王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
魔法作成者:五人兄弟の五男
────魔法申請書にはそうかかれていました。
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
そんな執務室で、奪い合いが発生してました。
「これは私の焼きそばパンっ」
パンを片手に逃げ回っているのが、赤髪の少女です。
『よこせー、よこせー』
そんな少女を追いまわしているのは、黒色のボールペンです。
さきっぽを器用に出して、反動で飛ぶ姿は、まさに狩り人です。
「どーして、私のパンを狙うのよっ」
『最近、お金がなくて碌なモンを食べてないからですよッ』
「それって自業自得でしょっ」
『じゃあ、見せびらかすようにパンを執務室に置かないでください』
ぴょんぴょこ、ぴょんぴょこ。
どったん、ばったん。
家具とか、絨毯とか、窓ガラスとかを、粉砕、玉砕、大喝采しながら彼女たちは暴れまわります。
「ペンなんだから、インクでも舐めてなさいよ」
『ペンだっておいしいモノがたべたいんですよ』
いまさらですが、なぜペンが追い回しているのかといいますと、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビィ。最強の魔法杖をなのっている、黒色のボールペン型、魔法ペンです。
『最後に手に入れるたら勝利なんですよ』
「なら手放したら私の敗北になるのかしら?」
『当然』
「と思うじゃん────
魔法陣は当然簡略。指先だけで書かれた陣には、魔力が流し込まれて、応急的な発動をします。
パンは、極彩色の光につつまれます。
『ひょっ?』
そして光が消えたあとには、
『あの、その』
「どーしたのよ、あんたが欲しかったパンじゃないの」
鉄の黒光りする、円状の塊。
つまるところ────
『これ、フライパンじゃないですかッ!』
「大丈夫でしょ。あんた雑食だし」
『雑食ですけど、最近はベジタリアンにはまっているんですッ!!』
「フライパンはベジタブルかもしれないわよ」
『フライパンは野菜じゃありません』
「じゃあ、諦めて他のモノを食べなさい」
あーだ、こーだと言い争う二人。
今回ばかりは魔法ペンの分が悪そうですね。
「そもそも、あんた、私の昼飯を勝手に食べたじゃない」
『勝手じゃないです。わざと食べたんです』
「余計たちが悪いでしょ」
『そんなぁ、ミジカさんも空腹を味わってほしくて』
「一人で独占してなさい」
『いやですー。この感情は共有しますー』
そんな二人の間を割るように、窓から鐘の音が届きます。
カラーン、カラーン。十二時を告げる鐘は王国市内にひびき渡っています。
「『もうそんな時間か』」
そんな残響はお腹が減った二人のことを見通しているようで「『ぐ~』」仲良く顔を見合わせます。
「ちっ、一時休戦ね」
『命拾いしましたね、ミジカさん』
「それはこっちのセリフよ」
二人とも、背中を向けて、外にでる準備を始めます。
赤髪少女はコートを羽織り、魔法ペンは外行きのペン袋を持ってきて、
息を合わせたように、執務室のドアでぴったりと足並みがそろいます。
「────で、何食べにいく?」
『────そりゃもちろん、ベジタブルで、うまそうなモノですよ』
ドアが開いた後には、執務室から声は聞こえなくなっていました。
◇
【魔法局/食堂1F [時刻 12:05]】
お昼の鐘がなったことで、空腹は、人から人へと広がっていきます。
結果として起こるのが、魔法局の食堂の大混雑です。
右を見ても人、左を見ても人、そんな状況です。
「俺のだ」
「いいや、私のよ」
「よこせェ、よこせェ」
宙に飛ぶ、食券、トレー、財布。
勇ましく魔法局員が争うのを、呆然と眺めているのが、赤髪少女と魔法ペンです。
『ミジカさん、行かなくていいんですか?』
「ナビィこそ、行かなくていいのかしら?」
『だって、オチが見えてますし……』
「私だって同じ考えよ」
口をへの字に曲げるのは赤髪少女です。
ほら、と彼女の視線は、見知らぬ魔法局員に向きます。
どうやら彼は空腹が限界の様子────果敢にも、大混雑につっこんでいき、もみくちゃにされて、最後はゴミ捨てのようにはじき出されます。
「まっ、戻ってカップ麺でも食べようかしら」
『いいですね、カップ麺』
「あんたの分はもちろん無いわよ」
『ほらミジカさんが我慢したらいいんで』
「────ほ~う、三課ともあろう連中がカップめんですか」
正面から聞こえてくる、煽り声。
そこにいたのは夏にも関わらず防御性能が高そうな服を着ている連中。
「一課の連中がなんのようよ」
「いえいえ、カップ麺という敗者の食べ物が聞こえまして」
一番前にいる男は、見せつけるようにチョココロネをだします。
「なっ、食堂限定10個のチョココロネをどうやってっ」
「もちろん部下に買わしてきたんですよ」
「馬鹿な、並んでいる間の給金はどうするつもりなのよ」
「もちろん私の財布から出すにきまってるじゃないですか」
「ちっ、卑劣な戦術を……」
「おやおや、人手不足の三課にはできない手段でしたねェ」
勝ち誇った男は、パンの包装をゆっくりとはがし、もったいぶるようにチョココロネを食べようとします。
「いいから、早く食べなさいよっ」
「悪いですが、優越感と言うスパイスをもう少し効かせたいもの」
『────じゃあ、私がいただきますね』
気付けばチョココロネは魔法ペンの頭上にありました。
「あのねぇ、ナビィ……」
『あれ、私なにかやっちゃいました?』
「いや、現状を見れば良くやったよりなんだけど」
『じゃあ、なんの問題もないですね』
赤髪少女が呆れているのは、魔法ペンの見境の無さですね。
誰にもかれにも盗みを働いているとは、この魔法ペンをいつか痛い目見せる必要があるな、と思う彼女です。
「────ふふふ、ここまで馬鹿にされたのは初めてですよ」
もちろん盗まれた方はたまったものではありません。
空腹も合わさって、一課の男の怒りは有頂天に達していました。
「一課に逆らったということは、ウチの攻撃魔法の標的にされても文句はいえないわよねぇ」
「じゃあ、あんたがウチの未認可魔法を食らっても文句は言えないわね」
睨み合う、男と、赤髪少女。
二人は同じタイミングで魔法陣を描き始めます。
「馬鹿が、攻撃魔法専門の課だぞ。練度が違げぇよ」
「話にならんだろ。だって相手は落ちこぼれの三課だぜ」
描く速度は同速。
ですが違いとしては、一課が放つ魔法が攻撃に特化したものであるということ。
つまるところ、先に攻撃するために、画数を切り詰めたものであるということです。
「描きあがるのはこっちの方が速いのよぉ────
輝く魔法陣から飛んでくるのは、ジグザグに飛ぶ、白炎の弾丸。
避けがたい方向から、赤髪少女を狙って猛進してきます。
「ナビィっ」
『えっ、盗んだチョココロネを渡せってことですか?』
「早くっ!」
『えー、しかたないなー』
赤髪少女は陣の完成と同時に、チョココロネをむしり取り、魔法陣に突っ込みます。
「
極彩色の光りが、チョココロネをつつみ、食べられないパンへと変換されます。
「馬鹿め、どんな魔法を使おうが避けることは不可能ッ」
「誰、が、避けるって言ってんのよっ!」
取り出したフライパンを、構えて、一本足で、
「一寸の虫にも3.3mmの魂打法っ!!」
ジャストミートッ。フライパンの芯でとらえた弾丸は、威力そのままに向きを反転。
そのまま、真正面にかっとんでいきます。
「ふげらッ」
当然、赤髪少女の前にたっているのは一課の男。
顔面で弾丸を受けて、そのまま床にたおれて、ノックアウトされます。
「ふっ、三課に逆らうなんて100年早いわね」
『やいやい、同じ目にあいたくなければそのパンをさしだせー』
「なんであんたも偉そうなのよ」
『ほら、きっかけを作ったのは私なんで』
「まっ、さっさとずらかるわよ」
『そうですねー。ぞろぞろと集まってきてますし』
騒ぎを聞きつけて、集まって来る魔法局職員たち。
現行犯で捕まらなければこっちのものとばかりに、魔法ペンと赤髪少女は逃げ出すのでした。
もちろん同じ建物内部なので、別日に、執務室に始末書の山が届けられるのは違うお話です。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。
追記、誤字報告があったので助かりますっ!