王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可がない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部、3課には分類:その他の魔法が集まります。
そんな執務室に、今日も誰もいませんね。
ですが、執務室の窓の外────魔法局の道路に赤髪少女の姿がありました。
「はー、許可とるの面倒だった……」
盛大にため息をつくのは、赤髪少女。
はぁという息とともに揺れる赤髪はショート。揺れない方の胸はペッタンコ。制服は薄緑の袖付きジャケット(王国指定)となっています。
『いあいあ、これ何の査定をするつもりなんですか』
空中に浮く、黒い15cmのペンは冒涜的な疑問をあげます。
なぜペンが空中に浮いているかというと、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビィ。自称、最強の魔法杖です。
「これよ、これ」
『またヘンテコリンな魔法ですね』
取り出した書類に書かれていた魔法名は────道を・・・レインボーブリッジする魔法。
主語はありますが、動詞が意味不明な、魔法名です。
『コレ、どんな魔法だと思っているんですか』
「道で使うとレインボーブリッジっていうプロレス技がかかる魔法だと思ってるわ」
『ああ、だから道路の真ん中に人形が置いてあるんですね』
「自分の体にプロレス技はかけたくないもの」
現在、バリゲートが置かれ、一般人が入ることが出来なくなっている、魔法局手前の道路。
道の中心には人形が一体、歩道には消火器や小道具が置かれています。
『私的には、レインボーブリッジを召喚する魔法だと思うんですが』
「えっ、レインボーブリッジって生き物なの?」
『レインボーってのは虹の輝きって聞きましたし、七色のブリッジが現れるんじゃないんですか?』
「でも、召喚系統の魔法は組み込まれてはなかったわよ」
『なら召喚魔法じゃないかもしれません』
嫌な予感がしながらも、魔法発動準備を進める、赤髪少女。
事前に魔方陣に危険な魔法が組み込まれていないか調べてはいますが、基本的に魔法は発動してみるまで何が起こるかわかりません。
「とりあえず、道路を壊して始末書だけは勘弁してほしいんだけど……」
そんな願いと共に、赤髪少女は魔法を発動するのでした。
◆◇◆◇
「いやー、すがすがしいぐらいに何も起こらないわね」
『いあー、こればっかりはミジカさんに同意しますね』
現在30分経過、三度目の魔法発動後、少女たちはレンガ道路で大になります。
空は晴天。すがすがしいほどの日差しが、赤髪少女を照らします。
「まったく、とんだ無駄労力つかった気分よ」
『まあいいんじゃないですか、何か起こるより』
「そうだけど、ここまで準備したらちょっとぐらい、起こってくれてもいいじゃん」
物騒なことをいいだしながら、空を見つめる、赤髪少女。
ぼーとした彼女の気分を咎めるがごとく、魔法局の入り口から怒声が聞こえてきます。
「三課ァ、いつまでそこを使っているつもりだッ」
「けっ、めんどうな連中がおでましだことで」
怒声の主は他の課の連中。
まだ三課が申請した時間ですが、魔法の効果がないとみるやら、どけろどけろコールが発生します。
「分かってるわよ、さっさとどけるつーの」
『相変わらず嫌われていますねー、三課は』
「まあ、彼らは私達のこと予算泥棒ぐらいにしか思ってないからでしょ」
『ミジカさんの仕事、彼らにプレゼントしたらどうです』
「三日で帰ってきたわよ。業務が違うので無理って」
『根性なしのクセに、口は立派ですねー』
魔法ペンと赤髪少女は愚痴りあいながら、片づけを始めます。
人形をどけ、小道具を適当に道端によせ、あとは道路の掃除と言ったところ。
「ナビィ、バリゲート退けといてくれる」
『いあいあ、分かりましたー』
「道路を箒で清掃したら後は『ミジカさーんッ』────ってどうしたのよ」
魔法ペンは必死にバリゲートを動かそうとしますが、ピクリともしません。
『なんかすっごく硬いんですけどッ』
「それ置いてあるだけのバリゲートよ?」
『ホントですって、触ってくださいよッ』
「別にそんなギャグをしなくても、いいわよナビィ」
呆れながらもバリゲートを動かそうとする、赤髪少女。
軽く力を入れても動かず。強く力を入れてもピクリともしません。
「ホントに動かないんだけど……」
『ほら言った通りでしょ?』
「これが魔法の効果ってことかしら?」
『多分そうじゃ「おい三課ァ、どけないなら勝手に通行するぞッ」────せっかちな連中ですね』
ぶおおおおん。車のエンジン音が鳴り響き、魔法局から出てくる黒塗りの車。
路上にいる赤髪少女や、魔法ペンのことは見えてないかのスピード。
「うわ、あぶな「ズドンッ」────へ?」
眼を開けた少女の前には、大破した車。
どうやら見えない障壁に追突したようです。
「これ、道に強固な障壁ができてるわね」
『つまり、レインボーブリッジとは結界の事だったんでしょうか?』
つんつんと障壁を触って確かめる、赤髪少女。
「うーん、どちらかと言えば“封鎖”が近い感覚ね」
『そうなんですか』
手を押したり、引いたりしますが、一向に動かない、障壁。
「まっ、諦めて魔法が切れるまで、寝ときますか」
『いいんですか、この後も査定が溜まっているっていってましたけど』
「いいの、いいの」
路上で寝そべって、布団は上着で、ころがる赤髪少女。
魔法局からは、他課の連中が“ナニゴトだ、ナニゴトだ”と出てきます。
『でも、他の課の連中が詰めてきましたけど』
「関係ないわよ、その障壁は破れないし」
『じゃあ、ミジカさんの仕事の方は?』
「だってほら、私達も出られないから」
魔法ペンは、ああ、なるほどと呟いて、赤髪少女の上着の中に潜り込むのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。