王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
────そんな執務室で赤髪少女が寝そべっていました。
「何もやりたくない……」
自慢の赤髪はだらんとタレて、机におでこをくっつけている赤髪少女。
赤髪はショートで、胸はペッタンコ、制服は薄緑の袖付き(王国指定)です。
『いあいや、頑張ってくださいよ』
黒色15㎝のペンは冒涜的な応援をしてくれます。
なぜペンが応援してくれるかというと、彼女は魔法ペンだからです。
名は:ブラック☆ナビィ。自称、最強の魔法杖です。
「むりー、やる気がどうやっても起きないいー」
机におでこをくっつけたまま、足をバタバタさせる、赤髪少女。
ばたばたさすたびに、椅子はぐらぐらとゆれ、パンツがちらちらと見えたりします。
『大事なところまで見えてますよ』
「そんなローアングルでみるからでしょ」
魔法ペンは、机の下から、覗き込みます。
『無地……かわいらしさの欠片もないですね』
「汚れても分からないし、楽でいいのよ」
正直、オムツの方が楽という、世も末な発言をする、赤髪少女。
どうやら彼女にとってはトイレに行く時間すら削りたいものらしいです。
「てか、週に5日残業込々でやって、一生無くならない仕事って何なのよ」
『別に今日は休みだから、仕事しなくてもいいんじゃないですか』
「でも今日やってないと、月曜日に地獄見るしー」
『やっぱり、無駄に真面目ですよね、ミジカさん』
「でも、やる気がでないー」
『椅子に座るまでが限界でしたか』
のび~とした少女の手があたるは、書類の山。
ひらりひらり。落ちてくるは書類にまざった手紙。
ぱさり、少女の頭に“望まれるように”重なります。
「なによ、私の安眠をじゃまして」
『珍しいですね。書類ではなく、手紙ですか』
「どーせ、送り方が分からない個人が手紙で送ってきたんでしょ」
荒々しい文字で書かれた、宛名を一瞥して、封を切り飛ばす、赤髪少女。
中には、荒々しい手紙と一枚の魔法が入っていました。
◆◇◆◇
【王国/魔法局・査定局・第三課 [現地時刻 11:00]】
「どーせ、お願いしますか、苦情の文章でしょ」
『悲観的ですねー』
「そーいう文章しかこない場所だしいぃ」
『確かに、苦情の手紙とかしか見たことがありませんね』
「まあ国民からのモノだし、無下に捨てるわけにはいかないのよねえ」
『なら、軽く中身を見てから捨てればいいんじゃないですか』
「あー、めんどい」
手紙の呪い判定を終えた後、めんどくさそうに内容をみる、赤髪少女。
「げっ、異世界言語か、分かりにくいなぁ」
『翻訳魔法要ります?』
「いらない。テキトーに見てからすてるから」
数秒、流し見をしてから、捨てるどころか、さらにじっと見つめる、赤髪少女。
「…………」
『あれ、何が書かれたんですか?』
言葉を無視して、横になりながらも無言で手紙を見つめる、赤髪少女。
魔法ペンは上から覗き見て、手紙に書かれている文字を読み上げます。
『えっと────
This body
The hole in
Dragging
They all
『────ずいぶんロックな文章ですね』
「全く、暑苦しくて、こっちが見てられないわよ」
手でうちわのマネをしてから、風をおくる、赤髪少女。
口では馬鹿にしていたものの、彼女の視線は手紙から離れることはありません。
Eyes for
Step thro
Don’t let
「・・・言うじゃない」
眼を瞑り、自分の初心を思い出す、赤髪少女。
自分はなぜこの職について、なぜこの場所で査定をしているのか。
机にかじりつくように毎日を過ごしていた頃、思っていたコト。
「1つでも多くの魔法を世に魅せてやりたいから、だっけ」
『どうしたんですか、急に?』
1日に生み出される魔法は100~300ほど。
ですがその全ての魔法が、日の目を見ることはありません。
表にでるのは全体の1%ほど。残りの99%は時代に埋もれていきます。
「そんな魔法を一つでも救ってやりたいからっ、所長に泣きついたんだっけな」
『私が知らない頃の話ですね』
「まあ、ナビィと出会ったのは、それよりも後の時期だからね」
魔法ペンは、自分の知らないところで哀愁を楽しんでいるー、と苦情の目線を赤髪少女に向けます。
そんなペンを無視して、手紙に同封されていた魔法陣を見る、赤髪少女。
「魔法名は“心に火をつける魔法”ね」
『なかなかにいいセンスな魔法名ですね』
「でも、これじゃあ、発動どころか、魔力も流れないわよ」
書かれていた魔方陣はメチャクチャで、とても魔法ではありません。
線が切れて魔力が流れませんし、使われている文字もおかしなところが、多数あります。
「まったく、魔法陣を何度も書き直すとか、基本すら知らないのかしら」
『でも、努力の跡が伝わって、これも好きですけどね』
「努力だけじゃ魔法は発動しないの、よっと」
口ではそう言いながら、新しい紙に魔法陣を書き直し、修正をする、赤髪少女。
殴り書きな魔法は、少女の手によって、形あるモノになっていきます。
『そっちは、別の文字を使った方がいいんじゃないですか』
「馬鹿ね、効率よりも安全性に決まっているじゃない」
『でも、ロマンは大切じゃないですかー』
「精神魔法までの域に行くと、査定が二課になっちゃうじゃない」
最後に、魔法陣を作り、全体をくくろうとしてペンを止める、赤髪少女。
この過程を終えれば、魔法は完成しますが、彼女には
「ちょっともの足りないわね」
『確かに。気持ちがすこし昂るだけとか効果が寂しいですね』
あーと、うーんと悩んだ末、動き出したのは、魔法ペン。
「アンタねぇ、魔法陣の上に落書きしないでくれる」
『落書きじゃないですよ、意味あるものです』
魔法ペンがえがくは、手紙に書かれたいた文章。
環状に描かれた言葉は、最後の一節を持って陣となります。
「こじゃれた事するじゃない」
『まっ、魔法伝達効率は終わり散らかすんですけどね』
「でも、コッチのほうが好きなんでしょ」
『当然です。効率よりロマン派なので』
ふふっと笑ってから、紙をもちあげる、赤髪少女。
「なら、私の役目は一つね────未認可魔法、発動“心に火をつける魔法”」
極彩色の輝きが、すっと光るは、赤髪少女の胸。
リズムを刻むように強弱がつく輝きは、数秒後には消えてしまいます。
『で、どんな感じですか?』
「やっぱり魔法としては不安定極まりないわね」
『ですよねー。書き直しましょうか』
魔法ペンは動こうとしますが、静止の手をいれるは、赤髪少女。
「いいや、コッチのほうがやる気が出ていいから、なし」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。