王国魔法局査定部第三課 ー赤髪ミジカの魔法査定ー 作:上殻 点景
王国には書類(未認可魔法)が積まれた執務室がありました。
未認可魔法とは発動はしますが、使用許可がない魔法のこと。
魔法の安全性を調べる場所こと、王国魔法局査定部、3課には分類:その他の魔法が集まります。
そんな執務室に────あれ、赤髪少女がいなくないですか?
ミジカさーん、台本と違う行動するのよくないと思いますよ。
「そういえば、今日も出張査定だとかナントカ言ってましたね」
ペンはカレンダーを確認します。
なぜペンがカレンダーを確認するかというと、彼女が魔法ペンだからです。
名はブラック☆ナビィ。自称、最強の魔法杖です。
「えっと、健康促進所で、認可魔法の保全……なんですか、ソレ」
魔法ペンは、ペン先を傾けます。
認可魔法の保全とは、刻印された魔法が正常に動いているか調べる魔法局の仕事です。
では、健康促進所とは。
◆◇◆◇
【王国/健康促進所・施術室 [現地時刻 17:00]】
健康促進所とは、治療機関ではありませんが、体の健康を整える場所。
異世界風に言うならば、整骨院や、美容院といった場所が該当するでしょうか。
────そんな健康促進所で、魔法のチェックをするは、赤髪少女。
「ふえっくしゅん」
彼女は盛大にくしゃみをします。
揺れる髪の毛はショート。揺れない胸はペッタンコ。もちろん制服は薄緑の袖付きのジャケット(王国指定)です。
「風邪ひいたのかい、ミジカちゃん」
「どーせ誰かが噂をしているだけよ、院長」
「よかった、ボクだと体は直せても、風邪は治せないからね」
院長と呼ばれた男は、安心したように呟きます。
周囲はカーテンに仕切られた一室。簡易ベットが1つだけあり、後ろには魔法が刻まれた機器があります。
「てか、いい加減名前を病院に変えたりしないのかしら」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、お金がかかっちゃうからね」
機器の魔法をチェックしながら、話始める、赤髪少女。
どうやら同じ機器のチェックばかりで、飽きが来たようです。
「この規模の健康促進所を査定すると、二課が毎回うるさいのよ」
「それについては申し訳ないとおもってるよ」
「まっ、これ以上、個人の考えに口出しする気はないけどね」
「そう言ってくれて助かるよ」
病院と、健康促進所の違いは、区分です。
病院は医療機関ですが、健康促進所はあくまで施設。
これによって生まれる違いは、診察料の差です。
「ウチは気兼ねなく来て欲しいっていうところがあるからね」
「そういうのは私じゃなくて、二課に言ってちょうだい」
「守銭奴の彼らに言っても、紙を突き出して来るだけだよ」
「三課も守銭奴になった方がいいのかしら」
談笑を交えながらも、魔法の刻印チェックを行う、赤髪少女。
彼女が見ているのは、“少量の電気を流す魔法”。いわゆる電気マッサージ機です。
「この魔導具、本当に効果があるのって毎回思うんだけど」
「でも、ミジカちゃんは毎回楽になるんだろ」
「あれ、院長の口車にのせられてるだけな気がして」
「ちなみに、報酬はどっちがいい」
右手にはお金、左手にはコキコキと鳴る手。
「そりゃもちろん────」
数分後、少女の悲鳴が響き渡ることになります。
◆◇◆◇
【王国/健康促進所・施術室 [現地時刻 17:10]】
寝転がり、痙攣するは、赤髪少女。
院長はそんな彼女の肩を押します。
「あががっががが、無理無理、腕はそっちに曲がらないってっ!!」
「今回もだいぶ肩が凝ってるねぇ」
「そもそも凝ってるってなによ、運動だって一応してるのよ」
「ああ、凝りってのはね」
院長は赤髪少女の、腕と体のあいだ(肩甲骨あたり)を、押します。
「うがががががっ!」
ふたたび響き渡る、赤髪少女の悲鳴。
院長は満足そうに説明を始めます。
「こんな感じに、筋肉が収縮して固まったところだね」
「わざわざ、人体実験しなくてもいいじゃないっ」
「身をもって知った方が分かりやすいかなって」
「要は筋肉が変になっているんでしょ」
「そうそう」
院長は今度は赤髪少女の肩甲骨付近に触れます。
ごきごき、バキバキとなる背中。
「いやー、もう完全に肩甲骨の羽がなくなってるね」
「がっ、羽がなんだか知らないけど、人体の限界感じてるわっ」
「はい、次は右」
「ちょ、ちょ、無理だって腕はそっちに曲がらないって」
「これは凝りを育てちゃってるね」
「そんな育成感覚で育てるかっつーのっ!!」
悲鳴を上げながらも、応答を返す、赤髪少女。
数十分後、への字の姿勢で倒れ込む、彼女の姿。
「ぐへ、こんな施術のくせに体が軽くなるのがシャクすぎる」
「今度はここまで酷くなる前に来てね」
「うるさいわね、次回は仕事をやめるから、肩なんて凝らなくなるわよっ」
「それ、前回も言ってなかった?」
「うるさーい、後任が見つからないだけよっ」
そう言って、仕事に戻る、赤髪少女。
帰ってきたら、どこぞやの魔法ペンがやらかしていて、肩こりが再発するのはまた別のお話です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。