夏。太陽が燦々と人々を照らす最高の季節に、今日も聡史はボソボソと文句を垂れながら、お尻をぽりぽりと掻き、YouTabe shortの絶対に使わないような知識を溜め込んでいる。
「エペがしてぇ。」
YouTabeを閉じることに葛藤を覚えつつも、いつもの仲間を誘うためラインを開きシュポシュポとメッセージを送った。
サトシ:エペやろーーー
リッキー:ええで
そーた:忙しい。
サトシ:いつなら行けんの?
「ちぇっ、どーせ暇なくせによ、」
腕を投げ出し仰向けになると、ふと押し入れに違和感を感じた。
重い首を動かせずにちらりと目だけでそれを確認すると、戸の隙間から微かな青白い光が見えた。
その隙間からすーっと冷たい空気が漏れているように感じる。
「ナニコレ?」
姿勢を起こして再度確認するも、やはり間違いなくするりするりと青白い筋が部屋に侵入してきている。
「おもろ。」と、無表情で呟きながら少し汗ばんだ手を引き手に伸ばし、横に少しづつ引いた。
扉の先には、白銀の世界が広がっていた。
25年生きてきて、初めての状況。口を開け唖然とするほかなかった。
しばらく経って、部屋の温度が寒いことに気づき、バタンと戸を閉めた。
「は???????」
そーた:明日なら行ける。
サトシ:今すぐおれんちこい
リッキー:ええで
そーた:ダルい
サトシ:いいからはやくこい!
サトシ:マジでやべえ。
聡史は半狂乱でGoegleでこの現象について調べていると、ドンドンと乱暴に扉が叩かれる。
「おい早く開けろ。」
「ええで。」
「ちょ、お前に言ったんじゃない!」
ボキン!バキン!と穏やかじゃない音が聞こえてから、聡史ははっと正気に戻る。
「は?何してんのお前ら。」
階段を駆け降りると、粉々になっている木の扉と、それを背に二人の男がいた。
「いや、わざとじゃないんだ。力也が、いきなり、、、その、ボンドとかあるか?」
「ないで。」
現実離れした二つの現象を前に、既に聡史は思考することを放棄していた。
「いいから、上がれよ。あと、お母さんが帰ってくるまでに直してよ。」
「あ、ああ。何とか頑張るよ」
創太の気のない返事を流し、二人を自室に案内した。
「で、急にどうした?」
「なんや。」
百聞は一見にしかず。聡史は押し入れの戸を一気に開けた。
冷気が床を這いながら部屋に充満する。
「嘘だろ、これが異世界ってやつかな。」
「はぇー。」
扉の先の雪林に力也と創太朗は状況がわからずに唖然としているようだった。少しの沈黙の後、聡史が口を開く。
「あのぉー、ドア直したら、俺らで探検しねえ?」
「え?、マジで言ってる?」
「ええで。」
困惑はあった。しかし、この前代未聞の状況で、聡史は確かな好奇心を感じていた。
この中にはきっとまだ誰も見たことのない何かがあるような気がした。
「ワイは涼しそうやし賛成やで。」
「.......僕マジで寒いの嫌いなんだけど、でも確かに、きっと面白いもんが見れる気がする。」
「ヨシ、んじゃあ明日防寒具とか登山用の道具買いに行って、そっから出発だな!」
三人は隣町の最高にウマいこってり家系ラーメンを食ったあと、ぶらぶらと目的地に到着した。
「雪道歩くから、アイゼンっちゅう靴を買っといた方がいいね。」
「わかったで。」
「へぇ。詳しいね。登山とかやったことあったっけ?」
「いんや、YouTabe shortで見たわ。」
「アッソーっすか」
バイトで貯めた金と親からの軍資金を持参し、ニートどもはニドリを闊歩していた。
「喉乾いたやで」
「んだねーそろそろジュース買って帰るか。そういや、一応創太は工具買っとけよ。」
「まあ何があるかわからんし持ってくか。」
値段に驚愕しながらも何とか一通り買い物を済ませた3人は聡史の家に集まった。
「食料ヨシ。登山道具もろもろヨシ。クツヨシ。」
「忘れ物はなさそうだな。そんじゃあ!」
と、全員が期待で胸を膨らませながら
「「「れっつら、、ゴーーーーー!!!」」」
3人で勢いよく異世界に飛び出したのだった。