王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー   作:上殻 点景

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もずくをアイスに見せる魔法

とある王国には、書類(未認可魔法)が山積まれた執務室がありました。

 

【未認可魔法:使用はできるが、発動許可がない魔法】

 

王国魔法局には許可を取るために、国中から魔法が集められ、種類によって分配されます。

 

魔法局査定部3課には、分類[その他]の魔法が本日も運び込まれるのでした。

 

────そんな3課の執務室で汚い言葉を発するのは、赤髪少女。

 

「【※王国スラング】ッ!!」

 

バサバサと揺れる赤髪はショートなのですが荒々しく。まったく揺れないペッタンコは動かざること山の如く。

 

雑に放置されている、制服(王国指定)はシワがよれよれになっています。

 

[おやおや、ミジカさん、どうしたんですか]

 

と、紙に書いた文字を用意していたのは黒色のボールペンです。

 

なぜボールペンがこの場におらず、紙に用意した文字だけで会話をしているかといいますと、彼女が魔法ぺンだからです。

 

名はブラック☆ナビィ。自称最強の魔法ぺンですが、今日は最強にはなれそうにもないのでおやすみしています。

 

「どこに行ったのよ、クソ魔法ペンがっ」

[いあいあ、探しても無駄ですよ。数分時間前にどっかに行ったので]

 

「ちっ、人のアイスを食っておいていい度胸ね」

[食ったのは悪いと思いますが、きちんと代わりのモノも入れておいたでしょ]

 

「ええ、入っていたわよ。アイスカップに────もずく、がねっ!!」

 

もずく。王国からと遠く離れた東国から、輸入されている商品。

 

味は好みが分かれる味であり、すっぱさとつぶつぶの触感は────甘味ではありません。

 

「アンタにわかる、こ“の”気持ちが。大事に取っておいたアイスにもずくが入ってや気持ちがっ」

[いあいあ、ちょっとわかんないです]

「でもお腹が減ってたから食べるしかなかったのっ! この虚しさをどうしてくれるのよっ!!」

 

空のアイスカップを机において、盛大に音を立てる赤髪少女。

 

椅子はギシギシ鳴り、机をダンダンしているので、下の階からは明日にも苦情がくることでしょう。

 

[ほら新しいアイスを買って食べればいいじゃないですか]

「なんでわざわざ、また買いに行かないといけないのよっ」

[そりゃあ食べられたからですよ]

 

つらつらと他人事のような文字が現れる紙。

 

1時間前に書いた魔法ペンはアイスが食べられてノリノリだったので、書いてある内容もいつもより三割マシで酷いモノとなっています。

 

「【※王国スラング】っ!!」

 

声にならない言葉をあげながら、怒りパワーをもって赤髪少女は仕事を再開します。

 

そんな彼女を見かねたのか、仕事の山から一枚の書類が紛れ込みます。

 

彼女が“それ”を見つけるのは5分後のこととなります。

 

◆◇◆◇

【王国/魔法局/執務室 [現地時刻 13:00]】

 

「ふふふふふふ、いい魔法じゃない」

 

悪徳領主もびっくりな顔をして、書類を見るのは赤髪少女。

 

ぐへへへ&ちょび髭をつければ完全な悪役と見間違われる、笑顔をしています。

 

[ところでミジカさん仕事しないんですか?]

「うるさいわね。今からしようと思っていたところよ」

 

[じゃあなんで出かける準備をしてるんですか?]

「そりゃあ、もちろん」

 

[もちろん?]

「アイスを買いに行くためよ」

 

決心を確かに、グリーンコート服(赤髪少女の私服)をバサッととり、ドアから駆け出していく赤髪少女。

 

彼女の眼には“復讐”という二文字が宿っているのでした。

 

◆◇◆◇

【王国/魔法局/執務室 [現地時刻 15:00]】

 

────後日

 

『あはっは、愚かなモノですね、ミジカさん』

 

執務室横の部屋。冷蔵庫の前に突き刺さっているのは、1本のボールペン。

 

ひび割れたフローリングは誰が直すんだとか思った方は、優しい方ですね。

 

もちろんミジカさんが、帰り際に見つけて直してくれると信じていると、ナビィは解答しておきます。

 

『こりもせずに冷蔵庫にアイスを入れておくとは、さては私への挑戦ですねぇ』

 

楽しそうに冷蔵庫ドアをこじ開けて、魔法ペンは、中を一瞬で見渡します。

 

トラップとして仕掛けられた魔法は3つ。

 

「ですが、相変わらず初級魔法って感じですねー」

 

まずは一つ。ドアに仕掛けられた感知魔法をジャミング。

 

これで感知魔法から赤髪少女に連絡がいくことはなくなりました。

 

「次は障壁魔法を解除して……」

 

ペラッペラ(魔法ペンの感覚)の障壁魔法を、ペン先でいとも簡単に破って、冷蔵庫内部に侵入する魔法ペン。

 

目の前には、カップに入ったアイス。でかでかと張り付けられた付箋【赤髪ミジカ】と書かれていました。

 

『付箋に爆破魔法を仕込むとか、ほんと見境がない人ですねー』

 

名前に偽造された爆破魔法を、ブラック☆ナビィと書き直すことで、解除。

 

念入りに周囲を確認した後、魔法ペンはいざアイスのカップを開けます。

 

『やっぱり最近の流行りは冷蔵庫内でアイスを食べることですよねー』

 

普通の人には無理だろそれは、てかどかで流行ってんだ、ってツッコミを入れそうになりますが、肝心のツッコミ役はいませんので、皆さんの心の中で入れてください。

 

『というわけで、いただき────まぶゥ』

 

口に含んだ瞬間、ひろがる酸っぱさ。

 

酸味と呼ばれるそれは、アイスに含まれる甘さとは異なる方向の刺激。

 

噛めば噛むほどに広がるプチプチ感。まるで海を思い出すように濃厚な磯の味が広がっていきます。

 

『こ、これは“もずく”ではッ⁉』

 

魔法ペンは慌てて、アイス本体を調べます。

 

カップ自体に仕掛けられていた保温魔法と、爆破魔法のせいで完全に見落としていたアイス本体。

 

『げ、なんかよくわからない魔法がかかってる「がし」────へっ⁉』

 

動揺した魔法ペンは、後ろから迫りくる少女の手に気づきませんでした。

 

『は、ハロー、ミジカさん』

「遺言はそれでいいかしら?」

 

『いやー、私ももずくを食べたんで喧嘩両成敗にしません?』

「両成敗ってのはお互いが等価にならないと発生しないの」

 

『な、なら魔法の査定が上手くいったのでアイスの分は「ボキッ」────あふん』

 

哀れ。折られて、冷蔵庫の中に放置されてしまった魔法ペン。

 

今回ばかりは彼女が悪いので、しばらくは暗い冷蔵庫で涼しむことになりそうです。

 

「しっかし、もずくをアイスに見せる魔法って……ホントにピンポイントな」

 

赤髪少女は書類を取り出し、査定結果を書き込み始めるのでした。

 

認可
No.もずくをアイスに見せる魔法

魔法局

      魔法査定証明書

 

日付
0000XXXX年5月15日0000

魔法級
 下級

金額
100G

 

上記の通り、査定したことを証明します

 

査定者
赤髪ミジカ 

備考
用途はピンポイントながら匂い、発動痕跡を極限まで消せるのは素晴らしいと思いました。現状いたずらか、復讐にしか使えませんが、発展させればなんとでもなると思います。

追記:非常に役に立ったので、今回の査定額を減額しておきました。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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