王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー   作:上殻 点景

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旅に出れる魔法(144p)

王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。

 

未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。

 

魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。

 

そんな執務室で赤髪少女は浮かれていました。

 

「さあて、どこにいっちゃおうかなー」

 

楽しそうに揺れる赤髪はショート。今日はちょっとだけ主張する胸はペッタンコ。制服は薄緑のジャケット(王国指定)です。

 

『いあいあ、ミジカさん、何をやってるんですか』

 

ペンは冒涜的な疑問をなげかけてきます。

 

なぜペンが疑問を投げかけてくるかといいますと、彼女は魔法ペンだからです。

 

名は、ブラック☆ナビィ。自称最強の魔法杖です。

 

「意外と、異世界に行っちゃうのもいいかも」

『あれ無視ですか。無視はちょっと酷いですよ』

 

「このニホンってのもかなり面白そうだけど、次元魔法の許可書がなー」

『泣いちゃいますよ。ミジカさん、ここをインクで真っ黒にしてやりますよッ』

 

「何よ、うるさいわね」

『あ、ようやく気付いてくれた』

 

魔法ペンは嬉しさを表す為に、これでもかとクルクル回ります。

 

机の下にあったパンフレットには、これでもかと黒線が書き込まれますが、些細な問題でしょう。

 

「何よ、私の旅行計画を妨害したいって訳」

『いあいあ、そういうつもりはありませんが、うかれてるなーって』

 

「そりゃあ、久しぶりの纏まった休暇がとれたんだもの、浮かれるわよ」

『ほえー、それっていつなんです』

 

「もちろん一年後よ」

 

魔法ペンは、社畜戦士ミジカさん、と思いましたが言葉にはせず、ぐっと我慢します。

 

まあ、下の方は我慢できなかったようで、パンフレットには、社畜戦士ミジカさんと書き込まれます。

 

「悪かったわね、仕事好きで」

『ミジカさん、仕事のやりすぎで頭まで、壊れちゃいましたか』

「そりゃあ壊れるでしょ、こんなにも量があったら」

 

こんなにも~。机の前に置かれた大量の書類の山×10。

 

高さは3m、サイズはA4。倒れた時の危険性は考慮されていません。

 

「もうパンフレットでも見て、旅行の行先でも考えた方がいいと思わない?」

『これを後一年間するなら、いいんじゃないですか』

「ナビィのクセに、痛いところついてくるわね」

 

一年間パンフレットを見る作業は流石に飽きそうだなと、しかたなしに書類の山に手をのばす、赤髪少女。

 

手に吸い付くは一枚の書類。

 

「あれ?」

『ほう』

 

書かれた魔法は────旅に出れる魔法(144p)でした。

 

◆◇◆◇

【王国/魔法局・査定部・三課・執務室 [現地時間 11:30]】

 

『良かったですね、ミジカさんが気に入りそうな魔法ですよ』

「どこがいいのよ。コレ、三課あての査定魔法よ」

 

『といいます、と』

「どうせ、欠陥があるんだろうなって」

 

三課で魔法を査定してもらう以外にも、実は魔法の登録方法は沢山あります。

 

たくさんあるにも関わらず三課に届くのは、査定の値段が良心的だからです。

 

「どうおもうかしら」

『どう思うって何がですか』

「どんな欠点が隠されているかって話よ」

 

これは荒さがしのようですが、魔法を査定するにあたって大事な行程です。

 

どんな危険が隠されているのか、それを事前に予想し、ある程度は対策を立てておくことが、魔法査定の基本です。

 

「私は144分、絶対に魔法が解除されないパターンと見た」

『なら私は、パラパラ漫画みたいな画像が流れるですね』

 

「まさか144pってページ数のこと……」

『大長編の予感がしますね』

 

魔法を唱える前に、オムツを履いて、水分をきちんと取っておく、赤髪少女。

 

なぜ準備が必要かと言うと、彼女の経験によるものが大きいです。

 

「ふぅ、準備良し────未確認魔法(旅に出れる魔法)、発動」

 

極彩色の光りが放たれて、光がつつむは、赤髪少女。

 

光りが終わった時、彼女の周りには、放牧的な匂い。

 

「いい風を吹かすじゃない」

 

鼻先に感じるは、西から吹く風。

 

髪を揺らし、吹き抜けていく様は、まるでこれから冒険が始まるという雰囲気。

 

霧がかった視界は、徐々に晴れて────いくこともなく、風景が進みます。

 

「あれ、あれ、ちょっとっ」

 

顔を小刻みにゆらして、動揺する赤髪少女。

 

童話的な音楽、おいしそうな匂い、からの────モザイクがかけられたような風景。

 

これでは楽しみたくても楽しめない、そんな中途半端な感じです。

 

「こうなれば、音と匂いだけでもっ」

『いや、何と戦っているんですか、ミジカさん』

 

「うるさいわね、ナビィ。こっちは旅行を楽しめるかに命をかけてんの」

『相変わらず、元気ですねー』

 

眼を瞑って、音と匂いだけでも楽しもうとする、赤髪少女。

 

ですが、魔法自体は脳内に投影されている為、荒い映像から逃げる事はできません。

 

「終わりだ……」

『なに死んだような顔してるんですか』

 

「私はこのクソみたいな映像から逃げることが出来ない」

『魔法解除とか出来ないんですか?』

 

「調子にのって60分コースを選んじゃった……」

 

どうやら映像を選択する時に、時間は選べたようですが、強欲な赤髪少女は最長のコースを選んでしまったようです。

 

「おかしい、脳内で選んだときは、凄く幻想的だったのに……」

『これ、多分。魔法容量食われたんで、画質が落ちてる気がしますね』

 

「どうしてそんなことが分かるのよ」

『だって、魔法陣の容量ぎちぎちになってますし』

 

「げっ、きちんと見てなかった」

『旅行で浮かれてるから、そういうミスをするんですよ』

 

うげーと言いながら、続きの60分を見続ける、赤髪少女。

 

もちろん、休憩時間になっても終わることはなく、午後からは赤髪少女が珍しく頑張って働くのでした。

 

認可
No.旅に出れる魔法(144p)

魔法局

      魔法査定証明書

 

日付
0000XXXX年4月24日0000

魔法級
 下級

金額
2400G

 

上記の通り、査定したことを証明します

 

査定者
赤髪ミジカ 

備考
発想は良かった。音も良かった。匂いはおいしそうだった。でも画像が荒いのはダメだろォ。時間を短くしてもいいから高画質でお願いします。

 

 




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