王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー   作:上殻 点景

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水を料理に整形する魔法ver2

王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。

 

未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。

 

魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。

 

そんな執務室で少女はペンをはしらせていた。

 

「お腹がへったー」

 

少女は両腕を大きく上にあげ、一言。

 

髪は赤髪、胸はペッタンコ、制服は薄緑のジャケット(魔法局規定)です。

 

『いあいあ、じゃあ昼飯をたべればいいじゃないですか』

 

冒涜的なツッコミを入れるは、喋る魔法ペン。

 

名をブラック☆ナビィ。自称:最強の魔法杖です。

 

「私だって食べたいわよっ」

『いつもなら昼休憩と言って真っ先に昼飯を食べてません?』

 

「今日はいかんしがたい理由があるのよっ」

『ダイエット的な奴ですか』

 

「違うっ! 健康診断よっ!!」

 

健康診断。王国の職員は年に一回うけることが義務です。

 

そしてもちろんお腹の検査をするので、検査の半日間はご飯を食べてはいけません。

 

「くっ、よりにもよって、昼後の診断を引くとは……」

『だから昼飯を食べていないんですね』

 

苦しそうにお腹をおさえるは、赤髪少女。

 

どうやら毎日おなかいっぱいに食べる少女にとって、朝昼飯抜きはキツイどころの話ではないようです。

 

『ほえー、大変ですねー』

 

少女の気持ちも知らず、魔法ペンはカップ麺を作り始めます。

 

とうぜん赤髪少女の前で、です。

 

「ナビィ、折るわよ」

『もぐもぐ(あっ、なにか言いました?)』

 

魔法ペンは、ずるずると麺をすすります。

 

麺は硬めというか生ですが、少女にとっては絶望的な状況。

 

一口食べるたびに、白い煙がまいあがり、少女の鼻にかんじるは鰹節の風味。

 

「あの……ちょっとは遠慮してくれるとありがたいんだけど」

『私には健康診断とかはありませんし』

 

「文房具屋に清掃にだすわよ」

『いいですね、最近ボールの感触が悪くなってきたんで直してもらいたいです』

 

魔法ペンは嫌みをどこに吹く風の如くながします。

 

気づけば容器のカップ麺はからになっており、少女はぐったりとしています。

 

「満足したならどっか行って頂戴」

『ほんとに元気がありませんね。しおれたトマトみたいです』

 

「しおれるどころか枯れそうな一歩手前だっつーの」

『もはや嫌みの一つすら言い返さないとは……だいぶキテますね』

 

お腹が減ってなければ実力行使してたわよ、と机に頬をはりつけながら考える、赤髪少女。

 

「仕事……するか……」

 

このまま魔法ペンと戯れてていてもお腹が減るだけなので、賢明な判断です。

 

「はあ、いっそのこと全部不許可にしてやろうかしら」

『でも、結局見てるのがミジカさんらしいですね』

 

「どうせ後で怒られるのは私だも————ふーん」

 

一枚の紙をとって、眼を大きく見開く、赤髪少女。

 

その反応は何かを見つけた様子です。

 

「ちょうどいい魔法があるじゃない」

『どうせ禄でもない魔法じゃないんですか』

 

「ほら今の私でもとっていいものだし」

『えっと、“水を料理に整形する魔法ver2”……いや、うん』

 

魔法ペンはどうせクソ魔法なんだろうなという眼で少女を見つめます。

 

そんな気持ちもしらず、うっきうきで水を準備する、赤髪少女なのでした。

 

 

「というわけで、各種水を用意しました」

 

机の上に置かれるは、4本の水。

 

水道水、王国山の天然水、井戸水、雨水、です。

 

『どれも水じゃないんですか?』

「ちっちっち、これだから素人は」

 

成分がー、味がー、と様々な違いをおしえてくれる、赤髪少女。

 

魔法ペンはすべてを聞き終わり、思ったことは————

 

『いや、全部水ですよね……』

 

そうですね。全部広義としては“水”です。

 

「まあ細かいことはいいじゃない————未認可魔法(水を料理に整形する魔法ver2)

 

極彩色の輝きが、机上に降り注ぎます。

 

数秒後、光が消え去ったあとには、おいしそうな料理が並んでいました。

 

「ほう、見かけもなかなかにいいじゃない」

『でも、この手の魔法って……』

 

魔法ペンが心配するは、見かけではなく、味の心配。

 

基本的に整形魔法は見かけは綺麗にしてくれますが、味までは保証してくれません。

 

ナビィの心配もどこにやらで、料理を口に運ぶ、赤髪少女。

 

「なるほどね、鉄分多めだからレバーのステーキとはなかなかにいいじゃない」

『えっ、食べれる味なんですかッ』

 

「当然でしょ。じゃないとこんな時に使ったりしなわよ」

『てっきりミジカさんが味にブチぎれて、終わりかと思いましたけど』

 

「それは前回やった奴だからね」

『あれ、これを査定したことあるんですか?』

 

「新人の時よ」

 

具体的に言えば————見かけにだまされて、がっついたミジカ新人は、秒でトイレにいく羽目になりました。

 

まだ自分が一人だけではなく、みんなが居た時代の話でもあります。

 

「まあ、催眠魔法にちょっとぶれがあって味にムラがあるけどね」

『確かに食べれない味ではないですね』

 

魔法ペンは、ふむふむと思いながら、一口だけ食べていきます。

 

レバーステーキ、野菜サラダ、わかめスープ、謎魚の刺身、といった具合。

 

『この手の魔法で食べれるものがあるとは思いませんでした』

「そこは開発者の努力の成果じゃない?」

 

ばぐばぐ。押さえられていた食欲が刺激されたのか、有無を言わさず食べ始める、赤髪少女。

 

勢いは止まらず、すでに新しい水をよういして、魔法をかけ始めています。

 

『あの、ミジカさんわかってると思いますけど、コレ水ですからね……』

「なによ、それの何が問題なわけ」

 

『いや、人って水分を取りまくると、あらゆるとこが緩くなるわけでして』

「???」

 

人体は必要な分以上の水分を摂取すると、外部に放出しようとする動きが活発になります。

 

また水分を吸収しすぎることで、お腹の動きも頻繁になります。

 

「別にこのぐらいなら————むふふうう……と、トイレいってくるっ」

『だから言ったのに』

 

尿意と便意をもよおした、赤髪少女。

 

もちろん健康診断の時間になっても感覚は止まることなく。少女には後日再検査の通知がくるのでした。

 

認可
No.水を料理に整形する魔法ver2

魔法局

      魔法査定証明書

 

日付
000000XXXX年4月7日00000

魔法級
 下級

金額
900G

 

上記の通り、査定したことを証明します

 

査定者
赤髪ミジカ 

備考
努力の成果が現れた魔法だと思います。催眠魔法は水の味を消すほどにはきいており、味の欠点を完全にけしていました。惜しむらくは、水なので食べ過ぎると尿意を催してしまうところですね。個人的には、皿の魔法リソースを削って、匂いを付け足したりすると、よりよい魔法になると感じました。

 

 

 




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