ハーメルン・アウトサイダーズ   作:夢野飛羽真

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不死鳥の剣士

異世界・ハーメルン大陸南部にある森の奥深くーー

 

エルフの里は存在する。

 

謎の魔法陣でハーメルン大陸に転移し、エルフの里へとやって来た燈矢は途方に暮れていた。

 

「はぁ…いきなり異世界転移した矢先にこれかよ…そういや媒体にもよるけど…エルフって他種族との接触を避ける排他的な種族だっけか?…そんな里に人間の俺が足を踏み入れたんだ…そりゃ捕まるわな…」

 

エルフの剣士に持ち物を没収され、地下牢に入れられた燈矢は項垂れた。

 

「俺……どうなるんだろ…」

 

燈矢は鉄格子の外を見ながら呟いた。

 

 

 

その一方ーー

 

燈矢を拘束した剣士・ファルスは、彼の持っていた鞄を調べていた。

 

「……何だこの板は」

 

ファルスは鞄からスマホを取り出し呟いた。

 

「……これは…紙か?…だがこんな綺麗な紙マリスティアでも見たこと無い…見た限り庶民だと思ったんだが…庶民がこんな綺麗な紙や本を手に出来るか?」

 

ルーズリーフの束や参考書を取り出し、ファルスは疑問に思う。

 

「……まさか商人?…いや無いな……商人にしては荷物が少なすぎる……アイテムボックス持ちか?……ん」

 

ファルスは鞄の奥底にある物を取り出す。

 

「……これも本……か?……開かない」

 

それは燈矢がこの世界に転移した際に手に入れた〝エターナルフェニックス〟と描かれた本だった。

 

ファルスはエターナルフェニックスを開こうとしたが、びくともしなかった。

 

「一体なんなんだこの本……何故だ…初めて見た筈なのに…何処か()()()()を覚える…」

 

ファルスはエターナルフェニックスを見つめながら呟くーー

 

その時だったーー

 

 

グゥゥ

 

 

ファルスは顔を赤くした。

 

「んん!…そう言えば食事をとってなかったな……ホント()便()()()()だ…」

 

 

 

 

グゥゥゥゥゥ

 

 

「腹……減った…」

 

燈矢は鉄格子に寄りかかりながら呟く。

 

「クッソぉ…学校が半日だからって朝飯を抜いたのが仇になるとはなぁ……はぁ…」

 

燈矢は天井を見る。

 

「はぁ…何かやることねぇかなぁ…せめてやることがあれば空腹も紛れるんだが…」

 

コツコツコツコツ

 

「ん?」

 

燈矢は足音が聞こえたので鉄格子の外を見た。

 

そこには先程出会ったエルフの剣士ことファルスが立っていた。

 

「………」

 

「あれ…エルフの剣士さん?…俺になんか様か?…一応聞くけど此処から出られたりはーー」

 

「怪しい人間をそうやすやすと釈放すると思うのか?」

 

「ですよねぇ〜」

 

燈矢は項垂れる。

 

「じゃあ何だよ…尋問か?」

 

「そんな所だ…ん」

 

ファルスは燈矢にある物を渡した。

 

「これは?」

 

「見て分からないか?食事だ」

 

ファルスが燈矢に渡したのは、如何にも硬そうな黒パンとこれまた薄そうなスープだった。

 

「うわ捕虜が食べる食事のド定番じゃん!まさか自分が体験するとはなぁ!」

 

燈矢はまたファンタジーで出てくる捕虜が食べる定番料理を見てテンションが上がった。

 

「お前は何故こんな物で喜んでいるんだ…」

 

「いやぁ剣士さんには分からないだろうけどなぁ〜、俺的にはこういうファンタジーな飯が食えるだけでも結構テンション上がるんだよなぁ!腹も減ってたし丁度いいや!ありがとな剣士さん!」

 

燈矢はファルスから黒パンとスープを受け取ると、それを口にする。

 

「うっわ硬…ファンタジーの定番だけどこんなに硬いパン初めて食った…スープもなんか味気ねぇ…う〜ん…実際に口にするのと見るのとじゃやっぱあれなんだな…」

 

「またふぁんたじぃとやらか……変わった人間だなお前…」

 

ファルスは看守用の椅子に座り、燈矢と同じ物を食べ始める。

 

「あれ?この飯って捕虜用じゃないの?」

 

「……お前に関係あるか?」

 

「いや別に関係無いけど気になるじゃん…剣士さんが俺と同じ物食べる必要ないだろ?此処あんた達の里だろ?もっと良いものでも食えば良いのに…」

 

「…私達エルフは食事を必要としない…この大陸に生きる者なら知っている筈だぞ?」

 

「えっそうなの!?飯食わないでどうやって生きてる訳!?」

 

燈矢の発言にファルスは目を丸くし、耳を疑った。

 

「……お前本気で言ってるのか?」

 

「えっ…何この世界じゃエルフが飯食わないのって常識なのか?」

 

「……どうやら本気の様だな……私達エルフは大気中の魔力を取り込む心肺機能が独自に発達している、それにより私達は魔力さえあれば食事を摂らなくても生きていけるんだ」

 

「へぇ~」

 

燈矢はパンを齧りながら頷く。

 

「まぁ摂らなくても良いだけで食事が出来ない訳じゃない…体内の魔力が枯渇すれば緊急補給として食事を取ることもある」

 

「ふ〜ん…あれ?じゃあ剣士さんは体内の魔力が枯渇してるから飯食ってるって事か?」

 

「………」

 

燈矢の問いにファルスは沈黙した。

 

「沈黙は肯定だよな…あんたの話が本当ならエルフは大気中の魔力を取り込む事が出来て、魔力で生きられる…俺一人捕縛するだけで魔力が枯渇するとも思えねぇし…」

 

「……私は他のエルフとは違う」

 

「他と違う?」

 

「この話は終わりだ…それよりお前に聞きたいことがーー」

 

ファルスが本題に入ろうとしたその時だったーー

 

 

 

ドォォォォン

 

 

突然の爆音と揺れが起きた。

 

「なっ何だぁ!?」

 

「ッ!?」

 

「ファルス様!!」

 

上から別のエルフが慌てて降りてきた。

 

「何事だ!」

 

「それが岩石蠍が現れてーー」

 

「岩石蠍だと!?此処はハーメルン大陸の南部だぞ!何故砂漠に生息する魔物が居る!?」

 

ハーメルン大陸東部の砂漠地帯に生息する魔物が、こんな森の中に現れた事にファルスは驚愕した。

 

「分かりません!見張りの者に確認した所突然現れたとしかーー」

 

「くっ…まさかとは思うがーー」

 

ファルスは燈矢を睨み付ける。

 

「はっ?まさか俺を疑ってる!?知らねぇよ!大体何だよ岩石蠍って!?」

 

「……嘘では無いみたいだな…」

 

ファルスは剣を持った。

 

「案内しろ、私が叩く」

 

「こちらです!」

 

他のエルフに付いていこうとするファルス。

 

「おいおいおい!あんたそんな得体の知れないおもしろ生物と闘う気か!?」

 

「……当然だろう…私はこの里の剣士だ…里の為に闘う事が私の使命だ」

 

「岩石蠍って名前からして石の様な蠍だろ!?そんな剣で対抗出来んのかよ!…あっ魔力があるなら魔法もあるんだよな!エルフの剣士なんだから魔法剣士って事か」

 

「………使えんよ」

 

「は?」

 

「私は魔法を使う事が出来ない」

 

衝撃の一言に、燈矢は啞然とする。

 

「魔法が使えない?…エルフなのに?」

 

「………この剣は無銘剣虚無と言ってな…里に代々伝わる聖剣だ…触れた物の全ての属性を無に帰す力がある…この力により私は魔力を打ち消されてしまうのさ」

 

「……だから食事を摂ってたのか…魔力が打ち消されて枯渇するから…尚更ヤベェじゃねぇか!!」

 

燈矢は怒声を上げた。

 

「魔法も使えない…その剣一つで岩の蠍と闘うとか死にに行くようなもんじゃねぇかよ!!里を守るためならお前自身が死んでも良いってのかよ!」

 

「……この剣に認められた者は長くは無い…代々この剣を受け継いできた剣士は皆速くして死している…これがこの剣を受け継いだ者の運命なのかもな」

 

ファルスは悲しそうな顔をしながら鉄格子に近づく。

 

ガチャン

 

そして鉄格子の鍵を開けた。

 

「ッ!」

 

「…お前は早く逃げろ…この里と無関係のお前が此処で死ぬ必要は無い…お前から没収した荷物もそこにある…これに懲りたら二度とエルフの里には近づくな…良いな?」

 

ファルスはそう言うと、階段を駆け上がった。

 

「あっおい!」

 

燈矢はファルスを引き留められなかった。

 

「何なんだよ……覚悟が決まってる様な事言っておきながら…何であんな悲しそうな顔してんだよ…」

 

燈矢が鉄格子から出ると、ある感覚を覚えた。

 

「ッ…何だ?」

 

燈矢はファルスに言われた通り荷物を取り出す。

 

そして鞄からある物を取り出した。

 

「……これ…俺のチートアイテム…」

 

それはこの世界に来た際に鞄に入っていたエターナルフェニックスワンダーライドブックだった。

 

「………あの剣……なんか()()()()()()様な……」

 

燈矢はエターナルフェニックスワンダーライドブックだけ持ち階段を駆け上がる。

 

 

 

 

ドォォォォン

 

 

『ギュィェェェェェェェェェ!!』

 

里に侵入した岩石蠍が、民家をその特徴的な岩石の鋏で薙ぎ倒して行く。

 

「くっ!」

 

ファルスは無銘剣虚無を構えた。

 

「私が斬り込む!援護しろ!」

 

ファルスが無銘剣虚無を構えながら岩石蠍に向けて走り出す。

 

それと同時に弓を持ったエルフ達が標準を合わせ、詠唱する。

 

 

『風よ集え、荒ぶる暴風を纏いて、敵を討て…暴風(テンペスト)

 

 

中級風魔法を矢に付与し、エルフ達は放った。

 

ドォォォォン

 

 

『ギュィィィィィィィィィィ!』

 

矢が着弾し、岩石蠍が唸りを上げる。

 

「ハァッ!!」

 

ファルスはすかさず岩石蠍の左目を突き刺した。

 

『グギャァァァァァァァァィィィ!!』

 

ブンッ

 

「ッ!ガハッ!?」

 

左目を潰された岩石蠍は岩石の尾でファルスを薙ぎ払った。

 

 

ファルスはそのまま民家の中に吹き飛ばされてしまった。

 

「ファルス様!」

 

「クソッ!」

 

エルフ達はファルスが吹き飛ばされた事で連携がほんの少し乱れた。

 

『ギィェェェェェェェェェェェ!!』

 

岩石蠍が雄叫びを上げると、その後ろから更に岩石蠍の仲間(4ひきくらい)が入ってきた。

 

「そんな」

 

「一匹でも厄介だってのに!」

 

「怯むな!ファルス様が戻られるまで耐えろ!」

 

エルフ達は弓を構え、応戦する。

 

 

 

ガラガラ

 

 

「ゴホッ…クッ」

 

ファルスは満身創痍で立ち上がった。

 

左腕は折れ垂れ下がり、頭から血を流していた。

 

「この程度で…」

 

「おいそれ以上よせよ!」

 

民家の中に燈矢が入ってきた。

 

「お前…何をしてる!早く逃げろと言った筈だぞ!」

 

「お前こそ早く逃げろよ!こんなボロボロになって」

 

「逃げる?逃げるものか…私は剣士だ…この程度で引き下がれるか」

 

「お前自分の状況分かってんのかよ!そんな状態でどうやって闘うんだよ!」

 

燈矢はファルスに肩を貸しながら怒鳴った。

 

「里を命に変えても守る…それが聖剣に選ばれた私の使命だ!」

 

「その聖剣のせいで魔法すら使えなくなってんのにか!?見てたぞ!他のエルフがスゲェ風を矢に付与してたのをよ!なのにお前だけ生身であのバカデケェ蠍に突撃とか!馬鹿じゃねぇのか!?お前も他のエルフもよ!」

 

「なっ」

 

ファルスはこの里に関係無い燈矢に馬鹿と言われ唖然とする。

 

「他のエルフはファルス様ファルス様って…魔法が使えねぇエルフを戦場に送り出すとか有り得ねぇだろ!」

 

「剣士である私が戦場に立たないでどうする!」

 

「お前ただ剣が使えるだけの人間と変わらねぇんだぞ!?あんな岩の化け物をどうやって斬るんだよ!」

 

「それは…」

 

燈矢の問いにファルスは答えられなかった。

 

実際無銘剣虚無で岩石蠍を斬ることは出来なかったからだーー

 

「あんたは俺に食事を持ってきてくれた…何処の誰かも分からねぇ余所者の俺にだ…そんなあんたに死なれちゃ寝覚めが悪いだろ」

 

燈矢はファルスを安全な場所に運ぼうとする。

 

「お前…御人好し過ぎるぞ」

 

「ハハッ…向こうでもよく言われたよ」

 

燈矢がそう呟くと、ある変化があった。

 

「ん?」

 

燈矢のポケットの中身と、ファルスの無銘剣虚無が点滅しながら光っていた。

 

「無銘剣虚無が…お前のそれは…」

 

「……そういやこれだけ持ってきたんだった…何でかな」

 

燈矢がポケットの中身を取り出す。

 

「…お前の本か…中身を確認しようとしたが…開かなかった」

 

「開かなかった?……そういやページ捲ってなかったな…」

 

燈矢はエターナルフェニックスワンダーライドブックの表紙を掴む。

 

「無駄だ…それは何らかの力でーー」

 

ファルスがそう言いかけた時だったーー

 

 

ガチャン

 

エターナルフェニックス

 

燈矢はエターナルフェニックスワンダーライドブックを開いた。

 

「何だと!?」

 

自身がいくらやっても開かなかった本を意図も簡単に開いてみせた燈矢にファルスは驚愕する。

 

かつてから伝わる不死鳥の伝説が今、現実となる…

 

一文が読み上げられ、それに呼応する様に無銘剣虚無が輝き出す。

 

 

「ッ!これは…」

 

無銘剣虚無から光の粒子がファルスの腰を覆った。

 

 

覇剣ブレードライバー

 

 

光の粒子はベルトと成り、ファルスの腰に巻かれていた。

 

「何だこれは…」

 

「……さぁな…だけど…多分こうするんだろうよ」

 

燈矢は表紙を閉じ、エターナルフェニックスワンダーライドブックを覇剣ブレードライバーの凹み・ブレードライバーシェルフに挿し込んだ。

 

覇剣ブレードライバーから待機音が鳴り響く。

 

「…でどうするんだこれ」

 

「……その剣を刺すんじゃね?」

 

「は?…無銘剣虚無を?……こうか?」

 

ファルスは恐る恐る無銘剣虚無を覇剣ブレードライバーに収めた。

 

だが待機音は鳴ったままだった。

 

「……何も起こらんぞ?」

 

「………どうすんだろうな」

 

二人はその後の操作が分からずにいた。

 

「えぇい!喧しい!」

 

鳴り止まない待機音にイライラしたファルスは無銘剣虚無を引き抜いた。

 

抜刀…!

 

「………は?」

 

「………え〜と?」

 

二人が沈黙しているとーー

 

 

〜♪ エターナルフェニックス!

 

 

ファルスの後ろに巨大な本が出現し、中から不死鳥が飛び出した。

 

「なっ!?」

 

「おぉ!?」

 

そして不死鳥はファルスに覆い被さると、ファルスの鎧へと姿を変えた。

 

 

虚無!漆黒の剣が、無に帰す!

 

 

ファルスは訳も分からないまま、不死身の剣士ーー

 

 

仮面ライダーファルシオンへと変身した。

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