王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可がない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部、3課には分類:その他の魔法が集まります。
そんな執務室に赤髪少女がウガーと叫び声をあげていました。
「あそびたーい」
悲痛とも言える叫び声をあげる、赤髪少女
ボサボサの赤髪はショート、胸はペッタンコ、制服は薄緑の袖付きジャケット(王国指定)です。
『いあいあ、仕事をさっさと終わらせないからそうなるんですよ』
机で転がっている、黒い15cmのペンは冒涜的な正論をいいます。
なぜペンが正論をいうかと言いますと、彼女が魔法ペンだからです。
名は:ブラック☆ナビィ。自称:最強の魔法杖です。
「くっ、今回ばかりは否定できない」
『珍しいですね。ミジカさんが反論しないなんて』
「私だって、自分の非を認めることぐらいはするわよ」
歯を食いしばるように頷くは、ミジカと呼ばれた、赤髪少女。
何を隠そう彼女がいそがしいのは、朝寝坊を盛大にしたからです。
『まあ、こんなに陽気な天気だと寝たくなるのも分かります』
「寝たくても寝たらだめなのが、仕事なのよ」
『でも勤務時間には間にあってませんか?』
「そりゃあ、色々と犠牲にしたら間に合うわよ」
犠牲にしたものその一、食事。
ぎゅううううと可愛らしい音を鳴らすは、少女のおへそです。
『まあ、食事は仕方ないですね』
「次はこの髪の毛ね」
犠牲にしたものその二。髪のケア。
髪の毛はばねのようにあちこちが跳ねて、寝癖もばっちり。
『なのに、服だけは無駄に可愛いですね』
「当然よ、服は乙女にとっての命だもん」
『代わりに一般的な乙女の命が犠牲になってませんか?』
「いいのよ、髪なんてどうせ昼寝をしたらボサボサになるじゃない」
『いや、うん……ミジカさんの乙女心ってそこら辺に転がってそうですよね』
魔法ペンは呆れるどころか、ちょっと尊敬すらしてしまう気持ちです。
仕事をサボりたい、サボりたいと言っている割に真面目に働くのは、社畜精神によるたわモノでしょうか。
「大丈夫よ、今日はそんな私にオススメな魔法を見つけたら」
『いいんですか、査定を私的な気持ちで利用して』
「私の生活が改善するなら、魔法を作った本人も喜ぶでしょ?」
『どう見ても喜ぶのはミジカさんだけだと思いますけど』
聞く耳をもたず、書類を取り出して、魔法の準備を進める、赤髪少女。
紙に書かれた魔法名は────朝の10分を捻出する魔法です。
◆◇◆◇
【王国/魔法局・査定部・第三課/執務室 [現地時刻 12:50]】
「で、10分、捻出出来てないんだけど」
『昼に使っても意味ないんじゃないんですか?』
「仕方ないでしょ、本当に効果がないのか見とかないといけないのよ」
あわよくばの期待を込めて、魔法を発動した、赤髪少女。
ですが、どうやら魔法は昼には効果がない様子。
しかたないので、後日朝になってから魔法を発動することに。
◆◇◆◇
【王国/宿屋・日当たり良好な部屋 [現地時刻 4:50]】
「はあ~、朝眠いのになんでこんなことを……」
『頑張ってください、ミジカさん』
「なんでアンタはいるのよ」
『そりゃあ、一人で暇だったので』
魔法ペンは我が物顔で、ベットの上で転がります。
なんなら布団までかけて、もうひと眠りしそうな姿勢です。
「大人しく執務室で待っときなさい」
『いやですー、私だって寝たいときがあるんですー』
「常日頃から夜まではしゃいでるアンタが言えるセリフかっつーのっ」
魔法ペンは布団ごと剥がされ、握られるは赤髪少女の手の中。
それはこれ以上変な事をしたら折るからね、という意味合いも含まれています。
『いいんですかー、私に構って、魔法を使わなくてー?』
「分かってるなら、邪魔をするなっ」
はあ。大きなため息をつきながら、パジャマを整える、赤髪少女。
お腹に力を入れて、魔力を活性化させ、指に光を集めます。
「さてと────未認可魔法《朝の10分を捻出する魔法》発動」
極彩色の輝きが、ふりかかるは、少女のあたま。
ぽわぽわと輝き、やがて何かを終えたように消えてしまいます。
「アレ、もう魔法の発動が終わったの?」
『なにか変化ありますか、ミジカさん』
「うーん、特に頭が上手く回るとかは感じないけど」
『でも、身体影響系の輝きでしたよ』
「イマイチ容量が掴めない魔法ね」
首を傾げながらも、朝の準備を始める、赤髪少女。
食事をして、歯を磨き、髪を整えて、行く準備は完了します。
「やっぱり、いつもと変わらないわね」
『そうですね。見た感じ早くなっている様子は無かったですね』
二人で首を傾げながら、頭を悩ましていると、時計が視界にはいる赤髪少女。
「そろそろ、行く時間な────アレ、いつもより10分早い」
『いあいあ、そんなワケがないじゃないですか』
「でも、ホントにいつもより10分早く行動が終わってるんだってっ」
『どういう原理で……いや、納得しました』
「えっ、マジで原理が分かったの、ナビィ?」
『ええ。ミジカさんの恰好を見て納得しました』
どういうことかしら、と?マークを浮かべる、赤髪少女。
魔法ペンは、そんな彼女をかわいそうなモノを見る視線でみつめます。
「ちなみに、その恰好で魔法局に行くんですか?」
『ええそうよ、私のいつも通り、カワイイ恰好でしょ』
ドヤ顔で返す、赤髪少女。
確かに彼女の恰好はとても可愛らしい格好です。
チャーミングなイチゴのマーク。吸水性の良さそうな布。動きを阻害しないような大きな袖。
つまるところ────パジャマ着です。
『なるほど、確かにこれなら10分どころか、何分でも作れそうですね……』
「何がおかしいのかしら」
『いや、ある意味作った人間は賢いなーって』
魔法ペンは、朝の10分捻出ではなく、10分間を阻害する作業を忘れさす、忘却魔法の部類でしたか、と考察を進めます。
もちろん、赤髪少女に教えてあげることはありません。
なぜなら、そっちの方が魔法ペンにとっては面白いからです。
赤髪少女が魔法局内でパジャマでも出勤する女として、恐れられるのは別のお話です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。