覗き窓   作:わど〜

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品質の良い生地は初投稿と同じくらい身体を守ってくれるんだ。

どうも。私もしくはわど〜です。

謝肉祭ってめっちゃスケベだと思う。そんな気持ちで書きました。


仕立屋の窓

そこらを漂うケミカルな煙に、何かもよくわからない素材がこれまたよくわからない薬剤で溶ける音。金属の粉末を液体で満ちた釜に入れ、熱する。

こんな表現でどのくらいの人が仕立屋の工房を想像できるだろう?どこかの研究室か、それか魔女の部屋か何かだと思った人が多いんじゃないか。まあ、「仕立屋」って名前から受け取る大抵の人のイメージは糸を編んで布を織る、みたいな、そういう地味な仕事のイメージだろうね。名前が名前だし、しょうがないとは思うけどね。

それでも、名前だけで判断しちゃいけないなんてこの都市では常識だ。それに、最初の光景も別に私たち仕立屋からしたら特別変な光景でもない。

 

仕立屋の仕事は布を織ること。良い布のためには、良い糸が要るってのは当たり前だよね。

今のは全部、その良い糸を編むための作業なんだ。私たちが作る布に使われる糸は、ほとんど自分たちの工房で生産してるの。

まあ、謝肉祭みたいなイカれた方法で糸を紡いでる奴らもいるけど……そういうのとは一緒にしないでほしい。

それで、なんでわざわざ自分たちで生産してるかって言うと、そもそも良い糸が見つからないんだよね。

地位の高いフィクサーを想像してみて。ああいう人たちが着ている服は艶もあって、見た目も良くて、もちろん性能も良い。そういう服がそこらへんで売ってる、手芸用だかなんだかの安っぽい糸でできてるわけがないよね?

ああいう服に使われる、最高級の糸は、取引をしている場所が本当に少ない。明確な数は知らないけど、体感だと1つの巣に1つあればかなりいい方だと思うなぁ。

それに、私も一回だけ取引をしてる店を見たことがあるんだけど、これが本当に高いんだよね!

1つの布に使う量で大体30万眼だか……取引の規模にもよるけど、仕立屋をやるなら継続的に関係を続かせる必要がある以上、本当にとんでもないコストがかかる。

もちろんその分品質が保証されてたり、良い糸を使ってるって宣伝にもなったりするんだけど…まあ、大抵は自分で機械と素材と薬品を揃えて糸を紡ぐほうが安くて商売も安定するんだよね。

そういうわけで、ほとんどの仕立屋が糸を紡ぐための工房を持ってる。

 

もちろん、工房を携えるだけじゃ糸はできない。糸はいろんな薬品やら、生物の死骸やら、特殊な金属やらを素材にして作る。

その素材にどんなものを使うかによってできる布の品質や特徴が変わってくる。例えば…有名どころだと、U社にある仕立屋は鯨油や人魚の死骸を混ぜて艶を出したり肌触りを良くしてるらしいし、X社の合金を使ってとんでもない耐久力と防御性能を実現したところもあるらしい。

そういうふうに、それぞれの仕立屋にあるそれぞれの配合によって、それぞれの布が編み上がる。

 

それだけじゃない、糸から布を編む過程で特殊な技術を使うこともある。

刻印を刻み込んだり、特異点を使うことで編み上がった布がより特別な物になる。

ウチのはちょっと自慢なんだけど、空間遮断技術を使ってるんだよね。

どれだけ服が傷つこうとも貫かれない限り内側には影響無し!

…まあ、服が貫かれると空間遮断技術がブレてうまく作動しなくなっちゃうんだけどね。それでもウチの布は優秀だから、そんなこと滅多に無いはずだけどね。

 

さて、そんなふうに出来た布は最後に服に加工される。布だけ作って、加工は業者に任せるってところもそこそこあるけど、どっちかといえば全部自分の工房で済ませるってところの方が多いかな。

服に加工する時は、1つの布を使うこともあるけど…複数種類の布を使うこともある。これまた布の組み合わせでいろんな効果があるんだ。

あとは、服を買う人が、どんな組み合わせの服を選ぶかでも変わってくることもあったりね。

オーダーメイドだと選ぶって過程は合って無いような物だけど、そうじゃないお客さんは色々な種類の中から自分が必要な服を選ぶ必要がある。その人がどんな服を着るかっていうのは、この仕事の1つの醍醐味だと思うね。

 

そうそう、知ってる人って少ないと思うけど、実は仕立屋もトレス協会の審査を受ける必要があるんだ。

彼らとしては、仕立屋も立派な工房の1つなんだろうね。実際、都市の技術をフル活用してるわけだから、私たちからしたら否定はできないけど。

仕立屋の審査基準は工房とはかなり違ったものらしい。私は工房の審査基準がどうか知らないからどうこう言えないけど、少なくとも言えるのはトレス協会の審査はかなり面倒で大変だってこと。

審査基準を満たすのは、私たちくらいの工房や仕立屋なら然程難しいことじゃない。でも、そもそも審査に出すための書類や代金の準備、審査に出す作品のチェック。審査には時間を要するし、審査に合格しても合格証明書を作る必要があって……もう、本当思い出すだけで頭が痛くなるなぁ。

都市には工房と仕立屋両方を兼任してる人も居るって聞いたけど、そういう人は本当すごいと思うよ。工房と仕立屋それぞれの審査基準を覚えて、それぞれの作品を審査に出して…そんなこと私には出来る気がしないな。

私は自分の工房を守るので精一杯だから。




仕立屋という職業について情報がでていない以上完全なる妄想じゃ。すまんかった。
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