王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
────そんな執務室で、赤髪少女は首を回していました
「肩が、痛いっ」
ガガガギ。音をたててて、ブリキのように肩を動かす、赤髪少女。
いっしょにうごく赤髪はショートで、全く動かない胸はペッタンコ。つつましく体をおおうは、薄緑のジャケット(王国指定の制服)です。
『いあいあ、何歳なんですか……』
黒色15cmペンは書類に隠れながらツッコミます。
なぜペンが書類に隠れながらツッコムのかといわれますと、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビイ。自称、最強の魔法杖を名乗っている魔法ペンです。
「今日のはいつもの肩こりと違って物理的なやつよ」
「いあいあ、といいますと」
「前に不認可にした魔法があったでしょ」
『そんな軽く言われてもどれか分からないんですが……』
魔法ペンが、軸先からペン中を曲げて?を表現します。
仕方無いので─────記憶の白枠を作って、出来事を思い出す、赤髪少女。
赤髪少女:疲れたー(白目)
魔法ペン:ならこの魔法とかどうですか
赤髪少女:へえ、疲れを物理的に表現する魔法ねぇ(適当)
魔法ペン:面白そうでしょ
赤髪少女:面白そー(脳死)
この後、赤髪少女の肩に物理的に“疲れ”が突き刺さったのは、言うまでもありません。
『あのミジカさんの肩に多大な被害を与えたやつですか、思い出しました』
「そうよ、アレのせいでしばらく湿布生活になったんだから」
『二課とかにいって治してもらえばよかったじゃないですか』
「あまり、回復魔法に頼りすぎるのもよくないのよ」
回復魔法は正確には傷を治しているわけではありません。細胞を活性化させ、無理やり治癒させていると表現するのが正しいです。
ですから、回復魔法を受けすぎると、疲れがでたり、皮膚がシワになったりします。
『色々大変なんですね』
「そうなのよ。毎回ケガする私をちょっとは労わりなさい」
『じゃあアイスでも買ってきてください』
「私をいたわれって言ってんのよ。なんでアナタを労る必要があんのよ」
『意外と私も頑張っているとかありませんか?』
「アンタが頑張ってんなら、私は頑張りすぎで神になってるわよ」
魔法ペンは斜め45度で提案をしてきます。
『じゃあ両方頑張っているってことでアイスでも食いに行きません?』
「アンタ、最初からそれが狙いだったでしょ」
『まっさかー、偶然広告ビラが目に入っただけですよ』
「今からいったら休憩には帰ってこれないわね」
『ほら、そこは半休とってもらって』
「えぇ……仕方ないわね」
机の中から書類を取り出して、乱雑に欄を埋めて、大事に保管された印を押す、赤髪少女。
書類に書かれた文字は、休暇届け。誰もいない机の上に書類をおいて、彼女は出かける準備をします。
「さて、行きますか」
『今日は珍しく乗り気ですね、ミジカさん』
「たまにはこういう日があってもいいかなってね」
お気に入りの服を着て、執務室の鍵を閉める、赤髪少女。
心なしか彼女の足は浮足立っているのでした。
◆◇◆◇
【王国/南通り・魔法局付近 [現在時刻 20:00]】
夜、街灯に照らされて、赤みを増したレンガ道をあるくは、赤髪少女&魔法ペン。
「いや〜、おいしいかったわね〜っ」
『なんか行きたかった人より喜んでいませんか?』
お腹を抑え、指に冷たさを感じる、赤髪少女。
魔法ペンは、ペン先に白いバニラアイスの跡をつけています。
「うるさいわね。おいしいモノを食べて喜んじゃなんでいけないの」
『そうですけど、そうじゃないっていいますか』
「まあ明日の魔法局の仕事を考えると憂鬱になるけど、ね」
『休んだ分だけ仕事が増えるのが、3課の面白いところですね』
「全く、気楽に言ってくれるわね」
通り過ぎる男性。彼は“魔法局”、“3課”という言葉を聞いて、動きを止めます。
彼は、懐から何かをとりだして、これでもかとばかりに赤髪少女に声を飛ばします。
「────おい、アンタッ!」
声に釣られて、振り向く赤髪少女。
彼女の視界が捉えたのは、極彩色の輝きを、魔法の発動を完了させた男。
「まっ「
肩にのしかかるは、“疲れ”の二字。
黒く、重く、頑丈な文字は、物理的に赤髪少女を押しつぶそうとします。
「きゅ、急に何をすんのよっ」
「アンタが悪いんだ。僕の魔法を認めないから」
「こんな危ない魔法を認めれるわけがないでしょっ」
「うるさい。挙句の果てに僕の魔法に口出しをしやがって、このエセ査定師がッ」
再び撃ち込まれる、極彩色の輝き。
重複した魔法は強化され、赤髪少女の肩には“疲れ”の二字が突き刺さります。
「────ちっ」
赤髪少女お気に入りの服を突き破って、地面にしたたるは、赤い血。
思わず片膝をついてしまう程、すさまじい重さを感じてしまいます。
「どうだ、これで僕の魔法を認める気になったかッ」
「なるわけ、ないで、しょっ」
指に魔力を溜め、魔法陣を書き始める、赤髪少女。
男は、当然そんな事をさせる訳がなく、三発目の魔法を完成させます。
「ならッ! これで自分の愚かさを恨むんだなッ!!」
「ナビィっ、私の血を使っていいからっ!」
『あいあいさー』
魔法ペンは、赤髪少女の足下に現れ、血をインクのごとく使い。“瞬間”、鮮血の魔法陣を完成させます。
「起動する魔法は────文字をながす魔法っ!!」
真紅の輝きは、極彩色すら飲み込み、暴走とも呼べる威力を発揮します。
光りは、肩にのった文字をながすどころか、周囲に書かれた文字さえもながし、白紙に変えてしまいます。
「えっ、へっ、嘘だ。僕の魔法が消されるなんて、嘘だッ」
「まったく、私も勘が鈍ったモノね」
「あっ、許してください。出来心だったんです。本当です。本当なんです」
「ふーん、遺言はそれでいいの?」
「へっ?」
「“魔法”は危険なモノなの。それを人に撃ったって事は、“覚悟”は出来てるよね」
再び起動する、鮮血の魔法陣。
「いやだ、死にたく「少量の電気を流す魔法」────あがッ」
ぴくぴく。痙攣して、煙をふいた男は、レンガ道に倒れ込みます。
『ありゃりゃ、てっきりやっちゃうのかと思ったんですけどー』
「殺してどうするのよ。私が捕まるだけじゃない」
『優しくなりましたねー、ミジカさん』
「時代が変わっただけよ、私は変わってないわ」
男を引きずり道をあるく、赤髪少女。
足取りはしなやかに、後姿はいつもより少しだけ煤けているのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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