2話 崩れゆく日常
翌朝。夜に行われた悲惨な惨事が朝焼けと共に鮮明化する。そこにはいつもの穏やかなアカッツ村とは思えない雰囲気が立ち込めた。
「はぁー」「……一体どうしてぇ…?」
家畜業を営むシラが肩を落としてる。
数10人ほどの村人か集まり、何かあったかを示唆している。一体何があったのか?家畜の牛が惨殺され。豚も1頭行方不明。逃げ出した家畜を村人達で見つける。それらのことが朝が訪れるまでに起きたのだ。
村人が騒めく中にユウガの母ソルは惨殺された牛の姿をじっと見つめていた。
「何事じゃッ!??」
村長キシベをアーミィ先生とキシベの息子が呼んできた。
「こっこれはっっ?」
「クルロックンの仕業ですかねぇ?」
村人の1人がそう答えた。
「クルロックンが牛を襲うかっ??」
「それじゃなんだって言うだよッ?」
クルロックンはこの辺境で独自に繁栄している鳥に近いモンスター!食性は雑食でアカッツ村のほとんどの騒ぎはこいつだ。畑を荒らしたり鶏小屋の卵を食べたり容疑は数えきれない。爪は鋭いとは言え、体長1mも満たない鳥が家畜を襲いさらには惨殺するという身の丈にあってない行ない、発言した村人すらも思ってる事だ。
余談だがクルロックンは結構美味い。煮るなり焼くなり揚げるなり自在の食材でもある。アカッツ村では程よい距離感を保ったモンスターである。
「うーむぅ…」 「何にせよぉ備えせねばなるまい。」
「村人全員に単独行動は控えるように通達じゃ不要な外出は控えるように。」
村人達がざわつき賛同する動きがある。
「わかったよ!母上!」 「俺が村外れや集会所まで伝えてくるよ!!」
キシベの息子タカツだ!竜人族のため年齢は不詳だがこう言った時、率先して動ける。
「タカツやぁ…お主には別件を頼みたい……」
「はぁはいッ?」
村人が散り散りになって散っていく。そんな広くない村なのでそんな意気込まなくても情報はすぐに浸透するだろう。
「ソルゥ!アーミィ!?」 「お主らもわしの家に来てほしい…」
村長キシベに呼び止められて2人は静かに頷いた。
「ふぁ〜ぁ」「かーちゃん朝ごはんはぁ〜〜」
ユウガはよく寝る。8時間以上の睡眠は当たり前。目を擦りながら日常を始めようとしてる。村の異変など今は知るよしもない。
「あれぇ?」 「いないのかぁ?」
テーブルにはいつもより形の悪いおにぎりが二つあった。母ソルはまだ暗い中不穏な空気に気づき率先して家畜探しなどの対応をしていた。その切迫した状況で息子の為におにぎりだけは作ったのだ。良き母たる証拠の品。
「おにぎり2つて…」
食料庫を探して腹の足しになりそうな物を探す。火を起こすのは面倒なので干し肉や果物で足りない部分を満たそうと試す。ユウガは行商人を経て簡単な料理は出来るがコストに見やわない事は避けるのだ。育ち盛りだしよく食べる。若い胃袋には母の愛情は中々届かない物だ…
試行錯誤し腹6分目程度で終える。胃袋は食糧を求めるが無視をした。
「アープトン!」 「ごはーんだぞぉ!」
干し草やら少し傷みのある野菜や果物を村の農家から安く買いアプトンに与えている。アプトンの食欲はユウガにも匹敵する恐ろしさがある。
竜舎は家のすぐ横にあり。入り口には荷台などを管理してる。簡単な扉の柵があり。通路がU字に広がり、奥に干し草のベッドを敷き詰めてアプトンサイズなら充分な寝返りと尻尾を少し畳めば方向転換も出来るほど広い。
「アプトン!!??」
いつも声をかけたら甘えて来るのに明らかにおかしい。竜舎の奥でうずくまってる…近寄るとわかって来るが小刻みに震える。
「どうしのぉ!アプトン??」
「ムぅモォォ〜ぉ…」
アプトノスの典型的な不安な鳴き方だ。落ち着きがなく周りを見渡すような動きで臭いを嗅ぐような仕草をしている。
「アプトン……」 「大丈夫だよ!」 「俺がいるだろぅ」
アプトンの両頬のぷにぷにを丁度いい強さで撫でる。ユウガはアプトンが落ち着きを取り戻すまでそばから離れず。餌を食べ終わるまで近くで寄り添った……
「ムゥ〜うおぉ❤︎」
落ち着きを取り戻したアプトンの幸せそうな声がした!!
典型的な和のお城にあるような門。それを潜り抜けた先に村長キシベの家がある。家の遥か天の先にヒンメルン山脈の尾根が見える。頂上の方は雪がかかる岩肌だがアカッツ村のある1000m地点は草木が生い茂っている。キシベはこの広大な土地を熟知して管理しているのだ。
村人総手ででキノコやタケノコ狩りも年に何回かあるイベントの一つだ!ここにはモスやケルビなど。ブラブジナスという腕が発達したタヌキのようなモンスターも目撃される。
キシベ宅で重い空気の中言葉が放たれた。
「うーむぅ何から話そうかのうぅ?」
「アーミィ?あの牛を殺したのは何だとおもう?」
「…そうですねぇ…鳥竜種です…よね…?」
鳥竜種はイャンクックやゲリョス!ランポスやゲネポスを含むモンスターの一群。この時点でアカッツ村に相応しくない話だ。
「牛の死骸の傷跡から察するにランポス…」
刃のような爪痕、元ハンターなら見覚えのある傷に違いない。
「爪痕のサイズから考えるに…ドスランポスですね…」
ユウガの母ソルが一石を投じた。
「まさかっっ!ドスランポスだったら群れでこの辺りに潜んでるって事??」
「いぃえっ」 「被害状況と傷の数から察するに群れをなしてないはぐれドスランポスだと考えます。」
アーミィとソルが熱を持ち討論していた。キシベが一言言う。
「うむぅ」 「流石、元ハンターと元編纂者じゃ」 「気づいておったか…」
そう、ユウガの母ソル・オリジィラルは元凄腕の編纂者!
「どう対応されますか?」
「安心せいっ」 「ひとまずリョクバ村へはタカツが馬を走らせ応援要請を出した、ソッバ村には危険を記した文を送った。」
リョクバ村はアカッツ村よりかは栄えていて他の村や街にも交流がある。ハンターを頼るとしたらまずはリョクバだ!ソッバ村はアカッツ村と同じくらいの農村と家畜で生計を立てていてアカッツ村と同じくらい外敵に免疫がないだろう。
「しかし…」 「避難していた方が…?」
「…うむぅ…この村はモンスターに対して慣れてないからのぅ…いきなりドスランポスなどと聞いたら…」
「だとしても迫り来る危険は変わりありませんよ!!」
「私!村人たちに避難するようにいいますッ!」
ソルは後手の対応に不満を漏らし出て行こうとした。
「まってっくれんかぁ?」 「ユウガの事も確認したい…」
「…ハンターになりたいって言ってたからですか…?」
「そうじゃ…ヨウマの名は口にするなと伝えてはいるな」
「はい…本人に何度も伝えてあります。」
「わかった。」「村人をわしの家に避難させよう…」
ソルは大きく頷き走り去った。アーミィもあまりのやり取りに呆然としたが我に返り動き出した!
「最悪の事態は…まだ避けられるはず……」
ソルは願うように言霊にだした。
そしてヨウマとは…一体……
「アプトンなんだったんだろうな〜」
アプトンの普段と違う動きに考えを巡らせる。行商人の際の相棒なのだから村にいないモンスターを見た時もあった。しかしあんなに震えるような反応は未だに見たことない。
「お腹空きすぎたのかな…」
そんな訳あるかっ!と言うような答えを出しつつキンバの声がしたッ!
「ユウぅガッーーー」
「なにぃ!?キンバ朝から!??」
「おう!ユウガ!」 「おれぇ!楽しみすぎて昨日は寝れなかったよぉぉ!」
「えっ何がぁ?」
「なぁーにて!やくそく!しただろ!!?」
「えっっ今日も剣ドンっするんだっけ?」
「はぁーーぁ??剣ドンしてもいいけどぉ!!」 「ユウガ忘れたのかよ?」 「けん見してくれるって言ったじゃん!?」 「ウソついたのかよ!??」
「……………あぁぁぁ」
昨日の記憶がフラッシュバックして同じ焦りを…思い出した…
「おーけ!すぐに取ってくるよぉ!」
扉を閉めた。
「ヤバいッヤバいッヤバいッヤバいッ……」
何を思ったが食糧庫を開けてなんでこんなところ開けてんだッ!…包丁とかで誤魔化せないかな…無理無理無理無理ッ!!!とりあえず父の部屋を探そう…
掃除はしているが色んな帳簿や本がいっぱいあって散らかってる。
「ここしかないッ!」
本や帳簿の上にダイブして探す!冷静に考えればこんなところに武器などあるはずもない。
「なんかないかぁッ…」
「ユウガぁ!まぁだか〜ぁ?」
外でキンバの期待感のある声がする!
「待って…もう少しぃ〜」
自然と窓の方に目をやり古びたタンスが壁と一体化してるのに気づいた…
「このタンスなら…」 「おりゃッッ!!!」
立て付けが悪いのか鍵がかかってるのかわからないが開かない。
「頼む開いてくれぇ〜」
ユウガは必死だった。村の歳の近い友人はキンバだけ、何よりお喋り。嘘つき呼ばわりされたらあっという間に村に広がり嘘つきと言うレッテルが一生ついて回るだろうと。実際の所キンバだったら3日もすれば忘れそうではある。
「ちくしょ〜あけぇ〜ぇ」
体が熱を持つように高揚しその瞬間!!
―――――ガァキンッッ――――
タンスの観音扉が開いた!
防具の一種などがあり、手が勝手に動くように内側にある引き出しを引き、それはあった。
「…これって?刀だよな…?」
ユウガには初めて見る形状の刀。日本刀で小太刀のような形状。鞘に収まってる所を握りしめてユウガは『ニタッ』と笑った!
「おーまぁたせぇ〜」
白々しく刀を背中に隠して悪びれもなく現れた!
「おせー!!オイラは昨日から待ってんだゾ!」「はやく!見してくれぇぇ!!」
親指を立て
「とりあえずダム横いこっ!」
ユウガはまたしても笑った。
「ちぇッッ!もったいぶって!!」
アカッツ村から他の村に行く道は二つある。一つは丘を抜け集会酒場のある道。もう一つはキシベの家からヒンメル山脈に添い家畜を放つ丘を抜けた一本道なだらかなな丘を下り真っ直ぐ、アガラサ川の橋を抜けた先にある道だ。
家畜を放つ丘に行方不明の豚を探してる、シラさんとキンバの父、ランザ・プレイジィがいる。キンバの父はこの村の何でも屋で行商人の手伝いなどもしている。キンバとは違い体格のいい男性だ。
「豚さんが逃げ込むとしたら、もうここの丘しか考えらんねぇべっ」
「ここも一応探したが奥の方は見れてないかもなぁ」
ここはキシベの所有しているヒンメル山脈の山肌を一部切り拓いて作った家畜を放牧する場所、リョクバ村に繋がる道よりさらに高い丘のようになっている。因みに豚はモスを品種改良を重ね食用に育てた生き物。ペットとして愛らしさを加えたのがプーギーだ。
奥の方でクルロックンの鳴き声が聞こえていた。
「あっち!」 「あやしぃべッ!」
シラが走り出してキンバの父ランザも続いた。
そこには豚の骸と思われる物をクルロックンの群れが啄んでいた…
「おーぉオラの豚がぁ〜」
「犯人はクルロックンだたのか…」
クルロックンと言えども群れ!ましてや目の前にある、ご馳走があり興奮している。ハンターでもない村人2人では分が悪いだろう。
「オラの豚をよーくもぉッ!!」
でかいホークのような農具で突撃を試みようとする。
「やめておけッ」「あの数を見ろ!」
ランザがシラを羽交締めにして止めたッ…次の瞬間だった……
家畜の丘を囲う柵の奥、木々の隙間からまるで――――バネ仕掛けのような鋭い動き。
木々の隙間から現れたのは、青い鱗に包まれた獰猛な竜――目は黄色から赤に染まり、牙が獲物の喉を狙うように開く。
「ギャアアアッオ!!」
ドスランポスが、クルロックンの群れに跳びかかり、品かやさを兼ね備えた獰猛な刃がクルロックンの群れを引き裂いた…
――――――「ギャオーーッ」――――――――「ギャッオッ」――――――――
「ゔあぁぁぁッッッッッッッッッ」
シラとランザは雄叫びの様な悲鳴をあげ迫り来る危険を村中に託した…
「みーして!みーして!!」 「はーやくぅみして!!」
ダム横でキンバの無邪気な願いが叶おうとしていた。
「ふぅっっっ」 「それは…これだ!!!」
キンバに古刀を見せた!
「うぉーーー!!!」 「んっ?それ本当の剣なのかぁ?」
キンバの目にもユウガが持ってきた古刀は想像していた剣(西洋風)とは違い一瞬、興奮はしたが疑いの目を向けた。
「ほぉッ!本物だよッ!!」 「見てろヨォ!」
シュッ
ユウガも初めて鞘から抜いた…それは本当に刀なのかユウガも思いたくなるほど刃の部分は細かい傷と錆びに覆われていて鍔元には、見慣れぬ古文字のような刻印。光の加減で『妖魔』の文字が浮かび上がるように見えた。
――見ているだけで、ぞわりと背中が粟立つような、不思議な気配が刀から伝わってくる。
「ほぇ〜」 「なんて書いてあるのかなぁ?」
ユウガのふとした疑問を掻き消すほどのキンバの笑い声が響く。
「ギャハハっっ!」 「なんだそれぇぇ!?そんなの剣ていわねぇーよぉ」
キンバがバカにする理由がユウガにはわからなかった。剣ではないにしろ何かすごいチカラを感じる気がしたのだ。
「なんで!?」 「なんかこれすごくない!?」
「ぜんぜーん」 「オイラのハンターナイフの方がぜって強いよぉ〜」
「そんなのわからないだろ?」
「じゃ勝負するかぁ?」
「えっ?」 「どうやって…?」
「ハンターナイフとその剣でけっとうだ!!!」
「……いゃさすがに危ないだろ…」
「なんだぁ?負けるのが怖いのかっ?」
「なんだとッッ?」 「やってやんよ!!?とはならないよ…さすがに…」
流石のユウガも友達に怪我をさせるような行為はいくら挑発だろうがやらなかった…
「ちぇッッなんだ!つまんないな〜」 「じゃーどうやって勝負すんのさっっ」
「うーん…」 「まぁとりあえずなんか飯食いながら考えるか!??」
「確かに!そういえばオイラ朝飯たべてねぇーーや!!」
笑い声がこだました…
「猫婆ちゃんに美味いもん食わしてもらおうぜっっ!」
そんな平和な日常を崩すような叫び声がダムのさらに奥から聞こえた。
ゔぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
「今の叫び声…」
キンバが凍てつく。
「おとん?」
叫び声で父の声を聞き分けるのはさほど難しい事ではないっ。キンバは空き地から道を使わずダムの石造りに飛び乗り最短距離で叫び声の方向に飛んだ!
「キンバッッ!」
ユウガも必死でキンバの後を追った。
ソルが村のほとんどの家に訪れて避難を呼びかけてた。村人達は伝染するように避難を告げる。しらないのは息子のユウガとキンバとキンバの父とシラを残すだけだった……
ゔおぁぁぁぁぁぁぁ
「あっちはリョクバ村への道…最初に声をかけに行ったところ……」
入れ違いになってしまったか…ソルの最悪の自体は現実になり、物語は収束して一筋に繋がる。
「ハァッッ…」 「ハァッッッ……」
心臓が激しく脈打ちシラの肩を抱えて懸命に走る、キンバの父ランザ。シラはドスランポスの突進を受けてしまい意識が混濁して、頭からは血を流す……ダムに続く小さい水路を超えて家畜舎のある方へひた走る……
「シラさん…しっかり…」
ランザはシラを抱えて進むのに精一杯だった…逃げ道がリョクバ村に続く対角の道となれば集会酒場に繋がるこの道…なるべく村から離そうと限りある時の中で必死だった…黄色から始まり橙に染まる爪は2人の間近にせまっていた…
「ブギャァァァァ……」
家畜が危険を察知して暴れ回る。家畜舎の中は見えないがパニック状態と予想される…
ドスランポスの興味が家畜舎に移り、数十mある距離をひとっ飛びした。
「バギャァァァァ……ぅぅぅ」
家畜舎は更なるパニックになった。ランザは申し訳ないが今のうちに逃げようと算段したがシラが家畜の叫びを聞いて切れかけの記憶を戻してランザから離れて家畜舎の方に向かってしまった…
「シラさん!行くなぁぁ!」
「せめて逃げてくれぇ!!」
―――――ガシャンッッ――――――
家畜舎の扉を壊して出ていく牛や豚たち…シラはギリギリ避けた。そこにゆっくりと血だらけの顔したドスランポスがぬるりッと登場した…目の前で見たドスランポスは高さは2.5m超え体感だと3mを越す様に感じただろ…
「うぁぁぁぁ…」
シラは腰を抜かした…もう助からん…死をも覚悟した…シラに牙が重なろうとした……その時ッ!!
「うおりゃぁ!!!!」
ハンターナイフ(剥ぎ取りナイフ)を両手で持ったキンバが降ってきた…
「シラさん!」「おとん!!」 「ここはオイラ達が食い止める!!!」
ユウガも続いてダムを抜けメインの畑を駆け抜けてここまで最短できた。
「おじさんっ!みんな村長の家に避難してるみたいよ!」
ユウガは移動中にキシベの家の方も見ていた。
「キンッ!ユウガ!!無理はするなよ……」
言葉少なくランザはシラを抱え行動に移した…
「ユウガ!!初めてのきょうとだッ!!」 「足ひっぱるなよぉぉぉッ」
「オッ!おう!」 「……やるしか、ねぇだろ」
ユウガは震える手で握りしめ、刀を抜いた。逃げないと決めた――これが、初めての狩り
震える手で古刀を納め高まる心音を聞いた。
2人は未知のモンスターに挑む事がはどんな気持ちなのかの。大型モンスターを前にして初めての狩りを始めようとしていた……そこには普段のアカッツ村の姿見は微塵もなかった。この戦が、ユウガやキンバの運命を変えるとは、まだ誰も知らない……
――――――2話崩れゆく日常――――――――――― モンスターハンターブラッドローレ完――――――――