「ラグス殿にサラ殿、わざわざお越しの様だが一体何用かな?」
先程まで颯馬に付近の情勢について話していた会議室にて、マルコスと1組の男女が向き合って座り、マルコスの後ろにはクレイブとロベルト、そして颯馬が立っておりその様子を見守っていた。
「領内にエンジシの群れが出たという情報を得て、様子を見に来たわ。」
黒髪を高く結ったポニーテールに忍者風の髪飾りをしている若さこそ感じるが落ち着いた雰囲気の女性、イデーラ衆の頭領のサラ・イデーラがマルコスの方を見て話し始める。
「領内に魔獣を通すとは、全くどのような警備をしているんだ貴様らは…」
薄い金髪に緑がかった瞳の中肉中背の男、ムローガ衆の頭領ラグス・ムローガが呆れた様子で話す。
「警備の兵の報せによると、"突然森の中から湧き出てくるようにしてエンジシ数頭が現れ、対処が遅れた"とのことだ。エンジシ程の大きさの魔獣だ、遠くから向かって来ているのが見えれば早々に兵を用意し対処できたはずだが、急に現れたのだから少数での対処を余儀なくされ門番の方はあっという間に蹴散らされて領内への侵入を許した…と言ったところだな。」
マルコスが兵士達から受けた報告を、改めてこの場に居る者達に報告する。
「急に湧き出る…?そんな出てき方ある?」
「いえ、あまり聞いたことは…」
マルコスの報告にある"突然森の中から湧き出てくるようにしてエンジシ数頭が現れ"という文言に、そのようにして魔獣が現れることがあるのだろうかと疑問を感じた颯馬は、隣にいたクレイブに小声で問いかける。
「まるで誰かに召喚されたみたいな感じね。私の情報網でも付近にエンジシの群れが出てきたというものはなかったわ。」
マルコスの報告に対して、サラが自身が持つ情報を付け加える。
「突然現れた…まるで召喚されたみたいだね。」
マルコスが出した情報を元に、颯馬が自身の考察を口にする。
「確かに、召喚魔法の様なものはあるが、一度にあれほどの数のエンジシを呼び出すのは至難の業だ。」
「そうかな?昨日見たけどエンジシって魔獣結構大きかったし、アレが10体ぐらい群れで動いてたらすぐに見つけられると思うんだよね。それが見つからずにここまで近づいてくるのってなかなか難しいし、召喚されたとか転移して来たとしか考えられないんだよね。」
ロベルトが颯馬の考察に、怪訝な表情を浮かべて疑問を呈するが、颯馬の考えを聞くと引き下がる。
「召喚か…確かにそこの彼の言う通りだな。」
「まあな…というかお前は誰だ?」
国衆の頭領2人も颯馬の意見に納得しつつも、初めて見る彼の存在に、疑問を感じて問いかける。
「紹介しよう。彼は我々ソーザ衆に新たに加わった石渡颯馬殿だ。昨日のエンジシを討伐したのも彼だ。」
「初めまして、よろしくね。」
マルコスに紹介された颯馬は軽く2人に会釈する。
「見たことも、噂を聞いたこともないような男だな。」
颯馬は昨日突如この世界に現れたということもあり、颯馬に関する情報をサラ達が得る機会はなかった。
「こんな怪しげな奴を招き入れるとは…一体何を考えているんだ!」
得体の知れない人物を、仲間に加えることでその後にどういう事態が起こるかは分からない。
ソーザ衆、ムローガ衆、イデーラ衆と他の国衆は距離が近く、共闘することも多い。
それ故に、ソーザ衆の中でトラブルが起きると他の国衆が影響を受ける可能性もある。
そのためかラグスはマルコスの人事に対して声を荒げる。
「そうは言うが、今は魔王国と帝国の情勢が悪化している。魔王側の国、それこそオークのグルムド王国が侵攻してくる可能性もある。実力ある者が仲間となってくれるのはありがたいことだ。」
「…」
マルコスの意を聞いてラグスは大人しく引き下がる。
「いずれにせよ、魔族の動きが怪しいのは事実。今はなりふり構っている場合ではないのは事実ね…エンジシの一件も魔王派による攻撃の可能性もあるし、捜査しておくわ。」
サラ率いるイデーラ衆が魔法派の魔族関連の情勢の変化や、今回のエンジシの事件に関しての調査を行うことで話がまとまり、ラグスとサラはソーザ衆の城から去るのであった。
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(しかしながら父上は、またも突飛なことを…)
その後、クレイブが颯馬に城の案内をしている間、ロベルトは自身の執務室で頭を抱えていた。
情勢が悪化する中、突如自分達ソーザ衆の領地に現れた石渡颯馬という人物。
どこから来たのか、素性も分からない人物を仲間として引き入れた自身の父の行動に不信感を抱くと共に呆れていた。
(颯馬…あの男は警戒する必要があるな。何を考えているのかさっぱり分からない…)
颯馬がどういった意図で彼らに与しているかが分からず、ロベルトは"いつか颯馬が自分達に牙を向けること"を危惧していた。
「ロベルト様!」
颯馬に関してロベルトが考えを巡らせていたが、そこに慌てた様子のソーザ衆の兵士が駆け込んで来る。
「どうした?」
「領内に魔獣が!それも十数体!」
兵からの報せ、それは昨日に引き続き領内に魔獣の群れが現れたというものであった。
「了解した。貴殿はそのまま父上とクレイブにそのことを伝えてくれ。俺は先に行く。場所を教えてくれ…」
「は、はい!」
その一報を聞いてからのロベルトの判断は早かった。
伝令にやって来た兵にはそのままその情報をソーザ衆の他の者に伝えるように言い、自身は馬に跨り先に現場に向かう。
(ラグス殿やサラ殿が魔獣の襲撃に巻き込まれていた場合、我々の関係悪化につながるような事態になるかも知れん…ここは俺が早々に事態の収束を…!)
先程訪れた国衆の頭領2名が自分達の領内で魔獣によって傷を負ったともなれば、ソーザ衆に責任が問われるような事態や、国衆同士の関係悪化に繋がりかねない。
そのような事態は避けようと、彼は自身の手で魔獣を討伐することにした。
「あれが、村を襲撃した…」
しばらく馬を駆り、ロベルトが襲撃の遭った地に辿り着く。
そこでは、全長4m程で白色の毛を持つ熊の姿をした魔獣、カチグマが冷気を放って周囲の物を凍らせながら、近くにあった倉庫の中の農作物を食い荒らしていた。
「我らの貴重な財産をよくも!
民にとって貴重な食料を奪うカチグマの様子に、怒りを露にすると共にロベルトが剣を鞘から抜き、それを振るうと共に、水の刃が飛ばされ、カチグマ一頭の首を撥ねる。
「
首を撥ねられたカチグマの身体が地面に倒れ伏す音に、他の群れの物達が気付き、すぐに下手人のロベルトに襲い掛かろうとするが、ロベルトは魔法で超高圧な水塊を作り出し、それを一気にカチグマの群れに向かって解き放つ。
超高圧の水流にカチグマ達は吹き飛ばされ、地面の上を転がっていく。
水魔法と剣術を極めてるロベルトは、上級の水魔法をも操り、上級水属性魔法の
「さて、これで村は守れたはず…っ!?」
だが、カチグマが未だに一頭残っており、そのクマが口から息を噴き出すと、冷気が放たれて地面が凍てつくされる。氷の棘の山が一気にロベルトの方まで迫ってくるが、ロベルトは軽く跳躍して回避する。
「まだ来るか!」
さらにカチグマは口から氷の棘を射出するが、ロベルトは着地しつつ自身の剣を振るって迫りくる氷塊を切り落として防いでいく。
「
剣を振り終えると共に、ロベルトはまた高度な水属性魔法を発動する。
水で自身の分身を作り出すと、その分身がカチグマに向けて走り出す。
カチグマもその分身を標的とし、氷の棘を射出していくが、分身はそれを回避しながらカチグマに接近していく。
「
その分身を仕留めようと、カチグマが腕を大きく振り上げて爪を振り下ろそうとしたその刹那、ロベルトの放った水の矢がカチグマの喉元を貫いた。
喉元を貫かれたカチグマの生命はそこで途切れ、その巨体が音を立てて地面に倒れ伏す。
「これで全てか…」
全てのカチグマを討伐、もしくは撤退に追い込んだことを確認する様にロベルトが周囲を見回すが、その時地面が大きく揺れる。
「こ、これはッ…!?」
その時、森の方から先程までのカチグマ達以上の大きさの巨体を誇り、常にその身には冷気を纏っている。
カチグマの群れの中で最も力ある者は、通常の個体以上の大きさと魔力を持つヌシ・カチグマになると言われており、ロベルトらの眼前に現れた巨大なカチグマこそヌシ・カチグマである。
「
ロベルトは現れた敵に対処するべく、水の斬撃をヌシ・カチグマに向けて放つ。
だが…
「斬撃が…凍っただと…!」
ロベルトが放った水の刃は、ヌシ・カチグマの身の回りに漂う冷気によって冷えて固まり、斬撃はヌシ・カチグマに届かない。
「水よ怒れ、全てを飲み込み、倒壊させよ…
巨大な渦潮を生み出し全てを飲み込む水属性の上級魔法をロベルトが発動し、渦潮がヌシ・カチグマの巨体を飲み込むが…
「魔法がッ…!」
だが、渦潮を構成する水流はヌシ・カチグマの身から放つ冷気で凍っていってしまう。
そして、ヌシ・カチグマの巨体は渦潮の中に存在してもなお、押されることも揺らぐこともなく、ロベルトに迫るように歩みを進めていく。
「ッ…!」
渦潮を突破してきたヌシ・カチグマのが自身の腕を振り上げて、その手をロベルトに叩き付ける様に振り下ろそうとし、ロベルトが剣を構えたその時だった。
『ファンキーアタック!ロケット!』
その時だった。ロケットのような形をした深紅のエネルギー弾がミサイルの様に飛んできて、ヌシ・カチグマの右腕に直撃する。
「こ、これは…?」
右腕に一撃を受けたヌシ・カチグマの巨体が揺らぎ、怯んだ様子を見せる。
「大丈夫?魔獣が出たって聞いてきたけど、なんだか大変なことになってるね。」
そこにやって来たのは、颯馬が変身した仮面ライダーエボル・コブラフォームであり、ネビュラスチームガンを手に持ちながら、ロベルトの隣に立つ。
「その声、颯馬殿か…?」
「そうだよ、なんかピンチだったっぽいけどもう大丈夫だよ。俺が来たからね。」
『ファンキーアタック!ハチ!』
今度はネビュラスチームガンにハチボトルを装填すると、蜂の群れを模した無数のエネルギー弾が生成されて、それらが一気にカチグマに襲い掛かる。
全身の様々な場所を刺されてしまってはいるが、ヌシ・カチグマの毛皮はその攻撃を防いではいるが、痛覚は感じており、その蜂の群れを模したエネルギー弾を振り払おうとヌシ・カチグマが身を震わす。
「さて、この隙に…」
『パイレーツ!クリエーション!』
ヌシ・カチグマが蜂の巣にかく乱されている間に、エボルドライバーにカイゾクフルボトルを装填すると、ライダーエボルボトルの力でカイゾクハッシャーが生成される。
「その武器は…?」
「ちょっとした特殊な武器だよ。」
『各駅電車~!急行電車~!快速電車~!~海賊電車~!!』
ビルドアロー号という電車型攻撃ユニットを矢のように引き、エネルギーをチャージし、海賊船と電車を模したエネルギー弾が立て続けにヌシ・カチグマの胸部に放たれる。
1発目の海賊船を模したビルドオーシャン号のエネルギー弾がヌシ・カチグマの胸部に直撃してガードを崩し、魔獣の身からあふれる冷気を吹き飛ばすと、2発目の電車を模したビルドアロー号のエネルギー弾がヌシ・カチグマの左胸を貫く。
「な、なんて威力だ…!」
自身の攻撃を防いでいたヌシ・カチグマの防御を貫き、一撃を与えてみせたエボルの力にロベルトは驚いた様子を見せる。
「さて、トドメ刺すよ。」
エボルはネビュラスチームガンと、トランスチームガンとスチームブレードを合体させたトランスチームライフルを構えると、それぞれにフルボトルを装填する。
『ファンキーアタック・ロストマッチ!』
『スチームショット・バット!』
ネビュラスチームガンから水色のコブラ型のエネルギー弾が、トランスチームライフルからは紫色のコウモリ型のエネルギー弾がそれぞれ放たれる。
2つのエネルギー弾はヌシ・カチグマの胸部にカイゾクハッシャーの攻撃でできた傷跡に直撃し爆ぜる。
ヌシ・カチグマの胸部には風穴が開き、その巨体が地面に大きな音を立てて倒れ伏す。
「これが颯馬殿の力…あの魔獣をいとも簡単に…!」
ヌシ・カチグマを倒してしまった颯馬の力に驚きつつも、変身を解除した彼の下に駆け寄る。
「お疲れ様、ロベルトさんが他の奴らを先に倒しててくれたおかげで早めにケリが付いたよ。ありがとう。」
「いや、礼を言うのは私の方だ。我々の危機を救ってくれて感謝する。」
「ん、当たり前じゃん。俺達もうソーザ衆の仲間なんだから…」
「ふっ、そうだな…」
颯馬が笑顔を浮かべながら言った言葉に、ロベルトもクールに笑顔を見せつつ同意する。
自身の危機を救ってくれたこともあり、ロベルトなりに颯馬を信頼することにした様子だ。
「それよりこれ、なんか不思議な石だね。なんだろう?」
ふと、颯馬が自身の足元に目をやると、そこには灰色に濁った宝石のようなものがあった。
「これは…魔石?だが、こんな色の物は見たことがないな。」
「じゃあ、城まで持っていって調べてもらおうか。」
「そうだな…」
ロベルトはその魔石を手に取ると、颯馬と共に城の方へと戻るのであった。
【マルコス・ソーザ】
年齢:48歳
役職:ソーザ衆の頭領(領主)
性格:温厚かつ理知的、しかし時折見せる威圧感は領主としての風格
外見:長身痩躯で黒髪に白髪混じりの短髪。鋭い目元と整った口髭
特徴・描写:
領民思いで、公正な政治を行う賢侯。
昔は光属性魔法を操る名の知れた戦士だったが、現在は実戦からは退いている。
息子たちへの期待と同時に厳しさも持つ。
颯馬の力量を見抜き、早期にソーザ衆に引き入れた人物。
地域の安定を第一に考えており、帝国や魔王国の動きにも警戒している。
【クレイブ・ソーザ】
年齢:17歳
役職:ソーザ家の次男/近衛部隊の副隊長
性格:素直で真面目、兄や父を尊敬している努力家
外見:栗色の短髪に青い瞳、頑丈な体格。騎士らしい爽やかな印象
特徴・描写:
火属性魔法と槍術を得意としている。
颯馬とはすぐに打ち解けた。颯馬の実力に素直に敬意を抱く。
剣術と槍術を得意とし、戦場では指揮官としても有能。
情にも厚く、村人や兵士たちからの信頼も厚い。
弟としてロベルトを支えつつ、自分なりの理想も追い求めている。
【ロベルト・ソーザ】
年齢:22歳
役職:ソーザ家の長男/軍事担当
性格:慎重かつ冷静、やや厳格で現実主義者
外見:黒髪を後ろに束ね、鋭い目元に整った顔立ち。やや険しい印象
特徴・描写:
水属性魔法と剣術を得意としている。
領地の防衛・軍備を担当する立場から、他者を簡単に信用しない。
颯馬のことも最初は「得体の知れない存在」と見ていたが、共闘を通して見直しつつある。
無駄を嫌う性格だが、内心では家族や部下への思いやりもある。
クレイブとは対照的に感情を抑え気味だが、弟の成長を陰ながら喜ぶ兄貴分。
【ラグス・ムローガ】
年齢:41歳
役職:ムローガ衆の頭領
性格:野心家で狡猾、表面上は穏やかに装う策略家
外見:薄い金髪に緑がかった瞳、中肉中背。常に険しい表情をしている。
特徴・描写:
土属性魔法の使い手。
ソーザ衆に対して時折反抗的な態度を見せ、ソーザ衆の弱体化を画策している。
領地を拡大し、将来的には大陸南部の覇者となる野望を抱いている。
情報工作や裏取引にも手を染めており、忍びや傭兵とも関係がある噂がある。
サラに対しても政治的な駒として見ているふしがある。
ソーザ家の内情や戦力を探るためにエンジシ事件に乗じて訪問した。
【サラ・イデーラ】
年齢:28歳(見た目は若干若く見える)
役職:イデーラ衆 頭領
性格:沈着冷静かつ柔和な物腰だが、内に秘める芯は強い。情と理のバランスを持ったリーダーであり、優れた観察眼と判断力を備える。
外見:黒髪を高く結ったポニーテールに忍者風の髪飾りをしている。和風を感じさせる薄装束に、戦闘時は忍装束へと切り替える。
特徴・描写:
ホムラ国出身の「忍者の末裔」でもあり、忍術を活かした戦闘や情報収集を得意とする。
イデーラ衆の頭領として領内を守っているが、諜報活動にも重きを置いており、情報収集網はこの地域でも随一とされており、ソーザ衆や颯馬に対しても多くの情報提供を行っている。
女性でありながら頭領という立場にあることで、他の国衆から侮られることもあったが、今ではその実力と人格で誰もが一目置く存在となっている。