ブルーアーカイブ異聞録 カヤ*転生者 作:連邦生徒会のモブ書記
再び部室へと戻った私達は、改めて自己紹介をする。
「"私は連邦捜査部シャーレの先生だよ。よろしくね"」
「同じくシャーレの当番である不知火カヤです。」
「いやあ〜、よろしく。」
先程まで眠っていた………らしい小鳥遊ホシノがのんびりとした様子で挨拶をする。
私はその様子に微かな違和感を覚えたが、言語化出来るほど顕著なものでは無かったのでとりあえずは胸の内に収める。
「"それと……これを"」
先生がタブレット端末をアヤネさんに渡す。
「これは……もしかして」
「"連邦捜査部シャーレからの補給品だよ"」
目録となっており、弾薬以外にも生活雑貨や学校で使用する備品類などの多岐に渡る物品が含まれている。
私達が装甲指揮車『疾風号』で直接持ってきた弾薬類とは別口の支援物資だ。今回に限り、早急な対応が必要と感じたので先生に断りを入れた上で私が伝手を利用して用意した。
「ありがとうございます!あれ……先程頂いた補給物資とは内容が違いませんか?」
やはりアヤネさんは気づいた。ここで、本来であれば『早急な対応が必要であった為、弾薬類のみ先行して持ってきた』という筈であったが
「"それはカヤが個人で用意してくれたものだからだよ"」
先生が当初の予定に無かった事を言う。
私は目線だけで先生に抗議するが...
「"カヤの尽力を無かった事にはしたく無いからね。"」
そう言われてしまっては何も言い返せない。
「これだけの弾薬を個人で……?」
「ええ、ABCグループには仕事で多少伝手がありますので」
多少というかガッツリというかズブズブというのか表現はあまりしたくないのだが、今回役立ったので結果的には正解だったのだろう。
「先生達がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません。ありがとうございます。」
アヤネさんの純粋な感謝に少し照れくさくなるが………
「"どういたしまして。でも、どうしてこんな状況になったの"」
その疑問に尽きる。
「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは・・・・・・このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です。」
話によると
現在アビドス高校の全校生徒数は5人、
そして、『対策委員会』が唯一の部活動である事。
過去に在籍した生徒は全て退学ないし転校してアビドスを出ていった事。
「学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの。」
現状では学校を守る事すら覚束ない様子であるようだ。
「もし『シャーレ』からの支援がなかったら……………今度こそ、万事休すってところでしたね。」
アヤネさんが安堵しながら語る。シャーレからの支援は相当ギリギリのタイミングだったらしい。
「"襲撃は定期的にあるの?"」
「はい、まるでこちらの弾薬をすり減らそうとするような襲撃が何回も……」
アヤネさんが力無く答える。
「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか。ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに・・・・・・。」
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー。」
落ち込むアヤネさんを見かねてか、小鳥遊ホシノがやや芝居がかった明るい雰囲気で作戦を語る。
どうやらここから30km先にいくつかヘルメット団の前哨基地があるらしい。
そこを強襲し、先んじて叩き潰してしまおうという考えだ。
確かに妙案である。
ここで守っていてもジリ貧であるのだ、攻勢防御に出るのも時には有効な手段となる。
特にこれまで足枷となっていた補給関連はシャーレのバックアップでとりあえず解決している。
そして『タイミング』も最適だ。
ヘルメット団は大規模な攻勢に失敗して息切れしている。
そんな時に今まで無かった反撃を直ぐに行えば効果は絶大となる。
「"完璧な作戦だね"」
先生も反撃に賛成のようだ。
「"カヤ、何か意見はある?"」
どうやら先生は私に腹案がある事を見抜いていたようだ。
「わざわざ歩いて行くよりも良い手段がありますよ」
「え?」
私はスマートフォンを取り出し、『とある企業』へと連絡する。
「どうも、カヤカヤ博士です『
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「一体どういう事なのよ!!」
黒髪ツインテールの少女………黒見セリカはツッコミ気質でもあるのかわざわざ離陸後に大声でツッコミを入れる。
「ヘリボーン強襲ですよ」
複数箇所ある前哨基地を1箇所ずつ潰していては時間がかかる上に奇襲効果が薄れてしまう。かと言って、分散して各個撃破するほど戦力に余裕は無い。
ならばヘリコプターを用い、前哨基地という点を最短距離かつ高速で移動して1日で潰してしまえば良い。簡単な話だ、
「確かに合理的……、でも対策委員会にはそんな余裕が無かった。」
シロコさんが少し悲しそうに語る。
「でも、『シャーレ』の先生と貴女が来てくれてから少しだけだけれども良くなってる気がする。」
「シロコさん……」
「セリカ、もうすぐ着く。準備して」
「わかったわよ!シロコ先輩!」
不満そうなセリカさんをシロコさんが宥めつつ、ヘリは降下準備に入る。
地上に対空火器の類は無く無警戒のようだ。
ここまでくれば作戦はほぼ成功と言って良いだろう。
「"降下開始、みんな行くよ"」
先生の指示と共にヘリは降下し始める。
そして、私達は今日中に5つの前哨基地全ての破壊に成功した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヘルメット団の前哨基地を破壊した翌日、私達は対策委員会の部室にいた。
「これで暫くヘルメット団の襲撃は大人しくなるでしょう。」
アヤネさんが進行役となって定例会議が行われている。
「これも先生達のおかげ」
「"私は大した事はしてないよ"」
全体として和やかな雰囲気で進んでいる。
ここで先生が唐突に疑問を述べる。
「"そう言えば……借金ってどれくらいの額なんだい?"」
「う〜ん。ざっと9億ぐらい?」
「"きゅっ……9億!?"」
先生は絶句した。
私も、薄々感づいていたがアビドスの資金繰りは相当厳しいようだ。
「正確には、9億6235万円です。」
アヤネさんのフォローになっていないフォローが入る。
「"どうしてそんな額の借金が……"」
「数十年前にアビドスで気候の変化がありました。」
アヤネさんによると
アビドス郊外で発生した砂嵐が都市部を飲み込み、その復興に多額の予算が必要となった為、借金の額が膨らんで行ったらしい。
最初はすぐに返済出来る見込みであったらしいが、砂嵐が度々発生して遂にはアビドス自治区の半分が砂に呑まれた。
そこで生徒達は絶望してアビドスを離れ、借金だけが残ったとの事だ。
そしてそんな中で残った生徒が今の対策委員会のメンバーらしい。
「"話を聞かせてくれてありがとう。"」
「"みんなの背負っているものが、私にも少しわかったよ"」
「"これから君達の先生として私達にも協力させて欲しいな"」
私は僅かに笑みを浮かべる。
先生ならきっとこう言う。そう期待していた
「よろしくお願いします!」
アヤネさんが真っ先に答える。
手紙を送ってくれただけあり、現状をどうにかしたいという気持ちが人一倍強いのだろう。
「"まず砂漠化の問題を何とかしないとね、カヤ"」
「はい、先生」
アビドスに到着する前、私は過去に行った私的研究のデータを踏まえていくつか資料を作成していた。
「これはあくまで私的に調査を行った『個人の見解』であると思ってください。」
私は十数枚ほどの紙を束ねたレーポートを配布しながら釘を刺す。
「レポートの前半はアビドスの気候とキヴォトスの自転軸の相関関係を表したデータです。」
深刻な砂漠化が進行した数十年前より、ミレニアムのデータによるとキヴォトスの自転軸はごく僅かであるが移動している。
「これは、『歳差運動』と呼ばれる現象です。」
惑星の自転軸は固定されておらず、コマの回る時のように絶えず動いている。それが歳差運動と呼ばれる現象の正体だ。
「キヴォトスはおよそ2万6000年周期で自転軸が一巡しています。」
ミレニアムの計算によるとキヴォトスの公転平面に対する自転軸の変化域は24.5度〜21.5度である。
「そして、自転軸が移動すれば環境も変化します。」
そして数十年前より、自転軸が移動した事が原因で降雨帯が移動してしまったのである。
「砂漠化の原因はそれだけではありません。」
そう、歳差運動が一応の原因ではあるのだがあくまでもトリガーに過ぎない。
「『ドライ・ダウンバースト』」
降雨量の減少により乾ききった空気が原因で、僅かな降水が地上に到達する前に蒸発してしまいその冷却効果で
強化された
こうなればもう悪循環だ。
自転軸の移動による乾燥がドライダウンバーストを引き起こし、ドライダウンバーストによって発生した砂嵐が更なる砂漠化を進行させる。
これがアビドスの現状だ。
とても対策の打ちようがない風に思えるが、解決策無しで現実を突きつける為に話した訳では無い。
一つだけ対処出来る方法がある。
それは………
「これに対する解決策としては………「もう良いわ!!」」
ツインテールの少女……黒見セリカが突如席から立ち上がり叫んだ。
「突然やって来て……現実を叩きつけて……何がしたいの!!今まで私達がどんな気持ちでやってきたか知らないくせに!!」
「しかも大人になんか従って……」
セリカさんはおそらく私だけではなく先生に対しても思う所があるようだ。
「"私はみんなの事を手伝いたいだけだよ"」
先生がフォローを入れる、しかしそれは逆効果だ。
「何!その上から目線は!」
懸念の通り彼女の不満に燃料を注いだだけになってしまう。
「私は………認めない!!」
彼女はそれだけ言うと部室から出ていってしまった。
そしてそのままの流れで定例会議は終了となってしまった。
「先生、申し訳ありません。私の説明の仕方が悪かったです。」
定例会議の終了後、私は先生に不手際を詫びる。
「"カヤのせいじゃないよ"」
先生は力無く答える。
無理もない、生徒に拒絶されたのである。先生としては辛いだろう。
「こんな時に申し訳ありませんが、明日から3日ほど防衛室に戻らなければなりません。」
今回、私のシャーレでの仕事はあくまで休日に当番として参加している体裁となっている。
明日から3日間はどうしてもリモートワークでは対応出来ない防衛室長としての仕事が入っているのだ。
「"ありがとう。大丈夫だよカヤ、安心して行ってきて。"」
先生はそう言ってくれるが、セリカさんとの関係を考えるとどうしても不安が残る。
「彼女には時間が必要なのだと思います。……先生を受け入れる為の」
おそらく彼女は先生を嫌っている訳では無いのだろう。
連邦生徒界の人間である私が居たのが良くなかったのかも知れない。
私はそう思いながらアビドス高校を後にした。
STANDBY∶0 MAGAZINE 11/12