覗き窓   作:わど〜

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それにしても親指内部で使われる初投稿の移管まで知っているなんて、1級フィクサーは違いますね

どうも、ワシじゃよ。

公式から落とされるちっちゃなちっちゃな要素をすすって妄想を混ぜて拡大させて書くこの小説は気持ちよくて仕方ない。
権威の移管とか知ってる人のほうが少なそうだけど???
でも面白いシステムなので親指好きな人には知ってほしい。
ねじれ探偵読もうねみんなね。


権威の窓

「ふむ、つまり君は…君たちは我々とやりあう気はないといいたいのかね。フィクサー…それもツヴァイの者がやってきたというのに、その言葉を信用しろと?かすかな道しか残されていない我々親指が」

 

「………はい。だからこそ、と」

 

美しいワインレッドに金の装飾が施されたコートを纏った長身の女性が、日の光を背に椅子に座って見下ろしてくる。

いや、実際は視線は同じくらいだ。俺も座っているから。

それでも…その大きな威圧感のせいで実際よりも大きく見える。

俺は彼女から目をそらしてはいけない。

ちっぽけな2級フィクサーがアンダーボスと目を合わせ許されているのは、机の端に置かれた書類のせいだ。

権威の移管。あまり知られていないが、組織とやり合うことの多いツヴァイの中ではそれなりに知られている、特例。

 

親指は立場を重視する指。下の位の者が上の位の者に不躾な行いをすればただではすまない。

しかし、より上の位の人間から一次的に立場を譲渡されればその立場の人間として振る舞うことが許される。これが権威の移管だ。

通常権威の移管は本当に短い、一次的なもので…その場でとっさに必要になった際に、上の者の判断で行われることがおおい。

しかし書類でそれを行うことも不可能ではない。実際、テーブルの書類には、「ツヴァイ2課部長」…1級フィクサーのサインがある。

1級フィクサーであれば、アンダーボスと同等と見做される。それ故に俺は今会話を許されているというわけだ。

 

「それにしても……こんな書類は久方ぶりに見ましたね。ツヴァイの方はよく調べていらっしゃるらしい。権威の移管…のみならともかく、適切な書類の形式まで把握していらっしゃるとは…カポ以下の階級なら知ることすら無いでしょうね。その上ここまで正確に書いていらして…」

 

アンダーボスは俺の近くに手を伸ばして、書類を掴み上げる。

暖色系の明かりにさらすようにひらひらと揺らすと、また丁寧に書類を戻す。

 

「親指の方に会うのですから、当然するべきことです」

 

そういえば言ってなかったな、俺の仕事。

俺は…まあさっきもさんざん言ったが、ツヴァイ2課の2級フィクサー。

んで今はクソ部長に、L社の巣に残った親指のアジトに突っ込ませられてる。

まあ……あのクソ部長の考えてることはわかる。

図書館に行ってアンダーボス1名カポ3名ソルダートが16名死亡、人差し指と残響楽団によって……まあたくさん死亡。

人形だか眷属だか料理だかにされた奴らもいるから、ツヴァイの名簿にいるアンダーボスとカポはほとんど死んだと見做していい。

それで、かろうじて生き残った残りカスが俺の目の前にいるカスどもってわけ。

本ッ当嫌になっちゃうよね、もう自分たちに残された踏み場なんて無いのに一丁前に立場だか権威だか語っちゃってさ……そんなだから人差し指に串刺しにされてあ〜んな現代アートみたいな様になるんだよ。もしかして人差し指じゃなくて薬指がやりました〜?

 

「……まあいいでしょう。ひとまず条件だけは聞きましょうか?フィクサーの一線…とやらがある以上、そこまで良い話には聞こえませんがね」

 

ほら見ろ。ツヴァイと全面衝突したら終わるのは分かってるくせに、「そこまで良い話には聞こえない」だぁ?カマかけてきやがってんのか調子乗ってんのか知らねぇが舐めやがって。

俺は仕事真面目にやってんのにホントダルい。何がダルいって、残党狩りなら突っ込んで全員殺せばいいのに俺()()をこうやって突っ込ませてるとこだよ。

あの脳みそ砂漠化女の言うことによると、「12区は今危険だから今だけ協力しよう〜とか適当に言って油断させといて!奇襲するから!」らしい。

態度とタッパだけはデカい女が調子乗りやがって、胸と脳みそもそんだけデカかったらよかったのにな。

あいつにはもう悪感情しかない。殺したい。殺したいぃぃ〜〜!!!

なんか課に入りたての頃から俺だけ扱いが雑な気がするんだが!?いや、部下の生存重視なのは素晴らしい。今回のだって突入したらそりゃ死人でるかもだし、俺としても同僚がすぐ変わってかないのは嬉しい。

だからって!?俺をこうやって突っ込ませるのか!?おかしいだろ!!!

ふ、ざ、け、やがってあのクソアマァ〜〜〜〜!

……早く1課に行きたい。強行犯係にとんでもないやつがいるらしいじゃんか?まあ俺はそんなガチガチに前線張るようなタイプじゃないから、もし1課に上がっても会うことなさそうだけど。

 

「……ツヴァイは今後6ヶ月の間、親指に手出ししない。その代わり、期間中親指はツヴァイの治安維持地域で事を起こさない。該当地域に関しては変更が行われる度に通達します」

 

我ながら舐め腐った条件だ。どこが舐め腐ってんのかはアンダーボスさんが代弁してくださると思うので言いませんが〜。

まあ交渉術の一環さ、なんか聞いたことある人もいるんじゃないか?あえて極端に不合理な条件を提示させて、妥協案としてちょっぴり不合理な条件をのみ込ませる…みたいな。

今回はそれだけじゃなく…相手に合意の意思がそこまで強くない。そんな時こうやって舐め腐った条件を出すと、「訂正しなくちゃいけない」って心が働いて「合意するかしないか」の話から「どれくらいの条件なら合意するか」にすり替わるんだ。そうすると交渉が進めやすくなる。

 

「おっと!大きく出ましたね?…あなたたちの言い分をそのまま信用するなら、私たち親指がまた規模を大きくすることを受け入れるという意味…それなのに我々の行動域を制限すると。それでは本末転倒ではありませんか?あなたがたの治安維持地域はそれなりに広いでしょうに…それではむしろ、我々を狭いところに閉じ込めているように思えますね」

 

「では期間中は治安維持地域を以前の8割に狭めるよう上申します」

 

「足りませんね。6割です」

 

「不可能です。7割で妥協としましょう。いかがです?」

 

「……いいでしょう」

 

そら見ろ。バカみてぇに「いいでしょう〜」とか言いやがった。

戦闘は同僚と比べりゃ得意じゃないけど、凶悪犯との交渉術だけで2課まで上り詰めてんだから、これくらいやってやるわ。舐めんなよ。

 

「では、これにて交渉成立としましょう。握手でもいかがです?あなたがたは親指のことが嫌いでしょうが…せっかくこのようにご足労いただいたのです。立場を弁える方に無礼は行いませんよ」

 

親指のアンダーボスが立ち上がり、こっちに歩み寄ってきて右手を差し伸べてくる。

薄っぺらい笑顔なんか向けやがって…返答はもちろん、くそったれだ。

 

「申し訳ありませんが、結構です。私には今からまだ仕事がありますし………巻き込まれたくありませんから」

 

アンダーボスに背を向け、机の上の書類を掴む。

 

「……………畜生め。やはりフィクサーなど信用に値しない」

 

ようやく察したアンダーボスが、悪態をついて手をひっこめる。

その瞬間…部屋の屋根を突き破って、隕石と見紛うほどの速さで人間が落ちてくる。

アンダーボスは巻き込まれてそのまま即死……うわぁ〜、絵面がエゲツねぇな。

これで12区にのこったアンダーボスは全滅…後のやつは死んだかどっかに逃げたかで、この巣で親指を見ることは当分無いだろうな。

 

「…はぁ。部長…それやるんだったら俺の仕事要らなくないですか…」

 

「いやぁ、そうでもないっしょ!君がいなかったら奇襲もこんな綺麗に決まんなかったと思うし!」

 

アンダーボスをぶっ潰して、今は周りのカポを処理して回るデカブツ…あのクソ部長に悪態をつく。

…うん。玄関のほうからも騒いでる声が聞こえてくる。多分2課のみんなが突入してきたのかな…

突然の奇襲とアンダーボスの死によって混乱した親指たちは、いつもよりもずっと簡単に死んでいく。

ウチの部長は強い。冗談抜きに、そこだけは確かだ。

だから…うん、流れ弾にだけ気をつけてりゃ一服する時間あるな……お、見っけ。やっぱアンダーボスともなると良いシガー持ってると思ったぜ…こういうの、ガチで高くてさ…興味はあったんだけど、給料が吹っ飛ぶのよ。平とはいえツヴァイ2課の給料がだぜ?こんな機会なかなかないんだからな、もーらい。

 

「…………ぷぁ……………うま……」

 

うわぁ、ガチで美味いな。いっつも吸ってる安もんの紙巻きとは全然違う……

こう…重たい感じなんだけど…なんつぅかな………美味いわ…

 

「ちょっと!何一服してんの?私もみんなもがんばってんだけど、手伝ってよ!」

 

「おりゃあクソ部長に、下手したら死にかねないクソな仕事押し付けられても精一杯がんばりましたー。あとは部長がどうにかしてください。つーか俺の加勢とか要らないでしょ」

 

「ぐぬぅ…」と声を漏らすクソ部長。拳でそこそこ堅いカポの頭を粉砕しながら言われても全く可愛くない。

強行犯係のエドガーってやつといい勝負するんじゃないか?本人見たことないけど。

親指の連中が拳と蹴りで粉砕されていくという、なかなか見られない面白いシーンを見ながら一服してると、扉が開いてツヴァイの制服を着た者たちがぞろぞろと部屋へ入ってくる。

部屋の中でも、もう虫の息のカポしか残っていない。ふう、終わりか……

 

「部長、制圧終わりました」

 

「うん、うん!欠けてる人いないねー!?今回も大成功っちゅーわけだー!」

 

それにしても……カポたちはびっくりするほど静かに死んでいくな。

彼ら親指は、自分たちより目上の者がいる際は、死ぬ間際ですら許可が無ければ喋ることはしない。

哀れな連中だよほんと…フィクサー辞めさせられても指にだけは入りたくないな。まあそれ以下の組織も入りたくはないけど…

 

「へい、へい!そこのカポ、まだ息あるよね?ちょ〜っと質問したいんだけど〜、いいでしょ?」

 

「………」

 

…部長が話しかけるけど、カポは喋んない。

そもそも、肺とか顎とかボロボロだろうからそりゃ喋ればしないだろうけど、目上の者から問われても答えない理由は一つだ。

 

「……部長、下がっててください。はあ…書類がまだ有効なので、少なくとも親指にとってツヴァイ2課部長の権力を持ってるのは俺ですから」

 

「うえ!?もう死にかけなんだから気にしなくていいのに〜、徹底してんね〜!まあ、やってくれんならそのほうがいいやぁ〜!じゃあ〜やってる間にみんなで打ち上げ行こっか!?」

 

騒がしい人だ…俺は同僚が酒飲んでる間にカポとにらめっこして尋問しなきゃならんらしい。

ホンット勝手な奴だ……帰ったらこのシガーを要求してみるのもいいかもしれない。

あいつが値段でひっくり返る様が見れて、ついでに美味い葉巻を吸えたら万々歳だな。




珍しく会話多めの回。

親指……話が書きやすくていいっすね。
あの…モブが喋んないんですよ。喋らないのが正常だから、喋らせたい幹部だけ喋らせても違和感とか無いの、良い。メチャ良い。
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