王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可が降りていない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部。3課には分類:その他の魔法が集まります。
────そんな執務室の────横の準備室で少女は荷物整理をしていました。
「中々減らないわね」
手に持っていたダンボールをおろし、ため息をつく赤髪少女。
赤髪はショート、胸は邪魔にならないペッタン、制服は薄緑の袖付きジャケット(王国指定)です。
『いあいあ、ミジカさんがサボっていたせいだと思いますよ』
黒色長さ15㎝のペンは、冒涜的な挨拶をかまします。
なぜペンが挨拶をできるのかと言えば、彼女が魔法ペンだからです。
名は:ブラック☆ナビィ。自称:最強の魔法杖です。
「仕方ないじゃない、一つ一つ見ていると時間がかかるのよ」
『ミジカさんの場合は、断捨離が下手なだけだと思いますけど』
口を尖らすように反論する、ミジカと呼ばれた、赤髪少女。
「だってー、いざとなったら使いそうな気がしてー」
『それ去年も言ってませんでした?』
「ら、来年使うかもしれないからっ」
魔法ペンは、ふーんという冷ややかな視線を送ります。
視線と言うか、ペン先をむけていますが、細かいところは気にしてはいけません。
『じゃあ、熊のぬいぐるみは』
「パペット君13号は魔法の査定に必要なの」
『じゃあ、分厚い鉄の板は』
「ほら板に関する査定があるかもしれないし……」
『じゃあ、積み重なった週刊誌は』
「わ、私がまだ読んでないんだもんっ」
いっぱ~い。準備室には査定で使う用のアイテムと、赤髪少女の私物であふれています。
埃と、汚れに塗れた床。3列ほどの業務用スチールラックには、ダンボールがこれでもかと、のっています。
『とりあえず、ダンボールからでも処分したらどうですか?』
魔法ペンがツッコミを放棄して、思わずまともな事をいってしまほうど、汚いです。
それもそうかと思う、赤髪少女。
「ならダンボールを折りたたんで────いや、待てよ」
何かを思い出したかのように走り出す、赤髪少女。
魔法ペンはその姿を見て、また掃除が終わらないヤツだなーと思ってしまいます・
「ど、どこにやったけーっ」
ドンガラガッシャン。となりの執務室からは書類が崩れる音が連続で。掃除場所は更に増えていくのでした。
◆◇◆◇
【王国/魔法局・査定部・第三課準備室 [現地時刻 16:00]】
『で、見つけてきたのがその魔法って訳ですか……』
「そ、そうよっ」
一枚の査定書をもってきた、ボロボロの赤髪少女。
どうやら執務室の散乱した書類を片付けるのは、そこそこ手間だったようです。
『せめて、そこは掃除が進みそうな魔法をもってきません?』
「そんな便利な魔法はウチには来ないわよ」
『無駄に説得力が高いのが腹立たしいですね』
掃除の魔法はモノを動かすのが一般的なため、安全確認と称して、一課(分類:攻撃魔法)に流されることが多いです。
その為、一課の部屋は、何時でもキレイになっています。
『まったく────ダンボールに興味を持たせる魔法、でしたっけ』
「そうよ、宴会魔法すぎて査定するのが面倒だった奴よ」
『なんで急にそんなもんををもってきたんですか』
「いや、ダンボールに興味をもったら、掃除も早く進むかなって」
魔法ペンは思います。
ダンボールじゃなくて、掃除に興味を持たないと進まないのでは、と。
ですが、賢い────面白いモノが大好きな魔法ペンは言葉をぐっと、インクの中に混ぜておきます。
「じゃあ、早速使っていくわよ。
極彩色の輝きが、ダンボールに降りかかります。
眩い、儚い、奇跡と思ってしまうほどの輝き、まさしく魔法。
そして、そんな光が消えたあとには────普通のダンボールが残っていました。
「いや、変わってないじゃない……」
呆れた眼をむける、赤髪少女。
魔法ペンは、じっとダンボールを見つめます。
『ミジカさんの予想は何だったんですか』
「ゲーミングカラーに光るダンボール生成魔法」
『私は爆音が鳴り響くダンボール予想でしたね』
二人が視線を向けますが、ダンボールはピクリとも動かず。
やっぱり駄目な魔法だったかー、と眼をはなすのは、赤髪少女。
魔法ペンは、いつもどおりですねー、とくるくるまわります。
「さっさと不許可で「ガタッ」────へっ?」
物音が準備室にひびきわたります。
「ねえ、ナビィ、今音が聞こえなかった?」
『いやいや、そんなわけ「ズガガガガガ」────聞こえますねー』
二人の視線をダンボールに向けると、ピタリとやむ音。
考えることは魔法ペンも、赤髪少女も同じようで、ふたたび視線をそらします。
「やっぱり「デデデデンッ」しょうもない仕掛けね」
『そうい「シュウッ」わなくてもいいじゃないですか』
「いや「サイクロンッ」人が見てないときだけ音がなる仕組みでしょ」
『個人的には「ジョーカーッ」面白くて好きですけどね』
「あのね「マキシマムドライブ」────てか、うるさいっ!!」
苛立ったように視線を向ける、赤髪少女。
ダンボールはふたたび沈黙をします。
「うるさいだけで興味を引こうとか100年早いのよっ」
『子供の興味は引けそうな魔法ですよね』
「まったく「チャリーン」────今、お金が落ちる音がしなかった」
魔法ペンは、凄く呆れた視線を、赤髪少女にむけます。
『あのですね、ミジカさん……』
「そんな事よりも、お金よっ! どこ、どこに落ちたのっ!!」
チャリーン、チャリーンと鳴りひびく音が準備室にひびきます。
床を歴戦の兵士のごとく、匍匐前進をおこなう、赤髪少女。
「まさか、掃除している時に、こんな幸運なことがあるとは思わなかったわっ」
『いや、いい加減気づいて欲しいところなんですが……』
欲は人をここまでも愚かにしてしまうのか────いや、ミジカさんって意外と子供っぽいですし、妥当ですか。
魔法ペンはそんな事を思いながら、赤髪少女の奇行を見守るのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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