ハーメルン・アウトサイダーズ   作:夢野飛羽真

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ミリアリア

シュトロード工房にミーアの最愛の師匠から連絡が入る3日程前ーーー

 

エルシア王国のはずれ…

 

『シャァァァァァァァ!!』

 

件の魔導具技師は、魔物の前に立っていた。

 

「ふむ…フィアー・デーモン…下級悪魔が私に挑むか?……群れから離れたか?」

 

『シャァァァァァァァァァ!!』

 

フィアー・デーモン

 

真っ黒な体に白く濁った瞳ーー

 

クモの脚のように前方に曲がった2本角ーー

 

カラスのような翼に鋭い爪と牙ーー

 

そして先が矢尻のように尖った尻尾ーー

 

特殊能力を持たず、群れで行動する個体も存在する。

 

ただし普通の人間にとっては脅威以外の何物でもなく、一体だけでも手練れの騎士を手こずらせるほどのパワーを持ち、人に取り憑く事も出来る。

 

 

そう

 

下級の魔物とはいえ、唯の人間ならば苦戦は免れない。

 

 

 

その筈なのだがーーー

 

 

『火よ、灯れ』

 

ボォォ

 

 

『ギィヤァァァアァイァィアァァ!?』

 

 

件の魔導具技師は初級魔法…

それも初歩の初歩である火生成(ファイア)で意図も簡単にフィアー・デーモンを焼き捨てた。

 

「この程度…()()()を使うまでも無い…」

 

「ば…馬鹿な…下級とは言え悪魔だぞ!?」

 

件の魔導具技師の目の前には、先程焼き捨てたフィアー・デーモンを召喚したであろう魔導師と、その仲間であろう盗賊の集団が居た。

 

「バカか?あの程度の悪魔なら対処は容易い…戦闘経験の無いうちの愛弟子でも対処出来るわ…」

 

「チッ!野郎共!相手はたかが魔導師の女1人だ!やっちまえ!!」

 

この盗賊の頭領であろう髭面の男が叫ぶ。

 

「………はぁ……面倒だ……やはり使っておくか…こんな雑魚共にはちと勿体ない気もするが…」

 

件の魔導具技師は、腰に下げた()()()()()を抜いた。

 

「光栄に思え…貴様ら大陸のゴミに神聖なる聖剣の力を拝ませてやるんだからな…」

 

 

 

件の魔導具技師が聖剣を抜いて数秒後

 

彼女の辺りには変わり果てた盗賊達の死体が転がっていた。

 

 

「やはりコイツらには勿体なかったか…さて……依頼も完了だな…やれやれ私は冒険者ではないのだがな…」

 

件の魔導具技師ーーー

 

ミリアリア・オルテナルスは、何処からともなく斧を取り出し始末した盗賊の頸を落とし始めた。

 

 

 

 

エルシア王国・冒険者ギルド

 

「そら盗賊共の頸だ…手短にすませろよ?」

 

「しょ、少々お待ち下さい!!」

 

冒険者ギルドの受付嬢に、先程落とした十数人の盗賊の頸が入った頭陀袋を押し付けるミリアリアーー

 

「はぁ…魔導具技師の私が冒険者の真似事とはな」

 

「いやぁ助かったぜミリアリア、流石は元大陸最強の冒険者だな!」

 

そこに強面で大柄な漢がやって来た。

そしてその漢の額には二本の立派な角が生えていた。

 

「煩いぞダイル…私の本職は魔導具技師だ…冒険者では無い」

 

漢の名はダイル・カーベランド

ホムラ国出身の(オーガ)で、ここエルシア王国冒険者ギルドのギルドマスターをしている漢である。

 

「よく言うぜ!元エルシア王国冒険者ギルド最強の魔導師が魔導具技師とか何の冗談だ?」

 

「私は魔導具を製作している方が性に合ってるんだ…」

 

ミーアの師匠、ミリアリア・オルテナルスは元冒険者の魔導師であり、ギルドマスターのダイルとは元パーティーメンバーの間柄だった。

 

「全く…久々に連絡を寄越してきたかと思えば…盗賊の討伐依頼とは…私で無くともあの程度ならお前でも対処出来たろうに」

 

「そりゃあ俺がやっても良かったんだが…ギルドマスターってのは思いの外忙しいんだよ!魔導具技師協会の会長なら分かるだろ?」

 

「お前……私が会長を引退したの知ってて呼び付けたな?」

 

「何だ?分かってんじゃねぇか!ガッハッハッハッハッハ!」

 

ダイルは笑いながら言った。

 

「いやぁだが助かったのはホントだぜ?あそこは新人冒険者達の狩場だからよ!そこを盗賊団が根城にしてたら新人じゃ対処出来ねぇからな!」

 

「はぁ…まぁ良い…折角サンドリアからエルシアに来たんだ…私の用件を済ませて帰るとするさ」

 

「何だ?エルシアに用でもあったのか?」

 

「なければこんな面倒な依頼受けるか…採掘場にちょっと野暮用でな」

 

「採掘場……魔石か…お前ホントに魔導具技師なんだな」

 

「張り倒すぞ貴様」

 

ミリアリアは右手に魔力を込める。

 

「ガッハッハッ!そうおっかねぇ顔すんな!今度美味い酒奢ってやっからよ!」

 

「酒は好きじゃない…はぁ…」

 

ミリアリアは溜息を吐いた。

 

「お、お待たせしました〜」

 

そこに受付嬢が戻って来た。

 

「おう!ご苦労さん!」

 

「そう言うならギルドマスターも手伝って下さいよぉ」

 

受付嬢は金貨3枚と銀貨数百枚を乗せた受け皿を差し出した。

 

「討伐報酬の3オルと450セルになります」

 

「あの程度の盗賊を始末しただけでこれだけ貰えるとはな」

 

「一応指名手配されてる盗賊だからな、お前にとっちゃ朝飯前だろうけどな!また頼むわ!」

 

「……エルシアに用事がある時なら考えてやろう」

 

ミリアリアは報酬を受け取り、冒険者ギルドから出ようとする。

 

「おっそうだ言い忘れてたぜ、ミリアリア」

 

「…何だ?」

 

「魔石をどっかに持って行くなら()を頼れ、丁度この国に来てるんだよ」

 

「……()()か?そのつもりだ」

 

「何だ知ってたのか」

 

「……何…私の用事がまさに死神に会うことだからな」

 

ミリアリアはニヤリと笑いながら冒険者ギルドを出た。

 

「相変わらず何考えてるか分からねぇ奴だな…そんな彼奴がまさか弟子を取ってるとはな」

 

「ギルドマスター…あの人と知り合いなんですか?」

 

「なに昔の同僚だ…今じゃ魔導具技師協会の特級技師だな」

 

「特級技師って…ライセンスを取得することすら難しいとされる超難関じゃないですか!?…あの人が…」

 

 

 

エルシア王国の酒場ーー

 

酒場の奥の席に二人の男女が食事を採っていた。

 

ミリアリアはその席に近づき、二人に接触した。

 

「成る程…君が噂の運び屋か?」

 

「ん?」

 

「…………依頼か」

 

男はミリアリアを見ながら呟く。

 

「あぁ…一つ…いや二つの依頼を受けて貰えるだろうか?」

 

「……何を何処に運ぶ?」

 

「すまないが着いて来て貰えるか?依頼の品は生憎とここには無くてな」

 

「……良いだろう」

 

男は立ち上がる。

 

「えっちょっと」

 

女は急いで会計の準備を始める。

 

 

三人は酒場から出た。

 

「自己紹介がまだだったな…私はミリアリア・オルテナルス…しがない魔導具技師だ」

 

「…………はっ!?ミリアリア・オルテナルス!?魔導具技師協会の会長が何でこの国にいるのよ…」

 

女はミリアリアの名を聞いて驚愕する。

 

「元…だがな…それで君達の名だが…」

 

「あぁごめんなさい…私はニコ…今は訳あって運び屋と一緒に行動してる者よ」

 

「……訳あって……ねぇ」

 

ニコの言葉で運び屋は不機嫌な顔をしていた。

 

ミリアリアは本題を切り出す。

 

「依頼の一つ目だが…此処だ」

 

ミリアリアが二人を連れてきた場所は、採掘場だった。

 

「此処って…魔石の採掘場?」

 

「あぁ一つ目の依頼は魔石をエルフの里のシュトロード工房に届ける事だ」

 

ミリアリアは一つ目の依頼を言った後、採掘場の責任者の元に行き、魔石が入った箱を4箱受け取った。

 

「これ……全部魔石よね」

 

「あぁ、これをエルフの里に運んで欲しい」

 

「凄い量…加工するにしてもこれだけの量をそのシュトロード工房で請け負えるの?」

 

「これを発注したのは私の弟子だ…この程度の量魔導具技師なら出来て当然だ」

 

「……流石ミリアリア・オルテナルス…スパルタね」

 

ニコは若干引いていた。

 

「……もう一つの依頼は」

 

運び屋がミリアリアに問う。

 

「もう一つはこれを同じくシュトロード工房に届けてくれ」

 

ミリアリアは()からもう一つ箱を取り出した。

 

「…アイテムボックスまで持ってるなんて…これも凄い量…全部魔石を使ったアクセサリーじゃない…この形…魔王国で売られてる物ね」

 

「ほう分かるか…そうだ、だがこれはアクセサリーとしては粗悪品に近い物だ…まぁ弟子への課題みたいな物だ…それで報酬だが……これでどうだ?」

 

ミリアリアはアイテムボックスから何かが詰まった袋を取り出す。

 

「大凡だが500オルある筈だ」

 

「500オル!?」

 

「ッ」

 

ニコは驚きの金額を提示され驚愕し、運び屋は高々箱を5箱届けるだけで500オルという大金が支払われる事に目を見開く。

 

「……明らかに依頼内容と比例していないが?」

 

「なぁに大した額じゃない…それと一つ…運び屋これは君にしか頼めない依頼だ」

 

「?」

 

ミリアリアは運び屋の肩に手を置く。

 

「愛弟子に…いやシュトロード工房に居る彼らに教示しておいてくれないか?君の()()()の姿と同じ力を持つ彼らにな…頼んだぞ…死神?」

 

「ッ……良いだろう…その依頼引き受ける」

 

「彼等?」

 

ニコはミリアリアの言葉に疑問を抱く。

 

「何すぐに分かるさ…では頼んだぞ?」

 

ミリアリアは先程使ったアイテムボックスとは違う袋を取り出し、5つの箱を袋に仕舞った。

 

「アイテムボックスを二つも持ってるなんて…」

 

()()()には敵わんがこれでも特級技師だ…アイテムボックス位なら作れる…それにこれの方が運びやすいだろ?」

 

「……」

 

ミリアリアは無言の運び屋にアイテムボックスを渡した。

 

「このアイテムボックスは君達にやろう、何前金だと思ってくれ」

 

「…いや俺にはーー」

 

「何言ってんのよ!アイテムボックスなんて豪華な魔導具を態々協会の会長が作ってくれたのよ!?ありがたく貰わないと失礼でしょうが!」

 

「……」

 

ニコは運び屋に説教し、アイテムボックスを受け取った。

 

「確かに渡した、では頼んだぞ」

 

「……あぁ」

 

「それじゃ行きましょうか」

 

「……何故お前が指示している」

 

ニコと運び屋は採掘場を後にする。

 

「さて……では行くか」

 

ミリアリアは採掘場を後にし、とある場所に向かった。

 

 

ミリアリアが向かった場所は、エルシア王国のはずれにある魔物の襲撃に遭った廃村だった。

 

「………」

 

「よぉ…ミリアリア・オルテナルス」

 

廃墟と化した民家の中から、1人の男が出てきた。

 

「待ってたぜこの時をよ…テメェに協会を追い出されてからというもの…俺の人生は滅茶苦茶だ…此処でテメェには死んでもらう!」

 

その男はかつてミリアリアが魔導具技師協会の会長だった頃に協会を追放されライセンスを剥奪された魔導具技師だった。

 

「何を言い出すかと思えば……ライセンスを剥奪されたのは魔導具技師の()を破った貴様の自業自得だろうに」

 

()()()()()()()()の能力を客に教えて何が悪いんだよ…こっちは商売してんだ…客の要望に応えただけだ」

 

「その客がどうなったか分かるか?……全く…()()()()のに私の貴重な時間を割いたんだ……後は元凶の貴様を掃除するだけだ」

 

「殺れるもんなら殺ってみろよ!」

 

男は右腕に無機質な篭手を装着し、懐からカードを取り出した。

 

「……」

 

「ブッ殺してやるよミリアリア・オルテナルス!!」

 

男は篭手にカードをスキャンさせる。

 

「変身!!」

 

FakeRIDE GOTCHARD!

 

男の頭上に巨大なカードが出現し、男をすり抜ける。

 

そして男は瞬時に変身した。

 

スチームホッパー!

 

 

その姿は、此処とは別の世界ーー

 

錬金術における最高の技術を集めて造られた『人工生命体ケミー』を巡った闘いを繰り広げていた仮面ライダーーー

 

仮面ライダーガッチャードの姿だった。

 

 

「さぁ…惨たらしく殺してやるよ!」

 

「ほ〜う…なんだ…()()()()()()のか」

 

「……は?」

 

ミリアリアはそう言うと、一冊の本を取り出しページを捲った。

 

月の姫かぐやん!

 

とある竹から現れた月夜に輝く麗しき姫君…

 

 

音声が鳴り終わると、ミリアリアは本を閉じ懐に下げている剣を抜いた。

 

月虹剣月詠(げっこうけんつくよみ)

 

 

ミリアリアは月虹剣月詠の鍔の部分に月の姫かぐやんをセットした。

 

待機音が鳴り響き、ミリアリアは月虹剣月詠を構えるーーー

 

そして柄の部分を押し込んだ。

 

 

月詠開演!

 

 

「変身」

 

ミリアリアは月虹剣月詠が放つ月光に包まれた。

 

 

今は昔!竹取の姫降り立ち!月の姫!か!ぐ!やん!煌く太刀筋!

 

右半身が中世の騎士を模しーー

 

左半身が羽衣を纏ったかぐや姫の十二単を模しーー

 

顔の左半分にはかぐや姫の生まれた竹ーー

 

頭部のソードクラウンは月虹剣月詠とその切っ先で描かれた三日月ーー

 

 

ミリアリアは此処ハーメルン大陸で誕生した月の剣士ーーー

 

 

仮面ライダーカグラへと変身した。

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