ハーメルン・アウトサイダーズ   作:夢野飛羽真

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第15話

「てめぇが噂の死神か……面白い」

 

デモンズの声は低く歪んでいた。奴が右手に持つデモンズドライバーからは不気味な唸りが響く。

 

「何が目的だ?」

 

俺は冷静に問いながらも、周囲の砂を踏みしめる足に力を込めた。ライドチェイサーのハンドルを握るようにブレイクガンナーを構える。

 

「決まってる……宝を奪いに来たんだよ」

 

デモンズが言った瞬間、俺に接近する。

 

真っ直ぐと穿つように放たれた拳に対して、俺はブレイクガンナーで受ける。衝撃が腕を伝い、砂浜がわずかに震えた。

 

「っ!」

 

パワーは互角……いや、少しこちらが上か。

 

俺はブレイクガンナーのトリガーを引く。青白いエネルギー弾がデモンズの装甲を掠め、微かに焦げ跡を残した。

 

「やるじゃねぇか……!」

 

デモンズが笑う。その声に含まれる余裕が俺の警戒心を刺激した。

 

再び接近戦。俺の蹴りがデモンズの脇腹を捉える。確かな手応え――奴は数歩よろめいた。

 

「まだだ!」

 

今度はブレイクガンナーの銃口を至近距離で向ける。しかし――

 

『バッタ!ゲノミクス!』

 

デモンズの体内から異質な音声が鳴り響いた瞬間、奴の脚部がバッタのように膨張し始めた。直後、奴は人間離れした跳躍力で俺の射撃範囲から離脱した。

 

「チッ!」

 

俺が舌打ちする間にも、奴の脚力は砂浜に巨大なクレーターを穿った。

 

距離を取ったデモンズが新たな動きを見せる。

 

『スコーピオン!ゲノミクス!』

 

再び体内から音声が響くと同時に、奴の腰から蠍の尾のような触手が伸びた。「デモンライドルスティンガ」だ。

 

「喰らえ!」

 

伸びた尾が鞭のようにしなり、予測不能な軌道で俺の足元を薙ぎ払おうとする。俺は咄嗟に跳躍して回避するが――

 

「甘いぜ!」

 

今度は跳躍した俺に向けて尾が急旋回。空中で身動きの取れない俺を狙う。

 

「くそっ!」

 

ブレイクガンナーで尾を弾き飛ばすが、その反動で体勢が崩れる。

 

砂に足を取られながら着地した瞬間、バッタゲノミクスによる超高速移動で接近したデモンズの蹴りが俺の腹部に直撃した。

 

「ぐっ……!」

 

衝撃で後方へ吹き飛ばされる俺の視界に、さらに異様な光景が映った。

 

『アノマロカリス!ゲノミクス!』

 

デモンズの両手が巨大な鋏に変形。古代生物アノマロカリスの威容を思わせる凶悪な武装「デモンブラディオール」が砂浜に突き立てられていた。

 

「これで終わりだ!」

 

巨大な鋏が俺の体を挟み込む寸前――

 

「させねぇ!」

 

後ろへと跳びながらも、俺はブレイクガンナーを真っ直ぐに構える。銃口にエネルギーが収束し、青白い閃光がデモンズの変則的な攻撃を遮った。

 

砂塵が舞い上がり、一瞬の静寂が訪れる。

 

互いに距離を取りながら息を整える。デモンズのゲノミクスによる多段攻撃は予想以上に厄介だった。

 

「まだ終わらねぇぞ……!」

 

デモンズの目が青く光る。

 

「それはこちらの台詞だ」

 

俺はその一言と共に腰にあるチェイサースパイダーバイラルコアをマッハドライバー炎に装填した。

 

『バイラルコア!チューン!チェイサー!ツーメ!』

 

鳴り響く音声と共に、チェイサーの腕に超硬化金属を削りだして作られた蜘蛛を模したクロー型の武器『ファングスパイディー』が形成される。

 

迫るデモンズの攻撃をファングスパイディーを盾にして受け流す。鋭い金属音が砂浜に響き渡った。

 

「この野郎!」

 

焦り出すデモンズが必殺技を放とうとする。

 

『Charge!デモンズフィニッシュ!』

 

デモンズから鳴り響く音声と共に、その右脚に赤黒いエネルギーが集束する。必殺の蹴りが迫った。

 

「――ッ!」

 

デモンズの蹴りが砂塵を巻き上げながら俺の顔面へと突き刺さる寸前――

 

全身の筋肉が一瞬で硬直する感覚。脳からの信号が脊髄を駆け抜け、筋繊維が瞬間的に収縮した。首筋から腰にかけての背骨が軋み、胸筋が引き締まる。腕の筋肉がファングスパイディーを握りしめる指を支えるために膨張した。

 

左足の踵を砂に深く沈み込ませ、上半身を風に舞う紙片のように捻る。胸部の筋肉が引き攣れるような緊張感――肋骨が微かに軋みながらも、その捻転運動は完璧だった。デモンズの蹴りが俺の顔の横を一瞬で通過する。耳元で風切り音が唸りを上げた。

 

その刹那の緊張感。全身の筋肉が鋼のように硬直し、まるで一瞬だけ時間停止したかのような錯覚。呼吸すら忘れた――砂の匂いが鼻腔を刺す。心臓の鼓動が頭蓋骨の内側で鳴り響く。

 

避けた後の静寂――

 

波の音だけが砂浜に響く。デモンズの蹴りが通り過ぎた空間には、まるで真空状態のような静けさが漂った。蹴りを放ったデモンズの姿勢が一瞬だけ固まり、その隙を俺は見逃さなかった。

 

「これで終わりだ」

 

俺は瞬時にマッハドライバー炎を操作する。

 

『ヒッサツ!フルスロットル!チェイサー!ツメ!』

 

鳴り響く音声と共に、ファングスパイディーの先端に青白いエネルギーが収束する。蜘蛛の爪が輝きを増し、鋭く尖った先端から光の刃が伸びた。

 

カウンターのタイミングは完璧だった。デモンズの攻撃直後の隙を突き、ファングスパイディーの爪先を敵の胸部装甲に突き立てる。

 

「ぐあああっ!」

 

デモンズの悲鳴が砂浜に響き渡った。蜘蛛の爪が赤い装甲を貫通し、内部機構にダメージを与える。ファングスパイディーの刃先が敵のボディに食い込み、デモンズの動きが鈍った。デモンズの身体が崩れ落ちる。その胸元には深い傷跡が刻まれていた。

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