王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
────そんな執務室でうなだれるは赤髪少女。
「や、やることがいっぱいある……」
自らの想像した仕事量に絶望し、机に対して平行になることで感情を表す、赤髪少女。
机にもられる赤髪はショート、胸はペッタンコ、制服は袖付きの薄緑のジャケット(王国指定)です。
『いあいあ、ミジカさんがやってないだけなんじゃないですか』
ペンは、机に立ち、威張り散らかす姿勢で、赤髪少女を咎めます。
なぜペンが立って威張り散らかすかと言えば、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビィ。自称最強の魔法ペンです。
「そう言われるとぐうの音もでないけど」
『ほら、頑張って、頑張って』
「ええい、簡単に言ってェ。時間がないのよっ 時間がっ」
急に起き上がり、あたまを搔きむしり、赤い髪の毛をボサボサにする、赤髪少女。
ぐしゃぐしゃになった髪の毛は、意志と現実がかみ合ってない結果というものです。
『そんなに時間がないですかね?』
「例えば、仕事終わりが6時、朝起きるのが6時」
『なんだ、自由時間が12時間もあるじゃないですか』
「私は7時間は寝ないと生きていけない人間なの」
『じゃあ、残りの5時間で頑張ってください』
「食事と移動時間で3時間はもってかれるわよ」
魔法ペンは、机の上でくるくると回ります。
ふざけた様子ですが、彼女からすれば“それの何が問題”といった感じです。
『でも、休みの日が有ったりするじゃないですか』
「疲れ切って家で寝てるわよ」
『それはミジカさんの怠慢ですよ』
「休息をとるのを怠慢だとは思わないけど」
『休むのは勝手ですよ。でも前に進もうとしないのは、怠慢だと思いますよ』
魔法ペンはくるくると同じ速度で回ります。
座っている姿勢は普通ですが、頭の奥を絞られる気持ちになる、赤髪少女。
「珍しく厳しいことをいうじゃない」
『いあいあ、ミジカさんが叱って欲しそうにしてたので』
「甘い言葉をかけて欲しいかもしれないじゃない」
『ペンに甘いとか分かるわけがないじゃないですか』
手を書類にのばし、少しでも早く、今日の仕事を終わらせようとする、赤髪少女。
意志は薄いながらも、浮かび上がってきた行動。終わるかどうかは別問題ですが。
『頑張ってください、その意気です』
赤髪少女は今日も魔法の査定を始めます。
◆◇◆◇
【魔法局/査定部・第三課・執務室 [現地時刻 7:00]】
書類の山から取り出されたのは、一枚の魔法。
百、千と積み重なり、乱雑に机に積まれている、書類から選ばれた魔法です。
「しっかし、意味不明な魔法をひくわね」
『魔法名、遠回りで最短の道を選ぶ魔法、ですか』
なんとも微妙そうな魔法。
疑問に少々思うとすれば、魔法の階級が“中級”ということですか。
「こんな魔法、低級でももったいないと思うんだけど」
『効果的にも低級が妥当な気がしますけど、なぜ中級?』
上級というのは、街クラスで影響を及ぼすという事です。
級が小さくなっていくほど、規模も小さくなっていきます。
「まあ使ってみればわかるでしょ」
『いいんですか、警戒とかしなくても?』
「してどうにかなるモノだとおもってるの」
『まあ、どうにもはなりませんよね』
「ということで────未認定魔法」
極彩色の輝きを起こし、空に輝きが飛び散っていきます。
残ったのは、シ~ンと静まり返った執務室。
魔法ペンは首を傾げる羽目になります。
『何か、変わったんですかね?』
「一応、頭にマップのようなものが表示されているけど……」
言いよどみ、言葉に悩む、赤髪少女。
眉間の皺からは、これなんて言ったらいいんだろという、感じが浮かびます。
「まずは、一歩、そして右に二歩、そしてドアまでダッシュ……いや、ナニコレ」
『ちなみにどこに行きたいとか考えたんですか?』
「そう言えば、特に何も考えずに使ったわね」
『じゃあ、目的地すらなくなっているから迷宮入りしてません?』
「確かに」
眼を瞑り、最終的にマップが指し示す、位置を探し出す、赤髪少女。
たどりつくのは、彼女が帰りたい家ではなく────魔法局の執務室。
「いや、最遠どころか、戻ってきてるんだけど」
『ほら、目的地をきちんと決めないから』
「でも、これきちんと査定しないと駄目よねェ」
『それを決めるはミジカさんじゃないんですか?』
「はあ……諦めるか」
一歩を踏み出す、赤髪少女。
『諦めるのを諦めるんですね』
魔法ペンは彼女の一歩を楽しそうに評価し、同じようについていきます。
◆◇◆◇
【魔法局/査定部・第三課・執務室 [現地時刻 17:00]】
「執務室に戻ってくるまで、人助けが1回、トラブル2回、感謝が3回」
『気持ちはどうですか』
「最悪の気分よ」
『まあ、魔法通り最も遠い道でしたね』
「全く、どうして執務室に戻って来るだけで、こんなことになるのよ」
執務室のドアを開けます。
「仕事の続きをさっさと────って、アレ」
机の上には、無くなっている書類。
代わりに置かれているのは、一枚のメモ。
『えっと、書類に不備があった為、回収できるぶんは修正を行います、ですか』
「珍しいわね、魔法局経理部がミスをするなんて」
『でも、よかったですね、仕事がなくなりましたよ』
「馬鹿ね、回収できない分は自分で直しなさいってことでしょ」
『いや、今日この魔法以外の仕事してなくないですか?』
「確かに、それもそうね」
出来事が多すぎで、
『じゃあ、今日は焼肉でも食べに行きますか』
「今日ぐらいゆっくり寝たいんだけど」
『いあいあ、それこそいつでもできるじゃないですか』
「……確かに、そうね」
今日ぐらいは、ハッチャケてもいいかしら、と一歩を踏み出す、赤髪少女。
ジャケットを脱いで、外行き用のお気に入りのコートに着替えます。
『もちろん、ミジカさんのおごりですよね』
「当然、ナビィのおごりに決まってるでしょ」
口喧嘩をしながら、外に出ていく少女と魔法ペン。
問題は魔法の効果が切れていなくて、最短で焼肉屋には着きますが、ゲッソリとするような冒険に巻き込まれるのは、別のお話です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。