無人島。
それは地図に載っていない小さな島だった。
緑の木々が密集し、白い砂浜と透明度の高い海が広がっている。南国の植物が生い茂り、遠くからは鳥の鳴き声が聞こえる。
だが、俺たちにとっては楽園とは程遠い状況だった。
「まさか、慣れない船で、こんな所に来るなんて」
ニコは砂浜に座り込み、憤慨した表情で海賊船を見つめていた。
俺達が乗ってきた海賊船は岩礁に乗り上げて大きく傾いていた。右舷の一部が損傷し、海水が流れ込んでいる。
「これじゃあ修理が必要だな」
俺は冷静に状況を分析する。マッハドライバーを腰から外し、周囲を見渡す。何か使えるものはないかと探しながら。
「というよりも、あんた、かなり自信満々に船を操縦していたけど、そもそも操縦できたの?」
ニコの問いに俺は肩をすくめる
「俺の専門はバイクだ。それ以外は……まぁ、運び屋として必要なことは一通りできる」
そう答えながらも内心では悔しさを感じていた。俺はこれまで様々な乗り物を操縦してきたが、大型の船は初めてだった。
「さすが死神ね!いつも危ない橋を渡ってるわけだ!」
ニコの皮肉めいた言葉に俺は黙って応じる。
「とりあえず、船の状態を見てみよう」
俺は傾いた船に近づき、損傷部分を確認する。
木製の船体は大きく凹み、いくつかの穴が開いていた。特に右舷側の損傷が酷い。
「このままでは浸水が止まらない。応急処置が必要だな」
俺は船体の穴を指さしながら言う。ニコは呆れた表情でこちらを見ていた。
「何言ってんの?木材もなければ修理道具もないじゃない!どうやって直すのよ?」
確かにニコの言う通りだった。海賊船には最低限の修理道具しか積まれていなかった。しかも、船が転覆した際にほとんど流されてしまったらしい。
「まずは素材を集めるしかないな」
俺は立ち上がり、周囲を見渡す。
島の内陸部には森が広がっている。あそこなら木材や使えそうな道具が見つかるかもしれない。
「それは、そうだけど、道具は」
「ブレイクガンナーで十分だ」
「えっ」
「ブレイクガンナーで?」
ニコは首を傾げる。
「それって、そんな事が出来るの」
「まぁな」
それと共にブレイクガンナーで木材を殴りながら破壊しやすくする。同時にライドチェイサーのパーツを破壊して溶接した。そして、それを加工して修繕用の木片にする。
俺はブレイクガンナーの先端部分を変形させ、ハンマーのような形状に変えた。マニュアルモードに切り替えることで工具としての機能が使える。
「これが便利なところでな」
俺は木片にブレイクガンナーを押し当てると、熱によって木材を曲げ始めた。まるで金属を溶かすかのように簡単に形を変えられる。
「すごいっ!それ、どうなってるの?!」
ニコは目を輝かせて近づいてきた。だが俺は彼女に背を向け、淡々と作業を続けた。
「さあな。科学者じゃないから詳しい原理はわからん」
言いつつもブレイクガンナーで木材を切ったり曲げたりしながら修繕を進めていく。ライドチェイサーから取ったパーツとの接続部分を作り直し、強固な接合部分を確保する。
修理に集中する俺とは対照的に、ニコは浜辺で休憩することにした。彼女は砂浜に座り込み、海を見つめながらため息をついた。
「まさかこんな島に流れ着くなんて……」
彼女は周囲を見回しながら散歩を始めた。貝殻を拾ったり、砂の感触を楽しんだりしていたが、そのうち退屈してきたらしい。
「何か面白いものはないかな……」
そう呟きながら歩いていた彼女の足元に何かが当たった。
「あれ?」
彼女がしゃがみこんで拾い上げたのは、古びた宝箱だった。
「うわぁ!宝箱だわ!」
ニコの声が高くなる。
「ねえ追跡!見てみて!宝箱よ!」
彼女は宝箱を抱えて俺のところへ走ってきた。
「おいっ危ない!作業中だぞ」
俺は手を止めずに言い返したが、ニコは興奮した様子で話を続けた。
「これが宝箱ってことは……きっと中にはお宝が入ってるはず!でも鍵がかかっていて開かないの」
「興味ないな」
俺は冷たく言い放つ。修理作業に没頭している俺にとって、宝箱の中身などどうでもよかった。
「ええ~っ!なんでよ!宝箱よ!お宝よ!」
ニコは不満そうな顔で訴えたが、俺は無視して作業を続けた。ブレイクガンナーのハンマー状の先端を木材に押し当て、高温で木材を溶かすようにして接合部分を作る。
「お願い!開けてみて!」
ニコは俺の袖を引っ張りながら懇願したが、俺は彼女の手を軽く払いのけた。
「自分でどうにかしろ。それよりこの船を修理しなければ出発できない」
「でもでも!もしかしたら船を直すのに必要な材料とかが入ってるかも知れないじゃない!」
ニコの言葉に俺は一瞬考え込んだ。確かに重要な道具が入っている可能性は否定できない。だが……
「……確かにその可能性はあるな」
俺は一瞬だけ手を止め、ニコが抱える宝箱を見た。古びた木製の箱は年季が入っているが、錠前は頑丈そうだ。
「わかった。少しだけだぞ」
俺はブレイクガンナーの先端を銃形態に戻し、錠前に向けて狙いを定めた。軽い銃声と共に錠前は粉々に砕け散った。
「あっ!」
ニコの驚いた声と共に、俺は宝箱の蓋を開けた。
中にあったのは。
「・・・ボトルシップ?」
ニコは不思議そうな声を上げる。確かに宝箱の中には小さなガラス瓶に閉じ込められた精巧な船の模型があった。
「それだけか?」
俺は少し拍子抜けした気持ちで言った。もっと価値のあるものが入っていると思っていたのだが。
「うーん……他には何も……」
ニコが宝箱の中を漁る間に、俺は再び修理作業に戻ろうとした。その時だった。
「待ちな!」
背後から聞こえてきた声に、俺たちは反射的に振り返った。
そこには奇妙な姿をした男が立っていた。
「お前は……」
俺は言葉を失った。目の前に立つその姿は明らかに人間ではなかった。
全身を覆う赤い装甲。右肩には巨大なクモのデザイン。胸部と顔面には複雑なクモの巣の意匠が施されている。紺色と銀色のアーマーが要所を守り、まるで蜘蛛の糸を思わせるような繊細なラインが走っている。
そして何より目を引くのはその顔だった。
マスクの両側面には合計8つの複眼が配置されている。その冷たい輝きは、獲物を狙う毒蜘蛛そのものだった。
「フェイクライダー!」
ニコが震える声で呟いた。彼女は宝箱を抱えたまま後ずさる。
「宝を寄こせ」
そう、フェイクデモンズが構えていた。
「そう言って、渡すと思っているのか?」
『シグナルバイク!ライダー!チェイサー!』
俺もまた、チェイサーへと変身すると共に、真っ直ぐに構える