ハーメルン・アウトサイダーズ   作:夢野飛羽真

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第2話

 

「……なんだこれは?」

 

 目が覚めた夜空は付き添いの騎士に食堂のような場所に連れられ、なぜか少し豪華な椅子に座らされた。そして次々に大盛りのメニューが机の上に置かれていく。

 

 その光景に夜空は目をパチクリさせる。すると黒と銀の髪が混ざったイケメン騎士がやってくる。黒いインナーに白銀の軽甲冑を着込み、その上に表が白銀・裏が水色の外套を纏っている。その見た目から爽やかで快活な好青年を思わせる騎士団員の登場に夜空は少しだけ苦手そうな表情を作った。

 

「俺たちはお前に助けられたからな。そのお礼だと思ってもらったらいい」

 

「いやこんなに食えるわけないだろ!?」

 

 思わず机に手を叩きつけ立ち上がる。そう文句を言っても仕方ないくらい食べきれない量の食事が置かれている。どう考えてもパーティーとかで出される量でしかない。

 

 だが騎士団員はニカッと笑うと親指を立てる。その笑顔はどう見ても安心できない笑顔だった。

 

「俺たちは常にこんな量を食ってる」

 

「バカなんじゃねぇの!? バカなんじゃねぇの!?」

 

 ため息を吐きながら椅子に座り直す。目の前に置かれたスプーンを手に取りシチューを掬って口に含む。味は元の世界でよく食べたクリームシチューに似ている。人参のような緑色のなにかやジャガイモと思わしき紫色に輝くなにかの食材など……突っ込みたいところはたくさんあったが、せっかく出された料理を食べないのはもったいないと自分の中で強引に納得させる。

 

「とうだ? うちの料理長が作る飯はうまいだろう?」

 

「あぁ、確かにうまいな。見た目はともかく」

 

「そうかぁ?」

 

 騎士団員には理解できなかったようだ。

 

「そうだ! 自己紹介がまだしてなかったな。俺はシャルル! シャルル・マーニュ・カロリングだ。よろしくな!」

 

「ずいぶんとまぁ、英雄になりそうな名前だなお前……」

 

「おっ! そう見えるか?」

 

 夜空が呆れたように言った言葉に褒められたと思った騎士団員――シャルルは嬉しそうに笑みを零す。夜空の背中をバンバン叩き「わかってるなお前っ!」と笑う。

 

「やめろシャルル。そいつはまだ起きたばかりだろう」

 

 扉を開いて新たにやってきたのは青髪の青年。背中に大剣を背負い、額には赤錆色の鉢巻きを巻いている。

 

「おぉ、親友クレイグじゃないか! お前もかなり傷が深かったと思うのだが……もう大丈夫なのか?」

 

「当たり前だ。これでも鉄壁騎士団の一人だぞ?」

 

 クレイグと呼ばれた青髪の青年はフッと笑うと抱きつこうとしたシャルルを顔面を鷲掴みする。シャルルは苦しそうにしながらも笑顔を崩さなかった……何だコイツ。

 

「もう大丈夫なのか?」

 

「あ、あぁ……大丈夫、だけど」

 

 シャルルを放り投げ夜空の隣りに座ると手を差し出してくる。

 

「オレはクレイグだ、よろしく」

 

「……明道夜空だ」

 

 とりあえず差し出された手を取り握手を交わすと、夜空は食事に戻る。クレイグは隣で夜空の食事風景を眺めていた。その様子を見て復活したシャルルが笑顔いっぱいにクレイグの肩を叩く。

 

 なんとなく目に入った皿の上に置かれている蟹のような奴から脚を引きちぎり身を食べる。

 

 プリプリとした弾力のある身はふっくらとしていて噛み心地がよく、噛めば噛むほど味が出てくる。蟹みたいなやつを食べ終えると次に骨付き肉に齧り付く。骨付き肉はジューシーで柔らかく骨髄液の旨味が隅々まで染み込んでいるため濃厚な味わいが夜空の舌の上で踊る。

 

 気づけば30分が経過し夜空の手が止まる。さすがに食べ過ぎと思うほど食べた気がしたのか腹を擦る。

 

「もう終わりなのか?」

 

 クレイグがそう聞くが夜空は頷くだけで答えない。テーブルの上にはまだまだ肉やパンやパスタなどの料理が山盛りで、見ているだけで腹が膨れそうになる。

 

 内心どこのアニメだよツッコミたくなる気持ちを抑えながら夜空は席を立った。

 

「流石にもう食えねぇ。残りはどうしたらいい?」

 

「そうだな……まぁ、残りは騎士団の皆で食べるとしよう」

 

 夜空は椅子から立ち上がると仏頂面を浮かべ頭をガシガシと掻く。クレイグとシャルルは苦笑いすると同じように立ち上がる(シャルルは元から立っていた)。

 

「腹も膨れたようだしここを案内しよう」

 

「いいのか? 迷惑になると思うが」

 

「問題ない。副団長からは許可をもらっている」

 

 それでいいのかと少し呆れたような顔をしつつ素直にクレイグ達についていく。

 

 途中クレイグとシャルルに案内されながら騎士団本拠地の中を見渡していると、すれ違った銀髪の女にギロッと睨みつけられた。理由は分からないが歓迎されていないことだけは夜空にも理解できた。

 

「誰だ今の?」

 

 2人が銀髪の女に頭を下げる光景を見届けたあと声をかければ、シャルルが真面目な表情で夜空の頭を軽く叩く。

 

「今の人はエスラ・アルペルト様。戦導将っていういわゆる一番お偉い人ってところだね」

 

「ふぅん……」

 

「うっわぁ、自分から聞いておいて興味なさげだなぁおい……」

 

 実際夜空にはそこまで興味はなかったし、聞いたのだってなんとなくだった。なんとなく今後面倒な因縁が付きそうな予感がしただけだった。

 

 それの予感は見事的中することになるのだが、それはまだまだ先の話である。

 

「というか大将どこに行ってるんだよ」

 

「……誰だ?」

 

「アルフォンス・リヴェン。俺達鉄壁騎士団の団長を務めているんだ。めっちゃ強いんだぜ? なんならあの黄金の奴を簡単にぶっ倒せるくらいにはな!」

 

「その黄金の奴に簡単に倒されてたのお前らだろうに……というかアイツどうなったんだ?」

 

 夜空の辛辣な一言にうぐっと胸を抑えるシャルルの代わりに、口を閉ざしていたクレイグが答える。

 

「奴なら地下牢だ」

 

「地下牢……?」

 

「あぁ、ヴァル=ガードに攻めてきた賊を捕らえた際にぶち込んでおくための部屋だ。まぁ、大抵の場合団長が全部ぶっ飛ばすから使われてないがな」

 

 少し呆れたように語るクレイグの言葉に、夜空の中で少し興味が湧き始めた。それほどまでに団長と呼ばれるアルフォンスは強いのだろう。

 

 それから暫く歩き、広い訓練場にやってきた。そこでは数人の騎士たちが大量の汗を流しながら刃を潰した槍を打ち合っている。

 

「ずいぶんと少ないんだな」

 

「まぁ、この前の襲撃で動けるやつがほぼいないからな」

 

「な、なるほど……」

 

 クレイグに案内され近くの椅子に座った夜空は騎士たちの様子を眺める。クレイグとシャルルは少し用事があるということで夜空一人になった。

 

 あくびをし退屈気味に訓練風景を眺めていると、夜空の後ろに大柄の騎士がやってきた。

 

「退屈そうだなぁ少年!」

 

 その大柄の騎士の声はとても大きく夜空の耳が痛くなるほどだった。そしてその声で訓練をしていた騎士たちの動きがピタリと止まり、大柄の騎士の方に振り向く。

 

「なんだお前」

 

「ん? まぁ、なんだ。気にするな! それよりどうだ? オレと一戦交えてみないか?」

 

「なんでだよ」

 

「いやなに……ちょっと気になることがあってな」

 

 大柄の騎士に誘われ訓練場の真ん中にやってくる。先程まで訓練をしていた騎士たちが二人を囲うようにギャラリー化した。

 

「まぁ、飯を食ったあとだからな。ちょうどいいか」

 

「さぁ、どっからでもかかってこい」

 

 大柄の騎士は木剣を肩に担ぎ夜空を挑発するように笑う。それを見た夜空は少しイラッとした表情を見せ地面を蹴る。変身していない夜空の速度は騎士よりも遅い。

 

「おぅら!!」

 

 剣を振り大柄の騎士の顔面を狙う。それに対して大柄の騎士は何もせずただ顔面で受け止めた。

 

 その衝撃はとてもじゃないが顔面に当たったとは思えないほどに硬かった。木剣をぶつけた側の夜空の手が痺れ、顔を顰めて思わず木剣を落としてしまう。

 

「いっつぅ〜! な、なんだこの硬さ」

 

「わはははは!! なんの躊躇いもなく顔面を狙うとは思わなかったが、逆に気に入ったぞ少年!」

 

 大柄の騎士の顔には傷らしい傷すらなくなんなら豪快に笑っている。流石に夜空の頬が引き攣った。

 

「まぁなんだ……いい打ち込みだったぞ!!」

 

「どこがだ!!」

 

 夜空はキレた。だがやはり大柄の騎士は豪快に笑い飛ばす。イラッとした夜空が木剣を拾い上げ大柄の騎士に斬りかかろうとしたその時、

 

「待て夜空!!」

 

 ギャラリー化した騎士たちの間を抜けながらクレイグとシャルルが走ってきた。二人は肩で息をしながら二人の間にやってくる。

 

「……どうしたんだ二人とも?」

 

「どうしたじゃないだろ!? なんでお前は団長と勝負してんだ!?」

 

「は……? え、団長……?」

 

 クレイグに止められ意味が分からず大柄の騎士を見上げる。大柄の騎士はまたもや豪快に笑った。それも愉快そうに。

 

「わははは!! そう、このオレこそ鉄壁騎士団の団長! アルフォンス・リヴェンだ! よろしくな少年!!」

 

 夜空の背中を叩き笑う大柄の騎士――アルフォンスにクレイグは呆れ、シャルルは楽しそうに笑う。なお夜空は背中を叩かれた衝撃で吹き飛び壁にめり込んだ。

 

「お、おい大丈夫か夜空!?」

 

「お前にはこれが大丈夫そうに見えんか!?」

 

 クレイグに助けられた夜空がキレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな事があった次の日、夜空はクレイグに連れられアルフォンスの部屋を訪れていた。

 

 昨日のこともあり少々アルフォンスに対しで苦手意識を持ち始めてる夜空は今すぐ逃げ出したい衝動にかられているが、飯の恩もあるためなんとか我慢する。

 

「お、来たな少年!」

 

「少年じゃなくて明道夜空だ!」

 

「そうかヨゾラだな! オレはアルフォンスだ!」

 

「昨日聞いたわ!!」

 

 調子が狂うと言いたげに夜空は髪の毛を掻きむしる。

 

「それで団長、要件はなんなんだ?」

 

 このままでは話が進まないと判断したクレイグが夜空の前に出る。アルフォンスは「おぉ、そうだったそうだった」と笑った。

 

「いやなに、もう少しで騎士団による遠征を行うんだが、そこにヨゾラも参加してほしいんだ」

 

「……は? なんでだよ」

 

「聞いたぞ? オレがいない間摩訶不思議な力を使った謎の存在にここが襲撃されたってな! そういう輩とお前は戦っているんだろ?」

 

「……フェイクライダーのことか。確かにそうだが、それと何の関係がある?」

 

 ヴァル=ガードを襲撃した犯人であるフェイクゴルドドライブの変身者は今も地下牢の中にいる。とてもじゃないが本物のゴルドドライブと比べて弱すぎる存在を思い出し怒りが湧いてきた。そんな夜空の内心に関係なくアルフォンスが話を進める。

 

「部下から聞いたが、お前もその摩訶不思議な力を使うのだろう? なら、今度同じような事が起こっても大丈夫なようにお前の力を借りたいと思ったんだ」

 

「……要するにフェイクライダー対策として俺に変身して戦えって言いてぇのか?」

 

「そういうことだ!!」

 

「……断る」

 

「ほう? なぜだ?」

 

 キッパリと拒否した夜空は壁に背中を預け腕を組む。

 

「俺は仮面ライダーの名を語って悪さをする奴らをぶちのめすために戦ってる。仮面ライダー対策がしてぇならお前らで勝手にしろ」

 

「そうは言うがなぁ……」

 

「……俺は協力する気はないからな」

 

「ところでヨゾラって行く宛とかあるのか?」

 

「……なんだいきなり」

 

 突然関係のない話を持ち込んできたアルフォンスに、夜空の眉が歪む。

 

「どうなんだ?」

 

「いやまぁ、ねぇけどよ。それと一体何の関係が……」

 

「協力してくれるんなら、ここを拠点に生活をしてもいいぞ! 毎日3食風呂付きで部屋も用意しよう!」

 

 アルフォンスの言ってることが理解できず黙りこくる。

 

「悪い話じゃないと思うぞ? ここなら変身前のお前を鍛えることだってできる。それに……見たところ対人戦はそこまで慣れていないだろ」

 

「うぐっ……」

 

 心当たりがあるのか夜空は顔を顰める。フェイクライダーと戦ったのだって数は多くなく、なんなら野生の魔物との戦いのほうが多かった。

 

 今後たくさんのフェイクライダーと戦うことを想定している夜空にとって対人経験がないのは致命的と言える。内心納得がいかない状態だったが、夜空はため息を吐いて承諾することに決めた。

 

「はぁ……あぁ、もうわかったよ! 参加すりゃいいんだろ!」

 

「おう! よろしく頼むぞヨゾラ!」

 

 そんなこんなで夜空は鉄壁騎士団に雇われたことになった。なお、クレイグは椅子に座って居眠りしていた。

 

 

第二話「騎士団団長アルフォンス」

 

 

 

「あの謎の力を使う少年を監視しろ」

 

 とある部屋の中で、暗闇に声を掛ける人物がいた。長い銀髪を揺らす女性――エスラが暗闇を睨む。すると暗闇の中で何かが動く気配がし、そして消えた。

 

「仮面ライダーとかいう謎の力、それがもしあの忌まわしき魔物や魔族と同じようなものならば……そのときは殺す」

 

 蒼い瞳が窓の外を睨んだ。

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