主武装はAR(アサルトライフル)

 

火力支援として後衛隊に重機関銃が数丁と牽引式野砲が数門だけだ。

 

「先生、意見具申があります。」

ある程度統制された多数のヘルメット団を見て、正面からぶつかるのは少々馬鹿馬鹿しいと感じた私は、先程来た時の校舎昇降口付近の構造を思い出し1つ罠を仕掛ける事にした。

 

幸い先生は私の意見を採用してくれ、アヤネさんと共に準備へ入ってくれた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

(カタカタヘルメット団視点)

 

「ひゃーっはははは!」

アタシは思わず高笑いをしてしまった。

 

だってそうだろう?物事が上手く進んでいる時ほど愉快なことは無い。

 

「攻撃、攻撃だ!!奴らはすでに弾薬の補給を絶たれている!!襲撃せよ!! 学校を占領するのだ!!」

 

校門前まで来ているというのに抵抗らしい抵抗が一切無い。

 

散々手こずらせてくれたが、アタシ達の思惑通り補給を絶たれたヤツらほど脆いものは無いんだ。

 

せいぜい諦めて逃げたのだろう。

 

「前衛隊、侵入しろ!」

 

アサルトライフル及びスタングレネード装備の前衛隊に突入を指示する。しかし………

 

『それ』は唐突だった。

 

「ん、させない。」

 

空から少女がAR(アサルトライフル)を撃ちながら文字通り『降ってきた』

 

前衛隊と中衛隊の間隙に降り立ったアビドス高校生は中衛隊のの数人を倒すと校舎の方向、つまり前衛隊の方向に向けて走り出す。

 

「中衛隊!逃がすなアイツを追え!」

中衛隊が軽機関銃の射撃を開始するが、正面に前衛隊が居るので大した射撃が出来ない。

 

アタシ達がモタついている内に

 

「ん、よわヘルメット」

 

挑発するような言葉を吐いた少女は目にも止まらぬ速さで前衛隊を駆け抜けると昇降口へと消える。

 

「ふざけやがって!!」

 

アタシ達は中衛隊から最低限の人員を残して、前衛隊と共にアビドス高校生を追って校舎に侵入する。

 

その際、下足箱辺りで通路が狭くなっていた為隊列が乱れ、前衛中衛が入り交ざる状態で階段前へとたどり着く

 

「チッ………時間稼ぎか、」

 

椅子と机が階段前に2段バリケードのように置かれている。

数人の部下に命じて、低レベルなバリケードを破壊しようとしたその時

 

「『許せない!』」

突如、右側の通路からARによる射撃がありバリケードを破壊しようとしていた部下をなぎ倒した。

 

右側を見ると20メートルほど先の廊下の奥に机を組んだ簡易火点(トーチカ)があり、そこから黒髪ツインテールの生徒が射撃を行っていた。

 

数人の部下が咄嗟に応射を行うが、盾を持った生徒に銃弾は防がれる。

 

「おのれ……「全弾発射〜!」」

アタシ達が右側の敵に気を取られたその時、階段の踊り場から戦場とは思えないくらいひどくのんびりした声と共にミニガンが放たれる。

 

やられた!

 

そう思う暇もなく前衛・中衛隊の団員が倒れ、恐慌が先頭部隊に伝播し始める。

 

まんまと十字砲火(クロスファイア)へと誘い込まれたのだ。

 

階段からの敵に対処しようとすれば横からARとショットガンの射撃に晒され、横からの射撃に対処すれば応射は盾で防がれた挙げ句、踊り場からの射撃に晒される。

 

「もうやってられるかよ!!」

ついに限界に達した団員の一部が持ち場(ポジション)を離れて逃走し始める。

先鋒の壊走は後続部隊へと伝播し狭い昇降口に多くの団員が殺到した為、階段踊り場から放たれるミニガンで次々と部下が戦闘不能になっていく。

 

しばらくすると、弾切れを起こしたのかミニガンの射撃が停止する。

 

その時を狙って、下駄箱裏に隠れていた残余の団員と共に攻勢に出ようとした、しかし………

 

「うへ〜」

先ほどまで盾を持っていた生徒が懐まで入り込んだと思うと、一発も発砲する事無く格闘術のみで団員を戦闘不能に追い込んで行く。

 

「何なんだこいつらは!!」

 

本当につい先日まで弾薬も無く追い詰められていたヤツらなのか!?

 

明らかに組織的な抵抗をしている!聞いていた話と違う!

 

完全に戦意を喪失したアタシ達は後衛部隊と合流して態勢を立て直す為に撤退する。

 

後衛隊の重機関銃を頼みに引いたアタシ達であったが……

 

「ん、制圧完了。これは高く売れそう」

 

最初に出現した生徒によって後衛隊は既に壊滅へと追いやられていた。

 

そこからは逃げるだけで精一杯だった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「カタカタヘルメット団、郊外エリアへ逃走中。アビドス高校防衛に成功しました。」

 

装甲戦闘指揮車内でモニターを監視していたアヤネさんが先生に報告する。

 

「わあ☆私たち、勝ちました!」

 

「あははっ!どうよ!思い知ったか、ヘルメット団め!」

 

通信回線からは歓声が聞こえてくる。

 

「"みんな、お疲れ様。"」

 

とりあえず一件落着……とは言えないだろうが、降りかかる火の粉は払えた。

とりあえずはつかの間の勝利の余韻を噛み締めるべきである。

 

先生と協議して、とりあえずはアビドス高校の教室に集合する事になった。

そこに向かうまでに私はアビドス高校の戦闘を振り返る。

 

先程の戦闘の総括だが、

 

正直、アビドス高校の実力に私が驚いている。

急造のチーム、急造の陣地、急造の作戦。

この3つの悪条件の中でも連携を欠かさず、各人がよく訓練された一騎当千の特殊部隊員のような働きが出来た事にだ。

 

戦闘における基本『撃つべき時に撃ち、撃たざるべき時に撃たない。』この原則は言うのは易く行い難いのだ。

人間の心理として射程圏内ギリギリに入った時点で発砲したくなる。その為、兵の練度が低ければ低いほど交戦距離は反比例して遠くなる傾向にある。

実戦の場合それは逆効果にしかならず、射撃位置の露呈と弾薬の浪費という結果しか産まない。

 

その点、アビドス高校生は弾薬の不足というこれまでの足枷もあったが故か交戦距離が近く射撃の精度が高い。この能力だけでも十分SRT特殊学園に通用するだろう。

 

アビドス高校生の総評としてはこのようなものだ

個人で見ると

 

戦闘面においては小鳥遊ホシノ、彼女の近接戦闘能力には目を見張るものがあった。黒見セリカを支援しつつ十六夜ノノミのミニガンの射撃が停止した僅かな間隙を突いて浸透し、類稀なる近接戦闘能力でヘルメット団員を次々に戦闘不能に追いやっていた。

戦術的な視点から見れば彼女がアビドス高校の中で最も脅威であろう。

 

次に砂狼シロコ、彼女の身体能力はキヴォトスにおいても高レベルだ。

高所から飛び降りながらの射撃、敵前衛部隊を背にし軽機関銃の射撃を牽制するポジショニングどれを取っても文句の付けようが無い。

ただ、戦闘中においても鹵獲・略奪品の事を気にする点は問題だ。

 

そして特に奥空アヤネ。彼女は私の策の意図を理解し、各人の特性と実力から『出来る』と判断して最適の役割を担わせる。

この能力は彼女が一廉の人物である事を証明している。

戦略的な視点から見ればアビドス高校の中で最も脅威であり、あまり敵に回したくない人物だ。

 

その為、指揮官級の人材として防衛室にスカウトをしたいが、アビドス高校の連邦生徒会に対する好感度を考えるとそれは難しいだろう。

 

戦闘の総括についてはこれくらいにしておこう。

 

問題はヘルメット団だ。

 

装備は重機関銃などを保有し優良、弾薬も潤沢。一定の統制が取れており、指揮官がもっと優秀であれば苦戦しただろう。

 

武器弾薬の類はABCモデルのカイザーコーポレーションによるライセンス生産品であるが、これだけでバックボーンと見做すのは少々早計な判断だ。

 

とりあえずその辺りの情報をアビドス高校生から得る必要がある。

私はそう判断して教室へと急いだ。




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