王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
────そんな執務室では、赤髪少女が服を籠に投げ入れます。
「洗うのは明日でいっか」
明日の自分頑張れの宣言をするは、赤髪少女。
赤髪はショート、胸はペッタン、制服は薄緑の袖付き(王国指定)です。
『いあいあ、ミジカさん、昨日も同じ事いってませんでしたか?』
黒色直径15cmのペンは、冒涜的な呆れをみせます。
なぜペンが呆れるのかと言うと、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビィ。自称:最強の魔法杖です。
「だ、大丈夫よ明日も晴れるハズだから」
『残念ですが、明日は雨です』
「ま、魔法局備え付けの洗濯機を使えばいいから」
『あれ、量が入らないってこのまえキレてませんでした?』
魔法ペンの視線の先には、大量に積まれた洗濯物の山。
木編みの籠からは、下着やシャツがはみ出て、零れそうになっています。
「だって、定期的にかけるのメンドクサイしー」
『休憩時間にいれとけばいいじゃないですか』
「なんで私の休憩を使ってまで洗濯機をかけにいかなきゃならないのよ」
『でも、それぐらいしか時間がありませんか?』
「洗濯物が勝手に洗われて、勝手に乾けば問題ないわ」
『じゃあ、あとは洗濯機に入れればいいですね』
もう執務室に洗濯機を置いとけよと思うかもしれませんが、事情というモノがあります。
1つ目は、異世界の製品を置いてあることで、魔法の挙動が変化してしまう可能性。
2つ目は、そもそも執務室に洗濯機を置くスペースがなく、水回りもないという事です。
「いっその事、裸で暮らしてやろうかしら」
『どう考えても、通報されて終わりな気がするんですが』
「通り過ぎる人全員に、洗脳魔法をかければワンチャンないかなぁ」
『そっちの方が労力かかってませんか……』
「そのぐらい、面倒ってことよ」
はぁ、と言いながら書類の山をみる、赤髪少女。
手をのばした指にふれるは、一枚の書類。
「ふふっ、やっぱこの魔法の為に、洗濯物を溜めてたのね、偉い私」
書類をみながらニヤニヤとつぶやく、赤髪少女でした。
◆◇◆◇
【王国・魔法局/査定部/第三課執務室 [現地時刻14:00]】
「どれどれ見せてください」
『ほれ、見なさいナビィ』
書類を魔法ペンに向けてみせてくれる、赤髪少女。
『えっと────選択を洗ってくれる魔法ですか』
「そうよ、洗濯を洗ってくれる魔法よっ」
魔法ペンは持ち手をくねくねさせて、?のマークを作ります。
『なんか、発音違いませんか』
「気のせいじゃない。そもそもの字が悪筆だし」
魔法ペンは書類を読み直しますと、悪筆な字で書かれた“選択”の文字。
洗濯と読み間違えてしまっても無理がない文字です。
「じゃあ、いくわよ。
極彩色の輝きがふりそそそぎ、洗濯物を────赤髪少女の頭をつつみます。
輝きが晴れたあとには、首を傾げる、赤髪少女。
「アレ、なんか思ってたのと違うような……」
『だから言ったじゃないですか“選択”を洗うって』
「洗濯を洗って欲しかった────84%ね」
『急にどうしたんですか。データキャラとか「ボキッ」────ちょっとなんで折るんですかッ!』
「ナビィが私の悪口を言う可能性が高かったからよ」
『せめて言ってから折ってくれません?』
魔法ペンは折れた場所を、とりあえずテープでくっ付けておきます。
「ちなみに、テープよりもボンドでくっ付けた方がいいわ」
『その心は?』
「そっちの方が取れにくいからよ」
聡明な眼で語りかける、赤髪少女。
どうやら選択が現れたことで、よりよい未来を選択できるようになったようです。
「凄いわ、まずは仕事を片付けて」
『洗濯をしなくてもいいんですか?』
「馬鹿ね、仕事を終わらしてやった方が効率がいいでしょ」
「────まあ、そうですけど?」
「仕事が終わった後は寝て」
『いあいあ、洗濯をしてくださいよ』
「大馬鹿ね、洗濯は一気に消化した方が効率がいいでしょ」
『でも洗濯機に入る量がって怒ってませんでしたか?』
「大丈夫、私の“選択”によるとあと7%は、洗濯物が増加しても洗えるわ」
『────いあいあ、んなわけ』
魔法ペンは呆れます。7%どころか、現在でさえ入らなさそうな洗濯物。
そんなデタラメな選択がどこにあるのかという、感じです。
『もしかしてですけど……』
魔法ペンは思案します。
行動選択の効率というものを、そんなすぐにはじき計算できるのかと。
つまるところ、効率を出すためには、なんならかの基準があるとい事ではないかと。
────そしてそれは、一般的な人ではなく、ミジカさん本人が基準となっている。
『つまり、洗濯物を後回しにするだけでは……」
そのとおり、あくまで赤髪ミジカ基準の選択。
彼女が一番やりたいと思っていることを、確率にして分かりやすくしているだけです。
「すごい、まるで信託をもらった気分だわ」
『これが自惚れという奴ですか』
彼女のただやりたいことをやるだけの行動は、魔法が切れるまで続くのでした。
もちろんその間に、仕事は進めど、洗濯物が洗われることはありませんでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。