王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー   作:上殻 点景

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熱に耐える魔法

王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。

 

未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。

 

魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。

 

そんな執務室には、喋る魔法ペンがいました。

 

『いあいあ、ミジカさん。今日はきちんと仕事してますかー』

 

冒涜的な挨拶といっしょに、疑問を投げる魔法ペン。

 

名はブラック☆ナビィ。自称最強の魔法杖です。

 

『って、あれ返答がありませんね』

 

いつもであれば、うるさいしてるわよっ、とキレた発言がとんできますが、今日は静かです。

 

魔法ペンが浮かんで、カレンダーをみてみると、外勤の二文字。

 

下には、認可魔法(熱に耐える魔法)製鉄所で検査と書かれていました。

 

『この流れでホントに仕事をしないんで欲しいんですが……』

 

魔法ペンはそんなツッコミを入れながら、執務室の冷蔵庫を漁ります。

 

中に入っているは、赤髪ミジカと書かれたプリン。

 

何重もの防護壁を破って、遠慮無く食べ始めます。

 

『まったく、早く帰ってきて欲しいモノですね』

 

それは魔法ペンなりの、寂しさの表現というものでした。

 

【王国製鉄所・加工区画 [現地時刻 12:00]】

 

工場の一角。製鉄所の中で加工区画に分類される場所

 

鋳型から取り出され、赤熱した鉄が、ラインに流れてきます。

 

ごろごろところがる赤い鉄に、ぶしゅーと水がかかり、白い蒸気があふれる加工場。

 

そんな場所に、少女の姿がありました。

 

「はっくしゅん────誰かが噂してんのかしら」

「大丈夫か、ミジカの嬢ちゃん」

「大丈夫だから」

 

鼻をちーんと噛んで、顔を整える、ミジカと呼ばれた赤髪少女。

 

行動とともにゆれる髪は赤。胸はペッタン。制服は薄緑の袖付(王国指定)です。

 

「魔法の検査がなければ、外に出る気かすらないわよ」

「すまんな、わざわざ製鉄所まで来てもらって」

 

「刻印系の魔法はうごかすのは大変なのは工場長が一番知ってるでしょ」

「そりゃそうだ、なんせこの道60年、コレしかやってないからな」

 

ガハハと笑いながら話しかけてくるは、工場長と呼ばれたおじちゃん。

 

ハゲでメガネで大柄ですが、気のいいおじちゃんです。

 

「別に私は構わないけど、そいつらは」

「ああ、新入りの連中どもに嬢ちゃんの仕事ぶりを見せておきたくてな」

 

工場長の後ろにいるのは、10人の男女。

 

シワがない作業着は、若さを象徴しているようです。

 

「じゃあ、安全に」

 

工場長は、指でピースの形をつくります。

 

「なにそれ」

「安全確認の合図だ」

 

「それ意味あるの?」

「もちろん、意味はある」

 

工場長は新人の方に向きます。

 

「よし、新人共ッ! 安全にッ!!」

「「「あ、安全に」」」

「判断が遅い」

 

工場長はピースサインで————目つぶし。

 

「た、田村ァッ!」

「ダメだ、完全に気絶してる」

「こ、工場長、何をするんですかァ」

 

新入りはあまりの威力に気絶。

 

工場長の指からは白い煙が、たちのぼります。

 

「————工場では一瞬の油断が命取りだ」

 

そんな様子をジト眼でみつめるは、赤髪少女。

 

「それって安全確認の為じゃないの」

「だから”安全”意識があるか確認しただろ」

「いや、たぶん確認のしかたが間違ってると思うけど」

 

本来はピースサインを見せることで、声が届かない場所でも安全を確認するために使われます。

 

元々は異世界の列車用の確認信号でしたが、時空と時代をこえて伝わったようです。

 

「はぁ、さっさと仕事をしていいかしら」

「すまんな、溶鉱炉は向こうだ」

 

「あんたたちは来ないのかしら?」

「遅れていく。俺たちは防護服を着る必要があるからな」

 

「まあ、仕事の邪魔をしないならなんでもいいわ」

 

溶鉱炉にむかって歩き出す、赤髪少女。

 

工場長や新人達も、いそげいそげとばかりに準備を始めます。

 

【王国製鉄所・加工区画 [現地時刻 13:00]】

 

「終わったわよ」

 

溶鉱炉から戻ってくるは、赤髪少女。

 

工場長だけが、先と同じ場所にいました。

 

「あれ、他の連中はどこいったのよ」

「大半が溶鉱炉の魔力に酔って、最後の数人は嬢ちゃんの技量に心が折れて帰った」

 

「えぇ、もっと骨のある新人を育てなさいよ」

「そのためにはコレが一番なんだよ」

 

「まさか、もともと心を折るためにつれてきたんじゃないでしょうね」

「バレたか」

 

がはは。工場長は盛大に笑います、

 

どうやら査定官の仕事ようすを見せて、新人の鼻を折るのは、工場の慣習みたいなものらしいです。

 

「まったく、次からはお金を取るわよ」

「次か.......次はないかもしれねえな」

 

「どうせ一年後には再検査があるでしょ」

「あまりいうなよ……半年後、この炉は止めることになってんだ」

 

「……どういうことよ?」

「経営の合理化って奴らしいぜ。俺にはそれ以上にはわからん」

 

工場長は外に歩きます。続いて外に歩く赤髪少女。

 

太陽がまぶしい青空。白い煙をはきだすは、溶鉱炉の煙突。

 

巨大建造物は空の半分を埋め、それは製鉄所のシンボルにふさわしい貫禄でした。

 

「結構儲かってるって聞いたけど」

「そりゃあ昔の話だ」

 

「今は異世界から安い鉄が入ってきやがる」

「だから溶鉱炉を止めて、経費を削減すると」

 

「別に工場自体が死ぬわけじゃないんだが、なんだか悲しい気持ちになってな」

 

王国の一時代を築く礎となった、製鉄所。

 

そこで生み出された魔鋼鉄は、武器から食器にまで、なんにでも使われました。

 

「昔は、ここに夢をもって入ってきている奴が多くいた」

「今の若者も捨てたもんじゃ無いと思うけど」

「ギラギラした連中はもう見なくなったさ」

 

工場長はヘルメットを深くかぶります。

 

そんな様子をみて呆れるしか言葉が思いつかない、赤髪少女。

 

「じゃあ、跡地を買い取ってテーマパークでも始めたら」

「この年のおじさんには、なかなかにキツイことを言ってくれるな」

 

「じゃあ無理ね」

「……何がだ」

 

「夢を追いかけてた人間がそれじゃ、誰も夢を追いかけなくなるって事よ」

「そりゃ説教か」

「まさか独り言よ」

 

工場長はすこしだけヘルメットをあげて、煙突を見ます。

 

「しかたねえ、もうちょっとだけ夢を追いかけてみるか」

 

数年後、跡地にテーマパークが建設されるのは別のお話です。

 

 

認可
No.熱に耐える魔法

魔法局

      魔法査定証明書

 

日付
000000XXXX年4月6日00000

魔法級
 下級

金額
1100G

 

上記の通り、査定したことを証明します

 

査定者
赤髪ミジカ 

備考
魔法刻印に異常は見られず。ついでに刻み直して後20年は溶鉱炉をうごかしても大丈夫にしておきました。だから、お偉いさんが来たら、あと数十年だって動かせますとでも言ってやりなさい。でも、煤とかがたまると魔法が鈍くなるから、定期的な掃除は忘れないように

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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