王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
────そんな執務室で、赤髪少女は紙に書く文字をミスってました。
古びた用紙に刻まれるは、インクの文字。間違えた場合、書き直しが基本となっています。
「消すのめんどくさいわね」
腕を組み、椅子をゆらし、横着をする方法を考える、赤髪少女。
ゆれる赤髪はショート、ゆれない胸はペッタンコ。ゆれる制服は薄緑のジャケット(王国指定)です。
『いあいあ、ミジカさん。あきらめて書き直してください』
黒色15㎝のペンは、机で転がりながら、やり直すことを推奨します。
なぜペンがやり直しを推奨してくるかといいますと、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビィ。自称最強の魔法杖です。
「嫌よ、ここまで書いたのに」
『諦めましょうよ。あと2文字で完成でも諦めましょう』
「あのね、この書類書くのどんだけ疲れると思ってんのよ」
『ほら30分ぐらいでしょ。頑張りましょうよ』
「ええいっ、修正用の申請込々で1時間よ」
『なんで、そんな書類なんでミスってんですか……?』
うるさーい、と言いながら大の手を広げる、赤髪少女。
魔法ペンは呆れて、机上でぼったちをかましています。
「これを上手い事、切り取って、ここをー張り付ければ────」
『魔法紙にそんなことしていいんですか?』
「もちろん、よくない」
ですが鋏を用意して、切り取り、貼り付けようとしている、赤髪少女。
どう見てもそっちの方が手間がかかりますが、目先の利益を考えている少女にそんなことはわかりません。
「これで、よし」
『いや、流石にばれるでしょ』
張り付けられた1平方cmの魔法紙は、誰がどう見ても“張り付けられた”とわかる出来です。
「遠目から見たらいけたりしないかなぁ」
『逆に書類を遠目から見たりすることがあるんですか……』
「私は無いけど、上司の方はあるかもしれないから」
『ミジカさんですらないなら、諦めた方がいいです』
やっぱり駄目かー、と髪をぐしゃぐしゃしながら、書類を片付ける、赤髪少女。
ヒラリピラリ。1枚の書類が彼女の前に落ちてきます。
「つったく、片付けを増やさないで────ほう」
『おやおや、ですね』
書類に書かれたいた魔法名は────文字を流す魔法。
作成者からの発動条件は、文字の近くで使うこと。注意事項は特にありません。
◆◇◆◇
【王国/魔法局・三課執務室 [現地時間 15:00]】
机上に書類をおき、眺めるように腕を組む、赤髪少女。
書類には間違った箇所がデカデカと残っています。
「というわけで、さっそく査定と行くわよ」
『いいんですか、大事な書類で実験なんかしちゃって』
「どうせ失敗したら捨てるから関係ないわよ」
『そうですけど、身も蓋もない無い事いいますね』
魔法ペンは呆れて、机上に横たわります。
指に魔力を溜め、円を描くように魔法陣を構築していく、赤髪少女。
「まっ、失敗しなければいいわけ────
極彩色の輝きが紙にやどり、刻まれていた文字が紙から離れていきます。
輝きが消えたあとには、浮かぶ文字たちがありました。
「ほえー、ほんとに浮いてるわね」
『よかったですね。インクの種類によっては浮かばないとかがなくて』
「どうかしらね」
横から眺めてみると、平均0.5mmほど宙に浮かんでいる文字たち。
書かれた文字によっては、大きく浮いていたり、小さく浮いていたりします。
「たぶんインクに含有される魔力量によっては変わるんじゃないの」
『じゃあ、インクも種類分けして試しますか?』
「そんな種類のインク代、経費で落ちるかしらね・・・」
『落ちないと思いますよ。魔法局って結構ケチですし』
「まあそうよね」
『ですです』
彼女らの話を聞くと魔法局がケチだと思われそうですが。実際は真逆。三課が金食い虫なだけです。
人数が多い二課ならまだしも、人数が少ないにも関わらず、毎回実験費用を請求してくる三課は、経理からしてもメンドクサイ存在です。
「ところでコレどうやって、動かせばいいのかしら」
『息でも吹きかければいいんじゃないんですか』
「それ、すごく嫌な予感がするんだけど」
『団扇で扇ぐよりはマシだとおもいませんか?』
確かにと────机上に顎を近づけて、ほっぺを膨らます、赤髪少女。
間違えた文字に向かって息をかけて、ゆっくりと文字を動かしていきます。
「ふ、ふ、ふーう」
『お、いい感じですよ、ミジカさん』
「ふ、ふ、ふーう」
『ちょっと右の文字に当たりそうですよ。頑張って避けて』
「ふ、ふ、ふーう」
『お、そのまま、そのまま』
うまい具合に文字に息をかけて動かしていく、赤髪少女。
ですが気が緩むとなんとやらとはこの事。最後の最後で、少女の鼻はムズムズします。
「ふ、ふ、ふ────はっくしょんっ」
『あららぁ』
盛大に鳴るクシャミ音。そしてクシャミの向きは書類の方向。
まあここまで言えば結果は分かり切ったもの。
文字たちは盛大に吹き飛びます。
『すごいですね。執務室の壁にまでべっとりですよ』
「へっ、ちょっと早く落とさないと魔法が切れちゃうのよ」
『頑張ってください、ミジカさんー』
「アンタも頑張るのよ、馬鹿ナビィがっ!!」
少女の喧騒もなんとやら。結局、飛んだ文字をすべて見つけることは出来ず、後日清掃するとこに。
もちろん白紙になった書類は、最初から赤髪少女が書き直すのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。