宵闇、月明の下の森の奥深くに、ひとつの月影がいた。
天津空で、繊月が光輝くとその月影を照らす。すると、それは白の着物を着た、うつくしい童女となる。
白装束が風に吹かれ、風を感じながら月を見上げ、静かに呟く。
「ふふ……今宵は良夜であるな」
その娘が弄月していると、忽然として遠方の大地から地響きを感じた。
◆◆◆
ブウゥゥゥゥゥゥゥン!
宗戒がローズアタッカーに跨り、走っていた。彼が通った後には車輪の跡と土煙が舞い上がっている。
その時、村の外れの森の奥深くでは背から羽根を生やした群衆が動いていた。しかし、その数は少ない。恐らくは東嶺藩の斥候だろう。彼らは宗戒を見つけるや否や、叢から踊り出てる。
キキーッ!
宗戒は突如として現れた目の前の天狗を轢かないよう、急ブレーキをかける。
「その鉄馬……貴様、仮面の武者であるか?」
「その姿、天狗か……貴様らに用はない。そこを退け。」
鉄馬……ローズアタッカーを見た天狗がそう訊くが、宗戒は興味はないとして前に進もうとするが、彼らから不穏な空気を感じ取り、不審がる。
「……そうか。しかし、我らは貴様に用がある。」
「何っ?!」
宗戒が身構えた時には、天狗は腰から取り出した刀を振りかぶっていた。
「お命頂戴致す!」
「いきなり斬りかかるとは……無礼な奴らだ。」
下ろされた天狗の斬撃を避けるようにローズアタッカーから転げ降りると、宗戒は鼻で笑いつつも、バナナロックシードを取り出した。
「変身」
【バナーナ!】
「ふんっ!」
宗戒は上空から急降下してきたもう1人の天狗の斬撃を避けながらも、バナナロックシードを戦極ドライバーにセットする。
【ロック・オン!】
《カモン!バナナアームズ!》
宗戒が戦極ドライバーのカッティングブレードを下ろすと、頭上に開いたクラックからバナナアームズが降りて彼の頭に装着され、アンダースーツも生成される。
「はぁっ!!」
その状態のまま、突撃してきた天狗の斬撃をバナナアームズで受け止めて、逆に天狗を宙へと弾き返した。
「チッ…」
《ナイトオブスピアー!》
弾き返された天狗斥候が上空で舌打ちをしているとバナナアームズが展開され、宗戒は仮面ライダーバロンに変身した。
「此奴が噂の仮面の武者……風よ集え、我が身に纏い音速の域へ……疾風!」
その姿を見た天狗斥候はスピードを上昇させる風術と使い、自らと仲間の力を向上させる。
「ほう、流石は天狗……風術を使うか。」
バロンは疾風の如く、斬り近づいてきた三人の天狗の内の一人、その攻撃を避けつつもすれ違いざまにバナスピアーで突き刺す。
「………なにッ?!」
その天狗はバロンの見事なまでの反応速度に驚きながら、その嘴から紅血が滴り、山伏装束が赤黒く染まる。
「がっ………」
「ふんっ……!」
バロンはその血生臭い天狗を蹴り飛ばして、バナスピアーを抜き取ると突っ込んできた二人の天狗と斬り合いを始める。
天狗の刀剣とバナスピアーがぶつかり合い、火花が散るが、距離を取った天狗二人は風術を発動させる
「「風よ集え、我が身を守護する壁と成れ……風壁!」」
バロンは風壁に吹き飛ばされ、平原を転がされる。その隙に彼らは持ち前の羽根を使い、逃げ始めた。
「待て!逃げるな!」
カッティングブレードを一回下ろし、上空に逃げた天狗の片方に向かって投げ飛ばす。
《バナナスカッシュ!》
「ぐわぁぁぁ……?!」
バナスピアーがバナナ型エネルギーを纏って天狗に突き刺さり、爆散した。
「なんと……」
その仲間がやられた様子を見た最後の天狗は疾風のように羽ばたいて行った。
「一人逃したか………まぁいい……ん?誰か見ているのか?」
何者かの視線を感じ取った宗戒が辺りを見回しても、森と山が広がっているだけであった。
【ロック・オフ】
この場には誰もいないと判断した宗戒は変身を解除すると再びローズアタッカーに跨り、その場を後にするのだった。