王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
────そんな執務室で仕事をするは、赤髪少女です。
「ああ、髪が邪魔くさい」
眼にかかる前髪をふってはらい、邪魔そうに仕事をします。
ゆれる毛先は赤色、髪の長さはショート、制服は薄緑のジャケット(王国指定)です。
『いあいあ、なら坊主にすればいいんじゃないですか?』
ペンは、冒涜的な答えをはきだします。
なぜペンが喋るのかというと、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビィ。自称、最強の魔法杖です。
「していいなら、してるわよ」
『なにか問題がありましたっけ?』
「髪を切り過ぎたら、魔力が減るじゃない」
『どうせ、多くもない魔力なんですから、切ってもかわらないでしょ』
「うるさいわね。今薄毛で悩んでいる人を敵に回したわよ」
『最悪、ズラでも被ればいいじゃないですか』
なぜここまで髪が重要なのかというと、魔力は体で作られ、髪に貯蓄されていきます。
そのため、髪が太く、長いほど、多くの魔力を使うことができます。
「カツラがどれだけ高いかは知ってるでしょ」
『そうなんですか? 私よりは安そうですけど』
「あんたみたいなブツがぽんぽん売っててたまるかつーの」
『いやん。非売品とかまた嬉しいこと言ってくれますね』
どういう感性してるのよ、という顔になる、赤髪少女。
魔法ペンはオンリーワンと言われて、うれしいようで、ペン先をよじっています。
「まっ、そんな訳で、ウチにもこういうクソみたいな書類が来るわけよ」
『いたって普通の査定書類に見えますけど』
山積みされたモノではなく、籠に入れられた書類を見せる、赤髪少女。
書類に不備はありませんが、籠には査定不可と書かれていました。
『これ、なんで駄目なんですか?』
「すでに査定を通った魔法だから」
『三課で査定した物をまた送ってきたという事ですか?』
「違うわよ。三課以外で査定されたモノを送り付けてきたのよ」
魔法名は────髪を育成する魔法。
調べてみると分かりますが、この魔法は既に登録された魔法になっています。
『でも、なんでそんな事を』
「大方、粗でも見つけて欲しんでしょ」
『粗? 魔法を不備をってことですか』
「そうそう。この手の育毛魔法は高いわりに効果がまちまちでね、よく返金騒動になるのよ」
魔法の返金騒動はよくあることです。
一般的に魔法は登録されてから、ギルドか、魔法屋で買うことが出来ます。
値段は効果や、分類によって異なりますが、育毛魔法は割と高価な部類にはいります。
「本来は二類、ようは回復魔法の分類なんだけど。最近は三類に分類してから、値段を安くしようとする連中がいるのよね」
『でも、三類って回復魔法の効果まで調べれましたっけ?』
「だから揉めるになるのよ。この魔法で髪が生えてこないって」
『メンドクサイですね』
「正直、こっちは名前通りの動きをしたら、判を押しているだけだっつーの」
書類を再び、籠にぶち込む、赤髪少女。
籠には“不認可決定”と張り紙がされていました。
『いいんですか、査定しなくて』
「して、会社や個人に文句を言われるからパス」
『でも、そこに同じ名前の魔法がありますけど』
「どんだけ効果がないのよ、この魔法……」
仕方ないとばかりに、書類を整理する、赤髪少女です。
◆◇◆◇
【王国/魔法局・査定部・三課/執務室 [現地時刻 14:00]】
「ぜ、全部で13枚もあったんだけど……」
『被害者続々で笑えますね』
「仕事するこっちからしたら笑えないわよ」
『頑張ってください』
椅子にどかっと座り、くるくる回り出す、赤髪少女。
顔には────やっかいな魔法を拾ったなぁ、と書かれていました。
彼女としては、この魔法を査定しても給料は上がりませんが、ここまで大量に送り付けられると、査定しない訳にもいきません。
「全部不認可にしてボツに出来ないかしら」
『流石に上に目をつけられそうですけど』
「それもそうよねー」
ボールペンを回しながら、査定の方法を考える、赤髪少女。
髪系統の魔法を査定するのは、実は簡単ではありません。
「髪系統の魔法は、人体実験できないしなぁ」
『適当に牢屋にいる人間とか使えないんですか?』
「魔法貯蓄場所に対する魔法よ。下手すりゃ殺人罪に問われるわよ」
『ほえー』
魔法ペンは、興味がなさそうにくるくる回ります。
自分で聞いておいてこの態度。彼女にとって赤髪少女が困るのは好きですが、停滞するのは好きではありません。
「やっぱり、こういうときには人形を使うしかないかぁ」
『人形って、準備室にことがってるマネキンの事ですか』
「そうそう。アレ、魔力馬鹿みたいに食べるから嫌いなのよねえ」
『でも、いいんですか。人間で実験しないで』
「どうせ、どこも似たような方法でやってるわよ」
準備室からマネキン人形を取り出して来る、赤髪少女。
人形には埃が積もっており、動かすだけで白いゴミがはらりと落ちます。
『掃除するところから始めません?』
「面倒だから後よ、後」
絨毯の片隅に、人形を転がし、詠唱を始める、赤髪少女。
窓から風がふきこみ、書類の束が揺れ、紙切れが舞います。
「────
極彩色の光りが放たれ、人形の頭皮に直撃。
輝きが終わった後には、少しだけ毛が生えた頭皮。
つるつるの人形に髪が生えてくるのは正しく育毛といってもいいでしょう。
「って、きちんと効果があるじゃない」
『もっさもさとはいきませんけど、きちんと伸びてますね』
「これ人形だけども、体は人体とほぼ一緒だし」
『なら、実は効果があったということですか?』
髪を引っ張りして、本物かどうかを確かめる、赤髪少女。
最終的に魔法まで行使して、生えた髪の毛は“ホンモノ”であると確証が得られました。
「全く、無駄な嫌がらせをしてくれたわね」
『逆に、業務妨害で訴えたりでもしますか』
「そんな暇な時間ないわよ」
再び投げられる、査定の“書類”。
ひらりひらり。窓からはいる風をうけ、“書類”はゆっくりと落ち、
太陽の光をうけ、床に落ちた“書類”の魔法陣が反射します。
「眩し────うん、妙ね」
疑問が脳にひっかかり、書類をつかむ、赤髪少女。
「ナビィ、ここ見てどう思う」
『急に魔法陣の一部を指されても良く分かりませんが』
「ここよ、ここ」
『これは魔法の条件指定ですか。珍しいモノを仕込んでますね』
魔法の条件指定。魔法の範囲を狭めることで、効果、威力を上げる工夫の一つです。
水魔法では、使用対象を人間にすることで、清潔でおいしい水を飲めたりするなんてことが出来ます。
「指定対象の魔法文字読めるかしら」
『えっと、対象、人形……ですか?』
「────ずいぶん、悪党なことをしてるじゃない」
ジト目で、軽蔑的な目線を向ける、赤髪少女。
『コレってきちんと調べられたらバレません?』
「よっぽどじゃない限り、分類:その他の査定所は大忙しよ」
『でも都合よく人形を使ったりするんですか』
「髪の魔法査定なんて、私だって人形を使ってやったぐらいよ」
『つまり、査定はほぼ必ず人形を使うということですか』
「そして、人形縛りの為に、本来は発動しない育毛効果が発動する」
引き出しから豪華な書類を取り出して、書き込みを始める、赤髪少女。
『なんですか、それ』
「問題にならないうちに上に報告をするのよ」
『こういうのって、快刀乱麻に事件を解決しに行かないんですか?』
「そういうのはウチの仕事じゃないもの」
ぱぱっと書いて、終了。
はい次の査定にごー、とばかりに書き終えて、赤髪少女は次の書類を取り出します。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。