「これ、依頼」
ニコがそう言った。
「あぁ、これか」
俺はそう呟く。目の前の依頼書には大きな文字で『魔物の討伐』と書かれている。その内容は明らかに危険で報酬も高額だった。
「魔物の討伐、あんたの戦闘能力なら楽勝でしょ?」
ニコがそう言いながら俺に微笑みかける。
だが。
「断る」
俺はそう言いながら、手持ちにある煙草をくわえる。
「えぇ、なんでぇ」
ニコの不満そうな声が聞こえる。
「俺は運び屋だ」
そう言いながら俺はそのまま煙草に火をつける。煙草の先から煙が立ち上り、その香りが周囲に広がる。その煙をゆっくりと吸い込みながら、俺はニコを見つめた。
ニコの瞳には明らかに不満の色が浮かんでいた。彼女の視線は俺の顔から離れず、その瞳には何かを訴えるような光が宿っている。
「あんた、戦闘能力は高いし、報酬も高いよ」
ニコの声には明らかに説得力があった。
俺はニコの言葉に耳を傾ける。彼女の言葉は確かに正論で、報酬の高さを考えれば魔物の討伐は魅力的な依頼だった。しかし。
「運び屋だ、運送以外の仕事はしない」
俺はそう言いながら煙を吐き出す。煙はゆっくりと天井に向かって広がり、その中にニコの表情がぼんやりと浮かんでいるように見えた。
ニコの顔には少しの苛立ちが見えた。その表情には俺の言葉に対する不満が明らかに表れていた。彼女の口元が少し歪むのを見ると、俺は彼女の心情を理解した。
「あんた、それじゃ、金が無いじゃん」
ニコの声には明らかに不満が含まれていた。その声には少しばかりの怒りが感じられ、彼女の感情が高まっていることが明らかだった。
「お前のような無一文と一緒にするな」
それと共に、俺は手持ちの金を見せる。
その金額を見たニコは明らかに驚愕した表情を見せた。彼女の瞳は大きく見開かれ、その口は驚きで微かに開いたままだった。
「えっ、その金額・・・」
ニコの声には明らかに驚きと困惑が混じっていた。彼女が想像していた金額よりもはるかに多かったのだろう。
「あんた、どうやってこんな金額稼いだの?」
ニコの声には好奇心が滲んでいた。
「運送以外の仕事はしない、俺は運び屋だ」
俺はその言葉を繰り返す。その言葉には確固たる意志が込められており、俺の決意を改めて伝える。
ニコはその言葉を聞きながら、静かに俺の顔を見つめた。
「そう言えば、元々、あんたは死神で有名だから、それぐらいは金はあるわね」
「まぁな。といっても、あまり使わないがな」
「だったら、もっと使わないの?」
「別に、生きる分に必要なだけだ」
「あんたって、お金に執着が無いのね」
「別に、金で得られるものは限られている」
「じゃぁ、何が欲しいの?」
「別に。ただ、俺の仕事を全うしたいだけだ」
「そんなの、つまらないわよ」
「別に、お前に言われる筋合いはない」
俺はそう言いながら煙を吐き出した。その煙がニコの顔を覆い隠し、彼女の表情を一瞬だけ隠した。
ニコはその煙を避けるように顔を背けた。
「つまらないわね、あんたって」
ニコの声には少しの軽蔑が含まれていた。
「お前が求める面白さは俺には無い」
俺はそう言いながら煙草を吸い込む。
「はぁ、仕方ないわねぇ、とにかく運搬の仕事って」
その言葉と共に、ニコに目を向けたのは。
「ねぇ、あんたは運搬だったら良いのよねぇ」
そこにはあくどい笑みを浮かべたニコの顔があった。
「まぁな」
「ならぁ、これはどう?」
ニコはそう言いながら、依頼の内容を確認する。
「護衛依頼だと?」
それは、護衛の仕事だった。
護衛の内容は少女の護衛。
詳しい内容はあまり書かれていない。
ただ、目的地だけしか書いていない。
そして、膨大な報酬。
「怪しすぎるだろ」
「けど、この報酬よ!何よりも、護衛はあんたの運搬と同じでしょ」
「どこがだ」
「運ぶのが物じゃなくて人。一緒よ」
「一緒ではない」
俺はその言葉を口にしながら、ニコを見つめる。
すると。
「へぇ、運搬ならば受けると言っておきながら、人は運べないのね」
「・・・なに」
それは明らかに挑発。ニコの瞳には俺を試すような光が宿っている。その挑発に乗るかどうか、俺は一瞬迷った。しかし。
「・・・運べるに決まってるだろ」
俺はそう言いながら、その言葉を口にする。その言葉には確固たる自信が込められていた。
ニコの顔には嬉しそうな笑みが広がった。彼女の表情からは俺の決意を確信したことが伝わってきた。
「そうよねぇ、運び屋。あんたなら運べるわよね」
「・・・」
俺はそのまま煙草の火を消した。
「さぁ、これで決まりねぇ」
ニコはそう言いながら、護衛依頼の紙を持ち上げる。
俺はそのまま煙草の火を消し、その依頼書に目を向ける。
「ちっ」
俺は、舌打ちをしながらも、その依頼を受け入れることにした。
「さぁ、行きましょう」
ニコの声には興奮が含まれていた。
俺はそのまま護衛の仕事へと向かった。
その先には、どんな運命が待ち受けているのか。
その答えは、まだ誰にも分からない。