王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー   作:上殻 点景

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魔法作成者:高齢の庭師

すべての人が楽に草抜きができますように。

────査定の書類にはそう書かれていました。



芝を刈る魔法

【王国/魔法局・受付 [現地時刻 10:00]】

 

書類を執務机において、赤髪少女は呟きます。

 

「芝……魔法局の敷地でやるしかないわよねぇ」

 

机のまえにおかれた名札には、魔法局査定部3課、と刻まれています。

 

魔法局査定部は、とある王国において“魔法の安全性”を確かめる部署の1つです。

 

そんな部署に、赤髪の少女は所属していました。

 

「でも、許可とれるか『zzz』なぁ『zzz』────にしても、コイツは呑気よね」

 

赤髪少女の視線は、机上で寝ている黒色ボールペンに。

 

なぜボールペンが寝ているのかといいますと、彼女が魔法ペンだからです。

 

名はブラック☆ナビィ。最強の魔法杖と自称している黒色のボールペンです。

 

「まったく、まじめに仕事してる方が馬鹿らしくなってくるわ」

 

ちょっと腹がたった赤髪少女は、魔法ペンを指ではじきます。

 

「えいっ」

『いたッ』

 

「起きたか、寝坊助ナビィ」

『損害賠償を請求しますよ。ミジカさん』

 

ミジカと呼ばれた赤髪少女は、鼻で笑います。

 

笑われた魔法ペンは抗議にぐるぐると回ります。

 

机の上の書類が、バサバサと飛んでいくので結構な迷惑です。

 

「はいはい、寝てないで、庭の使用許可とりに行くわよ」

『えぇ、オチが見えているのでいきませんよ』

 

そんな魔法ペンの言葉を聞いて、眼を丸くする赤髪少女。

 

「珍しいわね」

『賢いナビィさんは、無駄な労力はしない主義なので』

「じゃあ私一人で行ってくるわよ。時間もおしてるし」

 

赤髪少女は上着を羽織り、執務室のドアを開けて、どこかに行ってしまいます。

 

残された魔法ペンはぽつりと、

 

『いや、前回やらかした事、ホントに忘れているんですね……』

 

と、つぶやくのでした。

 

【王国/魔法局・受付 [現地時刻 11:30]】

 

魔法局一階の受付では、魔法局施設の使用許可が取れます。

 

施設は膨大な数があり、個人同士の取り合いをふせぐために、受付での一括管理となっています。

 

ですから、魔法局の裏庭をつかうのも、事前にいってからの使用となります。

 

「といわけで、申請「ダメです」────うん?」

 

赤髪少女は首をかしげます。

 

なんなら、施設名すら言ってないのに、申請の二文字をいっただけで否定された気がします。

 

魔法局員には、魔法局の施設をつかう権利があるハズ……そんなことを思いながら質問をします。

 

「し「ダメです」────ま、まだ、なにも言ってないでしょっ」

 

受付の女性は、真顔で質問に答えてくれます。

 

「現在、3課に施設を貸すことはできません」

「なんでよ」

 

「なんでって、前回施設を貸した時のことを覚えていますか」

「確か、アレは」

 

赤髪少女の脳裏におもいだされる記憶。

 

焼肉魔法で、施設ごと焼いたやつかしら……

 

それとも、ホースを増やす魔法で、水浸しにしたヤツ……

 

正確には思い出せませんので、しかたなしに受付の女性に聞くことにします。

 

「前回って施設を、焼いたっけ 浸したっけ?」

「吹き飛ばしたんですよ施設を。跡形もなく、ね」

 

受付の女性は、青筋をうかべなかがら、答えてくれます。

 

周囲の気温が下がっている気もしますが、赤髪少女は気にしません。

 

むしろ、謎が解けてすっきりした表情をしています。

 

「あー、そんなこともあったわね」

「そんなこともあった?」

 

「まあ、よくあることだから気にしないでちょうだい」

「“よくある”じゃないんですよッ!!」

 

急に、受付の女性の叫び声をあげて、びっくりしてしまう赤髪少女です。

 

「いいですか、毎回、毎回ッ、こっちがどれだけ後処理に困っていると思っているんですかッ」

「後処理って、魔法でぱぱっと片付けるだけでしょ?」

 

「そりゃあ、ブツが残ってたら片付けますよッ」

「ほら、少しぐらいは残っているから」

 

「知ってますか? 周囲に散らばる瓦礫は残ってるとはいわないんですよ」

「初耳ね。例え瓦礫になっても、魔法局の人間なら復元できると信じているんだけど」

 

気づけば────手と手で押し合って、お互いの考えを譲らない、女性と少女の姿がありました。

 

このままでは埒があかない。そう思ったのは両名とも。

 

ですが女性の方が一手はやく、口をひらきます。

 

日常的に受付と、査定をしている者の差ですね。

 

「ところで、前回行った言葉覚えてますか?」

「たぶん覚えてるわよ」

 

「こんど施設を爆破したり、燃やしたり、消し飛ばしたりしたら、貸しませんよって話です」

「やっぱり覚えてないわね」

 

「────大丈夫です。きちんと文書に残してあります」

 

彼女の視線のさきには、3課お断りの紙。

 

下には、赤髪少女が“わかったわよ”と言っている、動く写真もついています。

 

「で、なにか言い残すことはありますか?」

「ワンチャンとかないですか」

「そこになければないですね」

 

「殺生なっ」

「じゃあ、前回の施設修復代金はらってください」

 

「いやだっ」

「じゃあダメです」

 

赤髪少女はしかたなく、別の方法を模索するのでした。

 

【王国/魔法局・3課執務室 [現地時刻 13:30]】

 

執務室には、土塊がボロボロと落ちていました。

 

元凶となっているのは、もちろん赤髪少女。王国に最近できたホームセンターまで往復して、買ってきたモノがあるそうです。

 

そのせいで、執務室ドアの向こうにも土塊がポツポツと落ちていますね。

 

「というわけで、園芸用の芝を買ってきました、はい」

『どうしたんですか、そんな疲れた顔をして』

 

「疲れた顔にもなるわよ。このクソ暑い中、店まで歩いて見なさいよ」

『別に、車でいけば良かったじゃないですか』

 

「車も壊すから3課には貸せないって言われたわよっ」

『なかなかに察しがいい魔法局員ですね』

 

赤髪少女は疲れたと表現するように、芝をドスンと床に置き、椅子にドカッと座ります。

 

「つ”か”れ”た”」

『じゃあ、魔法の査定しますか』

 

「つ”か”れ”た”っ」

『でも査定しないと仕事進みませんよ?』

 

魔法ペンから正論をくらい、赤髪少女はとりあえず窓の外を見ます。

 

青い空。蒼の輪郭のしたには、王国の建物がどこまでも広がっています。

 

────世界にくらべて、私って小さなものだな。

 

ちょっとだけ悩むのが馬鹿らしくなってくるのを感じます。

 

「さて、やるわよ」

『いいんですか? 芝の量足りてますか』

 

「じゃあ、追加分はアンタが買ってきなさいよ」

『それはちょっと違うかなーって』

 

椅子から立ち上がり、赤髪少女は芝を広げていきます。

 

だいたい1平方メートル。ざっと畳一畳分ぐらいの大きさです。

 

「さてと、書類、書類」

『机のうえに転がってますよ』

 

「ああ、ありがと、ナビィ」

『いあいあ、それほどでもです』

 

「では、さっそく────」

 

赤髪少女は指に魔力をこめて、魔法陣の輪郭をなぞります。

 

すると魔力はゆっくりと流れ、次第に文字を浮かび上がらせていきます。

 

「────未認可魔法、発動」

 

極彩色のかがやき。魔法陣から放たれるそれは、極限までつよくなります。

 

そして視界を埋め尽くすほどの、光が放たれます。

 

「まぶしっ」

『ありゃ、召喚魔法ですか』

 

眼をみひらいた先には────ヤギ。

 

しかも一匹ではありません、執務室を埋め尽くすほどの、大量のヤギです。

 

「あのさ、なんかオチが見えたんだけど……」

『まっさかー、気のせいですよ。芝を刈る魔法ですよ?』

 

「でも、刈るための芝って少量しかなくて」

『じゃあなんですか、芝以外のモノが刈られると』

 

「ほら、ヤギって結構雑食じゃない」

『そんな草みたいな都合のいいモノがあるわけ』

 

むしゃむしゃ。

 

音がした方向をふりむくと、そこにはおいしそうに書類を咥えている、ヤギの姿がありました。

 

「ちょ、それ大事な書類っ」

『知ってた』

 

むしゃむしゃむしゃ

 

「ああ、それまだ読んでない雑誌ィ」

 

むしゃむしゃむしゃむしゃ

 

「駄目、机と椅子は食べ物じゃないのォ」

『スゴーイ、ホントに雑食だぁ』

 

そしてたらふく食べたヤギたちは、もちろん────

 

ぶりぶりぶり。気持ちよさそうに食べたモノを分解して出します。

 

そして、一通り食べたヤギたちは満足して消え去っていきました。

 

「終わりだ」

『ほらまだ一部分残ってますし……ワンチャン復元出来たりしませんかね?』

 

「じゃあ、アンタはこの天然肥やしを受付に持っていけるわけ?」

『自分は魔法ペンなのでちょっと無理かなって』

 

ぷーん。と土の香りを漂わす、天然肥やし。

 

地面に撒けば、いい土ができて、草木が成長しそうな気がします。

 

「……とりあえず、庭にでも撒いとくか」

『……そうですね。そうしましょう』

 

現実逃避をはじめた、赤髪少女と魔法ペンは、とりあえず部屋の片づけから始めるのでした。

 

認可
No.芝を刈る魔法

魔法局

      魔法査定証明書

 

日付
0000XXXX年7月30日0000

魔法級
 中級

金額
9500G

 

上記の通り、査定したことを証明します

 

査定者
赤髪ミジカ 

備考
魔法としては問題ないと思います。ですが、どう芝を刈ってくれるのかまで説明していただけるとありがたかったです。また、場所によっては、召喚された生物による被害が考えられるので、魔法の強弱をつける機能を追加してください。

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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