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不死身の闘牛 1話
ヴァル=ガード要塞国家……通称「盾の国」。そう呼ばれる国がハーメルン大陸大陸南部の森林地帯の中央部に存在し、エルシア王国や魔族の領土にも接する。
防衛に適した天然の要害として機能する山岳と岩場が広がる険しい地形を使い、敵による侵攻を防ぐ。
国の中央部には巨大な要塞都市がそびえ立ち、都市全体が城塞として機能している。また、いざという時のために地下には広大な防空壕や避難施設が張り巡らされている。だがその地形ゆえに限られた農地しかなく、食料の多くは交易により確保している。
おそらくハーメルン大陸随一と言ってもいいだろう防御力を誇るヴァル=ガード要塞国家には、かつてないほどの敵が責めてきていた。
それはこの世界では見たことのない敵であった。どこから現れたのか、いつからいたのか? それすら分からない。
盾と長槍を主体とし防御を重視した戦術を得意とした「鉄壁騎士団」。そう呼ばれる国の最高戦力である重装甲の騎士部隊たちが刻印魔法による防御強化を施された鎧を装備し、圧倒的な耐久力を持って謎の敵と相対するが結果は敗北。瞬く間に全滅したが、幸いなことに全員命を落とすようなことはなかった。
謎の敵の名は……ゴルドドライブ。
とある世界でその所業故にアンチが非常に多く最も嫌われた人物が、自身を人格プログラムとしてコンピュータの中で生き続けた際にロイミュードの肉体を奪って変身した姿である。
基本的な外見は仮面ライダードライブ・タイプスピードと同一だが、メインとなる色はロイミュードが超進化態の力を得た事を示す金色である。ここまで言えばこの仮面ライダーが本物だと思われるかもしれないが、変身している人物は蛮野天十郎本人ではない。
「私こそが神になるのに相応しい! 君たちもそう思わないか?」
大げさな素振りで自分に立ち向かってくる人間たちに視線を向けるゴルドドライブ。その声は、自分こそが神であることを信じて疑っていない。本当に神だと思い込んでいるイカれた人間のそれだった。
「ふざけるな!!」
大剣を杖代わりにして立ち上がった青年が声を荒げる。その顔に怒りを乗せ、真っ直ぐゴルドドライブを睨みつける。青年は最近騎士団に入団した新入りだった。クールで真面目だが、人と関わることを恐れている節がある。それ故無口でいた青年が突然声を荒げたのだ。他の騎士団員達が驚いた顔をしていた。
「き、貴様は……断じて神などではない!! 貴様のやってることはただの盗賊と何も変わりはしない!! オレは……!! 絶対に貴様を許さん!!」
「はぁ……なんだね、君は?」
息を荒げ、大剣を突きつける青年。それに対してゴルドドライブは心底どうでもよさげにため息を吐く。
「オレは貴様によって滅ぼされた村の生き残りだ!!」
「あぁ……!! 君はあの時の!! いやぁ、あの村はいい研究ゲータになってくれそうな人たちがたくさんいたからねぇ。とても……とても感謝しているよ!」
「き、貴様ァァァァ!!」
煽るようにゴルドドライブが手を広げれば、ブチギレたように青年が大剣を振り上げゴルドドライブに向けて走り出す。それを団長が止めようとするが青年は既に手の届かない距離にまで走っていた。
青年の大剣が青い炎を纏い、そして振り落とされる。ただの人間であればその一撃で絶命するであろう。だが相手は「普通の人間」ではない。
「なんだ、これは……? 蚊でも飛んでいたかな?」
「な、なに!?」
肩に直撃した大剣の刃をふっと押し出し、青年の腹に拳を入れる。青年の口から血が飛び出しながら吹き飛ばされ壁にめり込んだ。
「自分の力も理解できていない屑が……」
さらなる絶望を与えるためゴルドドライブが歩き出す。だがその足は突然止まった。それはなぜか? この状況に似つかわしくない音楽が流れていたからだ。
その音はゴルドドライブの背後から聞こえていた。不審に思ったゴルドドライブが振り向くと、そこには一人の少年がオカリナを吹きながら歩いてきていた。
黒いアウターにモノトーンのトップス、ボトムスは黒のワイドパンツというブラックコーデ。茶色の混じった黒髪をある程度後ろで束ねた少年は、オカリナを吹くのをやめるとゴルドドライブを睨みつけた。
「……お前か、このあたりで暴れているイカれ野郎ってのは」
「なんだぁ、お前?」
「今から消えるお前に名乗ってやるつもりはねぇ」
仮面ライダーバッファコアIDのセットされたデザイアドライバーを取り出し腰に装着する。デザイアドライバーを見たゴルドドライブが驚いたように「き、貴様は仮面ライダーだというのか!?」と言っているが少年は無視する。
その後肋骨と門を合わせたような形状のバックル――ゾンビレイズバックルをデザイアドライバーにセットさせる。
『SET』
左手で右腕を払うような動作をしたあと小指と親指を突き出しながら胸をなぞり、上半身をわすかに後ろへ反らしてから左手を掲げる。
「変身!!」
そしてサイドに頭蓋骨を模した「ウェイキングキー」を回す。するとウェイキングキーを回すことにより扉が開き中からゾンビの手を模した「インベードハンド」が飛び出す。
『ZOMBIE』
少年の体が黒い素体姿――エントリーフォームになると、デザイアドライバーから「ZOMBIE」と表示されたエフェクトが紫色のまるで肋骨状の模様が浮かぶ装甲「アンデッドチェスター」に変化し、エントリーフォームの上半身に装着される。
『READY FIGHT』
紫色の闘牛を模したマスク――バッファヘッドの複眼が一瞬だけオレンジ色に光り、仮面ライダーバッファへと変身した少年は右手に装備したチェンソー型の剣――ゾンビブレイカーを肩に担ぐ。
ゆっくりと歩き出しながら左手でちょいちょいと相手を煽るように指を動かす。それを見たゴルドドライブは苛ついたのか無言で走り出しバッファに殴りかかるが、その拳を胴で受け止めたバッファは担いでいたゾンビブレイカーでゴルドドライブを斬り上げる。
「くっ……貴様ぁ!!」
立ち上がったゴルドドライブがバッファに向けて拳を突き出す。それを腕でガードするとゾンビブレイカーを地面に突き刺し蹴り飛ばす。
「これならどうだ!!」
黄金のエネルギーを収束させ大きな玉にするとそれをバッファに向けて放つ。だがバッファはそのエネルギーを無防備な状態で受けるとその場で爆発する。
「ふははは!! この私を侮辱するからそうなるのだよ!! フッフッフッ! ふははは……なに?」
燃え上がった場所から無傷のバッファが歩いてくる。それを見てゴルドドライブが僅かに狼狽えるように後ろへ下がった。
「どうした? もう終わりか?」
「くっ……舐めるな小僧!!」
ゴルドドライブが何度もバッファの胴に拳を入れ込む。だがバッファの足は1ミリも動くことなく受け止めている。
「今度はこっちの番だ」
ゴルドドライブの顔面を殴りゾンビブレイカーで斬り上げる。火花を散らしながら斬り飛ばされたゴルドドライブは立ち上がろうとした瞬間、バッファに踏みつけられゾンビブレイカーで何度も斬りつけられる。
「ぐはぁ!? や、やめろ!! い、いずれ神になる私の最高たる頭脳を消してはならない!!」
「うるせぇ! 人様に迷惑かけるような頭脳なら、この世から消したほうがマシだろうが!!」
もう一度ゾンビブレイカーを肩に担ぎゆっくりと動かしてデッドリーポンプを刃先まで上げることで必殺待機状態へと移行させる。
【POISON CHARGE】
poi-zom圧力の向上によりテリブルチェーンの回転数が大幅に上昇し、高速回転する刃先に毒々しいオーラを纏っていく。その後ゾンビブレイカーを何度も何度もゴルドドライブに叩きつけるように斬り裂く。
「ぐっ、ぐぅぅぅ……!!」
毒が体内に注入され続け苦しそうにうめき声を上げるゴルドドライブだが、バッファにより踏みつけられているため動けないままゾンビブレイカーの斬撃を連続で食らっていく。
「これで終わりだ」
踏みつけていた足をどかしゴルドドライブの襟を掴んで無理やり立たせるとバッファヘッドで思いっきり頭突きをしてから、もう一度ポイズンチャージを行ってデッドリーポンプを戻す。
【POISON CHARGE】
【TACTICAL BREAK】
更に回転率が上昇し威力が底上げされたゾンビブレイカーの刃先をゴルドドライブの腹に押し当て、上空へと吹き飛ばす。そしてゾンビブレイカーの刃先が回転をやめるのを確認すると後ろを振り向き歩き出す。その背後で落ちてきたゴルドドライブが爆発した。最後まで「頭脳がぁぁぁ」と叫んでいた事に残念に思うこともなかったが。
「噂のフェイクライダーってのも、そこまで強くなかったな」
仮面ライダーとも言えない敵を倒したことでもうここには用事がなくなったバッファが去ろうとする。すると慌てたように騎士団員が「待ってくれ!」と呼び止めた。
「……なんだ?」
「き、君の名前を教えて欲しい」
名乗る必要はバッファにはなかった。だがバッファは数秒だけ考えるように顔を俯かせると、顔を上げて団員の方へ顔を向ける。
「
夜空と名乗った謎の少年はそう言って去りだそうとして、突然その場に倒れた。
団員は痛む体を無視して少年に駆け寄る。
「お、おい!? 大丈夫か!?」
「……腹減った」
小さくそう呟く少年の言葉に団員は苦笑いをしながら少年を担ぎ、自分たちの住むヴァル=ガードへと戻っていった。