初雪さくら   作:モラーヌソラニエ

3 / 3
訓練は月月火水木金金

「初雪!先導艦との距離が離れてるわ。速力を維持!」

「ぅ、うん…」

「吹雪は初雪を気にしすぎよ。もっと周囲に目を配って!」

「はい!」

 

 翌日、私は太平洋の荒波に揉まれながら海上を滑走していた。怒号を浴びながら。

 2人で単縦陣を組み航行する私たちにやや離れた位置から監督している艦娘が直すべき点を波と機関の音に負けない大声で教えてくれる。

 

「大井さんこわ」

「何か?」

「ひっ!な、なにも」

 

 私の呟きが無線に拾われていたらしく舞鶴鎮守府から私たち佐世保鎮守府第一艦隊(2隻だけ)の指導に来た球磨型軽巡洋艦の艦娘大井が目尻を吊り上げる。

 史実では一時期練習艦に籍を置き艦これでは名誉初期艦娘として最古参提督たちに親しまれていた彼女はこの世界でも古株のようで現在は教官として各地の根拠地を周り1人でも多くの艦娘がこの戦場を生き残れるよう育成に励んでいる。

 

「次、最大戦速!右砲雷戦用意!」

 

 大井の号令で私たちは手に持つ主砲と身体に装着された魚雷発射管を右舷側に向ける。しかし武器の取り扱いに集中したせいか私も吹雪も針路が乱れてしまう。

 

「こらぁ!陣形乱すな!事故るわよ!」

「「は、はいぃ!」」

 

 特訓は朝から昼まで続き洋上で補給(おにぎり)を済ませたあと夕日が沈むまで続いた。その甲斐あってか訓練終盤ではかなり真っ直ぐ走れていた気がする。

 

「全然ダメね。今の貴女たちでは輸送ワ級一隻倒せはしないわ」

 

 前言撤回、まだまだ未熟です。

 

 

 閑話休題。

 

 訓練が終わり帰港した私たちは艤装を外すとヘトヘトになりながら鎮守府の食堂に足を運んだ。

 佐世保鎮守府の艦娘部隊はまだまだ人数が少ないこともあり艦娘部隊専門の給養員が配属されていない。じゃあどうするのかというと停泊中の護衛艦からお裾分けしてもらったりするらしい。

 今日は金曜日、そうカレーである。私たちのトレーに注がれたのは護衛艦カレーグランプリ初代王者さわぎりカレー。牛すじをふんだんに使い隠し味になんとイカスミをプラスした野心作。見た目は普通だけれどすごく粘度が高いルーが特徴的で味は濃厚の一言。疲れた身体に濃ゆい味付けのカレーが沁みていく。

 

「美味ひい」

「ウマー」

 

 次々とスプーンを口に運ぶ私たちとどこか品のある食べ方をしながらあっという間に一皿を平らげる大井。

 腹を満たし後は疲れと汗を洗い流すだけだ。

 

「お風呂めんどくさい」

「ダメだよ初雪ちゃん。身体は綺麗にしとかないと後で大変なんだよ」

「いや風呂キャンとかそういうわけじゃないけど」

「風呂キャ?とにかく初雪ちゃんはせっかく髪も綺麗なんだからしっかりお手入れしないと」

 

 吹雪にぐいぐいと手を引かれ大浴場に連れ込まれる私の頭の中ではドナドナがリフレインしていた。

 

 

「うあ〜人に頭洗ってもらうの気持ち良い」

「もう、明日からは自分でしてよ?」

 

 私が無駄に長い黒髪に苦戦していると吹雪が手伝ってくれた。

 ちなみに自分や吹雪の裸を見ても特に心が奮い立つようなことはなかった。同性になったから心にも変化が起きているのだろうか。そう考えると自分が居なくなるようで怖いがとりあえず今は深く考えずわしゃわしゃと頭を撫でられる感覚に身を任せることにする。

 

 数分後、ツヤツヤになった私たちはパジャマ姿になり駆逐艦寮の一緒の部屋で寝る準備を整えた。

 二段ベットの上に吹雪、下に私が入り横になる。

 

「初雪ちゃん明日も頑張ろうね。おやすみ」

「うんほどほどにがんばる。おやすみ」

 

 消灯のラッパが鳴り部屋の明かりを落とす。

 明日は楽な訓練だと良いなと思いつつ私は目を閉じた。

 

 翌日。

 

「私の攻撃を1時間避け続けなさい。はい始め!」

「「ひえぇ〜」」

 

 楽な訓練なんてなかった。orz

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。