M.H.Wilds ~とある隊の手記~ 作:TDN_K
???「にゃ!?ちょ、ちょっと待って!!」
外に出ると鳥の隊ハンターが砂上船から飛び立つ姿を目にした。何があったのかと驚いていると、オリヴィアから鳥竜種らしきモンスターに乗る少女がバーラハーラの群れに終われており、それを救助するために鳥の隊ハンターがもう一体の鳥竜種に飛び乗ったことを説明された。なんとも……あのハンターは凄まじいな。技量と言い度胸と言い……だからこそこの調査隊に抜擢されたのだろうな。
数分後、鳥の隊ハンターと合流し、救助された少女からの依頼で彼女の兄を鳥の隊が救助しに行くこととなった。その他の隊は砂上船に残り、ベースキャンプ候補地を探す事となった
「──そういえば、リンネとショコラはどうしたんだい? 船の何処にも居ないようだけど……まさか?」
「……導虫の反応を見るに、恐らくそのまさか、だな。すまない、夢の隊も一度別行動を取っても良いだろうか?」
手記に日課のように出来事を記録していれば、あの推定約百才児とそのオトモが消えていた。導虫に臭いを覚えさせてはいるが、急いで探すべきだろうな。あのバーラハーラの群の様子からして、他の個体も同じ様に興奮状態になっていてもおかしくはない。
リンネには武器になるようなものは調査隊標準装備のスリンガー程度しか与えていない。ハンターの資格を持っていないためだ。スリンガーの指南はしたが、そこまで活用できるわけではない。オトモであるショコラも単独で大型モンスターを倒せるニャンターと言う訳ではない。
そんな人物の臭いを覚えさせた導虫が砂上船ではなく砂漠の砂へ飛んでいった。双眼鏡で確認してみれば人の足跡の痕跡がある。……間違いなく勝手に下船している。急いで捜索と救助をするべきだろう。その場にいたエリックとオリヴィアへそれを伝え、砂上船から降りて砂漠を進む事とする。
「鳥の隊にも言ったが、何かあったら呼んでくれ。すぐに駆けつける!」
「助かる! ……さて、久々に行こうか」
「一緒に行くのは新大陸以来だにゃ。ワクワクするにゃ!」
新大陸から戻った後はベルナ村で休暇を取り、狩猟から一度離れ研究者としての仕事に専念していたが…………砂漠の風と砂が肌を撫で、装備を汚すこの感覚。一歩一歩大地を踏みしめ臭いを感じ、自然の中で生きる実感。新大陸での経験を経て、それを益々楽しめるようになった。
現状はそこまで楽しめると言うわけではないが、それでも新天地に来ると心が沸き立つもの。彼女達を探すついでに少しだけ環境を見ておこうか。何はともあれ……
さぁ、クエストスタートだ。
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★1 砂塵遊泳
目標:リンネの捜索と救助
依頼主:夢の隊 ケイ
「いつの間にかリンネが砂上船から降りていたようだ。急いで捜しに行こう。あの数のバーラハーラが興奮していたとなれば、その影響で他の個体も興奮している可能性がある。注意しよう」
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導虫の導入から我々ハンターの動きは変わった。嘗ては自力でモンスターを捜し出し、ペイントボールを使ってマーキングする必要があったが、モンスターの痕跡を導虫が探知し、それから得られる情報や臭いでその環境に存在するモンスターの種類や、その場所を知ることが出来るようになった。
こうして人間を捜索するのにも導虫は役に立つ。……そういえば、蒼き星がイビルジョーと遭遇した時の事をぼやいていたな。確か編纂者がキノコ狩りに夢中になっていて危険な目に遭ったとか……大層愚痴っていたが、それでも見放さず今でも相棒として共にいる辺り、そこまで嫌ってはいないのだろうな。
導虫が探知した足跡を追い、少しずつ進んでいく。道中タリオス等の小型モンスターが居たが、人を襲った様子は無かった。人を襲ったモンスターは大なり小なり興奮状態になり、周囲を警戒する素振りを見せる。それがないと言うことはリンネは小型モンスターに無闇に近付く程バカではないと言うことだ。まぁそれが当然の事なのだが…………
「こっちに別の痕跡があったにゃ! かなり大きいにゃ!!」
ポチの呼ぶ方へ駆け寄り、痕跡を確認する。砂が掘り起こされたような……否、押し上げられたような痕跡。まだ湿り気がある固まった砂だ。間違いなくバーラハーラの痕跡。その証拠に剥がれ落ちたであろう黒い鱗がある。それをアイテムポーチに押し込みつつ周囲を確認し、ハジケ石をスリンガーへセットしつつ、アイテムポーチを再確認する。
ポーチの中には回復アイテムと携帯食料、その他補助アイテムがある。罠等は持っていないが、万が一のためにスリンガー誘導弾は忍ばせておいた。もしかすると今回が使い時かもしれない。
双眼鏡を使いつつ周囲を確認し、痕跡があればそれを調べ、位置を特定していく。新大陸で何度もやっていたことだからか、最早苦にも感じない。むしろフィールドワークの時間が出来たと喜ばしく思う位だ……これを言うとオリヴィアからエリックを見る時と同じ目で見られたが、自分は彼ほど研究に執心していない。
数分後、遠方に大きな砂煙が上がった。ポチと顔を見合わせそちらに駆ける。こうして自分の足で走っていると、新大陸でオトモダチになったモンスター達が恋しくなる。指笛一つで駆け寄ってくれた彼らや、彼らとオトモダチになる術を教えてくれた獣人族の皆は新大陸で元気にしているだろうか…………それにしても、人の足のなんともどかしいことか。
「にゃあああああっ!!!」
「だから言ったのに! だから言ったのにぃ!!」
近付いてみれば、やはりバーラハーラが何かを追っている。そしてそれに追われる見覚えのある銀髪の一人と黒毛の一匹。即座にアイテムポーチからスリンガー誘導弾を装填、狙いを定め頭部へ発射し、無事命中。バーラハーラの注意が此方へ向いた。他者へ向かう注意を逸らし、撤退や回復の隙を作るのがスリンガー誘導弾の使い方らしいが、正直そこまで使い所がないのが悔やまれる。
とはいえ、今この状況においては最高のアイテムだ。これからも活用しよう。まぁリンネが居るならポーチやボックスのこやしにはなるまい。
「目標変更。隊員救助と周囲の安全確保の為、バーラハーラの狩猟を遂行する」
バーラハーラの咆哮を肌で感じつつ、その後の突進を横に転がることで回避。こんなこともあろうかと跳躍の護石を装備して来た。効能で少し身体が軽く感じ、回避時の跳躍距離も長くなっている。微々たるものではあるが、恩恵は大きい。
リンネ達が道中確認できたオアシス方面へ走る姿を確認しつつ、現在の得物である【ホープ・エッジI】を抜刀。ハンターには新天地や別地区へと就任する際、すべての装備を処分することで一新する習わしがある。心機一転を意味し、裏の事情を言えば装備の運送料や手間が省けると言う事で行われていることなのだが……勿論今回もそれを行っているため、ギルドから支給された装備だ。
まぁ、それでもクエストをこなせる者こそ真にハンター足り得るのだが。
バーラハーラとは砂を泳ぐ海竜種であり、別名を【
砂を掻き分けて回転すると言うことはそれ程の筋肉や柔軟性があると言うこと。更には流砂を発生させて獲物を待ち構えるなど知能も高い。群れているならかなりの驚異だが、単体ならばまだ問題はない。とはいえ、砂中から奇襲してくる事もあるので中々トリッキーな動きをするモンスターだ。苦戦するハンターも多いだろう。
しかし、自分はもっとトリッキーな動きをするモンスターを知っている。同じ海竜種であり、近年希少種が発見されたあのモンスターに比べればバーラハーラは苦戦するモンスター足り得ない。
噛みつきや粘液を盾で弾き、即座に剣を頭部へ振るって隙を突く。バーラハーラは頭部から腹部にかけて肉質が柔らかく、基本的に頭部と前足付近で立ち回るのがベストだろう。他にも攻撃する際に必ず頭部か尻尾に予備動作がある為、そこを注視して立ち回りを意識すればガードや回避の目安になることだろう。
頭部への攻撃を続ければ傷口が出来る。その傷口に剣を突き立て、盾で殴り跳躍。直ぐ様盾を振り下ろし落下の勢いを利用して頭部へと打撃を加える【フォールバッシュ】を叩き込む。バーラハーラには打撃がかなり効果的な為、こうすれば大ダメージを与えつつ、気絶によるダウンを狙える。
「どんな存在であれ生物である以上、頭部が弱点である」とは新大陸調査団の通説だ。その証拠に頭を狙えば殆どのモンスターは痛手を負い、攻撃の種類によっては目を回して倒れるのだ。他にも粘液やブレスを口内から吐き出すモンスターはその瞬間に僅かな隙を晒す。別種のモンスターでも特定の行動後に隙を晒す事がある。部位破壊、属性攻撃、狩猟アイテム、環境利用。使えるものは全て使い、突ける隙に攻撃を叩き込み、確実にダメージを蓄積していけば……
どんなに理不尽で、どんなに現実離れした存在であろうと、必ず狩猟出来る。
二度目のフォールバッシュが頭部にヒットし、バーラハーラが目を回して倒れた。この瞬間に馴れた手付きで砥石を使い、剣の切れ味を回復させる。切れ味が鈍くなれば倒せるものも倒せない。新大陸でドスキレアジを兄のようなハンター達と共に釣りに行った日々は楽しかった。まぁ色々波乱はあったが、良い思い出だ。
……しまった、油断していた。これではベルナ村で鍛えてくれた教官に怒られてしまいそうだ。狩猟に油断は厳禁。思い出せ、【
気を引き締めてバーラハーラへ向かっていく。武器を研ぎ終えた後、数秒で起き上がり此方へ粘液を吐いてくるが、盾が間に合う。伝わってくる衝撃と疲労を最小限にし即座に反撃。この一連の動きを【ジャストガード】と呼ぶ。
そうして何度も頭部へと攻撃を続けていけば、バーラハーラの頭から鱗が剥がれ、傷跡が付いた。頭部の部位破壊に成功したようだ。ダメージを蓄積していけば部位破壊が出来、モンスターによってはそれが有利な状況を作る鍵となる。頭部が破壊できたなら次は尻尾を狙うべきか。海竜種となれば尾での攻撃も充分厄介だ。
尻尾へ斬りかかろうと飛び掛かった瞬間、まるでそれを予想していたように尾での凪払いが襲ってきた。盾も回避も間に合わないタイミングだった為、吹き飛ばされてしまった。砂地を跳ね、勢いのままに転がる。ポチが心配そうに此方をチラリと見たが、すぐにバーラハーラへ向かっていく。流石、長年連れ添っただけはある。
勢いが収まった頃に起き上がり、バーラハーラを軸に左回転するように走って移動しながらアイテムポーチから回復薬を取り出し呷る。じわじわと傷と疲労が癒えるのを感じつつ、バーラハーラの動きを見てみれば、身体を丸めている。
バーラハーラは身体を丸めて力を溜め、尾を此方に向け回転しながら突撃をしてくる。恐らくその予備動作だろう。意識を回復から回避と反撃に切り替え、中身が少し残った回復薬を乱暴にポーチへ戻し、突撃を躱せるよう全速力で左後方へ走る。
身体の近くを高速で通過していくバーラハーラ。確かこの突撃の後は粘液を吐き出す筈。ならばやることはたった一つだ。
バーラハーラへ肉薄し、粘液を吐き出す寸前に横に転がり放射されたソレを回避。粘液を吐いた直後は隙を晒すため、直ぐ様剣を突き立て今度は全体重をかけて斬り降ろす。隙だらけの頭部を攻撃されたからか大きく仰け反りダウンする狩猟対象へ追撃をしていく。
「弱ってるにゃ! もう少し頑張るにゃ!!」
オトモの慧眼を信じ攻撃を続行。ここで討伐できれば御の字だが…………バーラハーラは起き上がり砂へと潜航。何処かに向かって泳いでいく。周囲を見渡し翼竜種のバオノスを探すが、居ない。残念だ。
バーラハーラは砂に潜ると言う進化をした過程で目が退化している。代わりに聴覚と嗅覚に優れているため、音爆弾が有効だ。砂漠を生息地にするモンスターは音爆弾を苦手とするものも多いため、覚えておいて損はない。
そしてバオノスは胸部に響羽と呼ばれる特殊な器官を持ち、これに衝撃を与えると高周波を発生させることが出来る。鳥の隊ハンターもこの性質を利用し、剥ぎ取った響羽から音爆弾を作り駆使することで少女を救助していた。
そして今のこの状況で最も必要なものなのだが……無い物は仕方がない。素直に走るとしよう。
バーラハーラの跡を追い、洞窟へ辿り着いた。どうやらここがヤツの住処らしい。此方を威嚇するように咆哮をしようとバーラハーラが身体を持ち上げたが、その瞬間に道中で採取しておいたハジケ石を発射する。
ハジケ石は衝撃を与えるとバラけて破裂する特性があり、モンスター達をほぼ確実に怯ませてくれる優れものだ。困った時はスリンガーハジケ石を使えば窮地を脱するきっかけになるかもしれない。
バーラハーラが怯んだ隙に道中研いでおいた片手剣を抜刀。弱点である頭部と腹部へ攻撃し、バーラハーラからの攻撃は盾で防ぐ。ガード失敗による傷や蓄積された疲労は隙を見て回復薬を飲むことで癒す。
バーラハーラが粘液を吐き出そうとした瞬間ヤツの方へ大きく踏み込み、狙いを誤った黒い粘液が此方の頭を掠めていく。その隙に頭部へ剣を下方から振り上げ、弱点へ斬撃を喰らわせた。そしてそれが、最後の一撃となった。
「お見事! 流石は僕の旦那さんだにゃ!! ホロロホルルにボコボコにされてた新米ハンターはもういないにゃ!!」
「ポチ、それを言うのは止めてくれ。何故新天地での初狩猟を終えると毎回それを言うんだ……?」
大きく仰け反り、地に伏せ力尽きる。沙海竜バーラハーラ、討伐完了。近づき素材を幾つか剥ぎ取る。後でベースキャンプの人員と合流して、本格的な調査を行いたいが…………その前に、救助対象を探そう。導虫の反応は……近いな?
「これは……食べられるキノコだね! ラッキー♪」
「リンネ、それ食べ物じゃないよ!? 危ないキノコだから!!」
導虫に従い洞窟の入り口へと進んでいけば、そこには呑気にキノコを採集している救助対象の姿が。無事なのは良いが、苦労した此方の身にもなって欲しい。……ニトロダケを食べ物判定……? いや、それは後だな。
「リンネ、無事か?」
「あ、ケイ! 助けてくれてありがとう! あの気持ち悪いの妙にしつこくってさぁ」
「それについては……まぁ後で聞くが、勝手に砂上船から降りないでくれ。せめて一声かけて欲しいんだが」
「かけたよ? べ、べる……べるなんちゃらさんに!」
べるなんちゃら……? 名前の発音が近しい人物に心当たりはあるが……うん、間違いなく情報伝達ミスだなこれは。彼なら多分聞かれるまで言わないな。ある意味職人気質と言うか、人に興味が無いと言うか……
「とにかく、ここに居るとまた他のバーラハーラが来るかもしれない。他の隊と合流しよう。ついてきてくれ」
「うん!」と元気良く返事をする彼女を見ていると、本当に大人なのか疑わしい。確かに身体的特徴は大人なのだが……内面が純粋な子供過ぎる。見ていて心配になるな。なんと言うか、蒼き星の編纂者とは別ベクトルで危なっかしい。まぁ何はともあれ……
クエストクリアだ。
ベースキャンプで他の隊と合流後に星の隊へ話を聞きに行ったが、やはり例の【べるなんちゃら】だった人物からポチの話し方が変じゃないかと指摘された。ベルナ村や新大陸調査ではこの話し方のアイルーくらいしかいなかったんだが、これも時代と言うヤツだろうか……? それはそれとして変と言ったヤツはポチの技量を見てから言え。ベルナ村では古龍をも討伐するニャンターだったんだぞ!!
あと、ちょっとは悪びれてくれ。オリヴィアが凄く険しい顔をしていたぞ。
鳥の隊が救助した少女 ノノさんと、その兄である イサイさんに少し話を聞いた。どうやら【
しかし、凄まじい健脚だった。それに臭いを覚えるとは、さぞクナファ村の人々に頼りにされている事だろう。 鳥の隊がクナファ村まで二人を送っていくらしい。彼らが戻って来るまでトレーニングエリアで武器の扱い方を確認しておこう。
ーー手記に挟まれたメモーー
携帯食料を焚き火で調理しながら常々思う。嗚呼、ベルナ村のチーズフォンデュが恋しい……切実に。新大陸調査で味わった料理長達の料理も旨かったが、やはり慣れ親しんだ味が一番だ。せめて此方にもチーズがあれば良いのに………
ーー数日後に走り書きされたメモーー
クナファ村にはチーズがあるらしく、鳥の隊はイサイくんとノノさんを救われたことに対する感謝として彼らと食事を共にしたらしい。正直羨ましい。今度鳥の隊ハンターにどのような食事だったか聞いてみようと思う。食事体系もまた、調査対象だ。 別にチーズが気になるわけではない!!