王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
そんな執務室で赤髪少女は浮かれていました。
「さあて、どこにいっちゃおうかなー」
楽しそうに揺れる赤髪はショート。今日はちょっとだけ主張する胸はペッタンコ。制服は薄緑のジャケット(王国指定)です。
『いあいあ、ミジカさん、何をやってるんですか』
ペンは冒涜的な疑問をなげかけてきます。
なぜペンが疑問を投げかけてくるかといいますと、彼女は魔法ペンだからです。
名は、ブラック☆ナビィ。自称最強の魔法杖です。
「意外と、異世界に行っちゃうのもいいかも」
『あれ無視ですか。無視はちょっと酷いですよ』
「このニホンってのもかなり面白そうだけど、次元魔法の許可書がなー」
『泣いちゃいますよ。ミジカさん、ここをインクで真っ黒にしてやりますよッ』
「何よ、うるさいわね」
『あ、ようやく気付いてくれた』
魔法ペンは嬉しさを表す為に、これでもかとクルクル回ります。
机の下にあったパンフレットには、これでもかと黒線が書き込まれますが、些細な問題でしょう。
「何よ、私の旅行計画を妨害したいって訳」
『いあいあ、そういうつもりはありませんが、うかれてるなーって』
「そりゃあ、久しぶりの纏まった休暇がとれたんだもの、浮かれるわよ」
『ほえー、それっていつなんです』
「もちろん一年後よ」
魔法ペンは、社畜戦士ミジカさん、と思いましたが言葉にはせず、ぐっと我慢します。
まあ、下の方は我慢できなかったようで、パンフレットには、社畜戦士ミジカさんと書き込まれます。
「悪かったわね、仕事好きで」
『ミジカさん、仕事のやりすぎで頭まで、壊れちゃいましたか』
「そりゃあ壊れるでしょ、こんなにも量があったら」
こんなにも~。机の前に置かれた大量の書類の山×10。
高さは3m、サイズはA4。倒れた時の危険性は考慮されていません。
「もうパンフレットでも見て、旅行の行先でも考えた方がいいと思わない?」
『これを後一年間するなら、いいんじゃないですか』
「ナビィのクセに、痛いところついてくるわね」
一年間パンフレットを見る作業は流石に飽きそうだなと、しかたなしに書類の山に手をのばす、赤髪少女。
手に吸い付くは一枚の書類。
「あれ?」
『ほう』
書かれた魔法は────旅に出れる魔法(144p)でした。
◆◇◆◇
【王国/魔法局・査定部・三課・執務室 [現地時間 11:30]】
『良かったですね、ミジカさんが気に入りそうな魔法ですよ』
「どこがいいのよ。コレ、三課あての査定魔法よ」
『といいます、と』
「どうせ、欠陥があるんだろうなって」
三課で魔法を査定してもらう以外にも、実は魔法の登録方法は沢山あります。
たくさんあるにも関わらず三課に届くのは、査定の値段が良心的だからです。
「どうおもうかしら」
『どう思うって何がですか』
「どんな欠点が隠されているかって話よ」
これは荒さがしのようですが、魔法を査定するにあたって大事な行程です。
どんな危険が隠されているのか、それを事前に予想し、ある程度は対策を立てておくことが、魔法査定の基本です。
「私は144分、絶対に魔法が解除されないパターンと見た」
『なら私は、パラパラ漫画みたいな画像が流れるですね』
「まさか144pってページ数のこと……」
『大長編の予感がしますね』
魔法を唱える前に、オムツを履いて、水分をきちんと取っておく、赤髪少女。
なぜ準備が必要かと言うと、彼女の経験によるものが大きいです。
「ふぅ、準備良し────
極彩色の光りが放たれて、光がつつむは、赤髪少女。
光りが終わった時、彼女の周りには、放牧的な匂い。
「いい風を吹かすじゃない」
鼻先に感じるは、西から吹く風。
髪を揺らし、吹き抜けていく様は、まるでこれから冒険が始まるという雰囲気。
霧がかった視界は、徐々に晴れて────いくこともなく、風景が進みます。
「あれ、あれ、ちょっとっ」
顔を小刻みにゆらして、動揺する赤髪少女。
童話的な音楽、おいしそうな匂い、からの────モザイクがかけられたような風景。
これでは楽しみたくても楽しめない、そんな中途半端な感じです。
「こうなれば、音と匂いだけでもっ」
『いや、何と戦っているんですか、ミジカさん』
「うるさいわね、ナビィ。こっちは旅行を楽しめるかに命をかけてんの」
『相変わらず、元気ですねー』
眼を瞑って、音と匂いだけでも楽しもうとする、赤髪少女。
ですが、魔法自体は脳内に投影されている為、荒い映像から逃げる事はできません。
「終わりだ……」
『なに死んだような顔してるんですか』
「私はこのクソみたいな映像から逃げることが出来ない」
『魔法解除とか出来ないんですか?』
「調子にのって60分コースを選んじゃった……」
どうやら映像を選択する時に、時間は選べたようですが、強欲な赤髪少女は最長のコースを選んでしまったようです。
「おかしい、脳内で選んだときは、凄く幻想的だったのに……」
『これ、多分。魔法容量食われたんで、画質が落ちてる気がしますね』
「どうしてそんなことが分かるのよ」
『だって、魔法陣の容量ぎちぎちになってますし』
「げっ、きちんと見てなかった」
『旅行で浮かれてるから、そういうミスをするんですよ』
うげーと言いながら、続きの60分を見続ける、赤髪少女。
もちろん、休憩時間になっても終わることはなく、午後からは赤髪少女が珍しく頑張って働くのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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