これはA組と関係ないある1人のヒーローの物語。
???
「ついに完成したぞ」
「おお!ついに!」
「これで我々の悲願が叶いますな!」
「ああ、悪戦苦闘したが、我ながら関心の出来だと思う」
1人の少年があるブツを前に崇拝に似た感情で口にする。
「俺の知識とお前達の技術が生み出した最高の瞬間だ」
「うう、このために人生を費やしたと過言ではないんだな」
「さ、早速動かしてみるでござるよ!」
少年たちはスイッチを押す。
そして物体はギランと目を光らせた。
『オカエリナサイマセ。ゴシュジンサマー』
『野太い声』のメイドロボがしゃべった。
「違うウウウウウゥゥゥゥゥ!!!」
少年は叫びながらちゃぶ台をひっくり返した。
「なんでよりによっておっさんの声なんだよ!つけるパーツ間違ってないか!?」
「す、すまんだな。格安パーツだったから中身まで確認できてなかったんだな」
「いや、ギャップ萌え路線ならワンチャン…」
「ねぇよ!どこかの男塾の総大将みたいな声のメイドなんてどこに需要があるんだよ!」
叫ぶ少年の名は『堂神英呂(どうじんえいろ)』。
友人であり『叡智研究部』の部活仲間である『出縁(でぶち)』と『王田(おうた)』の3人でメイドロボを作ったが、見た目はパーフェクトだが中身がダメらしい。
「………ふぅ、ちょっと気分転換してくる」
「うむ、頭を冷やさねばいい話もないでござる」
「あ、ついでに何か食べ物買ってきて欲しいんだな」
「それは自分で買え」
部室を離れる英呂。
そして誰もいない木々に囲まれた場所で、
「どうしてこうなったアアアアアアアァァァァァァァ!!!」
周りの鳥達がびっくりするくらいの大声量が響いた。
「ちくしょう!どうして神様は残酷なんだ!!長らく夢見た『ヒロアカ世界に転生』したのにこの個性のせいで女友達は出来ず、さらにB組どころかサポート科じゃなくて普通科!?これじゃ俺『転生したらヒロアカのモブでした』ってオチじゃねぇか!」
普通ではあり得ないセリフが英呂の口から出てくる。
そう、彼は転生者。
この世界の未来を知る者。
「くっそ〜。俺の個性『ラッキースケベ』。一時はいいかもと思ったのにこのヒーロー世界じゃ地雷もいいとこだ。もし卒業してこの個性が暴発すれば一発で敵認定決定だよ」
自らの個性に悪態をつく英呂。
(風による)スカートめくり、不可抗力、女性同士による乱闘の巻き添え。数え出したらキリがない。
「はぁ、この個性を封印して余生を過ごすのかなぁ」
「むしろ発散させた方がスッキリするんじゃない?」
「いやいや、これは世の女性達に嫌われる個性だよ。俺はモテモテになりたいんだ」
「ふ〜ん?ブドウ君みたいに女の子と仲良くなりたいんだ」
「おう!俺は女の子と仲良くなりたい………ん?」
途中誰と喋ってたのか振り返る英呂。
それは騎士の兜を被った女の子ことキシノ・ガーディアンである。
「………いつからそこに?」
「全力で叫ぶところから」
「ほぼ最初っからじゃん!!なんか恥ずかしいんだけど!?」
両手で顔を覆う英呂だが、耳も真っ赤なため意味はない。
「聞いた感じ個性で悩んでいるみたいだし私でよければ相談になるけど」
「…はぁ?」
英呂は耳を疑った。
聞いていたのなら普通英呂から離れようとするのが普通の女の子の反応だ。
だと言うのに相談に乗ると言った。英呂は疑いの目を向けた。
「そのために君の活動拠点にお邪魔してもいいかな?」
「うん、いいよ」
しかし女の子と仲良くなりたい英呂はあっさりと承諾した。
で、
「…と言うわけでこの叡智研究部に入ることになった」
「キシノだよ。よろしく」
「「どう言うことだ英呂氏イイィィィィィ!!!」」
「グハァッ!?」
自己紹介すると出縁と王田がラリアットで英呂をしばいた。
「何があったんだな!?気分転換の間にどこをどうしたらこんな美女を連れてきたんだな!?」
「俺が知るか!?悩んでいるって話したら勝手についてきたんだよ!!」
「見損なったでござるよ英呂氏!我らはモテない同盟の三国志として頑張るのでは無かったのでござるかぁ!?」
「一言も言った覚えはないわ!!と言うかそんな同盟こっちから願い下げじゃ!」
「やめて!私のために争わないで!………って言った方がいい?」
「ややこしくなるのでやめて」
「………と言うわけで、部活動がままならないまま現在進行形で伸び悩んでいるわけだけど」
「ふーん。これでもまだ未完成なんだ」
「そうなんだな。下半身と四肢を作って稼働できるかどうかで完成するんだな」
「声の方は後でどうにかなるとして大体はできてるでござるよ」
「って人の話を聞けよ!!」
いつのまにか仲良くなったかのように話し合うキシノと出縁と王田。
仲間はずれ感がして悲しくなった。
「で、君らどんな個性持ってるの?」
「「………………」」
キシノの問いに2人が黙る。
まるで話していいのか迷っているような顔。
「大丈夫。笑わないから話してくれる?」
そっと肩に手を置いて促すキシノ。
やがて意を決した2人はキシノに話す。
「おいら体から『ローション』を出す個性なんだな」
「拙者はこの『触手』でござる」
出縁は手から薄白い液体?を。
王田は指が黒いうねうねしたものを出す。
「『ローション』と『触手』。君らは偏見で後ろ指刺されたの?」
「大半は拙者達の見た目ですので個性は関係ないでござる」
「と言ってもこう言う個性は嫌われやすいと聞いてるからこの部活以外では使ってないんだな」
「………………どこの世界でもおんなじか(ボソッ)」
「え?」
「なんでもないよ」
話を切り替え、今度は英呂に話す。
「英呂君の個性ってどんな感じ?」
「え?俺?ど、どんなって言われても………」
話をふられてしどろもどろな英呂。
そもそも自分の個性はとても話せるものではない。
しかし話したがらない英呂にキシノはずいっと近づく。
「ねぇねぇ、どんなのか見せてよ」
「え?いや、だからその………」
英呂がジリジリ離れると同時にズイズイと近づくキシノ。
好奇心で積極的なキシノに、英呂は生前から女の子との距離感が掴めず失敗した経験があるため、モテたいと思いつつも一歩を踏み出せずにいる。
ゴン
その時棚に当たって上にあった重たそうなものがぐらりと揺れる。
そしてそれは英呂の頭の上に………
「おっと危ない」
落ちる前にサッとキシノが英呂を抱き寄せて、ドンっと落ちた物体から守ったのだ。
「ふぅ、この雄英で事故死なんて縁起が悪い。大丈夫かな?」
「………………」
「?」
英呂の返事がない。
もしかして何が起こったか理解でいていないのだろうか。
そんなことを考えていたが、英呂は心の中でこう考えていた。
(俺は………おっぱいに顔を埋めているぞぉぉぉぉぉ!!ジョジョォォォォォォォォォォ!!)
もう一度言うが、英呂は女の子との距離感に失敗して以来ほぼ接触がない生活をしていたために、個性の『ラッキースケベ』も相まって頬に感じる柔らかさと女の子に香りに超興奮していた。
「え、英呂氏ィィィィィ!!何羨ましいことをしてるでござるかァァァァァ!!」
「女の子のおっぱいに顔を埋めるなんて羨ましすぎるんだなァァァァァ!!」
王田と出縁は英呂に対してシャウトする。
「じゃあなんでカメラ構えてるの?」
「「シャッターチャンスだから(でござる)」
その手には部活用と思われるカメラが何度もシャッターを押していた。
「大変申し訳ございませんでした!!」
ちょっとして全身全霊の土下座を披露する英呂。
「…なんで謝ってるのかわからないけど怪我がなくてよかったよ」
「いや、怪我自体は別にいいんだが。その………きみ、女の子だし」
「………英呂君っていったっけ?」
顔を上げた時、キシノの顔は明らかに不機嫌ですと言わんばかりの表情をする。
「危ないから助けてくれた相手に男だ女だと卑下するような発言は困ります。特に自分に自信の無いような人は特にね」
「っ!」
英呂は自らの失言に顔を青くした。
(また………また失敗した………)
前世のトラウマが蘇り、全身に寒気を感じるように震え始める英呂。
意識が少しずつ薄れて倒れそうになったその時、
ふわっ
顔全体に柔らかな感触と香りを感じ取った。
「怖がらないで。大丈夫。君がどんな闇を抱えているかわからないけど、ヒーローとして、騎士として、そして貴方の友達として、貴方を助けてあげるよ」
慰めるように、子供をあやすように英呂を抱きしめるキシノ。
「もう大丈夫。私がきました」
それはあるNo. 1ヒーローの決め台詞であり人々が安心できる魔法の言葉。
しかし英呂にとって彼女の言葉は暗い人生を照らしてくれた光の手。
「………ぐ………ぅ………」
何かが込み上がっていくのを感じる英呂。
それが嬉し涙だと理解するのは少しした後だ。
「落ち着いた?」
「………ほんの少し」
「よかったね」
「………何故僕を?」
英呂にとって疑問なのは彼女が何故自分を構うかだ。
全く接点もないモブ(と英呂は思い込んでいる)なのに助ける理由がわからないのだ。
その質問にキシノは間髪入れずに答えた。
「困っている人を助けるのに理由が必要?」
それはどの世界のヒーローが口にする常套句のようなもの。
いつもなら「ああそう」と返すのだが、返事はなく若干目頭が熱くなる。
「………キシノ氏。少し英呂を貸して欲しいんだな」
「うむ、我らの同志としかし話し合いが必要でござる」
「と言ってるけど英呂君」
「………返事がない。ただの屍のようだ」
2人から不機嫌なオーラを感じ取って英呂は誤魔化すようにキシノを抱き寄せる。
「はぁ、2人ともきて。頭を出して」
2人を呼んだキシノは頭を差し出した2人の頭を撫でる。
「「!!」」
「ほらほらいい子いい子。機嫌治った?」
「「最高でございます!!」」
女の子に撫でられて一瞬で上機嫌になった。
「………人のこと言えねぇけどちょろすぎねぇ?」
「それだけ女の子が好きってことでしょ?」
「「はい」」
「即答かよ」
呆れる英呂。
とは言いつつもこんなに楽しいのはいつぶりだろうかと英呂は若干期待するのであった。
「あ、キシノ氏!我ら『叡智研究部』に入部して欲しいんだな!」
「それって面白い?」
「面白さなら拙者達が保証するでござる!」
「じゃあ入ろっと」
「「いょっしゃアアアアアアアァァァァァァァ!!!」」
「って俺抜きで勝手に進めるなバカヤロー!!」
つづく?